金糞岳周回;残雪と早春の花を求めて
- GPS
- 07:38
- 距離
- 18.3km
- 登り
- 1,278m
- 下り
- 1,270m
コースタイム
- 山行
- 7:07
- 休憩
- 0:29
- 合計
- 7:36
天候 | 晴れ、一時曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ところどころで踏み抜きあり。 チェーンスパイク、アイゼン(12本爪)を携行したがいずれも使用せず。しかし、白倉岳と金糞岳との間の稜線ではアイゼンの装置が望ましいと思われる。 |
写真
感想
週末は出張が続いていたので、関西の雪山を訪ねるのは2月の半ば以来、久しぶりである。3月の下旬とは思えぬ気温が高い日が多く、伊吹山や比良山系においても雪が消失していくのが殊の外、速いようである。残雪の山行がますます難しくなる中で、今期、最後となるであろう関西の残雪期の山行は、以前からこの山に照準をあてていた。伊吹山に次ぐ滋賀県第2の高峰であるが、伊吹山とは雪の残り方がまるで異なるようだ。
花房尾根か中津尾根のいずれから周回するコースが一般的であるが、いずれにせよロング・トレイルを覚悟せざろう得ない。日中は気温が上がることが予想され、踏み抜きを少しでも減らすためにはなるべく早い時間に花房尾根を通過したいところだ。しかし、前の日の夜遅くまで京都で用事とその後の打ち上げもあったので、深夜3時半に起き出してから準備を整えるのが精一杯であった。ちなみに無積雪期には鳥越林道を車で連状口まで入り、金糞岳山頂までピストン往復するという方法もある。考え方次第だが、とても勿体無いことと思われる。この山の最大の魅力は白倉岳を越えて奥山に至るまでの花房尾根からの絶好の展望にあるのだから。
4時半に自宅を出て、高山キャンプ場手前の駐車場にたどり着いたのは6時前であった。キャンプ場の手前には車があり、既に身支度を整えられて、登山口から登ろうとされておられる若めのご夫婦がいらした。予想通り高山キャンプ場はチェーンで閉められているのでキャンプ場手前の川沿いの駐車場に車を停める。
最初は杉林の尾根のジグザグ路であり、先ほどのご夫婦に追いつき、先行させて頂く。尾根筋に出るが、上記の好展望の花房尾根に出るまでが意外と長い。深く刳れた登山路はこの山における登山の歴史が長いことを物語っているようだ。まもなく登山路に雪があらわれ始める。よくよく耳を澄ますとかすかにせせらぎの音が聞こえる。音のする方を辿ってみると雪から溶け出した水が小さなせせらぎとなっているのであった。700mを過ぎたあたりから辺はすっかりと雪で覆いつくされた状態となる。朝陽が雪の上に落とす樹々の細長いシルエットが美しい。尾根はイヌブナ、コナラの多い落葉樹林帯となる。谷筋から吹き上がってくる風はほどよく涼しく、登りで熱くなった身体を冷ましてくれる。
このあたりでようやく遠くに金糞岳の山頂が姿を現わす。尾根筋は雪の中にマンサクの花が咲いているのに家内が気付く。他の方のレコを拝見していても、ここでマンサクの花に目を留める方が多いようだ。南東の方角にお隣の伊吹山が見えるのだが春霞がきつく、山稜が辛うじて同定出来る程度だ。この後、しばらくして、伊吹山は春霞の彼方に姿を消してしまう。
2時間近くかかって奥山のピークにたつ。行く手に白倉岳、金糞岳の堂々たら山容を望む。この時点では蒼空の青さが美しく、朝陽に輝く雪の白さが眩いほどであった。尾根筋からはこの白倉岳、金糞岳の好展望を楽しみながらの尾根歩きが続く。随所に雪庇が発達しているので、トレースを追いつつ、雪庇を避けて歩いていく。
雪の上には真新しい新雪が10cmほど積もった気配がある。雪の状態からすると数日前のもののようだ。先週は京都は雨が降り続いていたが、この山域では雪が降ったのだろう。新雪の下の層の雪は既にかなり汚れてしまっているようだが、新たに降り積もった雪のお陰で、その純白さを目に嬉しい。新雪が固く締まった雪の上に積もるとそれはそれで歩きにくいのだが、下の雪とも馴染んでいるようだ。とはいえ、随所で深く踏み抜きをやらかしてしまう。
