記録ID: 26311
全員に公開
沢登り
白馬・鹿島槍・五竜
黒薙川/北又谷(2007.8)
2007年08月13日(月) 〜
2007年08月16日(木)


- GPS
- 80:00
- 距離
- 15.8km
- 登り
- 1,139m
- 下り
- 1,764m
コースタイム
8/13
越道峠8:20-10:40北又谷-11:15魚止滝-12:00大釜淵-13:50又右衛門滝-15:10高巻終了(泊)
8/14
泊場6:45-8:50ミズカミ谷出合-9:45白金ノ滝-漏斗谷出合10:00-10:35三段ノ滝下-11:25高巻終了-13:10黒岩谷出合-14:00吹沢谷出合(泊)
8/15
泊場8:40-吹沢谷左俣-10:10ゴルジュ滝下-15:10コル-17:40尾安谷二俣手前(泊)
8/16
泊場7:10-コゾ谷-10:00林道-10:40小川温泉
越道峠8:20-10:40北又谷-11:15魚止滝-12:00大釜淵-13:50又右衛門滝-15:10高巻終了(泊)
8/14
泊場6:45-8:50ミズカミ谷出合-9:45白金ノ滝-漏斗谷出合10:00-10:35三段ノ滝下-11:25高巻終了-13:10黒岩谷出合-14:00吹沢谷出合(泊)
8/15
泊場8:40-吹沢谷左俣-10:10ゴルジュ滝下-15:10コル-17:40尾安谷二俣手前(泊)
8/16
泊場7:10-コゾ谷-10:00林道-10:40小川温泉
天候 | 4日間晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2007年08月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
8/13 小川温泉で予約しておいたタクシーに乗り込む。 すぐにゲートがあり、タクシーの運ちゃんが鍵を開ける。地元のタクシー会社が鍵を預かっているとのこと。何度も鍵が壊されたとのことで、かなり頑丈なものがついていた。料金は北又小屋まで小型均一料金で8,500円(確か?)、越道峠も同じ。運ちゃんによると、越道峠で人を降ろすのは数年ぶりとのこと。これはサカナが釣れるかもしれないと、同行の先輩yamaさん・同年のhamaと盛り上がった。 越道峠からは踏み跡をたどる。ネットで迷ったとの記述をよく見るので注意して進むが、1084ピーク周辺で怪しくなってしまう。尾根が入り組んでいて、とても複雑な地形なのですね。木に登って進行方向を確認する。1097ピークとの鞍部まで尾根を辿り、北又谷へ下降した。 真っ青な空と澄み切った北又谷の流れに気分は最高潮だ。散発的にアブがまとわりついてくるのだけがタマニキズ。 すぐに魚止ノ滝が現れる。すると滝上に先行者がいるではないか。やはりこの時期に北又谷が貸し切りということはなかった。 埋まってしまったといわれる魚止ノ滝だが、大分復活してきているようだ。落差3m以上はあるだろう。事前に見た写真とは大分印象が違った。楽勝で通過できるという事前のイメージとも違い、左岸落ち口へ向けての微妙なトラバースではロープを使った。轟音とどろかせる魚止ノ滝に北又谷最初の洗礼を受ける思いがした。落ち口からは中州へ向けジャンプして流れを飛び越える。 ゴルジュ状を進んでゆくと、次の関門の大釜淵。先行パーティーに追いつく。彼らは学生で、越道峠までは歩いたとのこと。若者だなあ! おどろおどろしいイメージを抱いていた大釜淵は、意外に小さく穏やかに見えた。しかし、過去に溺死事故も発生しているというこの場所を泳ぎ登ろうという気持ちは、正直あまりなかった。先行パーティーの様子を見てから、と思ったら彼らは既に一度トライして流れにのまれて敗退したと言う。「凹角の手前で急に流れが変わります。くれぐれも気をつけて下さいね」と言って彼らは高巻いていった。 うーむ... ロープをつけて一度だけトライしてみよう! 釜の左端まで移動して、ロープを結び泳ぎはじめる。目線の高さに小さな波が揺れ動き、その先には滝の落ち口から白い水しぶきが轟音をとどろかせている。