武奈ヶ嶽〜三重嶽〜三十三間山☆天増川流域の雪稜を周回
- GPS
- 09:36
- 距離
- 25.6km
- 登り
- 1,712m
- 下り
- 1,699m
コースタイム
天候 | 晴れのち雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
尾根の取付きの急登だが、そこから先は歩きやすい植林の尾根 数日間、降雪がなかったので沈み込みは少ないが、気温が高めであるせいもあり終始腐れ気味 最後の天増川集落への尾根はかなりの急下降 (三重獄からp887までログが切れてしまい、後から手書きで線を繋げているのでログは正確ではありません) |
写真
感想
昨年の積雪期に石田川ダムより武奈ヶ嶽を経て三重獄まで縦走した時のこと、三重獄の北峰のピークから大日岳に向かって北に伸びる伸びるたおやかな尾根には大きな雪庇が張り出し、広い雪稜が続いているのを見て、この尾根を積雪期に縦走したいと願うのだった。
無雪期には石田川の上流、河内谷と合流する落合より河内谷流域を反時計回りに周回してこの尾根を南下したことがあるのだが、積雪期にはこの尾根を縦走するのは容易ではない。あれやこれやと思案した挙句、天増川流域を大きく周回するという方法以外に良い案を思いつかないのであった。
それなりの長距離になるが、新雪のラッセルが深い状況でなければ不可能な距離ではない。この日は当初、金糞岳を登ることを考えてはいたが諸事情によりこの山行計画は延期し、暖めていた上記の山行計画を実行に移すことにした。
天増川沿いの道路余地に車を停めるて出発する。雪はツボ足では膝下まで沈み込むので、早速にもスノーシューを履いて尾根に取り付く。尾根の取付きはかなりの急登から始まる。斜面の右手の樹林の中からヘッデンの光を反射してエメラルド色の双眸がこちらを見つめている。動物が動く音が感じられないので、鹿ではなく小動物なのだろう。狸だろうか。
急登はすぐにも終わり、樹間の広い植林となる。尾根上は雪が切れており、スノーシューを脱いで歩かざるを得ない。ca290mのなだらかな小ピークに至ると再び雪が現れる。すぐに植林を抜け出し、送電線鉄塔の広場となる。鉄塔を見上げると送電線が横切る空がブルーアワーの藍色に染まっている。背後にはニノ谷山の山容が大きく見える。
尾根は自然林の疎林となり、随所で展望が広がる。寒風トンネルの東側から登ってきたと思われるスノーシューの跡が雪面にはうっすらと残っている。気温は高いようだが、風が強い。高度が上がるにつれ、ニノ谷山の上には比良の武奈ヶ岳が朧げに見えるが、そのシルエットが霞んでいるのは予報通り黄砂のせいなのだろう。やがて東の赤岩山を経て登ってくる尾根の上から朝日が顔を見せる。朝陽が彩る空が妙に黄色く見えるのも黄砂のせいなのだろう。
樹木のない雪原が広がるp749に至ると、うっすらと朝陽に染まった武奈ヶ嶽の南西斜面の展望が広がる。見上げると鹿ヶ原の広々とした雪原が目に入る。
鹿ヶ原に到着すると広々とした雪稜を歩く爽快感に浸るが、斜面が緩いせいかすぐにも武奈ヶ嶽の山頂に到着する。山頂からは南東の方角には本来は琵琶湖の好展望が広がっている筈ではあるが、朝陽が湖面に落とす赤銅色のの反射が辛うじてそこに湖があることを物語っているだけだ。
三重獄に向かって、雪庇の張り出したたおやかな尾根に足を踏み入れる。尾根上には三重獄に向かう別のスノーシューのトレースの跡が続いている。
北尾根の分岐を過ぎるとブナの樹林が続くようになる。p812はピークには北東の展望地があり、目の前に三重獄の大きな山容の展望が広がる。鞍部に向かっての急下降になると斜面に生えるブナは疎らになり、再び正面に三重獄を眺めながら高度を下げてゆく。
