(今回は短編集なので、敢えて内容にはほとんど触れません。感想だけ。)
真保裕一著。本作は短編『黒部の羆』『灰色の北壁』『雪の慰霊碑』のそれぞれ独立した三作が収録されています。映画化された『ホワイトアウト』や『アマルフィ』は有名ですが、原作を読んだことは無く、氏の作品を読むのは初めてです。
三作品いずれも山岳を舞台とした物語ですが、それぞれの展開の中では「男女関係」がかなり重要な鍵を握っています。最後の『雪の慰霊碑』に関して言えば、もはや恋愛小説といっても過言ではないかと。
いわゆる「男女間のドロドロ」があるわけではありませんが、登場人物たちの心情がとても色濃く描写されていて、ある意味(良くも悪くも)人間らしさが如実に表れていました。
時おり耳にする「山登りをする人に悪い人はいない」というコトバ。僕は少々気持ちの悪さを感じています。理想はそうでありたいけど、現実はそうもいかない。ゴミを拾わない山行は無いし、このヤマレコという限定的なコミュニティ内でさえマナーの悪さ嘆くレコや投稿が散見されます。
別にそれを嘆いているわけではなくて、誰であろうと、多かれ少なかれ、大なり小なり何かしらの罪を背負っていると思っています。良いとか悪いとかではなく、それが人間というものであり、善悪の両側面をもった未完成な生き物なのだと思います。(もちろん山でのマナーを軽視しているわけではありません。。。)
本書の登場人物たちも、皆それぞれの罪の意識に苦しみながらも、必死に足掻いてもがいて生き抜いていきます。その人間臭さこそが「人間賛歌」といえるものであり、魂の力強さと美しさを感じさせてくれるものでした。
最後に。人が幸せに生きることができるための条件は、「(誰かを)許せる」力を持っているかどうかではないかと思わずにはいられませんでした。その対象は他人でもあり、自分自身でもあり。作品中で語られているキーワードではありませんが、なんとなくそんな気がしました。そして、僕もまだまだハンパ者です。
評価:★★★★☆(星4つ。3.5くらいだけど、オマケで。)
P.S.
ここ最近、山岳系小説以外でもハラハラドキドキなミステリーが多かったので、なんとなく疲れました。もう何度目になるかわかりませんが、また『春を背負って(原作)』を読んでマッタリと口直し的に癒されようかな。。。
shoytomoさんこんにちは!
毎度ながらshoytomoさんのブックレビューに感動してしまいます。
私は今まで本はたくさん読んでいますが、面白かったで終わらせていた感じです。
作者の意図を考え、自分が何をどう感じたかが重要ですね。
子供の頃から読書感想文は苦手でした。
本は読んでいるので、漢字、熟語、言葉は得意なんですけどね。漢検2級持っています(笑)
kitausagiさん、こんにちは
コメントありがとうございます。
僕も読書感想文は大の苦手でしたよ。
まず何をどう書いて良いのかがサッパリわからなくて、
ストーリーのハイライトを書くだけのありがちなものしか書けませんでしたw
あるとき素晴らしい感想文に出会い、結果本を多く読むようになったというきっかけから、少しずつこういった感想文(レビュー)を書けるようになったような気がします。
自分の感想文をキッカケに、他の人にも読んでもらって共感できればいいなという気持ちが
変化の要因かもしれません。
でもそういった文章を書こうとした時、ストーリーを丸々書いてネタバレするわけにも行かないですし、かといって「読んでみたい!」と奮起させるスパイスをつけなければ手に取ってもらえない・・・難しいですねぇ。
そういえば・・・
すみません、まったく気づいていなかったのですが、フォローありがとうございますm(_ _)m
しょいともさん
おはようございます。(^-^)/
どうしても読みたくなるような
レビューですよ。(^o^)
いつも上手いなあ。
仰る通り、人を「許せる」かどうか。
大きな鍵ですね。
そしてそれは自分の心の中にある。
好き嫌いがはっきりしている。
未だ許せない人もいる。
私もまた、ハンパ者ですが。
sionさん、こんにちは。
いつもありがとうございます^^
レビュー対象は他人が執筆した本ですが、自分が書いたレビューにお褒めのお言葉を頂けると、とてもうれしいです。
それが目的ではありませんが、作家さんの喜びの一片を感じることはできたかな?(笑)
最期を迎えるその瞬間まで、人は未完のままだと思います。
(なんだか表現が宗教じみてきたなぁw)
が、それでも必死に生きる姿に、人の美しさというものが浮き上がってくるのでしょうね。
お互いハンパ者、大いに"人間臭く"行きましょう。
shoytomoさん、こんにちは
私の場合、レビューを読んで本を読んだ気になってしまう ので、読んだ本の数は少ないのですが、本屋に行く時間が少ない身としてはレビューは助かります!
私の場合、そもそも文章を書くのが苦手のうえ、本をきちんと理解していないような気がして、このようにレビューを書くのは、おそらく、一生をかけてもできないかと思いますが、書けるようになりたいな!とあこがれてしまいます。
(友人でレビューを書いてネット上に投稿している方がいるので、あこがれ!)
私も、このところ、いわゆる「自己啓発」本をよんでいたので、久しぶりに「春を背負って」を読んでみたくなりました。
hyouchanさん、こんにちは!
>レビューを読んで本を読んだ気になってしまう
あー、わかります、ソレ^^;
買おうと思った本をamazonとかで入手しようとするとついレビューを読んでしまい、そのレビューに影響されてブレたりすることもあります。。。
社会人になって万年筆にハマってしまって以来、手紙をよく書くようになりました。
(字は相変わらず汚いのですが・・・)
手紙を喜んでもらえることが嬉しくて、味をしめてしまいました。
僕もまだまだ文章を書くのは苦手ですが、得手不得手以前に、書くことが少しだけ好きになったんだと思います。
「感想文なんだから、正解は無い!」くらいの軽い気持ちで書いてます^^
僕の場合は、(自己啓発系含む)実用書→技術系専門書→文芸書→実用書・・・というサイクルです。同時に複数読むこともありますが。あ、でもその間にちょくちょく「ヤマ雑誌」も入ってますね(笑)
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