時計回りの流れに乗って進むほどに心細さは増してゆく。凹角奥に入り込むと、丁度指一本がかかるポケットがあった。それで引きはがされる流れから体を支える。凹角自体はツルツルでフェルト底ではとても上がれない。水中は何と滝底に向かってオーバーハングしていて、足を置く場所はない。気の遠くなるほど深い釜底が見える。ポケットの上には浅いクラックが走っていて、そこに手持ちのカムをセットして、体を固定する。事前に読んだ記録では、この凹角と滝の落ち口の間にあるリッジの落ち口寄りに取り付くようなのだが、その場所から振り返って見えるリッジには全く手掛かりが見えない。カムをはずして再び流れに乗ることはとても恐ろしくてできない。カムをセットしたクラックは凹角の中程まで続いている。体を固定しているカムに乗り込んで、もうひとつのカムをできるだけ高い位置にセットする。それに乗り込むと辛うじてリッジに乗り移ることができた。 後に人伝に聞いた話では、やはりリッジを登れるという話だ。足場がある、それも左足だという。ボルダーのようにそこにムーブが隠されているのだろうか... たっぷりと時間をかけて恵振谷の出合に着くと、先行パーティーは既に泊の準備に入っていた。 又右衛門滝の美しい姿に暫し見とれる。この滝もトライしてみたかったが、時間の関係で今回は諦めて高巻に入る。左岸の顕著な小尾根を登ってゆく。 熊ノ平まで登って、対岸のガレたルンゼを目指して急な小尾根を下ってゆく。最後は30m程の懸垂下降で沢床に降り立った。対岸のガレルンゼの下で、北又谷の流れは鋭角に右折し、細長い淵となってその先で左折している。屈曲点の水際に小さな河原があったので、今日はここでタープを張って泊まることにする。増水には全く耐えられない。最低限の荷物だけで残りは一段高いところに上げておくことにする。 yamaさんが狭い谷底に糸を垂らしてみたがアタリはなかった。 8/14 細長い淵は、勢いをつけて上流に飛び込み、対岸のバンドに這い上がって抜けた。左折した先はゴルジュがしばらく続く。すぐ先で右岸から又右衛門谷が滝となって注いでいる。一見悪そうなゴルジュも、へつったり、流れに飛び込んだりと、絶妙に水線通しを進んでいける。快晴の下、渓谷遡行の醍醐味を満喫できる遡行が続く。 ミズカミ谷の手前で谷は一旦開ける。 右岸から滝で合流するミズカミ谷を見送ると中瀞だ。開けた感じの谷底をへつったり、泳いだりの楽しい遡行が続く。 漏斗谷手前の白金ノ滝はゴルジュ状になっており、セオリー通り左岸を高巻き、最後少しの懸垂で谷に降り立つ。 漏斗谷を過ぎるとすぐに長持淵。両岸が屹立した美しい谷底を行く。 三段ノ滝は一段目を右岸から登り、落ち口を対岸に渡る。二段目の滝は巨大な釜を形成していて近づきがたい。左岸のルンゼをルートに高巻く。上部でワンポイント嫌らしく、念のため後続をロープで確保した。ここも懸垂で沢床に戻った。 大分開けた谷を、時折ボルダーチックなムーブで岩に這い上がったりと楽しみながら進んでいく。 黒岩谷手前の6m滝?横に鎮座する巨大な岩は、中央の窪んだ部分を登る。出だしがちょっと難しい。ロープを出してザックは吊上げて登った。 黒岩谷を過ぎると広い河原状となり緊張も解けていった。 サルガ滝を左岸から巻いて懸垂で降りると、ほどなく吹沢谷出合。今日はここまで。 荷を置くと、早速yamaさん・hamaが釣に出かけた。 タープを張って、火をおこしていると、yamaさんが腰にイワナをぶら下げて戻ってきた。とても嬉しそうだ。hamaも人生で二匹目のイワナを一尾釣り上げた。 タタキ・テンプラ・ムニエルと自然の恵みを有り難く頂戴した。 8/15 4日間の予定で来ているので余裕はあったが、yamaさんが「今日下山しような!」と言うのでそのつもりでいた。そう言うyamaさんだが、昨日の釣果に欲ボケしたのか、朝から釣に出かけ直ぐに4尾下げて帰ってきた。下ごしらえなどしていたら出発が遅くなってしまった(笑) ネットで見つけたsawabitoさんの記録 http://sawabito.fc2web.com/04kitamata.htm を参考にして、吹沢谷左俣〜尾安谷下降〜コゾ谷下降〜小川温泉の予定だ。 