大倉から丹沢山 ラッセル山行


- GPS
- 33:50
- 距離
- 18.1km
- 登り
- 1,640m
- 下り
- 1,642m
コースタイム
7:00丹沢山-8:00龍ヶ馬場-9:00日高-9:30塔ノ岳-11:00新大日-13:00三ノ塔14:00-15:50大倉
天候 | 雪/曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
前日からの雪で積雪は50cm程(?) ラッセルで蛭が岳は厳しい。スノーシューあれば行けるかも。 |
写真
感想
山行数日前に蛭が岳山荘に電話をした際、豪雨であらかた雪が溶けてしまったとの話を聞いたため、勝算ありと思い蛭が岳を目指す計画を立てました。冬山は初めてなので無理のないルートを選びたかったのですが、雪が少ないのも残念だし、ちょっと複雑な気持ちで当日を迎えることとなりました。ちなみに仕事が多忙で連日午前様の上、前日は準備もあって一時間しか寝てないという有様。友人のN氏が3時半すぎに川崎の自宅に迎えにきてくれた時はまだ寝てた。
海老名サービスエリアで朝食を摂り、大倉についたのは5時半。出発は6時。小雨ぱらつく中登り始めました。山の雨は嫌いではなくしみじみと良いもので、何より人が少ないのが良い。見晴茶屋を過ぎたあたりから雨が雪に変わり、強い風によって真横から樹林帯を吹き抜けてくるさまを眺めながら、ここに来れた喜びを噛み締めつつ登る道の楽しいこと。それからあれよあれよという間に辺りは真っ白になっていき、がぜんテンションが上がりコンディションの不良も吹き飛んでしまった。そして駒止小屋で休憩。
駒止小屋のご主人によると朝4時ごろから雪になったという。上は結構積もってるんじゃないか、でもこの時間からなら蛭が岳は大丈夫だろうとの事であった。大倉に車があるなら帰りは三の塔経由がいいんじゃないか、など色々教えてもらいました。7:50に小屋を出たが風がさらに強くなってきた。樹林帯を吹き抜けるゴーっという音が恐ろしい。レインウェアを着て顔しか出てない状態だが、顔に細かい雪がぶち当たって痛い。もう立派な(?)吹雪です。標高を上げて行くにつれて雪はどんどん深くなってゆくが、予想外の積雪に驚きつつワクワクが止まらない。早く先の世界を見てみたくて休憩もそこそこに登ってゆく(それでも単独の登山者2人に抜かれたが)。花立小屋を9:05、金冷やしを9:25にすぎて塔の岳に9:50到着。アドレナリンが出まくっていたせいかコンディションの悪い登りながら苦痛などまったく感じなかった。
塔の岳山頂の尊仏山荘でお茶を飲みつつ休憩して小屋の人達に話を聞いたが、雪が積もってから丹沢山方面に行った人は誰もいないという。雪山初心者の我々にとってはトレースがないのはハードルが高い。また、このような状態ではラッセルが大変で途中で諦めて引き返してくる人も多いらしい。丹沢山までは何とか行けるだろうと言われたが、ラッセルも未経験の我々としては期待と不安がないまぜで緊張感が高まる。取り敢えず行ける所までいってみようということで10:30に出発。小屋の横を抜ける時に胸までの吹き溜まりと格闘。吹き溜まり地帯は短かったが、いきなりの洗礼にビビる。手が冷たくなり痛みが強くなってきた。素人判断で薄いレイングローブの下に毛糸の手袋という装備だったが耐え難い痛みに襲われる。N氏の軍手が余っていたのでそれを重ねてはめて、さらにカイロをもらって手袋に差し込んだ。それでようやく痛みが和らぎ先に進むことができた。装備不良の撤退もありえた事態で危ないところだった。リサーチ不足を反省しました。
