最近、当時の日記が出てきたのでほぼそのまま記す。最初の沢登りは1971年7月。18歳の大学1年生だった。当時はマイナーだった春岳沢を選んだのは「丹沢の山と谷」を見て、大きな滝の直登などもなく安全そうだったのと、帰路も含めてアクセスが至便だったからである。
春岳沢遡行
蓑毛橋から柏木林道を登る。ゆるい登りで、しかも道幅は広い。左にこれから登る春岳沢を見ながらである。しばらく行くと石の常夜灯が見え、大山に行く道が分かれる。やがて前方に大きな堰堤が見えてきて、道はながれを超えて右岸に移っている。ここから少し左へ登ると春岳沢に行く道が右に分かれる。この道は想像していたよりずっと悪く、所々崩れていたり、ボサがひどかったりしている。雨後なのでたちまち体中びしょ濡れになってしまい、こんなことでは遡行ができるかどうかわからない。この道はかなり長く感じた。やがて道は流れに降りる。やっと沢に降りられてホッとする。小さな滝を越えていくと堰堤があった。案内書ではこの上に道が下りることになっていたのだが、仕方がないので左隅を木に掴まって登った。堰堤の上に出て上流を眺めると、真前に尾根があり、その左右に谷が深く切れ込んでいる。左がモミジ谷、右が春岳沢である。水量はかなりあるが木に覆われて見えない。ここでキャラメルとチョコレートを食べる。
さあ、遡行開始だ。前方には割合大きな尾根が見える。堰堤を下って沢に入る。木が左右から覆いかぶさるようで、あまりいい気分ではない。しばらくは小さな滝が続く。どこでも登れるような滝ばかりだが、水量が多くて滑りやすい。沢は岩がゴロゴロしている。その上を歩いていくのだからどうしてもピョンピョン飛ぶようになってしまう。何度か転びそうになった。
しばらく歩いていくと急に前方からドドドドという水の音が聞こえてきた。びっくりして右手の草付に駆け上がったが別に何ともなかった。考えてみればこんな小さな、上にダムもない沢で急に増水するはずがない。しばらく歩いて滝の音だと分かった。ゆるやかな三段の滝である。さてはこれが「三段のナメ」だなと思って登る。上にはまた小さな滝がある。どうも「三段のナメ」ではなかったらしい。三段のナメの上にはもう滝はないはずである。
なおも歩いて行くうちに雨が上がったようだ。しかし水量は相変わらず多い。小滝を越えていくと、どうやら本物らしい「三段のナメ」に出会った。これも左から楽に登る。上には5mほどの滝がある。これは少し登りにくそうだ。水流の際を登ろうとしたが、滑りやすくてとてもダメ。右の岩の上方の岩棚に手を掛けてぶら下がって登る。いかにも見っともない登り方だと思う。その上にはしばらくもう滝はなかった。上着も帽子もびしょ濡れで雨が降っているのかどうかよくわからない。また小さな滝が見えてきたので登ると、そこに取水用の樋があり幅1mくらいの道がそこから山腹につけられている。ここで休憩をした。
沢は左右に分かれ、右の沢には水があり左にはない。そこで右の沢を覗いてみると、水は岩の間から出ているようである。左の沢は涸れているが広いし、空缶が転がっている。左の沢を登る。すぐ沢は右に折れる。しばらく行くと左側は小さな岩壁になり正面に涸棚がある。高さは5mくらい。岩が硬く、傾斜も緩いので快適である。また雨が降り出した。この上は沢か棚かわからないくらい急傾斜で崩れやすい岩である。所々木に掴まって登る。上には稜線らしきものが見え、もうすぐだと思う。沢にワラジが片方落ちていて、正しいルートだと確信を持つ。やがて赤土の崩土に出た。上に向かっていく本か踏みあとがある。左端のについて登る。途中にある草付に入って上の方をみるとスズタケの叢が上の方にあり、そこまでまた踏みあとがある。またスズタケの中にもはっきりした踏みあとが見える。滑りやすい崩土を登り終わってスズタケの中に入ると踏みあとははっきりとついている。しばらく登るとぽっかり開けた小平地に出た。大山表参道の指導表があり、富士見台と書いてあった。(終わり)
52年後のコメント
・帰路はそのまま表参道をケーブル駅に降ったんだと思うが覚えていない。
・靴は前回日記に書いたキャラバンデラックス。
・雨具はビニールポンチョを持っていたが不使用。
・ズボンはニッカーズボン、渋谷にあったみなみ(後の山洋スポーツ)という登山用具店で購入、店主の南博人氏に接客してもらい密かに大感激。新田次郎の小説で衝立岩正面壁の初登攀者であることを知っていた。
・髭僧の滝がガイドブックの遡行図にもないのは面白い。
・休憩した水源地が最近の終了点だと思う。私はこれ以後入ってないが、youtube動画や山レコ記録では大体そのようだ。
ヒルの話は1971年当時聞いたこともなかったですね。
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