北又谷核心部を登り終えすっかり緊張も解けていたが、吹沢谷左俣をしばらく登ったところで、側壁の高い悪相のゴルジュが現れた。水の少なくなったゴルジュは3段の滝となっており、高巻くとすると相当時間がかかりそうだ。1段目のボロボロの側壁に腐った細いヒモが垂れ下がっている。そんなものに命は預けられないので、自分の手足で登ってみる。高さ7m程だと思うのだが、出だしが垂直(体感的には薄かぶり)でとにかく脆い。いろいろとやってみるがプロテクションはどうしてもとれない。何度もムーブを探りながら、クライムダウンを繰り返す。気休めに足下の岩をどけて整地してみたりするが、落ちたらタダですまないことは確かだ。それでも何度目かのトライで中間部上のしっかりとしたガバに手がかかった。足ブラになって乗越すと、下で見ていた二人の「アッ」と言う声が聞こえた。久々にアドレナリンが出た。 ザックを吊上げ、二人をロープで確保したが、別に何ということもなく上がってきたのはどうも面白くない。こういう時は「こんなの登れないよおー」とか言って、1回くらい落ちて欲しいものだ(笑) その上の滝2つもボロボロだったが、難しくはなかった。3段目もロープは使った。 その先もまだ滝が出てきた。ひとつは登れず右岸の草付きを高巻いたが悪く、ここでもロープを使った。中間のhamaはプルージックで登ったが、急な草付きの途中でハマリ1時間くらいもがいていた。私とyamaさんはその間を利用して昼飯を食った。 藪に覆われたコルにたどり着いたのは午後3時。もう今日中に下山は無理だ。 藪の鬱陶しい下りを続け、大きな滝を何度か懸垂下降で降りた。残置のスリングがあったのでたまに人が通るのだろう。左から沢が合流すると流れは緩やかとなった。泊場を物色しながら歩くがあまり良いところがない。二俣手前で強引に整地してタープを張った。 狭い谷を風が吹き抜ける寒い夜だった。 8/16 さあ今日で下山だ。二俣を左俣に入り、踏み跡をコルへ上がった。なぜここに踏み跡があるのかはよく分からない。そんなに人が入る所とも思えないのだが...釣だろうか? コルからは単調な感じの沢を下ってゆく。標高が下がってくるとアブがまた飛び始めたので、防虫ネットを被って歩く。次々に現れる堰堤にウンザリしながら下ってゆくと、最後に見覚えのある橋に飛び出した。林道を三々五々歩いて小川温泉に帰り着いた。 |
写真
感想
来年は北又谷へ行こうか、と相棒のhamaと話したのは2002年のことだ。
2003年は残雪の多い年で、行き先は会津の御神楽沢へと替った。
2004年もブロックを懸念して、三国川の仙ノ滝沢となった。
2005年は天候不順で計画が流れた。
2006年も残雪多く、御嶽山の兵衛谷に変更した。
2007年は最高のコンディションの年だった。
北又谷はそれだけ待った甲斐のある谷だった。
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コメント
この記録に関連する登山ルート
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mokoさん始めましてkoshibaと申します。
北又谷 待った甲斐のあった谷だと 写真やら文から読み取れます。
「遡行したい」の一言です。
又 沢登録お願いします。見て楽しみます。
よろしくお願いします。
koshibaさま
ヤマレコのフォーマットに沢登りの記録を載せるのは難しいなあと少々悩みました。
これを書いたのはつい最近ですが、
PCの中で眠っていた北又谷の画像を眺めているうちに、強く記憶に焼き付けられた場面の一コマ一コマが鮮やかに甦りました。まるでもう一度北又谷を遡行しているかのようで楽しいひと時でした。
そんな訳で、思いっきり主観的な長い文章となってしまいました。読んでいただきありがとうございます。
今年もそんな強く印象に残るような山行ができればなと思っています。
吹沢谷を下山路に使ったのには訳があって、最大の理由は車の回収です。
それと、もうひとつ...
