また、少々お説教臭いことを書いてしまうのをお許し願いたい。レコにも挙げたが、先日の金剛山への山行で土砂降りの雨に見舞われ、そのときに感じたというか考えたことである。
その日の天気予報は、晴れとはいかないまでも終日くもりで、雨は降らないというものだった。それを見て、梅雨の合間を縫って出かけることにした。山登り自体は順調で、もうすぐ山頂というところまで問題なく到達したのだが、突然雨が降り出し、ついには土砂降りとなってしまった。
幸いにも山頂はすぐそこだったので、とりあえず折り畳み傘でしのいで山頂売店に駆け込んだところ、同じ境遇の人が何人もいらっしゃった。あまりの降り方に皆たじろぎ、休憩がてら雨宿りされているのだった。
山頂は電波が入ったので、スマホで雨雲レーダーを見てみると、金剛山はいまは赤だけれど、あと15分程度で雨は東へ去ってやむと示していた。それぐらいだったら待とうと思い、レインウェア上下を着用して待機していた。ところが、15分経っても20分経っても雨はやみそうにない。
おかしいなと思って再度雨雲レーダーを見たら、さっきと同じような状態でほとんど何の変化もない。どうもコンピュータ予想とは異なり、雨雲は移動しているのではなく、金剛山そのもので発生しているようで、これではいつまで待っても雨は上がらない理屈であった。
結局、私は小降りになったときを見計らって出発し、そのまま下山したのだが、そのとき内心驚いていたのは、ほかの人たちの雨に対する備えであった。上下セパレートのレインウェアを持っていたのは、なんと私だけだったのだ。一番多かったのは「折り畳み傘を持っている」という人たちだった。もっとも手軽な雨対策とはいえるだろうが、はたして、山でそれだけで十分かどうか。
その次は「雨合羽を持っている」「レインウェアの上だけ持っている」という人たちで、一応雨に備えたアイテムを持ってきていることにはなるが、上しかないというのが引っかかる。そのほかの人は「ヤッケのフードでしのぐ」という感じで、これらの人たちは傘があれば(そのときは)何とかなりそうだったが、なければかなり苦しいことになる。さらには傘もなければヤッケもなく、シャツ1枚だけで登ってきたという猛者もいた。
偉そうなことをいって恐縮だが、正直、山に対する感覚がだいぶん緩いと思った。そもそも、いまは梅雨なのだ。にもかかわらず、レインウェアを持たずに山に入るというのはどういうことなんだろうと困惑した。金剛山くらいならレインウェアなど持っていかなくても大丈夫と考えているのだろうか。それともレインウェア自体を持っていないのだろうか。シャツ1枚の人は家にはレインウェアがあるというのだ。どうしてそれを持ってこないのか。しきりに「寒い、寒い」と訴えていたご本人も「後悔している。甘く考えていた」とおっしゃっていたが、その通りというほかない。
私の感覚では山に登る以上、上下セパレートのレインウェアは、持っていればなおよいというオプション品ではなく、必ず持参すべき必携品である(加えて、できれば防水透湿素材のものが望ましい)。これがあるかないかでは命に関わることがある重要装備だと思う。山の天気は急変する場合があるのは誰でも知っているはずである(現に今回そうなった)。また、山の気温は平地とは違う。山へ行くのならばレインウェアは絶対に持参すべき、いってみれば免許証のようなものである。私は二上山でも必ずレインウェアを持っていく。
レインウェアはただ雨をしのぐだけではない。体温維持に重要なアイテムでもある。山で雨に降られたときに大きな問題となるのは体温が奪われることである。雨に濡れて体温がどんどん奪われると低体温症になる恐れがある。これは疲労凍死に直結する恐ろしい状態だ。世界的な登山家が横尾と涸沢のあいだのどうということのないところで疲労凍死した事例もある。
レインウェアを上下着用すれば、相当な雨降りでも問題なく歩くことができる。道が水浸しになったりはするが、ふつうの山歩きとほとんど変わらない歩き方が可能である。当然、無事に下山できる。しかし、上しかない、傘しかない、となると、状況によってはふつうに歩くことが難しくなる。体温が奪われるうえ、疲労が増し、遭難や事故のリスクが急上昇する。レインウェアは命の免許証なのだ。
ヤマレコユーザーのみなさんは、よもやレインウェアを持たずに山へ行っているということはないと思うが、万が一、持たずに行っているのであれば、ぜひレインウェア持参に改めてもらいたいと願う。場合によっては自分の命の問題となりうるし、山で足止めされて帰宅できなくなれば捜索騒ぎとなって家族や周りの人に心配と迷惑をかける可能性もある。それらすべてがレインウェアを持っているという、ただそれだけのことで防げるのだから。
ついでにもう一つ。雨対策のアイテムとしてザックカバーもおすすめしておきたい。傘があってもザックがびしょ濡れになると、なかのものがずぶ濡れになってしまう。案外忘れがちだけれど、有用なアイテムである。最近ではザックにザックカバーが付いているものもあるので、そういうザックを入手すれば一石二鳥だ。
レインウエアを持たずに山へ入るのは可か?不可か?
