(はじめに)
この「日本の山々の地質」連載ですが、第2部の「北アルプス」、第3部の「中央アルプス」に続き、この第4部では、「南アルプス」の説明に入ります。
ここで改めて言うまでもなく「南アルプス」は、北アルプス、中央アルプスと並んで「日本アルプス」の一角を占める大きな山脈(山地)です。
まずこの4-1章では、その概要、および地形的区分について説明します。
ここで改めて言うまでもなく「南アルプス」は、北アルプス、中央アルプスと並んで「日本アルプス」の一角を占める大きな山脈(山地)です。
まずこの4-1章では、その概要、および地形的区分について説明します。
1)南アルプスの概要
「南アルプス」は、地理学上は、「赤石山地」(文献1)あるいは「赤石山脈」と呼ばれています。その意味する範囲は、両方ともほぼ同じで、北端は諏訪湖の南側から始まり、南のほうへと末広がりに広がる、くさび型の山地を形成しています(文献3)。
その東側の境界は、JR中央本線沿いに長野県 諏訪地方から山梨県 韮崎市、さらに甲府盆地の西縁を区切りとして南へと走向を変え、JR身延線沿い(=富士川沿い)の細い谷を通り、富士川河口付近で、太平洋(駿河湾)に至ります。
また、西側の境界は、長野県 諏訪地方から、JR飯田線沿いに、伊那盆地の東縁を境として南下しています。その南側は低い山地に遷移するため、明確な境界を定めるのは難しいですが、天竜川に沿って、浜松市付近で、浜松平野に至ります。
南アルプスの南側は、特に境界というものはなく、中核部から南へと山々は徐々に高度を落とし、最後は丘陵となり、浜松平野、静岡平野に続いています。
南アルプスは、南北には約130km、東西では最大幅の部分で、約60kmもある、北アルプスと同じかやや広い、大きな山地であるとともに、日本第二位の標高の北岳(3193m)を始め、3000m以上の山が、数え方にもよりますが 13座(文献2)、また(深田)日本百名山が10座あり、北アルプスに匹敵する大きい山地です。
その東側の境界は、JR中央本線沿いに長野県 諏訪地方から山梨県 韮崎市、さらに甲府盆地の西縁を区切りとして南へと走向を変え、JR身延線沿い(=富士川沿い)の細い谷を通り、富士川河口付近で、太平洋(駿河湾)に至ります。
また、西側の境界は、長野県 諏訪地方から、JR飯田線沿いに、伊那盆地の東縁を境として南下しています。その南側は低い山地に遷移するため、明確な境界を定めるのは難しいですが、天竜川に沿って、浜松市付近で、浜松平野に至ります。
南アルプスの南側は、特に境界というものはなく、中核部から南へと山々は徐々に高度を落とし、最後は丘陵となり、浜松平野、静岡平野に続いています。
南アルプスは、南北には約130km、東西では最大幅の部分で、約60kmもある、北アルプスと同じかやや広い、大きな山地であるとともに、日本第二位の標高の北岳(3193m)を始め、3000m以上の山が、数え方にもよりますが 13座(文献2)、また(深田)日本百名山が10座あり、北アルプスに匹敵する大きい山地です。
2)南アルプスの各山脈の区分
「南アルプス」は細かく見ると、複数の山列(山脈)からできている複雑な地形構成をしています。
主なものだけでも4つの山列(山脈)が区分できます(文献2)。
まず1つ目は、甲斐駒ヶ岳〜鳳凰三山〜夜叉神峠を通り、身延山あたりまで続く山列です。この山列全体の、地理学的な公式の名称はないようですが、(文献2)では「甲斐駒山脈」と書いてあるので、ここでもそう呼ぶことにします。
なお、鳳凰三山より南側の部分、甲府盆地の西側に面する部分は、「巨摩(こま)山地」とも呼ばれています。この地区の代表的な山は櫛形山です。巨摩山地は、地質的にも、南アルプス主要部とは異なっており、異なる地史を持っていると考えられています。また身延山およびその南へ続く低めの山々を総称して、地理院地図では「身延山地」という名前がついています。
2つ目は、南アルプス最高峰の「北岳」から始まり、間ノ岳、農鳥岳という、いわゆる白根三山を含み、農鳥岳以降も南へと続く南北走向の山列です。
この山脈は、白根三山が代表的な山々であり、農鳥岳よりも南の部分(いわゆる「白根南嶺」)を含め、「白根山脈」と呼ばれています(文献2)。
3つ目は、白根山脈の間ノ岳から分岐し、三峰山から、やや蛇行しながら南へと延び、塩見岳、荒川三山、赤石岳、聖岳と、3000m以上の高峰を連ねる山脈です。この山脈は、光岳以降は尾根筋の分岐が多くなり、山脈というより山地的な形に変化しますが、大無間山、黒法師山などの、2000m前後の山々につながっています。この山脈は、「赤石山脈」(狭義)と呼ばれてます(文献2)。
なお蛇足ですが、「赤石山脈(山地)」(=南アルプス)の名の由来は、この山脈にある「赤石岳」に由来しています。
「赤石岳」の名前の由来はというと、赤石岳の東側にある「赤石沢」に由来しています。
さらに言うと「赤石沢」の名前の由来は、この沢に多い赤っぽい色をした岩に由来するといいます。
この赤っぽい色の岩は、岩石学的には「赤色チャート」と呼ばれる、海洋プレート上に堆積した堆積物が岩石化したもので、いわゆる「付加体」を構成する岩石の一つです。
「赤石山脈(山地」という名前は、この南アルプスのほとんどが「付加体」でできていることを、うまく言い表していると思います。
なお、光岳より南にある、大無間山、黒法師山、池口山などは、登山界では、「(南アルプス)深南部の山々」とも呼ばれます(文献2)。