ゴロウの頭を過ぎたころからだろうか。やがて、北西の方向からの雲が沸き起こり、尾根の上空を通過していく。八草出合いから西に伸びる稜線の先にある巳高山は同定出来るものの、北側に美しい山容を誇るはずの横山岳の山稜は全く見えない。先程の蒼空はいつの間にか曇天にとって変わられている。雲の合間に所々に晴れ間があり、陽光が白倉岳を照らすとあたかもスポットライトを充てたかのように山稜が白く輝く。カメラの先を東にむけ、晴れ間が風と共に東に移動し、陽光が金糞岳を照らすのを待って、カメラのシャッターを切る。
振り返ると辿ってきた花房尾根が一望のもとだ。奥山のあたりは既に霞んでおり、そのせいで一層、遠く感じられるのかもしれない。縦走してきた尾根を終始、遠望することが出来るというのはとても恵まれたコースである。
この日はほとんど風はなかったが、白倉岳の山頂のあたりだけはわずかに風が吹いていた。頭上では戯れるかのように雲烟が千変万化に形を変えながら眼の前を通り過ぎていく。その雲の合間から金糞岳への稜線に陽光が降り注いだり、遮られたり、雪の上のコントラストは目まぐるしく移り変わってゆく。まさに雲烟過眼である。この四字熟語で連想するのは、人は忘れたいことこそ忘れられないものだが、忘却というのは本来、人間に必要な能力なのかもしれない‥
白倉岳からの下りになると、最近、新たに積もった雪が意外と深いが、既にしっかりと雪が締まっており、歩きやすい。北側の斜面はかなりの斜度であり、アイゼンの装着が望ましいのであろうが、距離が短いのと踏み抜いた場合のリカバリーが困難となることを考えて、アイゼンなしで下る。純白の新雪の上に刻まれたトレースやポールの跡は深いところで碧色の光を反射している。雪渓のクラックを思い出すが、不純物が少ない雪にみられる現象らしい。
金糞岳のあたりでは再び晴天に恵まれる。しかし春霞が濃く、伊吹山のシルエットは霞の彼方だ。琵琶湖も望むことが出来ないが、尾根の展望だけでも十分に素晴らしい。。頂上からは下山路が一望である。正面に見える下山路の中津尾根の中で小朝頭がその存在感のあるピークを際立たせている。
南斜面は白倉岳からの、程よく締まった新しい雪の雪質がよいせいで下りやすいが、家内は小朝頭への鞍部への手前で雪を深く踏み抜き、足が完全に抜けなくなってしまう。急遽、周囲の雪を掘り起こし、何とか脚を抜き出す。鞍部が近づくにつれ、小朝頭を東に大きく迂回する鳥越林道が視界に入る。その彼方には奥伊吹スキー場を擁する射能山(ブンゲン)から伊吹山北尾根に連なる山々を遠望する。冬の時期に縦走してみたいコースの一つだ。
小朝頭は雪を纏った姿が美しいからだろうか、北側から見ると山名を冠したくなるほど魅力的な山容だ。斜面に生える笹原のせいか樹木が疎らとなり、斜面の雪の多さが際立つせいもあるかもしれない。ピークから金糞岳を振り返ると雲が斑なシルエットを斜面に落としていた。
小朝頭の西側斜面には尾根が広くなり、先行するトレースを追っていくといつしかコースを外れていることに気がつく。幸いにも歩きやすい、なだらかな斜面をトラバースしてコースに復帰すると、小さい雪原に出る。その向こうでは尾根の北側から金糞岳を仰いで写真を撮っておられるソロの男性が目に入った。本日、出会う2組目の方だ。中津尾根を登って来られると金糞岳を間近に望む最初のスポットではなかろうか。我々もコースを外れ、男性が立たれていた場所に思わず向かう。その方は我々がたどり着く前に小朝頭を目指して斜面を登って行かれた。顧みると樹々の疎らな小さな雪原が美しい。
落葉樹林の中を下ると開けた連状口に出る。花房尾根は望むことが出来るものの、金糞岳のピークはここからは既に望めない。ここからは落葉樹林の中をひたすら下っていく。花房尾根と同様、登山路の雪が疎らになり、夏道が露出するところが多くなったと思うと、およそ700mほどであった。
林道との交叉点、小森口を過ぎると、倒木も多く、意外と荒れている。ふと空を仰ぎ見ると、樹の枝先に黄色い花が多く咲いているではないか、しかも何本も。壇香梅の花であった。
白谷口で沢を渡ると、こここらはいよいよ長い林道歩きである。雪解けで水量が増えていると思われる沢をみていると、単調な林道歩きも苦にならない。林道脇の開けた斜面からは雪解けの水がふんだんに流れ出している。もしやと思って草の中によくよく目を凝らすと、咲いている咲いている。ヤマネコノメソウの大群落である。早速、カメラを取り出し、文字通り、道草である。しばらく行くと道の左手に苔生した長い石垣が現れるが、此処にもヤマネコノメソウが苔の中に群生している。道草ゆえに林道歩きがさらに長くなったかもしれないが、可憐な黄色い花に疲れを癒されるようだ。
