雨降りの午後は大文字山へ☆台風の爪痕残る南西斜面逍遥
- GPS
- 02:52
- 距離
- 8.1km
- 登り
- 578m
- 下り
- 567m
コースタイム
- 山行
- 2:28
- 休憩
- 0:22
- 合計
- 2:50
天候 | 雨のち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
大文字山・・・京都市街の恰好の展望台としての大文字の火床の魅力に目が行きがちではあるが、つくづく京都らしい奥深さを秘めた山だと思う。山頂に辿りつくには少なくとも銀閣寺、霊鑑寺、南禅寺、山科の毘沙門堂からの4つの主要登山道が蜘蛛の巣の縦糸のように延びるのだが、その間を横糸のように縫うマイナーなルートがある。大通りから一歩、細い通りに踏み込むとまるで違う表情を見せる京都の小路を想起せずにはいられない。
そんな大文字山の北斜面の魅力を最盛期を迎えた紅葉の時期に教えてくれたのはheheさんなのだが、もしかしてまだ知らない山の表情に出遭えるかもしれない・・・そんな期待を抱いて、昨年の台風の爪痕の残る南西斜面を逍遥することを家内に提案するとすぐにも賛同を得る。私には秘かにもう一つの期待があったのだったが。
この日、関西はどこも雨模様のようだ。午前中からの登山は早々に諦めると、久しぶりに映画館に赴き、メトロポリタン歌劇場の新作オペラ「マーニー」を観劇する。午後には雨が上がるとの予報ではあったが、遅めのランチを終えても、京都の街に降りしきる小雨は一向にやむ気配がない。それどころか、冬の北イタリアのポー川流域の街を思わせるような深い霧が街を包み込み、東山の稜線すら霞んでいる。御池通りから眺める大文字山のあたりは白い緞帳が下ろされたかのようだ。
南禅寺、蹴上のトンネルを潜ると、インクラインに沿って坂を登る。疎水沿いに南禅寺の裏手にある水路閣に出ようと試みるも、調査中とのことで通行止めになっている。仕方がないので金地院の前を抜け、南大門を潜り、水路閣へと出る。やはり数多くの観光客で賑わっている。少なくとも半分は近隣の外国から観光客だ。写真を撮るのに興じておられるので、人影の消えた水路閣のシャッター・チャンスはなかなか訪れない。
南禅院の門前を左手に通りすぎ、最勝院高徳庵の脇を通って登山路に入る。まずは大きな苔むした岩が次々と現れる。滝行を行うための修行場が現れるが、水は涸れてしまっているようだ。荘厳な雰囲気の大きな岩の間を縫うようにして上に登ってゆく。一般登山道は谷を右手に曲がっていくのだが、ここは谷を直進するが、すぐにも杉の倒木の密集が現れる。有り難いことに、既に倒木には通りやすいように上手く処理が施されているだった。
杉林をぬけると灌木の林となる。背丈ほどの潅木のトンネルの中を抜けてゆくと、急にあたりの霧が濃くなり、御伽話の中へと踏み込んでいくような気がする。灌木帯をぬけて、南禅寺からの京都一周トレイルに合流すると、尾根上は高い樹がなくなり、本来は好展望が開ける筈であるが、濃霧の彼方で松の樹が幻想的なシルエットを見せてるばかりだ。
京都トレイルの43番の道標を少し越えて、小さな鞍部に差しかかる。ここでも左手の杉林は倒木の密集地帯となっている。杉林の中へトラバースする道がある筈なのだが、本来の道は杉の倒木に埋もれてしまっているのだろう。真新しい踏み跡を見つけるが、この踏み跡を辿って杉林の中に入ってみる。突然、霧が晴れたかと思うと空には晴れ間がのぞき、杉の樹の向こうから光の筋が差し込む。林の中に漂う霧の残滓には幾筋もの光の線条が描かれてゆく。杉のシルエットによって遮られた光の筋が縦横に走ると、杉林の中にこつ然と顕れた光の十字架ように見える。
踏み跡は倒木の散在する杉林の中を蛇行し、やがて鹿ケ谷からの登山路に合流する。ここも杉の倒木の密集によって酷い状態となっており、まるでジャングルジムである。一見、果たしてここを通過出来るのかと思うほどだが、さすがに上手く倒木を処理して下さっている。
ここはひとまず楼門の滝まで鹿ヶ谷方面に下る。降雨直後ではあるものの、やはり水が少ない時期なのだろう、黒く濡れた岩の上を蛇行しながら流れ落ちる滝は控えめなように思われる。
滝の脇を俊寛僧都の碑まで再び登ると、ここから尾根伝いに辿る。すぐに掘割式の明瞭な道が現れる。ここも旧い道なのだろう。かつては鹿ヶ谷から近江の三井寺へと辿る参拝道があったとうが、その古道ではないだろうか、などと考えると、すぐに防鹿ネットが道を阻まれる。右手の杉林へと続く踏み跡を辿ると、今度は急に大粒の雨が降り出した。荒れた古道のように思われたが、この道も倒木には真新しい切り口が見える。道を整理して下さった方には頭が下がる思いだ。