この第4部の説明では、この山地全体を「南アルプス」と呼ぶこととし、この山列(山脈)は、「南アルプス」とほぼ同義の「赤石山地(山脈)」(広義)と区別するため、「赤石山脈(狭義)」と呼ぶことにします。
なお、甲斐駒ヶ岳の近くに、3000m峰、かつ日本百名山でもある仙丈ケ岳がありますが、仙丈ケ岳は、赤石山脈の一部ともいえるし、白根山脈の一部ともいえる微妙な立地です。ここでは(文献2)に従い、白根山脈に属する山ということにしておきます。
4つ目は、西側の伊那谷に沿って直線的に並ぶ山列で、「伊那山脈」(あるいは「伊那山地」)と呼ばれています(文献1、2)。最高峰でも2000mに届かない山脈で、登山の対象となる山は少ないのですが、地質構造の面では、南アルプス主要部とは異なる山脈です。
主なものだけでも4つの山列(山脈)が区分できます(文献2)。
まず1つ目は、甲斐駒ヶ岳〜鳳凰三山〜夜叉神峠を通り、身延山あたりまで続く山列です。この山列全体の、地理学的な公式の名称はないようですが、(文献2)では「甲斐駒山脈」と書いてあるので、ここでもそう呼ぶことにします。
なお、鳳凰三山より南側の部分、甲府盆地の西側に面する部分は、「巨摩(こま)山地」とも呼ばれています。この地区の代表的な山は櫛形山です。巨摩山地は、地質的にも、南アルプス主要部とは異なっており、異なる地史を持っていると考えられています。また身延山およびその南へ続く低めの山々を総称して、地理院地図では「身延山地」という名前がついています。
2つ目は、南アルプス最高峰の「北岳」から始まり、間ノ岳、農鳥岳という、いわゆる白根三山を含み、農鳥岳以降も南へと続く南北走向の山列です。
この山脈は、白根三山が代表的な山々であり、農鳥岳よりも南の部分(いわゆる「白根南嶺」)を含め、「白根山脈」と呼ばれています(文献2)。
3つ目は、白根山脈の間ノ岳から分岐し、三峰山から、やや蛇行しながら南へと延び、塩見岳、荒川三山、赤石岳、聖岳と、3000m以上の高峰を連ねる山脈です。この山脈は、光岳以降は尾根筋の分岐が多くなり、山脈というより山地的な形に変化しますが、大無間山、黒法師山などの、2000m前後の山々につながっています。この山脈は、「赤石山脈」(狭義)と呼ばれてます(文献2)。
なお蛇足ですが、「赤石山脈(山地)」(=南アルプス)の名の由来は、この山脈にある「赤石岳」に由来しています。
「赤石岳」の名前の由来はというと、赤石岳の東側にある「赤石沢」に由来しています。
さらに言うと「赤石沢」の名前の由来は、この沢に多い赤っぽい色をした岩に由来するといいます。
この赤っぽい色の岩は、岩石学的には「赤色チャート」と呼ばれる、海洋プレート上に堆積した堆積物が岩石化したもので、いわゆる「付加体」を構成する岩石の一つです。
「赤石山脈(山地」という名前は、この南アルプスのほとんどが「付加体」でできていることを、うまく言い表していると思います。
なお、光岳より南にある、大無間山、黒法師山、池口山などは、登山界では、「(南アルプス)深南部の山々」とも呼ばれます(文献2)。
この第4部の説明では、この山地全体を「南アルプス」と呼ぶこととし、この山列(山脈)は、「南アルプス」とほぼ同義の「赤石山地(山脈)」(広義)と区別するため、「赤石山脈(狭義)」と呼ぶことにします。
なお、甲斐駒ヶ岳の近くに、3000m峰、かつ日本百名山でもある仙丈ケ岳がありますが、仙丈ケ岳は、赤石山脈の一部ともいえるし、白根山脈の一部ともいえる微妙な立地です。ここでは(文献2)に従い、白根山脈に属する山ということにしておきます。
4つ目は、西側の伊那谷に沿って直線的に並ぶ山列で、「伊那山脈」(あるいは「伊那山地」)と呼ばれています(文献1、2)。最高峰でも2000mに届かない山脈で、登山の対象となる山は少ないのですが、地質構造の面では、南アルプス主要部とは異なる山脈です。
(参考文献)
文献1)町田、松田、海津、小泉 編
「日本の地形 第5巻 中部」 東京大学出版会 刊(2006)
のうち、4−1章 「赤石山地」の項。
文献2)「アルペンガイド 第9巻 南アルプス」、
山と渓谷社 刊 (1994年版)
文献3) ウイキペディア 「赤石山脈」の項。 2020-10月 閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E7%9F%B3%E5%B1%B1%E8%84%88
「日本の地形 第5巻 中部」 東京大学出版会 刊(2006)
のうち、4−1章 「赤石山地」の項。
文献2)「アルペンガイド 第9巻 南アルプス」、
山と渓谷社 刊 (1994年版)
文献3) ウイキペディア 「赤石山脈」の項。 2020-10月 閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E7%9F%B3%E5%B1%B1%E8%84%88
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【書記事項】
初版リリース;2020年10月8日
△改訂1;文章見直し、一部修正。書記事項追記。
△最新改訂年月日;2022年1月5日
△改訂1;文章見直し、一部修正。書記事項追記。
△最新改訂年月日;2022年1月5日
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