いきなり道のない雪の上、辺りの木々には厚く雪が積もり枝が垂れ下がっているし、積もったばかりの粉雪は柔らかくズボズボに足が潜る。厚いガスに覆われて遠くまでは見えない真っ白い世界の中、余りに(我々的に)非現実的な状況に笑いが止まらない。こんなサイケな世界は見たことがない。道がわかるかどうか不安だったが、注意深く見て行けば道を外れることはなさそうだ。下りはラッセルもたいしたことないし、何より楽しすぎて不安も吹き飛ぶ。所々吹き溜まりがあり、登りの場合はそこをクリアするのに一苦労。深みにハマり足が容易に抜けない時など体力の消耗が激しく、ルートファインディングが難しいが経験がないため根性で突き進むのみ。暫く行くと単独のスノーシュー氏に追い抜かれ、そのスピードに驚いた。スノーシューとは盲点だった。道に迷う危険は無くなったが、スノーシューの踏みあとはラッセルの代わりにはならない。キツイ道のりだが実体験を通して得る知恵、教訓は替え難いものがあり、強い充実感に満たされつつ進む。そして最初のポイント日高に到着。
丹沢山で昼食と決めていたので腹がへってきた。こんなことだったら塔の岳で食べるべきだった。この辺りで蛭が岳は正直諦めました。早く丹沢山のみやま山荘に着いて昼食を摂りたいので小休止してまたすぐに出発。行動を止めると寒いし、風が冷たいので途中で昼食を摂るのは無理だと思われた。雪はますます深くなり、空腹と疲労でペースは落ちてゆく。行程の半分以上は来たはずだし、進むも地獄、戻るも地獄で減らず口をたたく余地なく黙々とひたすらラッセルラッセル!(思い出してもやけくそな気持ちになる)。ようやく竜が馬場をすぎて標識を見るとあと丹沢山まで0.9キロとある。まだまだあるね…。そこから次の標識までの道のりは大変長く感じられました。ようやく見えて来た標識にはあと何メートルと書いてあるのだろうか。100メートルであってくれ、そうでなくても最悪300メートルぐらいだろ。恐る恐る見ると残り500メートルと書いてありました…。山ではよくあることだけど今回はマジでへこんだ。ていうか雪山怖いよ。シャリバテ寸前、ヘロヘロで丹沢山に辿り着いたのは午後2時10分。通常コースタイム一時間半のところ3時間半かけて到着。みやま山荘に向かってよろよろ歩いて行くと、出て来たご主人に「こら兄ちゃん!そんな大股であるいちゃいかん。後から来る人のために雪を踏み固めて歩かなきゃ。」といきなり怒られた。
みやま山荘の衛星電話で蛭が岳山荘にキャンセルの連絡を入れ、宿泊手続きをしてようやく落ち着いた。ご主人に蛭が岳行きの計画を話すと半ば呆れられ、「7時ぐらいにはつくんじゃねえか?」と言われてしまった。ご主人の石川さんの山行歴が壁に貼ってあるが、エベレストを始めとして8000メートル峰を何座も登っているという。激しく尊敬の念を感じるばかりなり。アルファ米の昼食を食らっていると塩水橋から登って来た12人のパーティーが到着。やはり蛭が岳を諦めてここに泊まるらしい。その後数組のパーティーが到着し結構な賑わいに。でも宿泊一番乗りの我々は(半)個室を取れたのでちょっと報われた。程なく夕食となったが何と固形燃料を使った焼肉が!昼食をたべたばかりだったけどがっつり食らい満腹で入床。N氏と山や宇宙、太陽、アイドルなどを賛美しつつ就寝したのでした。
