記録ID: 2119783
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沢登り
東海
【奥美濃】若丸山(滝ノ又谷から)
2019年11月23日(土) [日帰り]


- GPS
- --:--
- 距離
- 17.2km
- 登り
- 1,081m
- 下り
- 1,105m
コースタイム
日帰り
- 山行
- 9:50
- 休憩
- 0:50
- 合計
- 10:40
5:50
80分
櫨原集落移転記念碑のある広場(駐車地)
7:10
20分
カラカン谷出合
7:30
160分
滝ノ又谷出合
10:10
90分
950m二俣
14:00
50分
P1072m手前コル
14:50
100分
滝ノ又谷出合
16:30
櫨原集落移転記念碑のある広場(駐車地)
・軌線は手書きのため,扇谷右岸の林道部分は実際と一致していない可能性が高いので,御留意を。
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
・扇谷の奥へと続く林道のゲートは,上がってきた道を少し戻ったところのヘアピンカーブの箇所にある。この林道は地形図には表記されていないが,扇谷のダム湖の右岸に沿うように続いている。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
地理的な奥深さ,そして山名の奥ゆかしさに惹かれて,長いこと訪ねてみたいと思っていた若丸山。奥美濃の奥山として典型的な,登山道のない藪山である。今回は,若丸山のクラシックルートとも言うべき滝ノ又谷から山頂を目指した。 <滝ノ又谷> ・滝は少なく穏やかな谷で,登攀的な楽しみというよりは,奥美濃の深く美しい森を逍遥する楽しみのほうが強い谷です。 ・ただ,先ほどの「穏やかな谷」という評価と矛盾するようですが,大きめの滝の前後だけ突発的な険しさを見せるのもこの谷の特徴です。今回取ったルートでは,目立った滝は3つだけでしたが,滝の周囲は壁が立っているので,高巻きの際は少し注意が必要です。 ・詰めでは,背丈を越える笹薮と灌木のミックスという,一番嫌なタイプの藪漕ぎが待っています。この詰めの藪漕ぎでかなり時間を取られるため,時間配分に注意。また,今回取ったルート(950m二俣の左俣)は,詰めで沢が微妙な分岐を繰り返し,さらに結構早い段階で沢形も消えてしまうため,ルートファインディングも難しかったです。 <下降ルート(若丸山南尾根〜滝ノ又谷の枝谷下降)> ・この下降ルートは,日本登山体系でも下山用として推奨されているルート。若丸山の南尾根は,山頂から下り始めてすぐは比較的明瞭な踏み跡がありますが,下るにつれて次第に不鮮明になり,やがて灌木主体の激しい藪漕ぎになります。 ・下降に使う滝ノ又谷の枝谷(540m付近で滝ノ又谷と分かれ,北西に延びている枝谷)へは,南尾根からP1072mのある支尾根を経由して下降しますが,この支尾根は,激藪に加え,下り始めの尾根形状がはっきりしていないので,一発でばっちり支尾根に乗るのは結構難しいです。特に,視界不良時はこの支尾根を捕まえるのはかなり難しいのではないかと思われます(今回の山行時,マーキングの類も見かけませんでした。)。状況によっては,登ってきた滝ノ又谷を忠実に引き返して下山するのも選択肢かと思います。 ・下降に使う滝ノ又谷の枝谷は,全くと言っていいほど悪場がなく,坦々と歩いて下れます(滝ノ又谷と出合う直前に3mほどの滝があるが,簡単にクライムダウン可能)。 |
写真
ダム湖が途切れ,扇谷が本来の姿を取り戻したあたりで,林道は河床に降りて途切れる。扇谷の流れは穏やかで美しい。扇谷を渡渉して対岸(左岸側)の古い林道跡に上がり,上流方向へ歩いていく。
林道跡は草が生い茂りほとんど獣道と化しているが,ところどころでカーブミラーがぬっと出現しびっくりする。昔はここを車が普通に走っていたのだ。ダム湖の出現で,本当にいろんなことが大きく変わってしまったのだと実感する。
カラカン谷出合に到着(写真に写っているのはカラカン谷)。周辺は小広い平地もあり,昔は人家や畑があったのではないか,と思わせるような場所である。ここで林道は橋を渡って左岸から右岸に渡り,谷の奥へ続いていく。
林道は滝ノ又谷と扇谷本流の出合で途切れる。滝ノ又谷は自然林に包まれた穏やかで気持ちの良い流れ。林道が途切れた後も,最初は右岸沿いに,途中から左岸沿いに林道跡と思われる平場が続いており,それを辿っていく。
林道跡は,下山に使う予定の枝谷が別れる540m二俣の手前あたりで途切れ,そこからは本格的な沢登りとなる。少し登ると写真の8mくらいの滝。岩を穿って落ちる姿がなかなか美しい。左岸から巻き上がる。
下の2段は簡単に直登できるが,3段目が少し難しく,右手を灌木にぶら下がって小さく巻き,側壁を回り込んで4段目の滝下に出ようとした。しかし,4段目の滝の様子が側壁に阻まれて見えない。今しがみついている足場は不安定で,もし4段目の滝が登れない滝だった場合,戻るのにも窮することになり,危険な状況に置かれる可能性がある。迷った末,安全第一で右手の急斜面に戻って高巻くことにした。
