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Yamareco

記録ID: 139025
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
八ヶ岳・蓼科

天狗岳1989

1989年09月14日(木) 〜 1989年09月15日(金)
 - 拍手
hagure1945 その他1人
GPS
32:00
距離
13.2km
登り
1,369m
下り
1,310m

コースタイム

9/24 稲子湯12:00 しらびそ小屋14:30-15:00〜本澤温泉17:10
9/25 本澤温泉6:00 夏沢峠7:10-15 東天狗岳8:50-9:20 ニュウ11:10-20 稲子湯14:00
天候 曇り
アクセス
利用交通機関:
自家用車
稲子湯についたついたときは小雨でした
稲子湯についたついたときは小雨でした
はるか20云年前です
はるか20云年前です
1989.9.14とありますね。
はじめて妻と山登りです
1989.9.14とありますね。
はじめて妻と山登りです
苔の雰囲気がよかったですね。
苔の雰囲気がよかったですね。
しらびそ小屋だ
リスがくる窓
いました。
本澤温泉。ここで一泊。自炊しました。檜のお風呂に懐中電灯もっていきましたよ
本澤温泉。ここで一泊。自炊しました。檜のお風呂に懐中電灯もっていきましたよ
翌日は晴れて、夏沢峠へ
翌日は晴れて、夏沢峠へ
天狗岳の写真が、顔がない。
天狗岳の写真が、顔がない。
ニューをとおって戻って林道歩き。
ニューをとおって戻って林道歩き。

感想

妻と登山再開の山
雨の北八ケ岳・天狗岳 1989.9.14-15

私が昔所属していた社会人の山岳会エフ・アルペンクラブ(以下FACと略記する)の解散が平成元年の八月、谷川岳の麓で行なわれた時、妻を連れて参加した。妻は山の雰囲気に痛く心を動かされたようで、一緒に山に行ってもいいと言ってくれた。これは私にとっては神の声のように思われた。妻の裕子とは、結婚以前には蓬峠へのハイキングをしたくらいであったが、新婚旅行で思いきって屋久島の宮の浦岳の登山に連れて行って以来、山などには行っていない。その間、どれだけ山に行けたらと思っていたか。妻の一言で私は山を復活させる契機を得た。そして二十年振りに行くには、手頃なところから始めなければならないだろうと考えて、最初に浮かんだのが、北八ケ岳であった。さっそく昔の(昭和四十年代の)ガイドブックからコースを検討したが、いかにも古いので最近版を買い求めた。車で出かけられることを前提に考えて、稲子湯から本沢温泉、夏沢峠から天狗岳、ニュウ、稲子湯と回遊するコースとした。日本で二番目に高い温泉に入ることと、帰りにも温泉に入ることがこのコースの眼目であった。

9月14日
午前6時40分妻と共に出発する。天気は曇り、雨模様である。
八王子から中央高遠に入り、須玉で降り清里へ向かう。海の口をすぎ、松原湖の表示に従って、稲子湯への道をとる。八ケ岳の姿は雲の中であり、時々雨が降ってくる。松原湖の湖畔を過ぎ、小さい集落を抜けると森林帯の中の道となり、舗装がきれ、ダートの林道にかわると間もなく稲子湯であった。
旅館が一軒12時着。先客の車が数台あったが、平日のためか静かな雰囲気であって、犬の鳴き声だけが妙にうるさい。駐車場に車を止め、旅館の受付に駐車を告げると、駐車台一日三百円で、二日分の支払いを要求された。小雨が降る中で、昼食をとる。宿の前はバス停と、駐車場になっている。殺風景な広場である。
おにぎりとインスタントの味噌汁である。ガスで湯を沸かし、妻と食事を済ませた。ベンチも何もないので、車のボンネットに傘をおいて、そこをテーブル代わりにして食事をした。稲子湯温泉で足栫えをし、荷物を点検して、稲子湯を十二時四十分に出発した。

     稲子湯に秋深めてゆく雨やまず昼餉するとき犬の遠吠え

雨を予想して、裕子には新しい雨具を用意したので、備えは十分である。宿の庭から、道ははじまる。ビニール傘をさしながら樹林の中を歩きはじめた。林道を横切り、緩い登りを行く。白駒林道と緑池との分岐点で、橋を渡り進んだ。裕子は登りに弱いので、急がずに二十分ごとのピッチで休憩をとりへ足慣らし。
        山中にて
     原生林の樹々に冷雨ふる愛間われつつ歩む山道

