小栗山と不動ノ滝☆紅葉の源頭を訪ねて


- GPS
- 03:46
- 距離
- 7.3km
- 登り
- 716m
- 下り
- 719m
コースタイム
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山道は踏み跡は薄くところどころ不明瞭であるが密生する藪はなし 源頭部には登山道なし |
写真
感想
前夜までは寒冷前線の通過に伴うまとまった雨が降っていたが、今朝はすっかり晴れている。いよいよ遠敷峠峠を越えて若狭の小栗に向かうことにしよう。小栗の山頂に至る樹林が素晴らしいことは以前より認識はしていたが、この山が紅葉の最盛期を迎えるタイミングを待っていたのだった。
高野川に沿ってR367を北上すると早速に濃霧の中へと入る。ラジオの天気予報では兵庫、京都の広い範囲での濃霧を告げている。大原を抜けるとすぐにも霧から抜け出す。花背峠へと登るヘアピンカーブから大原方面を振り返ると綺麗な雲海が出ていた。しかし花背峠を越えると安曇川流域では霧は出ていないようだ。梅ノ木でR367を左折し、久多川沿いの渓谷に入ると山間には早速にも見事な錦繍が広がる。
遠敷峠を目指して針畑川沿いを北上すると今朝はいつになく対向車が多い。しかも遠くのナンバーが目立つ。おそらく早朝に遠敷峠を訪れたのだろう。しかし、周囲には霧は見られない。雨上がりの晴天の朝ということで雲海が期待されるのところなのだが、早朝の冷え込みが緩いせいか雲海があまり発達しなかったのだろう。
小入谷から遠敷峠へと登ってゆくと上から続々と車と自転車が降ってくる。どうやら紅葉の最盛期のようだ。周囲は非常に美しい錦繍の世界が広がっている。途中で何度も車を停めては紅葉を鑑賞していたせいで予定よりも遅く下根来に到着する。さすがにこのあたりは標高が低いせいか紅葉が降りてきていないようだ。
八幡神社の前に車を停めて歩き出す。神社の裏手の植林を登るが、植林はすぐにも終わる。しばらく尾根を登ると急に紅葉が始まる。風が吹いてきてカサカサと乾いた音をたてたかと思うと、紅葉した葉が宙に舞ってはゆっくりと地面に散ってゆく。
なだらかな尾根が急登に転じると尾根上には欅の大樹が次々と現れる。欅の多くはあたかも樹の一部であるかのようにその根元には大きな石を抱えている。街路樹で見かける欅とは異なり、樹々は低いところから枝分かれしており、普段、市街地で見かける帚型の繊細な樹影とは大きく異なる姿をしている。
やがて尾根には苔むした大きな岩の集塊が現れる。岩はよくよく見ると石灰岩のカレンフェルトであった。岩を左から巻くとすぐにも広々とした尾根になる。
下生えのない林床にはどこまでも落葉の褐色のカーペットが広がっている。なだらかな尾根を先に進むと再び苔むしたカレンフェルトの岩が出現する。岩はあたかも地面から生えてきた有機体のようにでもある。
ここでも岩の上には欅の樹が屹立しているが、グロテスクに枝が曲がった様相は到底、欅の木とは思えない。その姿は筋骨隆々とした彫像のようでもあり、恰もカレンフェルトの乗り物に跨った仁王尊像のように思えるのだった。
気がつくと先ほどまでは深いところにあった筈の右手の谷がいつの間にか斜面のすぐ下まで登ってきている。かすかにポコポコと水流の音が聞こえる。
尾根を進むとすぐ右手には谷に面して苔むした炭焼き窯が目に入る。炭焼き窯の対岸には三尊石のような大岩があり、小さな滝がかかっている。まるで造園された日本庭園のような趣きである。大岩に対峙する炭焼き窯は玉座のようでもあり、精霊の到来をじっと待っているかのようだ。
谷を見下ろすと左岸の大きな岩を抱いていた欅が倒れ、広いU字の谷を塞ぐように横たわっている。
滝を左から巻いて滝の上に出ると、再び緩やかに平流が流れる広々とした谷に出る。正確には下生えのない疎林がどこまでも広がっているので、そのように感じるのだが、なんとも壮麗な雰囲気を感じる。
右岸の尾根上の池を訪れるべく、水の枯れた左手の谷を緩やかに詰める。谷の上部にはあたかも谷の主のように一本のトチノキの大樹が現れる。
トチノキの大樹を過ぎて左手の尾根に上がるとすぐにも小さな池が現れる。池の水は枯れ気味ではあるが、このわずかな水溜りが広々とした褐色のモノトーンの林床にアクセントを与えているのだった。
