甲斐駒黒戸尾根敗退〜最高の日にいちから出直し。
- GPS
- 32:00
- 距離
- 26.4km
- 登り
- 2,934m
- 下り
- 2,664m
コースタイム
24日>8:00七丈第一小屋-8:55五合目小屋-10:00刃渡り-10:55笹の平-11:40尾白川渓谷分岐-12:50不動滝(吊り橋)-13:35錦滝(日向山登山口)-14:40日向山(coffeebreak)-16:10矢立石登山口
天候 | 23日:雨。夕方より吹雪。 24日:夜明けまで暴風。その後、嘘みたいな快晴。 |
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過去天気図(気象庁) | 2012年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
復路:韮崎より中央本線にて甲府。甲府より高速バスで新宿。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
黒戸尾根:良く整備されている。急登として有名だが、斜度は大したことない。斜度より距離の長さ。刃渡りは手すりもあり、別になんてこともない。それよりも問題は五合目から七丈小屋までの鎖、梯子の連続。とくに終盤の梯子&鎖は斜度、高度感もあり、降雪時や凍結した場合は危険個所となるだろう。 尾白川渓谷尾根道:準登山道と書いてあったが、観光客が歩けるところではない。崩壊個所やロープを掴んで登るところもあり、荒れ気味だった。不動滝の吊り橋は11月より改修が始まり、この先、立ち入り禁止となるとのこと。 日向山:錦滝からのコースは裏登山道といった印象。黒戸尾根よりもはるかに急登。道標は豊富。反面、矢立石からのコースは非常に整備されている。ファミリー登山もできそう。 |
予約できる山小屋 |
七丈小屋
|
写真
感想
甲斐駒ケ岳は絶対、黒戸尾根から登りたい。
数年前、NHK「小さな旅」という番組をたまたま見ていた。
山を始めたばかりのときで、
山のことをテレビやっていると、なんでも見ていた。
その時の回がたまたま「黒戸尾根」だった。
甲斐駒ケ岳という山に続く登山道。そのひとつ。
ただ、簡単に登ることはできない。日本3大急登のひとつだという。
近年では道路が発達し北沢峠より簡単により合理的に
登ることのできる道もできたため、この道から登る登山者は減ったという。
しかし、伝統のある山岳信仰の道であるため、ファンも多く、
その登山道を守るための整備をボランティアで行う人もいるとのことだった。
なんとなく見ていたものが憧れに変わっていくことがある。
そんな感じだった。
甲斐駒をいろいろな場所から見るたびにその黒戸尾根のことを思い出した。
前日、残業が終わり、準備を整えると、もう遅い時間。
眠ると、寝過してしまいそうで、2時頃からそのまま、起きていた。
電車の中でも熟睡はできないタイプであるため、
疲労ばかりがたまっていく。
スタート地点は白須バス停から少し歩いた道の駅はくしゅう。
ここで水を補給し、竹宇駒ケ岳神社まであるく。
雨は小雨。登山を中止するほどではない。
しかし、予報は本日、全国的に荒れるとのこと。
駒ケ岳神社までの道。一台の車が止まった。年配のご夫婦だった。
「今日、登るんですか。どうか気を付けて」奥の女性が言った。
きっとご夫婦で黒戸尾根を登ったことがあるのだろう。
神社で参拝を済ませ、観光客の方々をすり抜け、尾根へと入る。
雨は止みそうもない。それでも、尾根の道は
信仰の道を感じさせる景観と雰囲気を持った良い道だった。
ところどころに祠や石像が置いてある。
この道をいろいろな思いで歩かれた人もいるだろう。
急登というほど、きつい道ではなかったが、疲労と睡眠不足が歩を止める。
少し、眠りたい。眠くて何度も立ち止った。
刃渡りはどうってこともなかった。ただ、
五合目からの梯子や鎖の連続は急で、楽ではなかった。
七丈第一小屋はまだ、見えない。鎖場が続く。
赤く染まった紅葉や白い空がときおり小屋の屋根に見える。
それが、幻覚だと気がつくとしっかりしろ、頑張れと気を取り直した。
いままでにない身体と精神の状況だった。