今回の周回を反時計周りにしたのはこのアップダウンを前半の体力のあるうちに通過しておきたかったからに他ならない。後半の疲労が溜まってきたところで武奈ヶ嶽への登りはかなりしんどく感じられるところだろう。
水谷分れにかけての急登を登り返すと、ここから先は一転して、緩斜面となり、なだらかな雪原が広がる。p855の西側斜面はブナの樹林となるのだが、樹林の手前にはひときわ大きなブナの樹がある。ブナの樹に近づくと樹の下の方から枝分かれしているように思われるのは積雪が多いからなのだろう。
ブナの樹林を越えると再び広い雪原が広がる。このあたりになると完全にトレースの跡は消えている。広大な山頂部に至ると、まずはca960mの南峰に立ち寄る。三重獄の本峰からは武奈ヶ嶽の展望はあまり得られないのだが、ここは目の前に大きくその展望が広がる。
三重獄の本峰はその北側にブナの叢林が広がっているのだが、ブナの樹林が低く感じられる。昨年に比しかなり積雪が多いせいだろう。ブナの樹林の脇を通り抜けて東側の展望地に至ると目の前に大御影山の展望が広がる。相変わらず比良の山々は霞の中だ。
樹木のない広い雪原を辿って北峰に向かう。北峰からは南側に大きな雪庇が張り出しているのだが、その上が黄色く薄汚れているのがなんとも残念だ。黄砂のせいなのだろう。北峰のピークからは北側の展望が開け、雪庇の大きく張り出したたおやかな尾根の先には雲谷山が見える。
北峰からはいよいよ大日岳に向かって尾根を辿る。以前、無雪期に歩いた時の記憶を呼び起こそうとしてみるが、このような
雪庇のすぐ脇にある樹木と比べると、その高さは4mほどもあろうかと思われる。東側には全く樹木がないので、大御影山を真近に眺めながら尾根を北上することになる。
尾根の北側にある大日岳は周辺の尾根よりも低いので山頂は見えないのだが、真新しい紅白の送電線鉄塔が山頂の目印となっている。しばらくはアップダウンの少ないなだらかな尾根が続く。p887からp889にかけての登り返しが唯一のアップダウンだろう。しかし、気温が高いせいだろう。早くも雪が腐り始める。
大御影山からの江若国境尾根に至ると尾根の雰囲気は一気に変わり、ブナの高木からなる樹林に入る。尾根には真新しいスノーシューのトレースが現れる。トレースは大日岳に向かっているようだ。
大日岳にかけてのブナの樹林は今回のルートにおいてもブナの樹林の壮麗さにおいては白眉ともゆうべきところだろう。距離にして2kmほどだろう。いくつもの送電線鉄塔のために広く切り払われた大日岳の山頂に至るとブナの樹林は唐突に終わる。
山頂には真新しい紅白の送電線鉄塔が建てられているが、まだ送電線は敷設されていない。南西には三十三間山の展望が広がるのだが、山頂の南側に新たに建てられた送電線鉄塔が眺望を邪魔する。まだ送電線は渡されていないようだ。
大日岳からは方向を西に向かうことになる。ここまで続いていたトレースは北に向かっている。大御影山から県境稜線を辿ると必然的に能登又谷を周回する形になるだろう。
p726の手前、ca720mのピークは南側に好展望が広がり、三重獄の彼方に武奈ヶ嶽、右手には三十三間山とこの日に訪れる山々を見渡すことが出来る。以前、積雪期に南の轆轤山からこのp726まで縦走してきたのは四年前のことだが、かつて電波中継所のあったp726で引き返している。
p726に至ると今度は南から北上してきたワカンの明瞭なトレースが現れる。南斜面はリョウブの低木が繁茂するところで、無雪期は樹々の間を縫って歩くことになるのだが、ここも積雪が多いせいでかなり歩きやすくなっている。
天増川沿いの林道と交差すると、登り返して樹木のない雪原が広がるca690mに至る。尾根では樹間が広く、三重獄から延々と辿ってきた尾根を左手に眺めながら、緩やかに登ってゆく。
次のca730mピークも広々とした雪原が広がっている。背後に辿ってきた尾根を振り返ると北の空が暗い。どうやら天気が崩れるのが予報よりも早そうだ。つい先ほどまでは晴れ空が広がっていた南の空にも急速に雲が広がってゆく。