滝を越えてから,急斜面を灌木に次々にぶら下がりながら谷に降り立ち,落ち口から4段目の滝の様子をのぞき込むと,果たしてつるつるで登りにくそうな滝であった。先ほどの判断は正しかったのかもしれない。
950m二俣に到着。ここで地形図を見ながら思案。右俣は傾斜がゆるく登りやすそうだが,急峻な左俣は若丸山の山頂に最短距離でダイレクトに伸びており,魅力的に見える。左俣に入ってみることにした。
そのすぐ上で,突如として出現した高い岩壁に進路を阻まれる。多難な前途が予想され,緊張が高まる。ここまでザックの中に入れたままにしていたハーネスを装着し,ロープをザックの出しやすい位置に移動させる。
さて,この先どんな悪場が待ち構えているのか,と身構えつつ先に進んでいくと,谷は急に開けてしまい,傾斜はきついものの,穏やかな源頭の雰囲気となってしまった。険悪なのはさきほどの箇所だけだったようだ。ハーネスを付けた意味がなかった…。
しかも割とすぐに沢形は消えてしまい,背丈を越える笹の藪漕ぎに突入。地形図とコンパス,そして笹の間にわずかに見える周囲の微地形などの情報を総動員しながら,山頂があると思しき方角へと,笹の荒海を泳ぎ渡っていく。
標高を上げると今度は濃密な灌木の藪。ある意味こちらのほうが笹よりも始末が悪い。登る者を力強く押し止めようとする無数の腕のような灌木の密林の中を,顔をはたかれ足をすくわれながら,体をめり込ませて進んでいく。
下山は,若丸山の南尾根を経由して,滝ノ又谷の枝谷を下降する。日本登山体系でも推奨されている下山ルートだが,懸念は南尾根の藪がどの程度なのか,ということ。懸念するまでもなく,やはりひどい藪でした(笑)。
途中で見かけた冬の便り。斜面の陰になったところに,まだら状に雪が残っていた。数日前に冬型気圧配置になった際に,この辺りも雪が降っていたのだろう。奥美濃の山々が深い雪に包まれる冬はもうすぐだ。
P1072の手前の小さな鞍部から,東側の斜面を下って滝ノ又谷の枝谷に降り立ち,谷を下降していく。この枝谷は,地形図から予想される通り平凡なおとなしい谷で,滝などの悪場は全くと言っていいほど出てこず,快調に下っていくことができる。滝ノ又谷に出合う直前で3mほどの滝が出てくるが,簡単にクライムダウンできる。
装備
備考 | ・40mロープを携行しましたが,今回は使いませんでした。下降に使う枝谷も滝はほとんど出てきませんが,一部高巻きで傾斜が強い箇所もあるため,ロープは持っていたほうが安全です。 ・ぬめりが強いため,沢靴はフェルト推奨。 |
---|
感想
若丸山。越美国境稜線の登山道のないセクションにぽつんと存在しているその奥ゆかしい山名に惹かれていた。牛若丸からの連想だろうか,また周囲に冠山や扇谷など古めかしい感じのする地名が隣接しているせいだろうか,何となく若丸山という名前に若武者のような古風な清々しさを感じる気がして,しかもそれが一見人里離れた奥山に存在していることに何となく不思議な興味を感じていたのである。古色溢れる伝説の一つや二つ、隠していそうな山名である。
登路とした滝ノ又谷は穏やかな谷で,この谷が徳山ダム完成前に若丸山登山のルートとしてよく登られており,クラシックルートとされている理由もうなづける気がした。紅葉狩りの沢としても素晴らしいルートだ。
登り切った若丸山の山頂は藪山にしては驚くほど眺めがよく,ほどよい小広さで気持ちがいい。沢登りや藪山の際は,帰路が気になってあまり山頂に長く留まらないことが多いのだが,あまりに居心地のいい山頂だったので,しばらく寝っ転がって,空を眺めながらぼーっとしてしまった。山名から受けていた印象のとおりの,清々しい山頂であった(そこに至るまでの藪は激烈で,一抹の清々しさもないが…)。
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こんにちは。
今年のお盆休みに登っているので、興味深くレコを拝見させて頂きました。私は800m二股を右に入りましたが、たぶんこちらの方が藪は濃いですが、緩やかだと思ったからです。案の定、水の切れた辺りから猛烈な藪で、往生しました。
なお、この二股を分つ尾根には明瞭な登山道が残っています。帰路はそれを辿りました。そして二股が合流する地点では真っ黒な熊にも遭遇しました。
maasuke1様、はじめまして。右俣がどうなっているか気になっていたので、教えていただきありがとうございます。どちらに入っても、やっぱり藪漕ぎは避けられないんですね。若丸山の藪漕ぎは、まさに地面に足がつかないような藪漕ぎで凄まじいですよね。この藪も若丸山の魅力の一つなのかもしれませんが…。
二俣の中間尾根に登山道があるというのは、教えていただいて初めて知りました!まさかこの界隈の尾根に道がついているとは…。どんな来歴を持った道なのか、気になりますね。
maasuke1様の若丸山の記録も拝読させていただきました。緊迫感と奥美濃への愛に溢れる記録で、読み入ってしまいました。滝ノ又谷の滝に祠の跡があるというのも記録を読ませていただいて初めて知り、驚きました。コメントをいただき、ありがとうございました。
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