時期・山域・山行スタイルによると思いますけど。
私の普段の山行スタイルは「トレイルラン」がほとんどです。
そのトレランでもアルプス・八ヶ岳・富士山・大雪山系などの場合は必ずレインウエア上下を持っていきます。
が、いわゆる低山の場合はほとんど持っていきません。降水確率が高い場合で、予定のコースが長い時にはレインウエア上のみ持ちますが。
夏場だと雨が降っている中を短パンTシャツで山入ったりします。シャワーランで涼しいので快適です。この場合は登山道の水捌けが良いよく知った山域のみで、濡れて困る装備は防水パックに入れていきます。下山後の着換え等をクルマか駅のコインロッカーに用意しておきます。
山登るなら、いかなる時もレインウエア上下を持って行かなければ!ってコトもないと思いますけど。
コメントありがとうございます。
この日記はいわゆる「登山」のことをもっぱら念頭に置いて書いてしまいましたので、「トレラン」をする人が読んだら違和感があるのかもしれませんね。
トレランの常識がどうなっているか私は知らないのですが、たしかにダーさんがおっしゃるようなスタイルのトレランの人が当日もいらっしゃいました。雨の降るなか傘もささず、雨具も着用せず、走っている人を2人見かけました。あれはシャワーランというのですね。
いまの季節の金剛山くらいなら雨が降ったらシャワーランで行くというのは、トレランの人にとってはとくに異常なことでも非常識なことでもないのかもしれませんね。それならレインウェアを持たずに山へ入るというのもおかしなことではなく、実際ふつうに行われている、ということのようですね。
上記のように私はトレランの世界のことを知りません。なので、そういうものだといわれたらそれまでというほかありません。しかし、個人的にはトレランであっても登山であっても、金剛山であっても富士山であっても、レインウェアは持参すべきだと思います。トレランの人でも山のなかで突然不調になったり、足をくじいて動けなくなってしまったり、滑落してしまうといったことは絶対ないとはいい切れません。
誰もが手軽に登っている里山であっても、遭難や事故と完全に無縁ということはないでしょう。レスキューとしての意味合いにおいてもレインウェアは持っていったほうが無難であろうと私は考えます。
もっとも、繰り返しになりますが、私はトレランのことをまったく知りませんので、ダーさんからすれば相変わらずトンチンカンなことをいってると思われるだけかもしれません。ただ、トレランをしない私の個人的見解は上記のようなものだというのみです。
ご承知のことと思いますが、ザックカバーをしていても、ザックと背中の間は無防備ですから、どうしてもザックには浸水してしまいます。やはり濡れたら困るものは、ザックカバー以外にそれぞれにきちんとした防水対策が必要だと思って対策しております。
あくまで個人的見解ですが、安全のためのきちんとした装備を持たない人たちには、残念ながらどんなに説いても通じないだろうと思っています。
そうなっては大変ですが、これだけ情報があふれる時代にあっても、それを役立てることができずに我が身に危難が及ばなければ理解できない方が存在するのは確かだと思います。かつての自分がそうだったので。
コメントありがとうございます。
たしかに、ザックカバーを付けていても万全には防水できませんね。おっしゃるように、濡れたら困るものはビニール袋に入れるなど防水対策をしてからザックに収納したほうがいいですね。日記はちょっと言葉足らずでした。いいところをご指摘くださりありがとうございます。
> あくまで個人的見解ですが、安全のためのきちんとした装備を持たない人たちには、残念ながら
> どんなに説いても通じないだろうと思っています。
まあ、たしかにそうかもしれませんね。金剛山であまりにも驚いてしまったので(個人的には、ですが)、つい上のような日記を書いてしまいました。日記を書くことで多少でも啓発的な作用が生じてくれればと願ってのことでもあったのですが、かえって反発を呼んだりしては、とんだドンキホーテですね。難しいもんですね。。。
