「まほろ駅前多田便利軒」「神去なあなあ日常」「木暮荘物語」「あの家に暮らす四人の女」「仏果を得ず」「愛なき世界」などをここ一か月ほどで読んだ。これまでは「舟を編む」の一編だけだで、まあまあかなと思っていたのだが、いやいやちょっとはまりました。
三浦さんは、「まほろ駅前…」で直木賞をとっているけど、いわゆる純文学系ではなくエンタメ系の作家、小説の中に様々なユーモアやジョークがあふれていて、読んでいて楽しくなる作風。少女マンガ的な突っ込みが多くて、ちょっとドタバタ風なので好き嫌いが分かれるところでもあると思うけど、ツボにくるひとは大ファンになりそう。たくさん映画化されているのもわかる気がする。作品がどれも映像的なんですね。(「まほろ駅前」と「舟を編む」は松田龍平が主演)
この人の作品群は幾つかのパターンに分けられて、謎のメゾン一刻系(木暮荘、あの家)、ほのぼの専門職系(舟を編む、愛のない世界、仏果を得ず)、シリーズもの(神去り、まほろ駅前)など、まあ読みだすとわかるが、懐の深い作家だなあということ。このまま直木賞路線(エンタメ系)を進むのだろうが、きっと大家になるだろう(もうなってるかもしれないが、まだ四十代半ばなので)。
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宮本輝の大河小説「流転の海」は全9冊。まだ二冊しか読み終わっていないが、とりあえず焼け跡闇市編と四国愛媛への帰国編で、一休み。宮本自身が40年かけて書いてきたものなので、こちらもちょっとゆっくり。
日本の戦後史と一人の大阪商人の骨太の人生を重ねながら描いたもの。決して褒められたものでもない昔気質の少しやくざな男の生き方は、その芯にある男のやさしさと人間への共感が、読者を惹きつける。宮本輝が「国民作家」と呼ばれるようになった大きな作品であろう。
「優駿」「青が散る」「泥の河」「三十光年の星たち」などなど、心清く正しい小説が多い。
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