(半)個室で快適かつ睡眠不足のため夜8時ごろから朝5時までほぼ目覚めることなく爆睡して完全復活。外は曇りでわずかに粉雪が舞っている。6時の朝食までに仕度を整え朝食後すぐに出発しようとしたが水がなくなっていたため購入しようとすると、N氏が雪を溶かして水を作ればいいと言う。雪山初心者なので思いつかなかったが、やってみたいと思ってました。水を作っているうちに出発が最後になってしまったが、憧れの水作りが出来て満足(昨晩やっとくべきだったけど)。7時にトレースを追って出発。昨日から僅かに積もったようだが昨日の踏み跡があるし、塔の岳方面の先行パーティーもいたようで今日はラッセルなしで楽ちんだ。ガスに包まれた雪の丹沢稜線は写真でも見た記憶がなかったが、ガスごしの淡い光と雪の照り返しの不思議な光につつまれた天上的で神秘的な光景にしびれっぱなし。昨日は景色を楽しむ余裕がほとんどなかったが、今日はその妖しいまでの美しさに陶酔して夢の中のよう。小動物の足跡を発見したがテンか何かだろうか?枝に雪が付いた木々も実に絵になり、細部を見ると針の様に尖って結晶化している。喉が乾けばそれを食べて乾きを癒し、サクサク進んで行くが立ち去るのが惜しいような気持ちだった(いつもそうだけど)。塔の岳に近づいて行くにつれすれ違う人が増えてきた。稜線上に鹿のフンを発見して程なく塔の岳に9時半到着。
山頂でお茶を淹れて一服していると一瞬だけ太陽が姿を表し尊仏山荘を照らし、雪に太陽光が反射して目が眩むような眩しさ。天候回復を期待したがこの後すぐに雲に覆われ、その日は2度と太陽の姿を見ることはなかった。10時すぎヤビツ峠方面に出発。駒止小屋主人の勧めに従い三の塔経由で降りることにする。表尾根の積雪も相当なもので、踏みあとが多いので問題ないがラッセルで登るとしたらコースタイムの倍ではきくまい。晴天であれば最高の展望だが、濃いガスに包まれたまま夢の中のような光景は続く。木又小屋をすぎてまた雪がちらついてきた。そのあたりで今山行初山ガールと遭遇。今回は山ガールが非常に少なく残念な限り。そして鳥尾山を過ぎ今行程最後の登りをようやく登りきり13:00に三の塔着。山頂の避難小屋でようやくカップラーメンの昼食にありつきました。
昼食後大倉方面の下山コースを探すがわからず、小屋で休んでいた他のパーティーに聞いてみると少しヤビツ峠方面に下ったところに分岐があるという。また雪がちらつきだし、温度計は-3度をさしている。少し行くとすぐに分岐があり多くの踏み跡がついている。この道を行くのは初めてで、鬱蒼とした暗い森のなかに降りて行く。傾斜は険しくどんどん高度を下げて行くが、すぐに枝の雪が無くなりついで登山道の雪が溶けてぬかるみになってきたのでアイゼンを外した。そこから延々杉林の下り道だが歩きやすい道でここを登るのも良さそうですね。15:00に牛首分岐着、いつもなら山道コースで降りるところだが、今回はもうお腹いっぱいなので林道を降りることにしました。N氏と今山行のことや社会問題などについて話しつつ歩いて行けば、あっという間に大倉に帰還。15:50着でした。
大倉でアイゼンなどを洗い帰路につく。東海温泉に立ち寄り帰りは下道。雪がクッションになったのか足のダメージはいつもより軽いような気がする。地元でラーメンを食べて9時過ぎには帰宅。天国から日常へとまた戻ってきたのでした。(おしまい)
コメント
この記録に関連する登山ルート

この山行は最高でしたね。
登り慣れた丹沢の山がとても遠かったし、ひたすらのラッセルで大冒険だった。
初雪山で冬山の魅力を存分に味わえて幸せでした。
ぜひまた挑戦しましょう!
雪山素晴らしいですね。
厳しさと美しさが半端じゃなく、人間を寄せ付けないようなたたずまいが素敵だった。その魅力に取り付かれてより厳しい雪山に挑戦し、遭難するまでエスカレートしてしまう人がいるのもなんだか納得してしまう。自分の場合本格雪山装備を全部揃えるまでどれだけかかるのか読めないので(金銭的に)まだまだ先の話ですが…。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する