みどり池までの道は、鯵蒼とした樹林帯の中を行く。雨具もズボンだけにして、Tシャッで傘というスタイルで歩く。雨は強くふることもなく、妻は杖代わりにしはじめる。途中で中年のカップルと行き合う。先になり、後になりの歩みである。みどり池までは三時につければという予定でいた。
歩き出して一時間半過ぎるころから、妻が少し顎を出しているように見えたので侭ゆっくり行くことにした。北八特有の苔がとてもきれいである。
     苔むす原始の森奥深く盗掘者が残した植物図鑑

ひんやりするような感じの樹林の中を行くと、軌道のレールの跡がではじめた。ガイドブックでは、軌道跡がでると小屋は近いと書いてあったので、間もなくかと思ったが、後でわかったことだが、これは最初出会う軌道の跡で、まだ先がある。軌道に沿って歩いているうちに、一度道をはずしてしまった。この辺りで、後から単独行の若い女性が、先を越していった。実に足が早い。
右手に沢の音が聞こえ、間もなくその沢と出会う格好の休息場に出た。荷物を置き、沢の冷たい水で顔を洗うと、気分がすっきりする。妻も気持ちよさそうであった。ここで十分ほど休憩。チョコレートがうまい。時間はちょうど二時半であった。

     やり直せぬ人生半ば手に掬う沢水の凛とした冷たさ

軌道跡のレールに出会った頃から、この水場までがかなりきつい登りであった。この水場で元気をつけ、しばらく登ると今度はまさに軌道の跡を辿りながら平坦な道を行くと、やっと小さな池が現わ れ、そこに小さな小屋がひっそりと見えた。やれやれ着いたか、という感じであった。小屋の入口に立つと、休憩有料とある。なんという時代になったのかと一瞬考えてしまったが、雨の中、外で休むわけにもいかないので、引き戸の戸を恐る恐るあけた。ストーブの側に主人と思しき人物がいたが、いらっしゃいとも言わない。お世話になりますとこちらがあいさつ。山小屋のガイドブックには、このしらびそ小屋は、昔ながらの雰囲気と、野性のリスを餌付けしていて、しかも美味しい.コーヒーが飲めるいい小屋だと書いてあった。確かにかわいいリスが窓辺で餌を食べている姿があり、薄暗い部屋の窓から見るみどり池とけむる樹林の眺めは、静かな一枚の絵である。愛想のないのは我慢して、コーヒーを注文する。三百五十円。豆から挽いて入れてくれる。これは安い。そして美味い。ストーブの温もりが、心地よい。
    
    みどり池
      わが生命果てたる後の静けさをたたえているかみどり池
      珈琲の豆挽く香り愛人に蟻くあなたの生のありかた

のんびり休んでいると、途中で行き合った二人ずれが到着した。年齢は五十位、七年程前から山に来始めたそうだ。今日はこの小屋で泊まるとのこと。中年になって自分の体を思い、夫婦して山に来る人達は、我々だけではなかった。

         しらぴそ小屋にて
      企業戦士のままに歳とる男 神秘の森に蘇生をはかる
      秋深まりゆく夫婦愛死に急ぐことはないしらびその小屋


三十分の休憩をして 我々は小屋を出た。本沢温泉までは、平坦な道で 最後登って下ると教えられた。本沢温泉までの道は、みどり池までの道とは 少し趣が違い、単調で風情のない道だ。あの緑濃い苔むした道ではなく、普通の山道だ。ただあまりきつくないので 裕子も前ほどのつらさは感じさせない。まわりの景色もないし、雨の中をひたすら歩くのも楽ではない。夏草がズボンを濡らすので、雨具をつける。あざみが群生している。かれこれしながら進むと、急な下りになってきた。

         山中にて
      薊群生しており三年前の上司の叱責いまだ根にもつ
      鳥甲色鮮やかに咲いており地中に隠す密かな殺意

滑らないように注意しながら下るとひょっこりと、まさにひょっこりと細い林道に出た。これは本沢温泉のジープがもっぱら専用している林道だと察しがついて、温泉が近いとわかった。 この林道を歩くほどに なるほど本にある通り、ジープしか通れないと納得した。自家発電のモーターの音が聞こえたか思うと、本沢温泉の小屋に着いた。午後五時すぎであった。しかしまだ雨にけぶっているが外は明るい。
     
