初の雪山テン泊で感じられたこと 〜天狗岳とご近所さん〜
- GPS
- 15:20
- 距離
- 16.2km
- 登り
- 1,086m
- 下り
- 1,078m
コースタイム
1月13日 黒百合ヒュッテ8:45 - 8:57中山峠 - 9:26中山山頂 - 10:12高見石小屋 - 10:20高見石 - 10:57白駒池 - 12:00高見石小屋(昼食)12:35 - 12:54サイの河原 - 14:00渋の湯
天候 | 両日ともに快晴の青空でした。 12日の午後から高所での風が強く、ピッケルで身体を支える場面が続きました。 |
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過去天気図(気象庁) | 2013年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
1,000円/日 |
コース状況/ 危険箇所等 |
この時期にしては積雪は少なく、総じて道も歩きやすいです。 ただ森林限界を超えると風でトレースが消えているところがあり、強風と相まってルートを見失う危険もあります。 |
予約できる山小屋 |
黒百合ヒュッテ
|
写真
感想
先月やり残した宿題を片付けにやってきた八ヶ岳。
初めての雪山テン泊をどの山で?
先月も来た黒百合ヒュッテでと決めていました。
気持ちが空回りした前回の天狗岳。
今回は山と向き合える自分を連れて来たつもりです。
途中で仮眠や休憩で時間を調整しながら渋の湯に着いたのは6時半。
車を出たとたんに身体にしみこむ冷気に逆らって無理やり四肢を伸ばし、眠気の代わりにやる気を注入します。
準備段階から不安が抜けないのは、寒さ対策ができているのか自信が持てないこと。
モノだけは必要最低限で揃えても、使ったことがなければ頭にあるのは箇条書きの持ち物リストだけです。
シュラフの対応温度は書いてあっても身体はそれをどう感じるのか?
テントの冬張りはなくても大丈夫か?
一度体験してみれば、案ずるより・・・と思えることも多いのでしょうが、この一ヶ月間は不安の方が勝っていた気がします。
元来怖がりの私にすればいつものことですが・・・
歩き出して気がついたのは先月に比べて少ない雪の量です。
先月森の木々が雪を被ってクリスマスの演出をしていたのに比べ、その雪をきれいに落としてしまった森は木がみんな身を軽そうに空を向いています。
1月に入ると厳冬期のイメージを持っていましたが、関数のグラフのようにきれいな線で季節が進むわけではないんですね。
先月の山に挨拶をしに来たわけではなく今日の山を感じに来たのだと、あらためてセンサーのチューニングを合わせておきます。
冬の八ヶ岳は晴れることが多いと聞いていましたが、前回と同様に今日も快晴の空です。
この山の位置だともう日本海側の気候とは全く違うんだろうと印象を受けます。
少し回り道をしたおかげで人の少ないルートを歩きながら、やっぱり違う雪の感触を確かめていました。
軽い、乾いた、細かい・・・足に伝わる触感はそんな感じです。
耳に聞こえる音は・・・擬音語から濁点を取り除いた音でしょうか?
そんなあれこれに気を散らしながら黒百合ヒュッテ到着です。
不安の材料はあるにしろ、幕営の作業が始まると楽しくて一心不乱に取り組んでいます。
場所を決めて組み上げて、ペグ(百均で買った竹の割り箸と麻紐)の埋め込みも何とかできました。
荷物を運び入れて居場所を整えるとやれやれ、まずは第一段階クリアです。
順番が逆になってしまいましたが、ヒュッテでテント札を受け取ります。
幕営料金は1,000円/人と高めですが、きれいなバイオトイレも使えますし、環境保全も考えると妥当でしょう。
「飲料水はユウセツでお願いします」
・・・ユウセツ?
脳内で「融雪」と字が当てはまるのに一瞬時間を要しました。
時間は11時で、先に昼食を取っても天狗に登る時間は余裕がありそうです。
ただ、午後になって一転雲が湧き・・・なんてことが頭を過ぎって先に登ってくることにしてしまいました。
食べることを軽んじた判断ミスの結末は・・・?
