「この世界の片隅に」

このヤマレコの日記、山のことだけでなくてもいいんですよね？（笑）では今日は全く関係ない映画の話で。

昨日公開されたばかりの「この世界の片隅に」。以前から気になっていたので早く観に行きたいと思っていましたが、タイミングよく初日のレイトショーに滑り込むことが出来ました。映画は好きなのでタマに観に行きますが、アニメ作品を劇場で観るのはもう10年以上ぶりです。

噂に違わぬ、素晴らしい作品でした。戦前から戦中、戦後の呉を舞台に、主人公のすずとその家族の普通すぎる日常生活、そして忍び寄る戦争の影と過酷な現実がとてもリアルに描かれていました。細部までディティールにこだわり、時代背景と共に当時の市井の人々のつつましい暮らしぶりが大変よく分かるものでもありました。

見終てまず感じたこと。それは私の場合、感動の涙ではなく怒りでした。ささやかな幸せを追い求めて普通に暮らし、生きている人々の上にも何故、爆弾という名のあまりに理不尽すぎる暴力は降り注いでしまうのだろうか。こうまでも絶対的な「悪」である戦争はいつの世でも何故無くならないのか。目をそむけたくなるような運命に、人はどう抗って生きてゆけばいいのか・・・。そんなことを想いながら、感情が揺さぶられっぱなしでした。

そして何気ない「当たり前」がどれほど愛おしく、大切なものなのか。しみじみと考えさせられました。

主人公すずは天然で抜けているところがあるけれど常に優しさに溢れ、明るく逞しくこの世界の片隅に生きた女性です。そんな彼女の声を能年玲奈さんが演じています。これがもうドンピシャのハマリ役。あまちゃんも他の出演作も私はあまり見た事がありませんでしたが、改めて良い女優さんですね。なんだかよく分からない大人の事情で現在彼女は不遇な扱いを受けているようですが、きっとこの映画は大ヒットすることでしょうし、また第一線で活躍する姿を見たいものです。

ぜひ多くの人に（特に若い世代の人たちに）この作品を観て頂き、何かを感じ取って欲しいと願っています。

コメント

kaz

RE: 「この世界の片隅に」
あたり前の日常・・・いつも通りの生活・・・変わらぬ景色。
普段何気なくテレビで見る、戦争や難民のニュースなどを、どれ程自分が真剣に向きあっているのだろうかと、改めて考えてみると、実は現実感は余り無くテレビの中の遠い出来事の様にしか思っていないかも知れません。
現代の平和な環境の中で生活をしていると、辛く厳しい現実からは無意識に目を反らしているのかも？。
今回ryoさんが観られた映画を私は知りませんでしたが、第二次世界大戦を描いたアニメ映画では、「火垂るの墓」を見て私は心に刺さる思いがありました。
やはり戦争は「悪」であり、国を越えた政治による被害者は罪の無い人々、中でも子供達なのです。
最近の世界はテロに脅える欧米や、大国の進出や北の核に危機を感じるアジア諸国等、日本もいよいよ人事では無くなって来たのではないでしょうか。
当たり前が当たり前で無くなる時に、いったい私達に何が出来るのか・・・。
改めて平和とは、先人達の犠牲と努力によって築かれた事に感謝しなければならないと思いました。
ryoさんの心の優しさが伝わる日記でした！。

りょう

RE: 「この世界の片隅に」
kazさん、こんばんは。コメントありがとうございます。確かに私たちが本当に日頃向き合うべき諸々の問題というものは、まず身近な日常の周辺で起こっていることや自分が直接関わっていることが最優先であり、世界でどこか遠くの方で起きている戦争やテロといったことに現実味が薄くなってしまうのは仕方のないことかもしれませんよね。この映画で描かれているのもまさにその部分で、主人公もその家族もごく普通でどこにでもいるような人々なのです。しかしそうやって普通の幸せを求めて地道に暮らしている人にも、自分の力でどうすることも出来ない理不尽な現実が待っていたりもします。人間同士が起こしてしまうそういった戦争の愚かさや命の儚さといったものをとても綺麗なアニメ映像と素晴らしいストーリーに内包して見せてくれたこの映画には本当に感謝でした。火垂るの墓や裸足のゲンよりも重すぎず、時に笑えるシーンなんかもありながらテンポよく話が進んでゆきます。いつか（先々のTVででも）ご覧になる機会があれば是非お勧めしますよ。

navecat

RE: 「この世界の片隅に」
ryo555さん、こんばんは。

私の場合、母親が広島で勤労動員のなか
1945年8月6日8:15、被爆しています。

爆心から1.6km、かろうじて工場の壁1枚が強烈な
爆風から命を守ってくれたと言ってました。

もちろん無傷ではなくガラスの破片がそこら中に
刺さり流血していたらしいです。
その後、救護施設にたどり着き気絶・・・。

ある意味、戦中の日常の中でいつものようにして
いたら一発の爆弾で目にできる何もかもが変わって
しまったことになります。

自分はこの映画を実際にみていないのですが、
書かれていらっしゃいますように多くの、特に
若い世代の方にみてもらって何かを感じ取って
もらいたいです。

今年は5月27日(金)にオバマ大統領が僅かな時間
ですが広島を訪問されました。このことなども次
に繋がって欲しいなと願っています。

りょう

RE: 「この世界の片隅に」
navecatさん、こんばんは。コメントありがとうございます。そうですか・・・お母さま、被曝されていたのですね。工場内で命が助かり本当に何よりでしたが、その後の長い人生においてもご苦労は計り知れないものがあったのではないでしょうか。

この作品はおそらくお母さまもそうであられたように、何処にでもいらっしゃる普通の日常、普通の生活を送ってこられた方が時代のうねりと共に戦火の渦に巻き込まれてゆく話が描かれています。明らかな反戦映画よりもむしろその方が戦争の恐ろしさを物語っており、今の若い世代の人々にも伝わりやすい素晴らしい内容になっているのではないかと思っています。