尾根の先に見えているのは三十三間山かと思っていたが、実際にはその手前のピークp838だ。登りの尾根は距離は長いが、緩やかに高度を上げてゆくので、しんどさはさほど感じない。
p838が近づくと尾根上にはブナの樹林が広がる。
三十三間山の山頂はブナの樹林の中であるが、ピークのすぐ南側からは長い雪稜の展望が広がる。轆轤山にかけて続く風衝草原の笹原の稜線のおかげで長い雪稜が出来るのだ。まだ時間は13時をわずかに過ぎたところではあるが、稜線上には登山者の姿は全く見当たらない。西の空を見ると雨で景色がすっかり烟っている。雨雲がやってくるのも時間の問題だろう。先を急ぐことにしよう。
尾根上は多数のトレースで踏み固められている。ワカンやスノーシューだけでなく、12本爪のアイゼンのトレースも多く見かける。ツボ足はかなり踏み抜いた形跡がある。スノーシューがない方が早いかと思い、スノーシューを脱いでツボ足にするが、雪が腐っているせいもありやはり踏み抜きまくる。尾根を下ると早速にもポツポツと小雨が降ってきた。
風神と呼ばれる倉見への下降点を過ぎると尾根上のトレースも少なくなるので再びスノーシューを履く。晴れていればパノラマを楽しみながらのんびりと長大な雪稜をのんびりと歩きたいところであるが、次第に雨脚が強まってくるので、スピードを上げる。
隣に見える三重獄の山頂部も瞬く間に雲がかかる。轆轤山を過ぎたところで、尾根の正面に杉の植林が現れる。トレースはここで西に曲がり、倉見峠の方に向かって降りてゆく。倉見の登山口から周回するコースだ。
ここから天増川集落に向かってまだまだ尾根を南下することになる。地図を確認すると天増川集落までは少なくとも5kmはあるだろう。1時間半はかかることになる。轆轤山から南の尾根は武奈ヶ嶽から注意深くみていなかったのだが、意外にも自然林の疎林が続いている。晴れていれば右手には武奈ヶ嶽の好展望が続くのだろうが、武奈ヶ嶽の山頂部も既に雲の中だ。
杉の植林が尾根の西側から登ってくる箇所もあるが、東側には自然林が続いている。p384のなだらかなピークが近づくと尾根は杉の植林が広がるようになった。問題は最後の天増川への降りだ。ピークの南の鞍部から谷を神社に向かって下降することを考えていたが、左手の尾根がはるかに下降しやすいように思えたので、尾根筋の下降を選択する。
尾根は下生は少なく、通行を妨げるような藪もない。急な私の出現に驚いたのか猿の集団が大慌てで尾根を横切って谷へ逃げてゆく。尾根は下降するにつれて急峻になってゆくが、なんとか無事に集落の裏手に出る。右手の谷にはケヤキの大樹に囲まれた小さな神社があった。
天増川集落の民家の間の道路は全く除雪されていない。つまり道に面した民家には人が住んでいないということだ。天増川にかかる本所橋を渡ると車道は綺麗に除雪されている。道路脇にも除雪された広地があり、数台の車が停められている。折しも近畿電力というロゴの入った車が到来し、車の主と会話を始めたので、おそらくは皆、電力会社の人なのだろう。集落の南側には川沿いに広場が設けられ、送電線鉄塔のための建築資材が置かれているようだった。
ようやく雨が上がったようだ。車を停めた出発地点まで1.5kmほどの車道を歩く。ようやく車に乗り込んで、帰路につくと再び雨が降り出すのだった。京都市内に戻ると、それまでに雨が降った気配がなかったが、すぐにも雨が降り始める。
自宅に戻り早速にも天気図を確認すると日本海を東に進む温帯低気圧が近畿地方に大きくかかっていた。今回のような長距離周回をするにはどう考えても不向きな天気だ。天気予報を信じるのはやめようと思った一日だった。
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