明王の禿〜赤坂山〜三国山☆モノクロームの国境稜線の雪景色


- GPS
- 03:46
- 距離
- 8.9km
- 登り
- 810m
- 下り
- 793m
コースタイム
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
白谷林道は片斜面の場所が多く、雪が硬くトレースがない場合にはかなり危険な難路となるので要注意 |
その他周辺情報 | ♨︎白谷温泉八王子荘(¥650)露天風呂あり http://www.hachiojiso.com そば「在原の業平園」 https://gcjapan-kyoto.com/post-718/ |
写真
感想
この日は日本の南海上を進む前線を伴う温帯低気圧のせいで午後から雨の予報ではあるが、北部に行くほど雨の降り始める時間が遅いと読む。曇りの予報ではあるが、明らかに高曇りのパターンであり、好展望が期待できるだろう。
朝、敦賀街道を北上しながらラジオから流れてくる天気予報では大阪や和歌山では昼前から雨が降り始めるとの予報を告げている。
武奈ヶ岳に向かうか、あるいは江若越国境が交わる三国山に向かうか途中トンネルを過ぎるまで迷っていたが、少しでも北の方が雨の降り始めが遅いだろうという短絡的な理由で後者を選ぶことにした。
高島を過ぎると野坂山地には雲がかかっており、雲の上から三重獄が顔を突き出している。これは山行先の選択を誤ったかと思ったが、マキノが近づくと瞬く間に雲が晴れて大谷山から三国山に至る稜線がすっきりと顔を出す。
マキノ高原への入口を過ぎると、途端に道路周辺の積雪が著増する。除雪されている道路余地が少ないので車を停める場所を探すのに難儀する。白谷林道の入口近くで、道路の左側にわずかな余地があるが、大阪ナンバーの車が既に停められており、黒い犬を連れた男性が山スキーの準備をしているところであった。その少し先で道路の右側に除雪された道路余地を見つけることが出来る。
準備を整えて振り返ると、先ほどの男性が犬と共にスキーで道路脇の疎林の中へと出発してゆくところだった。男性のスキーのシュプールを追って樹林の中へと踏み込む。雪が締まっているせいかスキーはほとんど沈み込みがないようだ。疎林の中を歩いて白谷林道に出ると数日前のものと思われるスキーのシュプールがある。
昨年の今の時期、東の芦原岳から三国山まで縦走してきた時には明王の禿から国土地理院の地図で破線が記されているca430mへの尾根を下降したのだが、今回はその一つ北側の尾根、p569を経るルートを辿ることにする。前回下降したルートは先にかなりの急斜面を登ることになるが、このp569を経由するルートには無茶な急登はなさそうだ。
尾根に取り付くと最初は自然林の疎林で歩きやすい。ca500mのピークを過ぎて、鞍部に差し掛かると早速にもブナが現れる。嬉しいことに尾根を登り返してp569を過ぎると尾根からは南側に雪庇が張り出し、眼下にはマキノと琵琶湖の好展望が広がる。右手には綺麗に比良の山々も見えている。比良からも広い範囲に亘る好展望が見えていることだろう。
予想通り空はかなりの高曇りであり、琵琶湖の周辺の景色が澄んでいるようだ。南湖のあたりまで対岸の景色が明瞭に見える。東の方角の芦原岳や乗鞍岳のあたりにも雲がかかっていたが、雲が薄くなり伊吹山も雲の中から姿を現す。
雪は適度に締まっており、斜度も程よく登りやすい。気がついたらなだらかな台地状のca690mの尾根に乗っていた。南側からca430mを経るルートと合流するところだが、尾根上にはトレースやシュプールはない。
ブナが広がる緩やかな尾根を辿るうちに左手に明王の禿が姿を見せる。雪が崩壊地の険阻な雰囲気を覆い隠しているせいか、無雪期に感じる荒々しさを感じないどころか、優美な雰囲気すら感じられる。明王の禿の稜線の直下では灰色の空に向かって樹木のない純白の雪稜を登ってゆく。
稜線の彼方にはすぐにも赤坂山から粟柄越を経て寒風へと連なってゆく江若国境のたおやかな稜線が視界に入る。上空に広がる鉛色の雲のせいなのだろう、緩やかに波打つ雪稜はどこか侘しげで荒涼とした雰囲気を漂わせているのだった。
稜線に立つとや南東からの生暖かい風が頬をかすめてゆく。東側に見える江美国境の山々の彼方には雲のような白い山塊が見えている。白山だ。
当初はここから三国山へと登るつもりであったが、全くトレースのない無垢の雪稜を目にすると赤坂山に立ちよることにする。前回、野坂岳から縦走してきた時には絶好の晴天の日であり、赤坂山には入れ替わり立ち替わり、次々と登山者が訪れているのが遠目にも見えたが、この日は全くに人の気配は感じられない。
明王の禿の上のナイフリッジを辿って赤坂山に向かう。雪庇を踏み抜くと命の危険があるので当然ながら慎重に右手の樹林の際を歩く。崩壊地の南の端はかなり急峻であり、夏道が通る右手の樹林の中をトラバースする。斜面の雪はパウダー状であり、トレッキング・ポールが効かないので樹を掴みながら進むことになる。