前日、軽アイゼンをザックに入れ忘れたことを思い出したのもこのときだった。
雨が雪へと変わった。本当の雪だろうか。ぼんやりしていた。
七丈第一小屋に着くと、小屋番さんが見当たらない。無人なのか。
ただ、休みたい。温かい小屋の中をうろうろしていると、
男性(有名なクライマーさんらしい)が奥の扉から出てきた。
テントの管理費を払うと、「アイゼンは持ってきたか」と聞かれた。
「忘れました」と言うと、
「明日は今降っている雪が全て凍結する。アイゼンの無い者は(頂上に)行ってはいけない」と言われた。
しかも、下山するにも危険な状況になるとのこと。
何も言えなかった。愕然としたのは覚えている。あとはただ、休みたいと思った。
風も次第に強くなり、吹雪になった。
手袋を探す間もなく、素手でテントを設営し、中に荷物を放り込み、
あとはテントの中に転がり込んだ。そのまま一時間寝袋の中で動けなかった。
やはり、一番はアイゼンを忘れたことのショックだった。
頂上へ挑戦することもできず、選択肢は降りることのみ。
外は暴風雪。風が暴れ狂っている。こんな風の音は初めてだった。
やっと起き上がり、音量を上げたipodで音楽を聴きながら、反合の米を炊き、
湯揃するだけのハンバーグとおでんを食べると、気持ちはだいぶ落ち着いた。
明日は8時を待って、下山としよう。そして温泉入っておとなしく帰ろう。
担いできた日本酒を飲む精神的なゆとりはなかった。
朝方まで、テントは強風でたわみ、つぶされ、自分の身体で抑えていなければならなかった。
その間、ポールが折れ、テントが吹き飛んだ夢をほんとに見た。
一瞬、風が弱まった隙にトイレに出ると、雪はほとんど積っていなく、
ただ、満天の星と下界のオレンジ色の光がぼんやりと見えた。
明日は本当に快晴なんだ。
その後も明け方まで強風は続いたが、空が明るくなると嘘みたいに風は収まり、
まるで当たり前のように鳥達も鳴きはじめた。
何事もなかったかのように朝が来た。
快晴だった。行くなと言われていなければ、行きたかった。
最高の登頂日和にただ下山する。
昨日の山と同じ場所と思えないほど、光に満ちた空と山を歩く。
美しい紅葉も昨日はあまり気がつかなかった。
心配した登山道の凍結も無く、全く問題はなかった。
先月の北鎌敗退も思い出し、俺、山やる資格あるのかと自問自答しながらも、
美しい風景に、ただ感動している。
八ヶ岳、奥秩父。富士。鳳凰三山、オベリスクもはっきりと。
やっぱり、これで降りれない。帰れない。
尾白川渓谷分岐で地図を広げ、日向山へ行くルートを見つける。
登ってみよう。
錦滝から登るルートは黒戸尾根より急登で登りごたえもあった。
なにより、驚いたのは急に現れた白砂の稜線と頂上。
まるであの、鳳凰三山そっくり。
これ以上ない八ヶ岳の展望の中、コーヒーを入れた。
なんだか、全てが、今、報われた気がした。
やっぱり、山、辞められないわ。と、年内のリトライを誓った。
その後わんこを連れた、男性と出会い、今日の話をした。
男性は山好きが高じて40歳のときに静岡からこちらに住まいを移したという。
また、来いよと言ってくれた。
若い頃はさんざん山をやったが、今は酒ばかり。
気がついたらもう70歳になっていたという。
まわりに山をやる人間も少なくなって寂しいという。
男性と別れ下山した帰路、長い林道を下り、里へ歩いていると4駆の高級車が止まった。
窓から顔を出したのはあのわんこだった。
天気予報と火曜日の天候。
とても心配で中止されたことを願ってました。ま、それはないな
とも思ってました
いくらmakasioさんでも万全の態勢でお願いします
アイゼンあってもいつもとは違う体力だったかも…。
山の教えと救いかもしれません。
日向山は矢立石のほうからでしたが、一番感動した山でした。
チームメイトのもう一回行きたい山BEST1です。
リトライ楽しみですね
黒戸尾根、お疲れ様でした
道具忘れ、痛かったですね
それだけで精神的に参ってしまうというか・・
はいはい、私も何度もあります
睡眠不足もあって、大変でしたね。
敗退?
いえいえ、また登るチャンスもあって、甲斐駒もあるのですから「引き分け」ってところではないでしょうか?