         本沢温泉
      幾千の湯は多けれど密やかに秘湯を恋ゆるわが生の秋

ガイドブックで見た小屋の写真と実物の違いは 常にこんなものかと思いながら、木沢温泉と看板の掛かっている玄関口で靴を脱ぎ、引き戸を開けて今日はとあいさつして入る。「電話で申し込んであった者ですけれど」と言うと、分かっているんだかどうか、まあいい加減な返事で「宿泊名簿に名前を記帳して」と言われ、言われた通りに記帳する。素泊りですねと、念を押した上で 相部屋でもいいかと聞く。こちらは夫婦で世話になりますと言っているのに、念を押されてはいいですよとしか答えようがない。自炊をする場所はどこかと聞くと、外の天幕の張ってある所でやってくれと言う。電話で予約した時に自炊場所を確認したのだが、まさか外に出されるとは予想外であった。
部屋は相部屋ということで 指定された部屋には 先客が布団をひいたままで 食堂にでも行っているようであった。私と裕子はザックの中から食事に必要なものを取り出し、荷物を整理して部屋の隅に置いた。部屋はガラス窓と薄い板張りの壁で外と仕切られ、裸電球が一つ天井からぶら下がっているだけで さぞや冬の時期には、と思わせられるような部屋であった。床も心なしか斜めに傾いているようだ。引き戸のそばに薄い敷布団と薄い掛け布団がつんであり、棚の上に枕がのせられてあった。六畳敷きの部屋に十人以上は詰め込まされそうな具合であった。
夕食のメニューの材料と食器とガスコンロとコッヘルと懐中電灯をもって、指定された場所に行き、食事の支度を始めた。風が強いのでコンロの周囲を板で囲った。料理は手際よく、ごはんもまあまあの状態で焚きあがった。カレーとジャ1マンポープトとスープである。食後のお茶を飲み、跡片付けして部屋に戻ったのは、七時であった。部屋は我々だけであったので デザートのみつまめを食べて事の全コース終了。お腹の状態も安定したので、いよいよ念願の温泉である。
ガイドブックには槍の風呂があると書かれていたので、その風呂に入るのも楽しみであった。風呂場は狭い廊下伝いに一番奥まったところにあった。ランプもついていないので、ヘッドライト持参で歩く。脱衣所も真っ暗、風呂場も真っ暗である。裕子にヘッドライト渡してあるので、闇の風呂に入ることになった。かろうじて星明かりで、薄ぼんやりと風呂場が見てとれる。かなり広い。十畳間ぐらいはある。槍の浴槽で、重い湯蓋を何枚もとらねばならず、動かすだけでも骨がおれる。しかし、湯の量は豊富で、湯加減もよい。首までつかってゆっくり手足をのばす。湯のゆれる音しかしない。真っ暗な風呂もまたいいものだ。

     争いて生きる浮世も戯言と暗闇の湯船に入る星明かり

本沢温泉にはもう一つ、小屋から五分ほど登ったところに露天の風呂があり、高度から言うと日本一だと言う。実際には立山の室堂の温泉とか、白馬鑓の温泉の方が高いのではないかと思うけれど、まずはここの露天風呂に入らなければなるまい。

     秋夜硫黄岳黒々として露天風呂に月光価千金

この本沢温泉小屋を選んだのは、何よりも温泉につかることだから、私たちは、小屋の桧風呂のあと、 午後九時ごろ、二人で露天風呂にでかけた。登山靴を引きずるように五分ほど行くと、星の光りに反射して、露天風呂の湯が見えた。脱衣所も何もない。甕の河原のようなところに畳一枚分ほどの風呂が木枠でつくられている。月もないために周囲は暗い。その暗さを通して正面に異様な山が迫っているようにあるのに気づく。硫黄岳の噴火口である。天気さえよければ素晴らしい天然風呂に違いない。雲が多く明るい夜空とは言えないが、雲間に光る星を見ながら湯にとっぷりとつかっていると、山はいいなとつくづく思う。
風もなく穏やかな夜だ。しかし長湯もしていられないので適当にして小屋にもどる。体はほかほかして今夜はゆっくり眠ることができそうだ。