中山峠ではなく、目の前に見えている天狗の奥庭ルートの取り付きを上り始めます。
トレースを見て手軽なルートと感じてしまった浅はかさを痛感するのはすぐ後です。
風の強さを感じて目出し帽とゴーグルを着用しますが、前回の教訓を生かそうと呼吸を邪魔しない被り方を工夫してみます。
呼吸数をコントロールしているうちはいいのですが、雪に足を取られたり強風に身体を押されて踏ん張ったりが続くと息が上がり、とたんに目出し帽が邪魔になります。
数歩歩いては手で口元の空間を開けて呼吸を整える動きを挟みます。
結局この問題は前回の繰り返しになってしまい、解決法は見つかりませんでした。
ピッケルの扱いには少し慣れたようです。
ストックと同様に雪に挿そうとしてはいけないことを覚え、強風に耐えるのにピッケルを使うシーンも多くて体が少し覚えてくれました。
アクシデントに対応するための使用法(滑落停止法etc.)は知っておくべきですが、学び方を考えないと・・・
森林限界を超えると岩場と雪の斜面が待っています。
足に力が入らないのを不思議に感じていましたが、すぐにシャリバテだと気付きました。
エネルギー補給を怠るとこうなるんだと今さら学ぶとは遅すぎますが、水分と行動食は持っているので口にして前に進みます。
実のところ心の中で、戻ろう戻ろうともう一人の自分が言い続けています。
苦しんでそこに行くだけなら意味がないじゃないかと普段自分が感じていることを繰り返していますが、それにも逆らって不思議なことにこのときの私の足は止まりませんでした。
ヒュッテで天狗岳まで2時間と聞いていましたが、たっぷり3時間かかっての登頂でした(汗)。
陽の光も午後になると早くから西日の様相を見せ、時計以上に焦りを生じます。
私にしては珍しく腹が減った実感もあり、西天狗岳に未練を残しながらも中山峠経由で下りました。
テントに戻って荷物の整理をしがてら遅い昼食。
歩いている時はもちろんですが、なにか作業をしていると寒さは感じません。
テントでの夜をどう過ごすのか、時間を過ごすのが下手な私の不安要素の一つでした。
足先の冷え防止にダウンのテントシューズと靴下に張るカイロ。
シュラフに足を突っ込んでウイスキーのお湯割でしばらくは地図を眺めていたのですが、初めて持ってきたランタンの明かりが居心地よくて、そのままもぐりこみます。
さすがに寒くて熟睡はできませんでした。
テントの中は−12度くらい。
一晩くらい寝られなくても死にはしないと開き直ってはいますが、時計を見ては時間が進んでいない事を不思議に感じていた夜でした。
とはいえ寒さは想定の範囲でしたし、テント内の結露の量やファスナーの凍り方も問題はなかったのでこちらが慣れれば問題のある夜ではなかったようです。
ゆっくりゆっくり、私にとって初めての雪山テント泊の夜が流れていきました。
夜半を過ぎてからしばらく熟睡した時間があったようで、7時前の表示を見て驚いて起き出しました。
筋肉の固まり方や鼻の詰まり方は大変なものでしたが、時間とともに体調は戻り、2日目としては上々です。
お湯を沸かしてコーヒーを・・・と探したコーヒースティックがない・・・
つまりコーヒーと2日目の食材を入れた袋がない!
今日食べるものがない!!
モチを焼いて味噌汁に入れてお雑煮の朝食を予定していましたが、あるのはモチだけ・・・
まったく次から次にトラブルを抱えてしまうものです・・・
昨日の天狗岳もですが、食べずに動く怖さも体験したので今日は撤収して真っすぐ下山するつもりで動き始めました。
昨日は自分にしてはがんばって天狗のてっぺんに登ったし、天気も景色も良かったし、一晩のテント体験もできたしでほとんどフルコースじゃないかって無理やりこじつけて撤収作業を進めます。
もちろん張り切れるはずもなく、全てを終えるのに2時間弱かかってヒュッテに札を返しに行きました。
ヒュッテの入り口にぶら下がっていたメニューを見て思いついたのは、営業小屋があればそこで昼飯を確保できるって当たり前のこと。
ならば今日の予定をキャンセルすることもなくて、もう一日楽しんで下りればいいんです。
向かったのは中山峠から北、先月2泊目を予定していた白駒池。
前回の計画では何が目的でもなく池のほとりにテントってスナフキンの雰囲気に浸りたいだけでしたが、今回は行程だけでも辿ってみたい気分になっていました。
樹林帯の中、トレースがしっかり付いた安心できる道を辿ります。
正面からやってくるハイカーを通そうとトレースを外れるたとたんに膝上まで足が潜ってしまい、50cmも低くなった目線で「どうぞ・・・(苦笑い)」なんてかっこ悪いシーンも何度か・・・(笑)
斜面の向きなのか、黒百合ヒュッテ近辺よりは積雪がかなり多く感じます。
針葉樹も松や杉よりシラビソ、トウヒが多いようで、私の目には異国の森のように映った北八ツでした。
途中にあった高見石小屋が営業していて軽食の提供もできると知り、後でもう一度来ることを決めました。
池に下りる前に高見石に登ってみます。
小屋からすぐに見えている岩ですが、この天気ですから天狗岳山頂並みの眺望です!