杉林の斜面のトラバースに差し掛かると、道に覆いかぶさるように倒れる多くの杉の樹でトンネルが出来ていた。倒木のトンネルを抜けると、銀閣寺から火床を経由して上がってくる登山路に合流する。山頂はもうすぐだ。
さすがに大文字だ。山頂からは雨の中を傘を差して下って来る方とすぐに擦れ違う。山頂に立つと雨の勢いが弱まり、雨雲が南東の方に慌ただしく過ぎ去っていくのが見える。霧に埋もれた京都盆地に目を凝らすと、徐々に霧が薄れ、市街のシルエットが朧気に浮かび上がってくる。
美しい光景だが、山頂に長居はしてはいられない。火床に向かって一般登山道を急ぐのみだ。空は急速に明るさを増してゆく。トレラン姿の人と擦れ違うが、お気の毒にも先程までの雨でびっしょりと濡れてしまっておられる。
火床にたどり着くとついに西の空から太陽が顔を出し、霧から浮かび上がりつつある京都の市街を黄金色に彩っている。そう、この展望台に辿り着いたタイミングで雨上がりの京都の市街に注ぐ夕陽を秘かに期待していたのだった。
もう少しすると日没の時間を迎えるところではあるが、西山のあたりには雲が厚くかかっている。子供達の食事の用意も気にしなくてはならない時間なので、山頂を後にせざるを得ない。大文字の「大」の字を左下に下ってから、法然院へと向かう道を訪ねてみるが、このルートはやはり依然として通行止めのままだ。銀閣寺へのルートへと下ることにする。
銀閣寺道に出ると、西の空が明るい山吹色に染まっているところであった。今頃、火床にいる方々は美しい景色を目にしていることだろう。さて、今日の夕食は何にしようか。
実は今年まだ登ってないんですよ〜(/ω\)、大文字山!
雪が積もるのを期待してるのですが…、今年はどうかな…、期待薄かも。
南西からのルートは、どこも倒木が酷いようですね。
あの台風以後、歩いたのは若王寺の裏手からのルートだけですが、
そこはまだ南東に上がる谷だったので倒木の被害はほぼなかったです。
yamanekoさんたち、わざわざ酷い所を選んでる
おまけに楼門の滝からの古道ルートは、もともと荒れ気味+歩く人も少ないです。
(だから面白いのですが)
それにしてもyamanekoさんの手にかかると、
大文字山も素敵に表現してもらって…、嬉しいです!
改めて、良さに気づかされ、
また、近いうちに行こうという気になりました。
早朝からコメント、どうも有難うございます。
今度の週末の寒波では大文字山も再び冠雪するかもしれませんね。
年末に冠雪した比叡山に登った時に大文字山を上から眺めておりましたが、雪のせいか山の大きさと北斜面の複雑な起伏が強調されており、北斜面にいくのもいいな〜と思っておりました。
>わざわざ酷い所を選んでる
そうだったんですか。倒木巡りが出来てよかったです
>おまけに楼門の滝からの古道ルートは、
確かに面白いですね。でも意外と整備されていたのが驚きでした。
>それにしても
いえいえ、大文字の魅力探訪はまだはじまったところです。
今年もご教示、どうぞよろしくお願いします。
大文字山は未だ踏んでいないんです。もっと歳を重ねてからと思ってたんですが、やっぱり京都民としては登っておかなくてはね。
年末に、仕事で京都ゴルフへ打合せに行ったんですが、それも西賀茂車庫から徒歩にて。
それで気が付いたのですが、「舟形」の船山への登山口がゴルフ場内にありまして、フェアウエーを横断する形になっていました。そこに登山者へのお知らせがあって何やら押しボタンらしきものも。押したらパトライトでも回るのかなって思っておりました。
イベント的には、送り火五山制覇とかで続けて登るのも面白そうですが、たしか「右大文字」の如意ヶ嶽以外の火床は、立ち入り禁止だったような??
ののさん 今日はユニークなコメントどうも有難うございます。
> 大文字山は未だ
人の登山の志向に容喙するのは好きではないのですが、私のレコがののさんが大文字山に対する重い腰を上げて下さるきっかけになったとしたらとても嬉しいことです。でも大文字山の魅力の素晴らしさは、冒頭にかかせて頂いたように火床でも一般登山道でもなく、蜘蛛の巣の横糸にあるのだろうと確信しております。これは比叡山や六甲山などバリルートが豊富な他の山とも一線を画する点だと思います。
>火床
他の火床がどうなっているのか気にしたことはありませんでしたが、学生時代は法の字のすぐ近くに住んでおり、京都の北からの夜景を手軽に俯瞰することが出来たのですが、いつの頃からか火床は立ち入り禁止になってしまいましたね。残念なことです。
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