9月15日 
朝は午前5時には起床して、朝食をとり、六時ごろには歩き始めた。昨日の雨の鯵陶しさはなくなって、夏の日差しを残した九月の爽やかな朝となった。夏沢峠へ電光状にきられた道をゆっくりと登る。ときおり吹き抜ける風が心地よい。途中でマゥンテンバイクを担いで峠から下りてくる若者の一団と出会う。私が山にいかなくなってからの過ぎた時代の変化を感じる。
         
         夏沢峠への峠道
       人生の峠越えねばならぬ若者が肩に担ぐマウンテンバイク

妻はゆっくり登ってくる。歩きは遅い。基本的に山には向いていないタイプなんだが、これから一緒に行けるかと思うと無理はできない。樹林の間から、茶褐色の肌も荒々しい硫黄岳の噴火口の壁が見える。山が噴火するときの力の凄まじさを見せつけられる。夏沢峠に着いて一休みする。峠の近くには、こまぐさ荘と山びこ荘の二軒の小屋があり、八ヶ岳の南と北の境の峠でもある。小屋の周囲にはそれほど多くの人はいなかったが、ここからは少しにぎやかになりそうだ。妻は昨夜ゆっくり眠ったので体調は良いようだ。ここから東天狗岳をめざす。
          硫黄缶の噴火口
       山を裂く自然の力荒々しく神妙にせよ為政者たち

しばらく稜線上の樹林帯の道を行く。一時間ほどで箕冠山にでる。樹林帯をぬければ気持ちのよい稜線歩きになる。天狗岳が正面におにぎりのような形でみえる。左には西天狗岳があって二つの天狗をつなぐ稜線がきれいな孤を描いている。振り向くと南八ヶ岳の峰が並んでいる。赤岳は確かに高い。
高度のある本格的な山は彼女にとって三度目で、屋久島の宮ノ浦岳、乗鞍岳につぐ山だ。根石山山荘から根石山を経て、標高二千六百メートルの天狗岳に到着。青空。
この天狗岳は中山峠以北の北の雰囲気よりは、どちらかというと南のアルペン的雰囲気が強いと言える。西天狗岳は赤岳からみた阿弥陀岳のようだ。眼下の黒百合ヒュッテが、多くの登山者で賑わっている。奥秩父の山並みが手のとどくほどに近い。北八ヶ岳の代表の横岳や縞枯山、蓼科山、浅間山、もちろん富士山、甲斐駒ヶ岳、遠く北アルプスまで展望する。昨日の天気とは大違い、気分爽快、今日の帰路のニュウの岩壁や白駒の池も眼下にある。妻も満足気である。頂に立つ爽快感を味わった。

          天狗岳山頂
      大地のつくる小さな髪にたつ宇宙の塵のこの生命である
      宇宙の塵の命にもささやかな幸せがあり大地のすがた

これから天狗の庭と称する火山岩でゴロゴロしている一帯の下りにかかる。足場が悪いために結構苦労しながら下る。かなりの勾配である。岩綾地帯を抜けると樹林帯まで下りてくると黒百合ヒュッテは近い。最後の急な道を慎重に下り、小屋の前の広場にでる。
 ここで昼食。山頂で一緒になった年配のご婦人二人とまた会った。彼女たちも昼食の支度をしている。かなり手慣れた様子で、頻繁に山に出かけているのではないかと声をかけた。小太りの五十才位の丸顔の人に話しかけると、よく山に行くとのこと。いま一人の人が小屋に用足しに行っている間、その婦人は、連れの方が年配で、とても裕福な家庭の奥さんであって、世界中を旅行している人だと教えてくれた。それが何故、日本の山などを歩くようになったのかというと、彼女を尾瀬に一度連れて行ったのだそうだ。その時、「日本にもまだこんな捨てた素敵なところがあるなんて知らなかった。まだあるだろうから連れていってほしい」と言われ、それ以来、その奥さんの方が熱心になってしまったのだと言う。ザックもミレーだし、靴もよいものを履いている。道具も高いものを揃えている。
登山者の人口が復活してきたのは、こういう女性パワーによるところが大きいらしい。それに登山用品も高級品がでるようになったのも、中年の登山者人口の増加によるものだと言う。彼女の知恵で感心したのは、ペットボトルのハチミッレモンを出かける前日冷凍しておいて、そのまま待ってくると言うものだ。夏はだんだん溶けてくるので、冷たいままちょうどよい飲みごろの状態になるというのだ。そんな話しをしながら、ラーメンをすする。
私たちは、二十年前のコッヘルに靴。裕子の登山靴とキャンピングバーナーは新調したが、安物である。中年の女性のバイタリティに脱帽。
私たちに話しをしてくれたご婦人は、クリーニング屋の奥さんだそうで、日ごろはつましく生活して、山に行くお小遣いを蓄えているのだそうだ。それでも年に一度は海外に出かけるという。 ネパールのトレッキングや、キナパル、キリマンジャロにも行ったという話しに圧倒されてしまった。ほんとうに時代は知らないうちに変わっているんだと、つくづく思った。あの学生のころニッピンの安い登山道具で、旅費の工面に苦労しながら山に行った時代はなんだったんだろう。
私が高校を卒業する時の初任給は、六千円から一万二千円位であった。その時代に私はアルバイトをして貯めたお金で、シャルレーのピッケルを買った。一万七千円だった。ザックもキスリングであり、今のようにカラフルなザックなどなかった。

