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Yamareco

記録ID: 21325
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
槍・穂高・乗鞍

霞沢岳

2003年02月21日(金) 〜 2003年02月22日(土)
 - 拍手
GPS
32:00
距離
8.8km
登り
1,739m
下り
1,727m

コースタイム

2月21日名古屋(7:10)→塩尻(9:00)→釜トンネル(10:40)→尾根末端(11:40)→標高2000mイグルー(14:30)
2月22日標高2000mイグルー(5:40)→山頂(9:00)→イグルー(10:3047)→尾根末端(11:07)→釜トンネル下駐車(12:00)→松本→名古屋
過去天気図(気象庁) 2003年02月の天気図
アクセス

感想

北アルプス南部では最後に登り残した珠玉のピーク霞沢岳。同じくなかなか行く機会の無かった伊那の前原君と西尾根を往復する計画。西尾根は大正池湖畔から唯ひたすらに急傾斜の尾根をがんばるだけのルートだが、スッキリ山頂にあがる明快さが良い。記録を読めば首までのラッセルがどうの、頂上直下の岩稜があるだの書いてあるが、今回はさしてラッセルに苦しまず快適に高度を稼ぐハシゴ登りのような尾根だった。

安房トンネルが開通した(1997年12月)あと上高地に冬来るのは初めてか。おかげで車はトンネルの近くまで来られるようになった。釜トンネルも上流側の出口付近は以前は雪崩の常襲地帯で、デブリだらけだったから、下山に雪崩警戒の為予備日を用意したものだったがなんとトンネルが延長され今や危険なし。工事も入っているようでトンネルに灯りもついていて、凍っていない。

尾根末端の砂防事務所の脇をワカンをつけて適当に登り出す。ラッセルはほとんど無し。尾根筋は風のせいか雪がぶっ飛んで硬い所も多い。時折潜るが覚悟したよりはるかに速いペースで高度を稼ぐ。見晴らしの良い場所からすぐ下の大正池を見ると、まるでハシゴでも登ったように真下に見える。尾根の急峻さが伺える。登るに連れ快晴の空の下、真正面の焼岳が圧倒的に近い。穂高連峰も岳沢正面に純白で良い季節だ。標高2000mあたり、尾根合流点の下の肩のような場所で天場とする。もちろんイグルー。雪氷研究者の前原君は昨年、今年と、撮影補助のバイトをしてもらった折り、僕が教授したイグルー技術の修得に熱心だ。やはり実地で実演して見せないとなかなか細かい技術は伝わらない。40分ほどで二人用が完成。今日も快適な天場ができた。あたりは立ち枯れのカラマツが多いので、ささやかにたき火をする。夕日がイグルーを照らし、焼岳の南の稜線に沈んでいく。穂高も紅く色づいた。

朝、支度をしてイグルーを出ると雪が降っている。雪の結晶を見て気圧配置を推測する前原君に寄れば、六本の枝がしゃもじのように太った結晶で、低気圧による降雪の時に良く見られる物だという。彼は雪の結晶を観察して、低気圧性のものか冬型気圧配置による物かを見分ける経験を積んでいる。山に登っても雪の結晶など気にとめない人は多いし、山になど登りもしない雪氷研究者も数多い。現場の経験あっての自然科学だよな!と思った。自然科学のアカデミズムの世界でさえ現場から離れて机上の理論のみが脚光をあびるのが今の時代の流行りだという。

昨日の好天に気をよくしていたが、天気の周期は思いの外早く、どうやらもう接近中の低気圧の影響が始まっていた。それでも月がおぼろに見えていたので望みもかけ、行けるところまで行ってみる事にする。視界は50mほど、北からの風がかなり強い。天場の直ぐ上から2050mの尾根合流点までは一番まとまったラッセルの急斜面だが、昨日僕がたき火の仕込みをしている間に前原君がラッセルしといてくれていたので、サクサク進む。今年は39になる僕は、以前に比べれば体力不足を感じる。27才の前原君のようには進んでいけない。昨年ころまでは何のトレーニングもせずとも20台に負ける気配は無かった。

核心と言われた雪稜はハイマツが見えていて問題なく、岩場も凍りついていたが傾斜がそれほど無くスタスタ抜ける。気温は氷点下7度とそれほど低くは無いが、ビシビシと目つぶしを喰らわす雪つぶてが一番の難問だ。久しぶりに目出帽を下ろして1920年代の飛行士みたいな二つ目ゴーグルをかける。台風並の防風が時折襲い、視界もまるで利かないが、ハイマツで地面が所々見えるのでスレスレでホワイトアウトにはならない。しかし頂上間近の傾斜が緩く尾根が広くなったあたりで、地面が見えなくなるところが始まった。時折ガスの視界が薄くなるので、行く手の地形が確認できるまで、寒風の中ここで様子を見る。5分ほどすると一瞬、数百メートル先に再びハイマツの生えた尾根筋が確認できたので勇気を得て前進する。この時ここに赤旗を打ち、方向を確認する。見えたハイマツのラインは主稜線だった。ここを北に向かってすぐ、看板のころがっている霞沢岳山頂に着いた。握手をしてすぐ戻る。飛ばされそうな西風に45度ほど体を傾けて歩く。結局このホワイトアウトを巡る判断がこの山行の一番の緊張の山場になって、充実感を強くした。針葉樹林帯に降りて腰を下ろしてやっと落ち着いたときの安心感はたまらない。下りは急な尾根なのでシリセードであっというまに下降する。サラサラの冷たく乾いた雪は尻滑りには絶好だ。イグルーからの下りも早く、あっというまに尾根末端に。大正池脇の道は最近流行のスノーシューを持った中高年上高地散策団体が沢山歩いて入ってきていた。安房トンネル開通以降、冬の上高地はずいぶん訪問者が増えたらしい。充実したのに下山は早かったので坂巻温泉でかなりゆったり湯に浸かる時間の余裕があった。松本駅前「たくま」でトンカツカレー。前は国分町の遠兵の地下にあったよね。


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