点の記−8（測量官-2)

　それでは実例をあげてみます。新田次郎氏の小説で有名な柴崎芳太郎測量官が明治40年に立山一帯に設置した点の記から選点・造標・観測の日付を追ってみました。距離は前の点からの直線距離(概算)です。興味のある方は地図で追ってみてください。国土地理院の「基準点成果閲覧サービス」で検索するのが一番楽と思います。

5/16：気和平選点(早月尾根1920mピーク)
5/17：大熊谷選点(大熊山1628.7m、約6km)
5/27：真川選点(早乙女岳西南西1779mピーク、約2.8km)
5/28：松尾選点(松尾峠1971.7m、約5.6km)
5/31：称名滝選点(アルペンルート脇1612.2m、約2.7km)
6/09：温泉選点(有峰トンネル上1612.3mピーク、約3.5km)
　　 　坐良選点(鷲岳北西2533.3mピーク、約5.3km)
6/10：木引谷選点(木挽山2301.3m、約3.7km)
　　　 苅安選点(苅安峠1952.1mピーク、約2.8km)
6/16：苅安造標(苅安峠)
　　 　別山選点(剣御前2776.8m、約7.7km)
6/17：倉ノ助１選点(黒部別山北峰2284.5m、約5.1km)
　　 　倉ノ助２選点(黒部別山南峰2300.5m、約2.0km)
　　　 木引谷造標(木挽山2301.3m、約10.7km)
6/18：倉ノ助３選点(黒部ダム北西1981.5mピーク、約8.2km)
6/20：温泉造標(有峰トンネル上1612.3mピーク、約11.8km)
6/21：出原選点/造標(鳶山西南1912.6mピーク、約1.0km)
　　　 西千人選点(仙人池東方2173.3mピーク、約15.3km)
6/22：西千人ノ高選点(坊主山2199.2m、約2.3km)
　　　 出ノ禿選点(白萩発電所北西1134.7mピーク、約12.1km)
　　　 松尾造標(松尾峠1971.7m、約11.5km)
6/23：坐良造標(鷲岳北西2533.3mピーク、約4.0km)
　　　 中山選点(中山1255.2m、約11.1km)
6/27：中山造標(中山1255.2m)
　　　 赤谷選点(赤谷尾根1563.4mピーク、約3.5km)
6/29：倉ノ助３造標(黒部ダム北西1981.5mピーク、約10.4km)
6/30：倉ノ助２造標(黒部別山南峰2300.5m、約2.7km)
　　　 倉ノ助１造標(黒部別山北峰2284.5m、約2.0km)
7/01：西千人ノ高造標(坊主山2199.2m、約4.3km)
　　　 奥大日選点/造標(奥大日岳2606.1m、約9.1km)
　　　 大横手選点(国見岳2620.9m、約3.1km)
7/02：大横手造標(国見岳2620.9m)
　　　 佐布谷選点(鍬崎山東方1569.0mピーク、約8.5km)
7/04：西千人造標(仙人池東方2173.3mピーク、約17.4km)
　　　 西大谷選点(西大谷山2086.9m、約7.1km)
7/05：西大谷造標(西大谷山2086.9m)
7/10：別山造標(剣御前2776.8m、約2.9km)
　　　 赤谷造標(赤谷尾根1563.4mピーク、約5.9km)
7/12：五越続選点/造標(雄山東方2681.2mピーク、約9.7km)
7/13：劔岳選点(劔岳2997.1m、約5.8km)
　　　 気和平造標(早月尾根1920mピーク、約2.9km)
7/15：大熊谷造標(大熊山1628.7m、約6km)
7/16：出ノ禿造標(白萩発電所北西1134.7mピーク、約3.9km)
7/22：佐布谷造標(鍬崎山東方1569.0mピーク、約14.0km)
7/24：称名滝造標(アルペンルート脇1612.2m、約4.3km)
7/30：出原観測(鳶山西南1912.6mピーク、約5.6km)
8/02：真川造標(早乙女岳西南西1779mピーク、約9.1km)
8/03：坐良観測(鷲岳北西2533.3mピーク、約9.3km)
8/07：木引谷観測(木挽山2301.3m、約3.7km)
8/13：松尾観測(松尾峠1971.7m、約7.2km)
8/19：苅安観測(苅安峠1952.1mピーク、約7.3km)
8/20：大横手観測(国見岳2620.9m、約5.3km)
8/29：五越続観測(雄山東方2681.2mピーク、約3.4km)
9/05：倉ノ助１観測(黒部別山北峰2284.5m、約6.1km)
　　　 倉ノ助２観測(黒部別山南峰2300.5m、約2km)
9/09：倉ノ助３観測(黒部ダム北西1981.5mピーク、約2.8km)
9/14：別山観測(剣御前2776.8m、約5.2km)
9/16：奥大日観測(奥大日岳2606.1m、約2.6km)
9/23：真川観測(早乙女岳西南西1779mピーク、約5.9km)
9/24；出ノ禿観測(白萩発電所北西1134.7mピーク、約6.6km)
(9/27：桑谷観測)<-他の測量官の受け持ち応援。
9/29：称名滝観測(アルペンルート脇1612.2m、約10.1km)
9/30：西千人ノ高観測(坊主山2199.2m、約14.9km)
10/04：赤谷観測(赤谷尾根1563.4mピーク、約5.8km)
　　　　中山観測(中山1255.2m、約3.5km)
10/06：気和平観測(早月尾根1920mピーク、約3.1km)
10/08：佐布谷観測(鍬崎山東方1569.0mピーク、約13.2km)
10/09：温泉観測(有峰トンネル上1612.3mピーク、約2.5km)
10/11：大熊谷観測(大熊山1628.7m、約9.7km)
10/14：西大谷観測(西大谷山2086.9m、約5.4km)

　5月中旬から10月中旬にかけて、大体立山を中心とした東西約14km、南北約16kmの範囲にある、計25点について、選点・造標・観測・埋標を実施し、隣の地区を担当した片上盛測量官の受け持ち4点の観測を実施されています。剣岳に選点の記録しかないのは、点の記の更新によるものです。当時は三等点にするために必要な資材を上げる事が出来ず、１ランク下の四等三角点として設置されたのが、柴崎測量官の設置後100年を記念して三等点に格上げされ、設置し直されています(一〜四等点はそれぞれ設置基準が違うのです)。そのため、点の記が更新されていて、最新版の点の記には、柴崎氏の名前は選点者としてしか残っていません。