登頂した時には、今回のことで感動が大きくなると思いますよ
次回は「準備万端で」、素敵な記録、見せてください
早速のメッセージありがとうです。
アイゼン忘れたことに気がついてから
何のために登っているのか分からなくなりました。
でも、降りることも考えなかったです。
まさに悪夢ちゃんでした。
しかしそれもこれも、日向山の展望のため?
素晴らしい山ですね。mmgさん経験済みだったとは。
八ヶ岳の展望。そこでの出会いもあったりで。
結局、行って良かったーでしたよ。
年内のリトライ、応援して下さいね。
アイゼン忘れずにね
いつも読んでくれてありがとうございます。
ああ、おバカだ。大馬鹿だ。
仕事の疲れとか言い訳にならないですね。
嗚呼、アイゼン。
優しいコメントありがとうございます。
もちろん、次も同じルートで再挑戦します。
また、頑張りますよー。
憧れのところって、どうしてこう手が届かないんでしょうね。(私の場合は南ア南部。)
ますます尊くなった甲斐駒、次回山頂に立ったときの感動はどれほどでしょう。
だから敗退ではなく、甲斐駒に棲む神様の粋な計らい(いや悪戯心?笑)ってことかな〜と勝手に解釈してます。
だって日向山、素敵じゃないですか〜。きっとこの素晴らしさをmakasioさんに教えたかったのでは?
私も行ったこと無いから行ってみたくなりました。八ヶ岳近くていいですね。
なかなかレコが上がってこないから、まさかあの痩せ尾根で何かが・・・!?とあらぬ事を考えてしまいましたが、風雪の中ご無事で何よりでした。
月曜日の甲斐駒、日中はよく見えてましたよ?
夕方からそんなスゴイ事になっていたとは・・・
どうりで目を懲らしてもmakasioさんの姿が見えなかったわけだ。
御心配をかけました。無事に帰還しました。
日程22日になってましたね、マチガイですね。火曜日の23日に上がり24日に降りてきました。
火曜日は東京も天気が荒れたようですね。
こういうところですね。確認大事です。嗚呼、アイゼン。(しつこいね)
yokoさんの南ア冠雪の日記でアイゼン、持って行かなきゃ、と思って出したのに。出したまま・・・。
下山は自分のことを攻めていましたが、日向山で堂々とした八ヶ岳をみたら・・・。
また、同じことに挑戦できる幸せをいただいたことに感謝しました。
皆さん、おっしゃってくれているように、敗退後の登頂はどれほどの感動でしょう。
わくわく。
もうアイゼンが必要な時期なんですね。
日向山は中々良いところですよね!
春に日向山から黒戸尾根見て、長いな〜。日帰りきつそうだな〜
なんて思いました。
個人的には黒戸尾根日帰りできればようやく一人前かな〜
なんて勝手に思ってます。まだ私は半人前ですね。
今年はもう無理そうなんで、私は来年かな〜
やるやる詐欺になりそうですが。
リベンジ、雪も増えるでしょうし、気をつけて下さいね
24日、お会いしましたね。
そういう経緯があったのですか。
結果的にはアイゼンなくても大丈夫だったとは思いますが・・・。
何れにしろ年内なら積雪量はそれほどないと思います。
好天の日を狙って挑戦してください。
北鎌は確か左俣で行き詰って撤退されたんですよね。
レコ拝見しましたよ。
私のときは北鎌沢出合で十分に水が汲めたのですが。
時期が違うと状況が変わるのですね。
北鎌もまた挑戦されますか?
