まだ読み途中の小説もあったのに・・・
読まなきゃいけない試験対策本もあるのに・・・
出版間もないササモト本、見つけてしまったが最後、即購入して読んでしまいました。
『大岩壁』笹本稜平著。
主人公の立原は5年前にヒマラヤのナンガ・パルバットに挑戦し、登頂目前で敗退。その際に大事な友を失うも再度挑戦。そこに亡くなった友の弟、晴彦が現れ、再挑戦の際の登山パーティへの参加を望み・・・というプロローグにて物語は始まります。
かなり、「ガチ」でした。ガッツリ系の山岳小説だと思います。『大岩壁』のタイトルは伊達ではないな、と。極限状態での登山表現はさすが現代山岳小説第一人者の面目躍如といったところでしょうか。読んでいるだけで高所障害にあったような気分を味わえる絶妙な表現は読み手の空間を8000m級の峰々まで押し上げてくれるようです。
ただ正直なところ、期待していた笹本ワールドとは少し離れていたような感じがしました。笹本ワールドならではの深い人間ドラマと、刑事モノで培ったサスペンス要素が若干薄かったように思います。どちらかというと氏の作品はそういった側面が好きでしたので、読後の物足りなさは否めませんでした。読み手の嗜好にもよるのでしょうが、とにかくハラハラドキドキを楽しみたい方にとっては読みごたえ十分な一冊だと思います。
物語の中で、しばし「若者(あるいは"次の世代")との向き合い方」に触れることがあります。僕自身、先達の方々から見ればまだまだ若造なわけですが、主人公立原と同じ壮年期に身を置く者としては、青年期の晴彦との確執で奔走させられる姿にはとても共感できました。晴彦の行動は単に若気の至りでは済まされない常軌を逸したものではありましたが、それでも信じてやりたいと思う立原の姿は、「若者と向かい合うことを恐れるな」という筆者のメッセージが込められているような気がしてなりません。"若さ"をもって切り捨てるのは簡単なことですが、新しい芽も"若さ"から生まれてくるのもまた事実。仕事でも子育てでも、それは常々感じることです。
登場人物たちにはそれぞれの結末が待ち受けていますが、いずれも不幸な結末は一つもなかったと思います。(解釈は人それぞれなので、ネタバレにはならないと信じて・・・。)冗長なエピローグもなくさっぱりとした結びは、困難な登山での登頂の爽快感を表現しているようでもありました。
評価:★★★☆☆(星3つ。次回作への期待も込めて、今回はちょっと辛口で。)
・・・ふぅ、これでようやく試験勉強に本腰が入れられそうですw
(6/9追記)
立原の年齢設定は48歳だそうです。勘違いしていました。
壮年期という歳ではないですね。妙な落ち着きは年季によるものでしょうね。
shoytomoさんこんにちは〜!
笹本作品の新刊本なんですね。初耳!
shoytomoさんの辛口評価、どんな作品か気になります。
以前紹介されていた生還者も図書館で予約しましたが、まだ届きません。
最近、図書館で還るべき場所を再度借りてきたので、笹本ワールドに浸ろうかと思っています。
試験勉強、がんばって下さい。勉強しようと思う時に限って違う事をしたりしますよね。(笑)
kitausagiさん、おはようございます
たまたまフラッと寄った丸善で幸運(不運?w)にも見つけてしまいました
辛口と言っても、自分が勝手に期待していたものと違っていたというだけで、完成度としては非常に高いものだと思います
ストイックな山岳描写は還るべき場所と近いものがあるかもしれないですね。あちらの場合は「聖美あの時なぜ・・・?」のような半分謎解き的な要素はありましたが。
生還者は作品よりも著者への注目度が上がってますからね。。。
この『大岩壁』も『生還者』も、僕のでよければお貸ししますよー
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