高山の駐車場に戻るところでは田植えの準備をされていると思われる気さくなご婦人にお会いする。「山に行って来られたん?」「ゆきはどうやった?」「石碑は見なかった?」もう少し先で、ご主人と思われる男性にも同様のことを聞かれる。「石碑が見えないんやったら、積雪はまだ1m50はあるなぁー」石碑はご夫婦の地所から切り出して、かつて担いで登ったもののようである。それはご自慢の石碑であろう。
国道365号線に出たところにあるフレンドマートで、いつもサラダパンを手に入れることにしており、とても楽しみにしていたにも関わらず、何と既に売り切れとのこと。サラダパン人気恐るべし。
帰路は途中で国道を左折して、大久保集落に山野草の寺ともいうべき長尾護国寺を訪ねる。この集落から長尾護国寺の境内で見かけた早春の花々で目を愉しませて頂ければ幸甚である。
※連状口の下のあたりでサングラスを拾得しています。落とされた心当たりのある方、どうぞご連絡下さい。
行ってきたんですね。
写真を拝見すると、山全体の雪がかなり溶けてしまっていますね。暖かい日が続きましたからね。それにしても、とても速い周回で驚いています。奥様も健脚のようですね。
私はこの日、銀杏峰・部子山へ行ってきました。2週連続です。今週末も奥越の雪山を予定しています。
それではまた。
コメント有難うございます。霧氷があれば、もう少し雪があれば、と欲を云いたいところではありますが、この時期にこれだけの雪を楽しめただけでもよかったと思っております。
家内は登りや緩やかな尾根が苦手らしく、牛歩の如くなのですが、今回はいつもより頑張って歩いてくれたようです。歩く速度も気まぐれなようでして。
ところで野坂岳〜三国岳の縦走も考えていたので、余程、flatwellさんに雪の状態をお伺いしようかととも考えたのですが、flatwellさんのレコを参考に、無積雪期でも訪れてみたいと思います。銀杏峰は来期には是非と思っておりましたが、北國新聞社のガイドでも部子山を廻るルートではなかったので、ノーチェックでした。銀杏峰に行く時はflatwellさんの足跡を辿ってみたいと思います。奥越もとても惹かれる山域です。来週のレコも楽しみにしています。
初めまして。
若めに見え夫婦の旦那greenriverです。
私のレコへのコメントからたどり着きました。
あの時の方だったんですね。
こちらも白倉岳から金糞岳山頂のお二人がこちらを見てらっしゃるような気がしていました。お互いに同じようなことを感じていたのですね。
また、こちらの声まで聞こえたようで・・・
声が大きく、お恥ずかしい限りです(^^;。
それにしましても、あっという間に通り過ぎて行かれ、あっという間に山頂に行かれていたので、二人して「負けた・・・」とうなだれていました。
それと、下山してからのおじちゃんおばちゃんとも、まったく同じお話をされていたようで、御嫁様とそろって笑わせていただきました。
本当にお優しいおじちゃん、おばちゃんでしたね。
また、どこかでお会いできましたら、よろしくお願いいたします。
ご連絡有難うございます。ご主人の声がいくら通りやすい声(と思いますが)とはいえ、白倉岳と金糞岳との距離では呼べば通じる距離ではないと思いますので、春風の悪戯のなす技だったのだと思います😀
声と熊鈴の音はともかく、人の思惑というのは人智を遥かに越えた伝わり方をするものだということを痛感せざろう得ませんね。それにしても、高山の田圃で出会ったご夫婦との会話はリピートされているところが、微笑ましさに拍車をかけますね。
全くの偶然ですが、最近、荒島岳のレコが気になって拍手を送ったのがgreenriverさんのものだったようです。
伊吹山の北尾根も素敵なレコですね。今回、鳥越林道の彼方に見えていたブンゲンから縦走したいとかねてより思っていたのですが、その計画は来期以降には持ち越しです。
まずは素敵な山での御嫁様の雪山デビュー、改めてお慶び申し上げます。いつかまた湖北や奥美濃の山でお目にかかれますことを期待しております。
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