来年また行こうと思ってます。
makasioさん、こんにちは。
ようやく、指揮の方も終わり、今日は家でのんびりしています。ほっ。
なかなか大変でしたね。
僕も、昔、アイゼンこそはいてましたが40cmの新雪の所で、道も分からなくなっちゃって、断念したなぁ 〜なんて思いだしました。
やっぱ、あきらめは肝心 ですよね。次また行けるんですし・・・。紅葉の写真きれいですね。目の保養させてもらいました。
最近僕は、低山続きで・・・。11月どこか行けるとよいんですけどね・・・・。まぁ、天気とスケジュールをにらめっこしたいと思います。
鳳凰三山、僕も来年行きたいんですよ〜。今年行きそびれたので・・・。行きたい山はたくさんありますよね。(@^^)/~~~
日向山。なかなか人気の山なんですね。
山頂の八ヶ岳の展望の素晴らしさ。
もちろん敗退(?)した黒戸尾根も。なんだか、ジーンとしましたよ。
思い出の山がまたひとつできました。
黒戸尾根、日帰り、皆さんすごいですね。できないことないと思いますが、やろうとは・・・
思いません。
びっくりしました
数々の素晴らしい山行、心に残っています。
僕にとって有名人の一人でした。
早いし、雰囲気のある方だなと思いました。
アイゼン無しでも行きたかった。でも・・・。
心のもやもやをあれこれしゃべってしまいましたね。
すみませんでした。
siriusさんのレコにお邪魔しますね。
北鎌、来年。もちろんやりますよー
オーケストラの指揮、お疲れさまでした。
誰のどんな曲やったんでしょう。
僕もときどき、ホールにクラシックを聴きに行くんですよ。安い席ですが・・・。
甲斐駒、断念した経験があるんですね。
思ったより、雪がついておらず、実際は、かなりもやもやでした。
でも小屋番さんの意見を無視することはできません。
鳳凰三山は素晴らしいですよ。是非。
行きたい山は増えるばかり―。ですね。
「転進」お疲れさんです!
下見と思えばヨカヨカじゃないですか
無理して怪我したり命落とせば2度と登れなくなるしね!
それこそ痛恨の極みだしね〜
死んでも死にきれないよね
今週は天気良さそうだし、良い山頂踏めそうだね
黒戸頑張れ〜
違う山の上から応援してるよ!
ありがとう。そう、下見でした。
だから、転進も予定通り。・・・。なんて、嘘。
アイゼン。忘れたと言いましたが、実際は、
無くても、行けるだろうという認識の甘さがあった。
高山の登山を始めて3年め、俺、何も山のこと、
分かっちゃいなかった。反省。
経験ですね、なんでも。良い経験になったよ。
本当にそう、思える。
金曜日か、もうすぐだ。頑張るよ。
acchiも自分の山に挑戦してください。
最近、火がついたように頑張ってますね。すげー。
ふと思い出したのは、農鳥オヤジでした。
私の場合は、「忘れたのではなく、軽量化」でしたが。
9月の末頃だったし、「南アだし、雪大丈夫。」って、楽観、楽観。
やられました、ブリザード。
「塩見にはアイゼンピッケルなしではいかせん。」
でしたねー。オヤジさん。
これは三度目の黒戸に登った時のヤマレコです
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-127691.html
この時は夏だったので普通に日帰りでしたが
感想に初めての黒戸尾根の回想が書いてあります
まぁ酷い感じです(笑)
スイスイ登れた山より、色々とあった山の方が
思い出にに残っています
マンガや小説じゃないですが、頂上ばかりが
山じゃないってその通りですよね
黒戸尾根も山頂の思い出より
命からがら登ってたどり着いた七丈小屋の事を
今でも印象強く覚えています(笑)
makasioさん、こんにちは。
アイゼン忘れたのはちょっと残念、七丈小屋で誰に忠告されたか知りませんが、
それでも潔く撤退を決めた makasioさんに拍手。
リベンジ頑張ってねって口で言うのは簡単、しかし出直しは結構大変なことですよ。
でも、こればっかりは誰に文句云っても仕方のないこと、
時間見つけてまた挑戦して下さい。
日向山って中々良さそうですね、頭に入れときます、ありがとう!
農鳥親父さん。
良い味してますよね。昔堅気の山小屋の主人。
僕も怒られったけな。でも優しさ感じましたよ。
9月末でブリザードとは。
山は、紅葉と同時に冬が来るんですね。
下界とは全く別の世界。
そういう世界があるということに感動を覚えます。
さあ、明日、リトライしてきますよー。
そうでしたか。
なんだか、同じような体験しているんですね。
山はいつもうまくいくことはないですね。
上手くいくことの方が少ないかな。
天候とか、自分の体調とか。
今回は自分の経験のなさと認識の甘さが敗因ですね。
でも、失敗も成功も山を好きになる材料になるから、
本当に山って不思議です。
黒部渓谷、お疲れ様でした。
あー温泉と刺身ー。いいな。
恥ずかしいレコですね。
七丈小屋の小屋番さんに止められました。
でも、日向山から見た八ヶ岳を見たら、
さあ、もっかいやるぞと思えました。
経験ですね。失敗も成功も、山と付き合うからには
これからもたっくさんあるでしょう。
でも、もう、無茶はしませんよ。
明日、行ってきます。
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