浅間山など北から東にかけての眺望が素晴らしく、元旦にはご来光目当てのハイカーで賑わったんだろうと思います。
斜面を一気に下れば白駒荘(休業中)の前に池が真っ白に広がっています。
池の上を歩くなんて映像でしか見たことがない私は、はるか先の池の上をフツーに歩いているハイカーを見て仰天していました。
岸から水面(氷面?)に下りている足跡もたくさんあって、どうやら立派に「道」として機能している様子。
1年前に鈴鹿の霊仙山で凍った池に落ちた(30cm程ですが・・・)記憶がトラウマになっている私は散々迷った末に恐る恐る足を踏み出します。
氷の上にはかなり積雪があり、足が潜って恐怖が増します。
10mも進んだところで足が膝まで潜り、その下の氷と水の映像が脳裏に浮かんだ時点で冒険はおしまいです(怖)。
高いところはずいぶん慣れたつもりでしたが、まだ怖いところがありましたよ・・・
高見石小屋までの登り返しを少し頑張って、注文した牛丼(♪)を持って外のテラスに。
先に食事をされていた雰囲気のいいペアのハイカーと同席させてもらいました。
神奈川県からから何度も訪れているお二人、どこの山に登るでもなくここを歩くことを楽しみに来ていることに共感できました。
短い時間の会話でしたが、北八ツの魅力を引き出してもらった密度の高い時間でした。
そこから先、渋の湯に向かってはサイの河原という谷道を通ります。
雪崩の心配をするような傾斜ではありませんが、大きな岩がゴロゴロ積み重なった上に雪が積もり、ある種の緊張感を持って歩く景色です。
2日間で歩いた中では初めての不思議な景観でした。
雪がないとひょっとして殺風景な景観なのかも知れませんが、この日出会った風景は確実に私のお気に入りのひとつです。
寒さのせいだけではなくて肩に力の入った2日間でしたが、高見石小屋で出会ったお二人の自然体の姿にこちらも楽になり、最後の下りを歩くことができました。
ここ数度の山行では自分の感度を上げようとかえって力みがあったこと、思い返して頷けるところです。
誰にアピールするのでもなく目の前の山と向き合うことは、あらためて難しいことです。
頂上を目指す以上頑張るのは当然ですが、先を見すぎると今の一歩が全てただの通過点になってしまう。
今の一歩をちゃんと楽しんで歩ければ「今日はここまで」と決めたところで完結できる。
同じことに何度も気付けるのは嬉しいことです。
生活していて最終目的地に到達しないと意味がないことの方が多いですが、どこで終わっても「こんなことがあったよ!」 と残る山行も捨てがたいですね。
monsieurさんへ
素敵山行記録、ありがとうございます。
私も雪山テント泊を次の目標としているので
とても参考になりました。
関西からですよね?
遠いのに凄いと思います。
これからも山行記録楽しみにしています。
追伸:
「登りはゴーグルを使わない」
と読んだことがあります。
また、晴れた日はサングラスで大丈夫とおもいます。
条件違うかもですが、13日はサングラスで十分てした。
バラクラバも口元開け歩けました。
お互いに経験積んで楽しみましょう!
コメ、ありがとうございます
レコを拝見していましたが、計画の周到なこと!
びっくりしました
ソロで動く限り情報は自分で集め、その結果にまで責任を持つことは当然なのですが、どこまでもシビアに突き詰めているかと言われると首を傾げてしまいます
いろんなシーンで自分を客観的に見ることで、のろくても前に進めればと思っています。
またレコを覗かせていただきますね
P.S. 口元が開くバラクラバがあるんですね!
目出し帽のことをバラクラバというのも知らなかった
こんばんは!
雪八ツのソロしかもテント泊。
monsieurさんクラスでも緊張されるんだと、少し親しみ
を感じたりして
天候次第で命の問題ですもんね。
その分、ご褒美も大きい
昨夏、同じようなルートを歩きました。
岩稜を覆い隠す雪化粧の美しさが別世界です
ひとたび吹き荒れたらまた別世界。うちは夏専門…。
monsieurさんなら、すぐ熟達されるでしょう。
すてきな雪山泊レコを楽しみにしています。
私クラスって・・・ひよこ組ですけど
こんな時代ですからいろんな情報が入りますし、見ているだけで自分にもできるつもりになってしまいます。
不安を感じること自体は暴走を防ぐ安全弁の役割でもあるかと思っているのですが、現場では自分の偏った知識や技術でできないことの多さにじたばたしています。
せめて次につながる経験を重ねていきたいものです。
mmgさんは夏専門なんですか?