少し前の話ですが、1993年に大平川似虎谷から北又谷源流部を下降して黒岩谷を辿ったことがあります。黒岩山から下りた小滝川林道でアブの大群に遭遇しました。
下山してから強烈な印象を書き留めたものがPCに眠っていたので、ここに貼り付けさせてもらいます。
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雲霞のごとく来襲するアブとは、まさにこの事だった。その尋常でない光景をいくら語ったところで、その場の戦慄を伝えるのは至難の技だろう。
長く単調な下山を終えて、林道に下り立つと同時に奴らの攻撃は始まった。はじめは手で払い除けながら、想像どうりの展開にまだ幾分かの余裕があった。行きの林道にもアブはいたし、2時間我慢すれば車に着くということで楽観的な気持ちがあった。それは前を行く、KとAがアブを払いながら走り始めたのを見ても、ただ単に彼らが体力を持て余している程度ににしか見えなかった。彼らが視界から消えると徐々に体に‘ばちばち’と体当たりするアブの数が増え始めた。両手を振り回しながら、ますますその凶暴性を増して増えて行くアブに何時しか自分も走り始めていた。走ったところで、全く状況に変化はない。むしろ立ち止まるごとにアブの数が増えていくような感じすらする。これがあと2時間続くと思うと全く絶望的な気分になった。走りながら、Kが行きの林道でもさすがにカッパの上からはアブも刺せなかった、と言っていた事を思い出す。雨具は確かザック本体に入れてあったと思いだしながら、立ち止まってザックから雨具を引っ張り出している間に、一体どれだけ奴らにやられるのだろうかと考えると、恐怖感が広がった。しかし、もう一刻も我慢できない。ザックをかなぐり捨て、中から雨具を取り出す。比較的素早く取り出せた事に‘ホッ’としながら、少し離れて自分のザックを見るとそこはまるで蜜蜂の巣箱のようにアブが集まっている。その場で踊るように体を絶えず動かしながら雨具をつける。大分やられたが何とかこれで奴らから身を守ることができそうだった。
1993年夏、北アルプス北部の小滝川林道での話である。
思い出したくもない 経験談を有り難うございます。
沢登りで アブ来襲の経験はまだありません。幸せ者です。
車の中に入ってから アブの来襲に遭ったことがありますが 窓を這うヤツ 飛来してるヤツ ぶつかって来るヤツ それぞれが入り乱れてくる状態でしたので 屋外であの攻撃を受けたら 狂乱してしまうでしょう。
アブ情報を入手して 沢の選定をします。
2007和名倉沢-市ノ沢も拝見しました。登録していませんが2006に一泊で行きましたが 先行者・下降者有りで酒の肴は期待ハズレでした。大滝の高巻き時 下降者の団体?がいて驚きました。途中から登山道に入って下るようでした。上流部のコケの美しい岩・棚が印象に残っています。
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