え、どこがですか? 全然失礼とは思わなかったですよ。むしろ、日記の「穴」を的確にご指摘賜わり、ありがたく思っております。本心です。
私がそのパーティのひとりなら同行者に迷惑をかけるような装備品の人とは今後行くのやめます。自分が装備を持ってないことでみんなが困ったってどうでもいいって思ってるようなものですもの。
コメントありがとうございます。
日記のなかでシャツ1枚で登ってこられた人について少し触れていますが、じつはその人は2人連れでした。傘もない、ヤッケも持っていないということだったので、よほど折り畳み傘を提供しようかと思ったのですが、同行の人がおられたので、まあ何とかなるだろうと、結局、傘は提供しませんでした。
お仲間がいらっしゃったので、おそらく無事下山されていると思われますが、もしかしたら、お二人のあいだで傘を貸してあげるとかいったことがあったかもしれません。
借りたほうは助かりますが、たしかに、その分相手には迷惑をかけることになりますね。山では持ちつ持たれつというところがあり、絶対相手に迷惑をかけてはいけないとまでは求められませんが、ほんの少しの心がけで防ぐことができるのであれば、努めるようにしたほうがいいですよね。
たしかに、そういうことはありえそうですね、いわれてハッとしました。
100回のうち、たとえ99回大丈夫だったとしても、残りの1回で事故や遭難に見舞われて重篤なことになったらアウトですもんね。きっと、それが油断というものなのでしょう。
深い洞察に感服しました。
昨日は予想外の通り雨があったみたいですね、
備えあれば憂いなし、、
なんですが、6月の蒸し暑い金剛山にレインウエア上下の強制はちょいいき過ぎたと思います。
ウェアーの中 汗で濡れませんでしたか?
着たところであまり変わらなかったと思います。
杉林のルート 私ならコンビニカッパと折りたたみ傘でさっさと下ります。
登る山の季節とレベルに合う装備選び
私は体力がないからザックはコンパクトな方が楽です。
お初の方なのに どあつかましい意見してしまいすみませんでした。
コメントありがとうございます。
日記の文章はつい強い調子になってしまったかもしれず、「強制」という印象を与えてしまったようですね。もっとも、私が登山者全員に強制したところで何の効力も発揮しないのですが・・・(苦笑)。
私のレインウェアは透湿防水素材ですので、ウェアのなかが汗で蒸れるということはなかったです。じつは、それにも驚きました。今回持参したウェアは最近購入したもので、しっかり防水してくれながら、体の蒸れはちゃんと放出してくれ、いまの素材はほんとうに進歩したなぁと感心することしきりでした。ちなみにスペックは、耐水圧10000mm以上、透湿度10000gとなってます。東レが開発した素材だそうで、もしかしたらゴアテックス以上の性能かもしれません。
たしかにおっしゃるように山のレベルと季節などに合わせて的確に装備を持参できればいいのですが、昨今のように「過去例を見ない天候」とやらがポツポツ現れてくるようになると、やはりレインウェアを持って行ったほうがいいんじゃないかと思います。ちょっとばかし重くなりますけどね。
少し気になったのでコメントします
大雨に遭われたようで、大変だったと思います
しかし、金剛山のことですよね
状況を直接見ていないのでなんとも言えませんが、金剛山は地元密着の山ですので、少し特殊かもしれません
千早本道から登る地元の方にとっても、毎日の散歩であり、登山ではありません。
なんせ、一万回登っている方もいるぐらいで、500回登っている方はザラです(笑)
毎日登る方は、リュックも持たず、傘と団扇だけの方も多く見られます
まぁ、金剛山はそんな一面もある山なのです
コメントありがとうございます。
たしかに、金剛山はそういう山ですね。回数登山を奨励していて、ちょっと特殊で他の山とは事情の異なる面が事実としてありますよね。それは私にもよくわかります。
ただ、そういう山であっても、1000メートルを超えている山でもあるのも事実なわけで、それをどう捉えるかということになりそうですね。