この季節の山、遠くなくても高くなくてもいいですよ
機会があればぜひ
こんばんは
こちらでは、八雲で1泊を考えていましたが、天気のかげんで、中止しました。
雪中テント泊
エアライズ2、そのままでも大丈夫そうですね。
まずは、気象条件のよさそうなときに行ってみます。
あったら暖かいけど重い・・・
と言う事で、余程の強風下でなければ要らんのでは??と言うのが私の感想であります
とか言いながら、我が家は必ず持参しますが・・・
ゴーグルも・・・
これはスキーでも同じなんですが、下りるときに足元からの吹き上げを防ぐ・・・と言う意味合いが強いので下山専用??
とか言いながら、暑がりな私は下山でも滅多に着用しませんが・・・
それにしてもmonsieurさんが雪テン泊初とはちょっと驚きであります・・・
我が家は連休、比良でラッセル三昧
見事な眺望が羨ましいっす
エアライズ2でテントの不安は結局感じませんでした。
アライテントの説明を読んでも、冬張りが本当に必要なシーンはごく限られるとの事です。
それより床からの断熱をしっかりした方が良さそうです。
銀のシートとイスカのエアマットを重ねると下からの冷たさは消えてくれました。
シュラフはもう1ランク上があれば・・・が本音ですが、あるもので工夫の余地があるはずですよね!
ダウンジャケットはユニクロの3,980円で何も問題なしです
あと、食材を忘れちゃいけませんよ
雪山テン泊は紛れもない初体験です。
雪山に初めて登ったのが前シーズンで、テントを手に入れたのが次の春です。
テントを持ってまだ8ヶ月です
ゴーグルは防寒のために使用するものだと使ってみて実感しました。
登る時に目の下や目尻から耳にかけて冷えて痛くなったのでゴーグルをつけました。
最初はサングラスだったんですよ
食材!
こっちの山では、営業小屋ないですもんね。
下からの冷え対策は、
オールウェザーブランケット(テントシート兼)銀面下
テント
モンベルのU.L.コンフォートシステムパッド150
に、銀の折りたたみマット2枚を一部重ねて(背中〜腰)
見ようと持ってます。
シュラフは多分大丈夫ですので、
天気さえ安定したら実行してみます。
今度はソロ、雪上テント泊で再度、天狗岳でしたか
かなり御苦労されたようですが、無事登頂されたんですね〜
八ヶ岳ともなると、テント泊の夜は冷え混みが相当きついですね
去年、我が家が黒百合ヒュッテでテント泊したときも
極寒だったことを思いだしました。
白駒池、、、恐る恐る歩かれたmonsieur さんの姿が
思い浮かびました
10mの冒険、無事帰還ですね
先月の計画では2泊だったので、連続で不眠だときついなと心配していましたが、1泊だとたとえ眠れなくても下山はできるだろうとその分は気が楽でした。
あれもこれもと荷物を増やすより、手持ちのアイテムをどう活用できるかをもっと考えるべきでしょうね。
抱えていた不安の分、あれこれ頭を悩ませたのはよかったかも・・・
聞こえてきましたよ
思いっきりへっぴり腰で氷の上を歩いていました
天狗岳への登りではシャリバテもありながら、軽い高山病の症状だったかも? です。
先月に中山峠から登ったイメージとギャップがあったのも・・・言い訳がいっぱい出てきます
いろんな顔を持った山です。
何度も通ってしまいます
monsieurさん、おはようございます(^_^)
黒百合ヒュッテ、素敵な所ですね。冬山テント泊を楽しまれている方々も多いのですね。
私は高山病になった事はないのですが、一人の山行の時にはもう戻ろうよ、戻ろうよと心の中でもう一人の自分がよく言ってます
何とかだましだまし登り山頂でホッとするとそんな弱気な気持ちはなかったかのような充実感でいっぱいになりますが…
monsieurさんは冬のテント泊でのアクシデントに対応して乗り越えていく様子が伝わってきます。
今回の経験が次につながりますね
私はテント泊が今後の課題です。いつも踏み込めないで立ち止まってばかり、少しは前進しなければ
冬山テント泊お疲れ様でした
mipomipoさんでも気弱になったりの場面があるのですか?
レコを拝見する限り思いっきり楽しまれている様子が伝わってきて羨ましいですが・・・
いつもは自分の内面にももう少し楽しむ余地を持っているのですが、今回はちょっと不安が勝っていたようで、及び腰の山行になりました
他のシーズンよりも自己管理の必要な冬の山に、余計にのめり込むのもわかりますね。
残雪期も含めてまだまだこれから長い雪のシーズン、冬と仲良くしたいものです
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