室堂〜天狗山〜天狗平 - 爆風からの生還 -
- GPS
- 02:26
- 距離
- 3.8km
- 登り
- 153m
- 下り
- 262m
コースタイム
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
帰りは天狗平山荘から電話で予約してもらい13時25分発に乗せて頂いた。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
「前日に雹が降り、弱層ができている。行動は慎重にしてほしい」と室堂ターミナルで登山届を出すときに指導を受けた。天狗山のコルから稜線はそれなりに雪は安定していたが、山頂を越えると爆風の洗礼を受け、天狗平山荘にエスケープした。 |
その他周辺情報 | 立山グリーンパーク吉峰がおすすめ。日帰り入浴620円。モンベル会員は割引あり。 |
予約できる山小屋 |
天狗平山荘
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写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
雨具
ゲイター
マフラー
バラクラバ
ザック
ビーコン
スコップ
ゾンデ
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
針金
ガムテープ
常備薬
日焼け止め
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ツェルト
ウイペット
ナイフ
カメラ
ビンディング
スキー板
シール
クトー
アイゼン
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感想
Chikauさんに先に記録をあげてもらったので、それを見ながら補足的に書いている。
室堂の指導員との話で、稜線風が強いことも言われていたが、それよりは霰の上に新雪が乗った雪崩れやすい状況が強調された。でも我々が通ったルートの状況では、もう雪は締まり、雪崩れの心配は少なく感じた。この日はひたすら風の脅威に尽きる。
室堂を出て国見岳の裾を巻いて、天狗山が見える地点に出るころ、視界が比較的良くなり、風も穏やか、空も一部が青い。この後天候急変する前の擬似好天といわれるものだったのだろうか。これに騙されて天狗山に登ってしまったことになる。コルから稜線に出て天狗山頂を目の前にしてまともに行動できない強風となった。痩せた山頂領域を越すとその先にやや凹状の緩い地点がある。そこまで何とか行けば大丈夫だろう。風の合間を狙って、突風に倒されない様踏ん張って前進、換装地に着いた。滑走モードになって前天狗の直前までは、恐る恐るながら進めた。そこでさらに風の勢いが増し、ストック突いて腰をかがめた耐風姿勢でも飛ばされそうで、遂に完全に這いつくばる。風の切れ目が殆どない。偶に弱くなって行動可能かと立ち上がって進もうとする瞬間にはまた這いつくばるを得なくなる。進退窮まった。
弥陀ヶ原へ向かって西に進もうとしていたが、西からの強風で困難を極めている。斜面は北に下っていて、真っすぐ下れば山荘のある天狗平。ともかく這ってでも標高を下げようと、Chikauさんと打ち合わせ、立てないのでスキーの上に仰向けになった橇状態で下りて行く。崖に落ちたりしないように、ずり落ちては止まり、Chikauさんの存在を確認し、またずり落ちる。稜線から標高で50mほど下りると、立っていられる時間が出てきた。スキーは斜面下を向いているのに、左からの風で右に向かって横滑りだったりする。
天狗平山荘が近くなり、案内ポールの立っている緩斜面帯まで下りて来た。ここまで来ると普通に行動できるようになって弥陀ヶ原へと下りて行けるのではとも期待していたのだが、そうはならず、依然として風は強い。緩斜面ではあるが、下を向いているのに風向きが前からになると、斜面を登る様に押し返される。体の小さい僕の方が風の影響が強く、Chikauさんが前に進んでいるのに僕が押し返され、距離が離れて行く。そこへ山荘から1人出て来てくれ、Chikauさんとは短く会話を交わし、僕の方に来てくれて荷物を持ったり、後から押したりして助けてくれた。天狗平山荘に滞在しているガイドさんだったそうで、小屋内でお礼を言いたかったがご本人はその後登場しなかった。
稜線では40~50m/sの風だったとの話であった。過去には浄土山頂で滑走不能になる強風に出会ったこともあったが、今回が僕には最強だった。
今シーズンデビューさせた僕の電熱ゴーグルが、初めてその有効性を発揮した。天狗のコルへと登るときには電熱offだったので曇り始め、onにして自然と取れた。その後暴風の地吹雪の中では、頭の動きとの関係で隙間風が入って曇る瞬間があったが、やはり放っておいて取れた。