      山登る人みな様変わりして空白の時を悔やむ山道

さまざまなことを思いながら、黒百合ヒュッテの周囲にいる登山者を眺める。それでも山に来て、この自然のなかにいるときの、わくわくするような気持ちは何年経っても変わらない。それが嬉しかった。黒百合ヒュッテは夏のシーズンに音楽会を開催することでも有名になっているが、このヒュッテの周辺に黒百合の花が咲ことから小屋の名がつけられている。しかし、中山峠への道筋から黒百合を見ることはできなかった。
中山峠は狭い一角で 真下にあるしらぴそ小屋への道が急な角度で刻まれている。峠というよりは分岐のようだ。
稲子岳の岩壁が間近にみえる。右に見ながら、樹林帯の尾根道をニュウにむかって歩く。下り道にはなるのだが、けつこうアップダウンがあり、倒木などをくぐりながらいかにも北ハツの雰囲気のなかを歩きつづける。二時ごろ、白駒池への道を分けて、稲子湯への道に入る。
ニュウまでは稜線づたいであったが、稲子湯への道は複雑に樹林帯のなかを下る。靴が合わないのか、足が大分くたびれてくる。足の裏が痛くなる。途中沢筋に道を踏み違えて、20分位迷った。迷った時は、元の場所に引き返すのが鉄則だ。なんのことはない、右に曲がっている道を見落としたのだ。妻は下りは強いからと言って、それなりに元気だ。
      
      歳四十また運命に遊ばれて獣道に迷い込むとき
 
ニュウから稲子湯までは二時間半の道程。これがけっこう長い。そして展望もないし、単調な道な ので辛かった。林道に出た時、足の裏が痛いので 靴を脱いで 小さな沢に足をつけて冷やした。少し楽になった・妻が新しい靴を買わないダメね、と言ってくれたので さっそく新調しようと思った。
 稲子湯の旅館の前に着いたのは、五時頃になった。旅館の風呂は登山者には四時までしか入れないと張り紙があったのだが、頼みこむと、OKしてくれたので さっそく入れてもらうことにした。
久しぶりの登山で 靴も古く、足には堪えた。湯の中で足裏をよく操みほぐずb考えてみれば二十年も前の靴を持っていることの方が可笑しい。山への執着が捨てずにいたのだろう。長いブランクの末、今日その役目を終える登山靴に感謝しなければなるまい。靴底のビブラムも一度も張り替えることもなかったので、そうとうすり減っていた。感謝。感謝。
湯船の中でそんなことを思いながら、汗を流してさっぱりした。
夫婦で山登りができるなんて、今まで考えてもみなかったので、裕子がついてきてくれて、とても嬉しかった。歩き方や、休みの取り方など教えながら歩いた。これからも色々と行くことができると思うと、感傷的になる。夫婦で何か共通のものがあれば、何よりものことだと思う。 山で出会う中年の夫婦の登山者も多くなっているだろうから、私たちもその仲間入りをしよう。
清里にある「小作」という店でほうとうを食べる。諏訪で一度食べて美味しかったので、妻も文句はない。かぼちゃほうとう900円也。店を出たときにはもう外は真っ暗だった。小淵沢から中央道に乗る。隣で妻は眠っている。そして家に帰った。

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