蓼科山☆痛恨の思い出の山に再び


- GPS
- 02:52
- 距離
- 6.3km
- 登り
- 803m
- 下り
- 795m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
|
コース状況/ 危険箇所等 |
トレースあり ほとんどの登山者は12本爪アイゼン、 チェーンスパイクや軽アイゼンはごく少数ではあったがこれらでも十分と思われる |
写真
感想
蓼科山には痛恨の思い出がある。五年前の秋のこと(ヤマレコを始める前)、絶好の晴天が期待される秋に4連休を作り、家内と当時、高校生であった長男を伴ってこの蓼科山を訪れたのだった。森林限界を越えたところで山頂一帯は笠雲のために完全にガスの中となる。
広い山頂台地の反対側にある展望地に向かって岩場を歩いたところで、湿った岩で足を滑らせた母趾を岩に強打する。その瞬間に猛烈な痛みがあったのだが、徐々に母趾の痛みが増悪する。どうやら骨折したようだ。何とかトレッキング・ポールの助けを借りて下山するものの、痛みはさらに酷くなる一方であった。
翌日からの連休は紅葉の盛りの甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳に登るつもりで山麓の仙流荘を予約していたので、仙流荘まで移動するが、翌日、秋空のもと続々と北沢峠に向かって出発してゆく登山者達を羨望の目で眺めながら、親子三人で虚しく京都に戻ったのだった。
金曜日は私の実家に向かう前に大菩薩峠に寄り道すべく、塩尻から中央線で東に向かう。茅野が近づくと八ヶ岳から蓼科山にかけての峰々が車窓に映るのだが、とりわけ素晴らしいのが蓼科山だ。おそらく霧氷も発達しているのだろう。白銀に雪化粧を施した美しい山肌を見せているのだった。
山行先に蓼科山を選ばなかったことを後悔する。とはいえ関西方面からだと茅野からのバスに間に合わず、蓼科に向かうにはレンタカーを借りるかかなり高額のタクシー代を覚悟しなければならないだろう。それよりも問題なのは山行先を大菩薩嶺と考えていたのでトレッキング・ポールを置いてきたことだった。
実家の母親にトレッキング・ポールを借りることが出来たので、京都へ帰る途中に蓼科山に寄り道することを考える。ポールの先端につけるスノーバスケットだけは山行の途中で失くした時のための予備としてリュックの中に入れっぱなしにしておいたものがあったのである。
新宿発のあずさ1号は当然ながら登山客の姿が目立つ。一部の登山客は小渕沢で下車したが、多くは茅野で下車し、八ヶ岳方面に向かうのだろう。やはり北横岳のロープウェイ行きのバスは断トツの一番人気であり、私はあずさ号の指定席が先頭車両の前方であったこともあり、バスの列の最後尾に並ぶことになる。バスは一台目には乗り切らず、2台目を増発する。
バスをプール平で下車すると予約していたタクシーが待っていてくれる。タクシーの運転手はバスが二台とは予想していなかったために1台目が通り過ぎたので一瞬、心配をおかけしたようだった。蓼科山に向かうと、二日前の白銀の山肌はなくなり樹木についた雪や霧氷はかなり落下しているようだった。
駐車場は予想通り満車であった。かなり手前にある女の神展望台の駐車場も満車であった。礼儀の正しそうなタクシーの運転手は「登山家の方達の車の停め方は凄いですね」と丁寧に仰るが、暗に駐車マナーのことをいっておられるのだろう。「しかし、停めるところがないでしょうから、駐車には相当苦労するでしょうね」と申し上げる。
タクシーの運転手は登山口で降ろしてくれるので、ゲイターを装着するとすぐに歩き始めることが出来る。早速にも上から続々と下山してくる登山者とすれ違う。駐車場を探すのはこの時間帯は意外と楽に探せるのかもしれない。
最初は落葉松の美林の中の緩斜面から始まる。以前、蓼科山の山行からの下山路では「林相が綺麗だったね」と家内と長男が感心しあっていたが、当時の私は骨折の痛みを堪えるので精一杯で景色のことは一切、覚えていないらしい。
登山路というかトレースはガチガチに踏み固められており、カーペットのようになっている。すれ違う登山者は9割以上が12本爪のアイゼンを装着している。今回は軽アイゼンを携行しているが、どこまでなしで登れるか試してみようと思い、アイゼンなしで登ってみる。