いま、「私にもわかります」と簡単にいってしまいましたが、ほんとうはわからないところがあるのだと思います。私だったら、と思うのは、所詮は地元民ではないからなのでしょう。かくいう私も地元民だったら、手ぶらで登っているのかもしれませんね。大きなトラブルが起きないことを願うばかりです。
それにしても先日の雨は凄まじかったんですよ・・・(笑)。
もっと言えば、紙地図とかコンパスとかも・・・山始めた時は持ってたなあw
コメントありがとうございます。
山への装備品をどういうものにするかというのは、ケースや人によってどうやら想像以上に差があるみたいですね。面白いといったら叱られますが、今回みなさんから寄せられたコメントを拝読してそう感じています。
kc0930さんは相当な手練れでいらっしゃるようで、何気に深くお考えのうえで装備品を決めていらっしゃるご様子ですね。レインウェアは上だけといいつつ、パンツはしっかり撥水機能のものを選んでおられたりとか(つまり重複するものを省いておられるわけですね)。
みんながkc0930さんみたいであれば、遭難や事故はもっと減ることでしょう。
しかし現実はちょっと事情が違うみたいですね。あまり深く考えずに何も持ってこず、いざとなったときに困るというパターンが多いように見受けました。
ま、困るぐらいで済んだらいいですが、遭難というレベルまでいってしまってはシャレになりませんから、おっしゃるように、教科書通りが無難だと思います。
個人的にはツェルトもレインウェア(耐圧透湿性があるキチンとしたもの、簡易な合羽などの選択も含めて)も、どのような場合でも必携と言うのは少し違うかな?と考えています。
私自身は、踏破時間や標高、エスケープ可能かなどで装備を決めています。ビビりなのでツェルトは別としてレインウェアは持っていきますが。
お書きの通り、最悪な想定を見越した装備に越したことはありません。ただ取捨選択を迫られるのも事実。2時間程度で下山可能で暖かい時期且つ1000m程度なら、着替えとレスキューシートくらいでも、重篤な事態になる可能性が低いと思います。
ただ、初心者ほど装備は充実させるに越したことはなく、色々経験した後に各自取捨選択するで良いのでは?とも考えています。
逆にそうすると、ちょっと山に登ってみようかな?という人には費用的負担が大きく、ハードル上げ過ぎかとも感じます。
私は自分なりに試行錯誤したファーストエイド、レスキューシート、非常食、非常用水道水1リットル、上半身とパンツ靴下の着替えはどんな山でも必携してます。
ちなみに私が登山始めた昭和後期の六甲や金剛山では、ビニールペラペラの合羽やポンチョが普通でした。
コメントありがとうございます。
ひろぽんさんのコメントを拝読して、ご自分なりの試行錯誤の末、ご自分なりの基準を構築され、よく練られたお考えを確立されているのだなと感服いたしました。
「自己責任」という言葉がさまざまなシーンで語られますが、登山装備をどういうものにするかということも、最終的にはまさに自己責任ということなのでしょうね。
ただし、万が一、遭難や事故に至ってしまい、他者の手を煩わせることになった場合は自己責任というだけでは済まないケースもあり得ますから、そういう場合も想定したうえで問われる自己責任ということなのだろうと思います。
また、ご指摘のように、登山装備は特殊な素材などでつくられていることもあるので、必ずしも安価とは限りませんよね。たしかに、ビギナーの人のほうが経済的負担が大きくなるという矛盾をはらんでいそうですね。そのため、お金を節約したいというビギナーが不十分な装備になる傾向がもしあるとしたら、それはちょっと怖い状況ですね。
今回、この日記がきっかけとなって、いろんな方からいろんなご意見をいただいていますが、改めてそれぞれの人にとっての登山装備のあり方を見直すきっかけに、もし、少しでもなっているのならば、書いた人間としては多少なりとも書いた意味があったかなと思っています。
ちなみに、私もビニールペラペラのポンチョで登山を始めたクチです(笑)。
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