赤坂山の斜面に差し掛かると、急に風が強く感じられる。斜面にまばらに生える樹々には一様に霧氷がついている。風の強さの割にはそれほど寒さは感じられず、手袋一枚で何とかなる程度であるのは気温がそれほど低くないせいだろう。
斜面の右手には芦谷山から庄部谷山へと連なる稜線が目にはいる。なだらかな稜線の右側、ca830峰から突き出す風況観測計の細長い鉄塔が風景に妙な違和感を与えている。近い将来、この稜線に数多くの風力発電機が立ち並ぶ日とより大きな違和感を感じることになるのだろう。
赤坂山の山頂に立っても粟柄越から人が登ってくる気配は感じられない。雨の天気予報で登山者が少ないのだろうか。考えてみるとマキノ高原からのルートよりも今回辿ったルートは相当に距離が短いので、時間が早いせいもあったのかもしれない。
遠く、送電線鉄塔の上には白く冠雪した武奈ヶ岳をはじめとする比良の山々が綺麗にみえるが、ここは大型のネコ型送電線鉄塔が景色を無機的なものにしているように思えてならない。
赤坂山の斜面を下るとすぐにも風は感じられなくなるが、同時に周囲の樹々にも霧氷がみられなくなる。樹林の上から樹木のない白いピークを除かせているp814に向かう。鞍部を下り樹林に入ると、最初は登るにつれてブナの高木が広がるようになり、まもなく好展望のp814のピークに飛び出す。
p814からは三国山に向かって県境のラインを辿る。ブナが茂る小高い台地ca820mを抜けると、三国山の山頂から南に伸びる尾根に乗る。ここは樹木のほとんどない雪稜となっており、雪が灌木を覆い尽くした積雪期ならではの爽快感を感じながら、大きな雪庇の張り出した三国山の山頂を目指す。
朝、駐車地で見かけた黒い犬を連れた男性は既に山頂に辿り着いただろうか・・・と考えながらピークに到着すると、折しも同じタイミングでその人物が反対側からスキーで登ってくるところであった。先方は反対側から人が現れるとは予期していなかったのだろう。「一体、どこからどうやって登って来たのですか?」と驚かれるので、コースを説明する。初めて三国山に来られたそうだが、頻りと「いいところですね」と感心されるが、実際そうだろう。
山頂から北東には上谷山、左千方、横山岳といった湖北の山々が一望のもとだ。雲がかかったのか、彼方に見えていた白山はいつしか見えなくなっていた。琵琶湖の南側に広がるモノクロームの景色も相変わらず遠くまで明瞭にみえており、まだ雨が降る気配は感じられない。東側の山頂の下には樹々が疎らに生えるジオラマのような台地が広がっている。
今日は山頂の北東斜面を訪れるつもりなので、この台地に降りることはせず、若越国境の尾根を北上して山頂の北側のピークca870mにむかう。ここは三国山からは山頂の北西に広がる樹林のせいで眺望が隠されていた庄部谷山の展望が再び広がり、国境稜線の彼方には野坂岳の白い頂が見える。
ca870mのピークは東側の斜面へと降りてゆく。ブナの樹々が立ち並ぶ谷の源頭部をトラバースすると、広い台地状の尾根を東に向かう。尾根が東に向かって突き出したca820mは樹木のない雪原となり、東側に好展望が広がる。江美国境の山々の彼方に再び白山の姿を確認すると、ブナの樹林の尾根を一気に下降する。積もったばかりのフカフカの新雪の感触がなんとも心地よく感じられる。
送電線鉄塔の上に出ると尾根を右手に向かって下降して、黒河林道に着地する。黒河峠に出るとトイレがほとんど雪に埋もれていた。黒河峠からは南に延びる尾根を一直線に下降して林道をショート・カットする。
白谷の谷底で林道に着地すると橋を渡って右岸に移動する。林道は覚悟してはいたが積雪が多いせいもあり、片斜面が連続する。ワカンやスノーシューのトレースはなかったがいくつものスキーのシュプールがあるお陰でシュプールにスノーシューを嵌めてゆくことが出来る。柔らかい新雪のせいもあって通過に難儀することはないが、雪が硬いと緊張を強いられることになりそうだ。
シュプールの傍らには明らかに鹿のものとは異なるトレースがあり、爪と肉球の跡が明瞭だ。先ほどのスキーヤーが連れていた黒い犬のものだろう。白谷の右俣からの林道と合流すると後は歩きやすい広い道が続く。
駐車地に戻ると在原の蕎麦屋「在原の業平園」を訪ねる。ここの店の営業は14時までなので、今回のように相当に早い時間に下山した時でなければ立ち寄るのが難しい。干し椎茸の戻し汁が入ったものと思われるだし汁は素朴な味わいだ。天ぷらは一人では到底食べきれない量が出されるので、少なくしてもらうように依頼したが、それでもかなりのボリュームだった。
在原を後にすると再び白谷に戻り温泉のある八王子荘に立ち寄る。先日、岩籠山からここまで縦走した際にはバスがすぐに来るところだったので温泉に入ることを諦めざるを得なかったのだった。マキノを後にすると琵琶湖の南の方の景色が霞んでいる。琵琶湖の湖岸を南下するとすぐにも雨が降り始めるのだった。
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