僕のGPSは記録が取れてなかった。天狗のコルまでは位置確認などの操作をしていて、その後見る余裕もなく、小屋では何も確認せずただ電源offしてしまっていたので、この間に何が起きたかは分からない。ChikauさんのGPS記録では、暴風に喘いでいた間に標高データのぶれが大きくなっている。天狗山頂近くで一度雷鳴らしき音を聞いたが、その後繰り返さず雷の心配はしなかった。でも雲中の帯電は存在してGPSに影響を与えたのだろう。
ニシデンさんに同行してもらい、久しぶりにアルペンルートに乗った。バスは6〜7割の乗車率。もちろん全員マスクをして、話し声もほとんど聞こえない。室堂に着いたら、登山届を提出する際に前日の雪崩の情報などを聞き、ニシデンさんと協議の上、国見をまいて、天狗山には雪の状態をみて、登れたらアタックすることにした。そのまま弥陀ヶ原に出て、美女平までのスキーツアーとなる予定だった。
ターミナルの窓から外を見ると風が強そう。最初から電熱線ゴーグルを装着して、外に出た。途中からシールを外し、国見岳の北側下部を滑り天狗山のコルを見渡せる場所に来た。途中で雪の状態を見るためにスキーでジャンプしたり、ウイペットで掘ったりしてみたが、割と安定している様子。ニシデンさんと再度協議し、天狗山に登ることにした。
斜度の緩いところを選んで進み、コルに到着。ここから細尾根の急登だ。ニシデンさんが絶妙のジグで登りあげるが、最後の15mくらいで風が強くなり、二人で耐風姿勢をとり、しばし行動停止。風が弱くなったころを見計らって、一気に突破し、山頂へ到着。風に注意しながらシールを外し、いざ滑りだした。ガリ斜面と新雪が多少交じり、慎重な滑りとなった。しばらく稜線を進むが、突然爆風にあおられて二人とも立っていられない。横になり耐風姿勢のまましばらく過ごすが、らちがあかない。立つと吹き飛ばされ、ひっくり返った。これまで強風の経験は多少はあったが、動けない風は正直初めてで、進退窮まってしまった。
多少下部が見える瞬間もあるが、すぐにホワイトアウトになる。ただ横になり、ウイペットに体重をかけ、耐えるのみ。バラクラバをしているが、小さな雪粒が顔と足に強烈にうちつける。GPSを見ながらこれからの行動を考え、弥陀ヶ原に降りるためにはこの風に立ち向かうことになるので(もちろん立って進めない)、天狗平に進路をとり標高を落とすしかないと考えた。
ニシデンさんと会話するために身体を芋虫のようにくねくねさせて接近し、天狗平に行くことで意見はもちろん一致。そこからは立とうとしては倒れ、最後は諦めてスキ−にお尻をのせてザックとウイペットでスピードコントロールしながら尻セードのようにして慎重に標高を落として行った。GPSで天狗平山荘の位置を確認し、ニシデンさんと離れないように進む。視界がないので、崖が怖い。とにかくゆっくりと慎重に標高を落とす。
途中から立てるようになり、横滑りで標高を落としていった。西側から東側に風が吹いているので、真下に降りたいのに、風で東側に進んでしまう。たまらず一度ターンをして西側に向いたら、風で吹き飛ばされ、横殴りに倒された。しかたがないので、風に逆らわずに東側に進みながらなんとか標高を落とし天狗平に到着した。
天狗平では風が多少弱まるかと思いきや、相変わらずすごい風。私はバランスを崩し、お尻をついたが、その後風が強くて起きられない。こんな経験初めてだ。ザックを降ろして、なんとか立つことができた。たまりかねた天狗平山荘のスタッフが一名出てきてくれた。ありがとうございます。天狗平山荘ではほかのスキーヤーも心配していてくれて、声をかけてくれた。
身体も冷えて、これ以上の行動はできないと思っていたら、ニシデンさんもこれで打ち切ろうと同意してくれた。帰りのバスを予約して、レストランで暖かいラーメンを食べた。ニシデンさんは美味しいスイーツを用意していてくれて、これまた美味しく頂いた。ありがとうございました。
天狗平山荘のスタッフにお礼を言い、バスで下山した。吉峰温泉でのんびりと身体を温めて、今日の行動を振り返っていた。スキーで何回か転倒したが、ケガがなくて幸いだった。また、ツエルトやダウンも持っていたので、雪洞ビバークという手も一瞬考えていたが、翌日の天気予報もあまり良くなかったので、下山して正解だっただろう。
しかし、近くに天狗平山荘がなかったら、どうなったであろうか?あとでGPSを見たら、山頂から天狗平山荘まで40分くらいのことであったが、とても長く感じられた。もっと長い時間の行動であったなら、どうなっていたのか?これからもこの経験を忘れずにより慎重に登山を続けていきたい。
ニシデンさん、同行ありがとうございました。最後まで心強かったです。
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