標高1950mからの急登の斜面になると落葉松は急に姿を消し、あたりはコメツガと思われる低木の針葉樹林になる。延々と急登が続くことになるが、傾斜が増しても雪質が良いせいか靴がしっかりと食い込んでくれる。登れるのはトレッキング・ポールの支えがあってのことではある。
一人だけアイゼンを装着しないで降りて来られる男性がおられた。「アイゼンなしですね」とお声を掛けると「滑落するような場所はないでしょう」とクールに答えられると颯爽と見事なグリセードで滑走されてゆく。同行者と思われる後続の女性の方が「あれは見事だわ!」と惚れ惚れと感心されておられた。
森林限界が近づくと斜度はますます急になり、流石にアイゼンを装着するべきかと思ったが、斜面にはステップが刻まれており、難なく登ることが出来てしまう。しかし、アイゼンなしにこのような山に挑むことはあり得ないだろうし、アイゼンを装着した方がサクサクと安全に登れたことだろうと思うので、妙なこだわりは早くに捨てるべきだったかと思う。
下山して来られた若い単独行の男性が「自分もこのあたりまでは暑くて汗をかきましたが、山頂では風が強くて急に寒くなりますから温度調整を気をつけた方がいいですよ」とご親切にアドバイスを下さる。フリースとミドル・レイヤーのシャツを着込み、森林限界を越えた先に備える。
森林限界を越えたところで大展望が広がった。しかし、ここで思わぬ不運に見舞われることになった。何と愛用のミラーレスの一眼レフがシャッターを切るといきなり電源が落ちる。一昨日の大菩薩峠でもメモリーカードの故障で途中から写真が撮れなくなったのだが、今回は明らかにカメラの問題だ。しかし代替のカメラとしてスマホを使うことが出来るというのは何とも便利な時代だ。
森林限界を越えると確かに風は強くなるが思っていたほどではない。トレースが山頂の直下を東側にトラバースするようになるとすぐに風も弱くなる。おそらくは風の陰に入ったのだろう。
台地状の山頂の一角にある一等三角点のある地点に立つと方位表のある反対側を訪れてみる。眼下には車山高原、霧ヶ峰、その先には美ヶ原と北アルプスの展望が広がるのだが、途端に猛烈な風が吹き付けるようになった。まさに風の通り道なのだろう。スマホで写真を数枚撮ると早々に退散する。
山頂の北側の山名標で若い男女のカップルがいらしたので写真を撮って差し上げると、一枚、私の写真も撮って下さるのだが、シャッターボタンをタッチした瞬間にスマホがダウン。この状況下ではスマホのバッテリーの減りが著しいのは当然だ。慌ててバッテリーを繋ぐ。
無謀とか向う見ずなどなどと批判されるかもしれないが、下山もアイゼンを装着しないまま下降する。雪面が凍っていないのと、先ほどにすれ違った男性が云うように滑落の危険性があるような箇所はないので、転倒しても大したことにはならないだろう。しかし、これは決して人にお勧め出来るものではないことは重々お断り申し上げておきたい。
森林地帯に入ると全く風はなくなり、先ほどの男性が仰っておられたように暑さを感じるほどだ。登って来られるパーティーとすれ違うので「もうすぐ森林限界を越えて風が強くなりますから・・・」と先程いただいたアドバイスをお伝えすると、おそらくは絶景に対する期待のせいか、とても喜ばれる。
アイゼンなしの下山は非常に速い。このようなトレース・ハイウェイを単独行で下山する機会は久しぶりなのでついつい思いっきり飛ばしてしまった。登山口まで私を運んでくれたタクシーの運転手に下山時にも依頼していたのだが、予定よりも大幅に早く到着した。
タクシーの運転手に連絡するとすぐにも到着される。運転手によると私を送った朝の時間帯よりも雪が少なくなったように思うとのこと。タクシーの後ろから振り返ると確かに樹林帯がさらに黒々として見える。霧ヶ峰のあたりも地面が見えている箇所が少なくない。
昨年、一昨年と信州においても雪が非常に少なかったらしいが、この1月の時点でも相当に雪は少ないとのことだった。そのうち雪の蓼科山を楽しむのも難しくなるような時代が来るのだろうか。
あづさとバスでプール平まで行こうかと思ってます
https://www.alpico.co.jp/traffic/news/505/
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