池からは正面の尾根を目指して登って行く。斜面から振り返ると下の方に先ほどの池が空を反射して白く輝いているのが見える。右手の尾根に乗ると、途端に尾根の一帯は山毛欅ばかりとなる。山毛欅は若い樹が多くこじんまりした感じではあるが、わずかでも山毛欅の回廊を歩くことが出来るのは嬉しいものだ。
尾根を辿るとすぐにも広々とした小栗の山頂に到達する。雲の間から陽光が差し込むと稜線の紅葉が一瞬、キラキラと輝いた。
小栗からは百里ヶ岳を経て遠敷峠へと周回するつもりではあったが、既に素晴らしい紅葉の樹林を十分に満喫した気分である。時間はまだ11時前とランチには早い時間ではあるが、家内が用意してきた弁当で開き、ここから下山の途につくことにする。
下山の尾根はすぐにも山毛欅の樹々は姿を消すが、登りの尾根と同様、下生のない広々とした自然林n樹林が続く。しかし、気がつかなかったのか登りの尾根で散見したような岩を抱いた欅の樹々は見られない。
尾根の下部になると混合林となり、下生の馬酔木の藪が多くなるが、通行の支障となるほどではない。踏み跡は終始、不明瞭ではあるが、所々に古いテープがある。最後は再び杉の植林地となり、右手の林道に下降するという方法も考えられたが、尾根を末端まで辿り舗装路に着地する。
八幡神社に戻ると神社の前の紅葉が朝よりも一層色鮮やかに思える。時間はまだ12時、さすがに時間が早いので以前から気になっていた上根来の不動の滝に寄り道することにする。
滝の下降点は滝の案内板が目印となるが、そのあたりには駐車できる余地がないので、少し上の道路脇に車を停める。滝の案内板は平成二十年のものであり、遊歩道が整備されたと記されてはいるものの、沢に下降する踏み跡は不明瞭であり、情報がなければ対岸の谷に滝があるとは到底思えないところだろう。
案内板によるとこの不動の滝は五段40mの落差があるらしく、かつて不動明王の像が設置されており上根来集落の雨乞いの対象であったらしいが、不動明王像は昭和二十八年の台風13号で流出してしまったとのこと。
対岸に渡渉して下流に進むと右手に支谷があり、その手前に明瞭な遊歩道が忽然と現れる。
遊歩道はすぐに二股に分かれ、左手の道は谷へと下降してゆく。谷に入ると奥から滝音が聞こえ、すぐに狭いゴルジュの奥に滝壺を有する最下段の滝が現れる。
再び遊歩道に戻り、谷を進むと奥に中段の滝が現れる。遊歩道に導かれ斜面を登って行くと二段の滝の手前で遊歩道は消える。右手の斜面にはワイヤーが設置されており、さらに上に登って行くことが出来るようだ。
どうやら遊歩道のある左岸からは上段の滝を眺めるのが難しい。二段目の滝の前を対岸に渡渉して、滝の右岸を攀じ登るとようやく上段の滝の姿を拝むことが出来た。しかし、五段ある筈の滝が一つたりない。帰りがけに注意深く見てみると四段目の滝があったと思われる箇所が崩れ、大きな岩が沢を塞いでいるようだった。
再び車に戻り遠敷峠を越えると相変らず多くの人が訪れている。北の方は雲が重く、やはり雨が降っているようだ。再びR367を南下し、花背峠を越えると京都の北山の上空には晴れ空が広がっている。帰る前にもう一山寄り道することにしよう。
コメント
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一昨年の春に訪れた時に自然林が綺麗な尾根でした。小栗から桜谷山はブナ林が続き壮麗でした。
石灰岩の露頭帯は覚えていますがカレンフェルトでしたか!。
辿られた谷は登山道から左(東)に降りた所でしょうか?素晴らしい源頭部ですね。
今週末、同じルートで欅と栃、ブナの紅葉を見に行きたいと思います。
コメント有難うございます。naojiroさんのレコから地図をダウンロードしました。
源頭は登山道の右です。ca530mのあたりですぐ右下に谷が登ってきますが、そのあたりで炭焼き窯が目に入ると思います。小さな滝を左から巻くのはとても簡単で、突然、広々とした源頭に飛び出します。その感動的な光景の印象は写真では全く伝えることは出来ず、是非、体感されて下さい。源頭はどこでも歩くことが出来ますが、もとの登山道が通じている右岸尾根を目指すのがいいのでしょうね。炭焼き窯のある標高500m前後のあたりではまだ紅葉していない樹もありましたが、今週末は見頃かと思います。
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