東沢谷・黒部源流・赤木沢
- GPS
- 128:00
- 距離
- 46.1km
- 登り
- 2,934m
- 下り
- 3,092m
天候 | 晴 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
東沢谷は主にゴーロ。稜線は一般登山道でよく踏まれている。黒部源流は踏み跡もあるが水線沿いを基本にする。赤木沢は一部に踏み跡あり。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
靴
ザック
昼ご飯
飲料
レジャーシート
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
サングラス
カメラ
シュリンゲ
地下足袋
わらじ
捨て縄
ザイル
|
---|
感想
これまでの幾多の山行の中で忘れがたいのが東沢谷と黒部源流、そして赤木沢を繋いだこの山旅である。混み合う一般ルートを外し、沢をつないで梅雨明け10日の北アルプスを堪能した。
例によって沢のパートナーであるKさんと行く。初日は黒部湖最南端にひっそりと建つ奥黒部ヒュッテを目指し、平の渡し舟で黒部湖を渡る。奥黒部の小屋は我々以外には泊まり客がいない。その朝に去った釣り師がどっさりイワナを置き土産にしていったということで、ご相伴にあずかる。骨酒を振舞われて何とも贅沢な旅の始まりだ。
翌朝、宿のすぐ前を豊かな水量で流下する広々した東沢谷に入る。木橋はちょっと高度があって緊張するが、これを渡って右岸へ。夏の太陽のもと、わらじ履きでのんびりと遡上する。悪場はない。人もいない。登るにつれ、周囲はどちらを向いても鋭く立ち上がる岩のピーク。雪をたっぷりと載せ、草付きには緑の絨毯が広がって、紺碧の空に映える。谷は広く開けて山々は圧迫感なくパノラマの映像として眼前にある。そろそろ午後の陽射しが西に傾いて、ビバークの準備を始める。近くで収穫した見事なウドを鍋に加えて、素晴らしい夕食!
帳が降りるとぐんぐんと気温が下がり、ウイスキーを煽ってセーターに身を包んで寝るが、一時間もすると寒さに目がさめる。沢登りというのに快適さを追求してツェルトではなくテントを背負ってきたが、テントでも寒さは容赦無く襲ってくる。それでも若さゆえか、翌朝はまた元気に出発だ。
グイグイ登って裏銀座の稜線に飛び出す。草鞋はひとまず外して地下足袋で歩くが、水晶小屋までのザレた尾根は地下足袋ではよく滑る。小屋を越え、鷲羽の山頂直下を黒部源流下降点へと向かう。大好きな黒部源流へと気は急く。緩やかな源頭部に咲く花々に和む。やがてシラビソなどの目立つ林となり、黒部の流れが水音を響かせるようになる。下るにつれ水量はどんどん増してゆき、トロの深みが光をきらやかに反射させる。黒部の主、冠松次郎の句を思い浮かべつつ、深山の雰囲気を満喫する。誰もいない北アルプスの夏を思いっきり楽しむのだ。やがて谷は広々と開け、祖父平に達する。今日はここでビバークである。Kさんが小ぶりながらイワナを釣ってきた。二人でありがたくいただく。
翌日はいよいよ赤木沢である。祖父平から少し下ると、待望の赤木沢が左から流入する。この出会いの風景は何度見ても素晴らしい。明るく豊かに、草付きを伴って注ぎ込む赤木沢。早速遡行開始だ。優美なナメを連続させ、緩やかな傾斜でながれる沢を遡行して行く。途中一箇所、高巻きの左岸、右岸の選択を誤って下降しづらいところに遭遇したが、無理せず懸垂下降で沢床に戻る。遡行を続けていると前方に赤木の大滝が見えてきた。立派な滝だが、簡単に巻いて超える。大滝を超えると次第に源頭の様相を呈するようになり、緩い傾斜の草原が開ける。そこにはお花畑が広がり、誰もいない楽園を夢心地で進む。稜線に出るとそこは一般路。一路、太郎平へと向かう。
今日の泊地、太郎平小屋で宿泊名簿に記入する段になってはたと困った。前夜の泊地を記入するのだが、祖父平でビバークと書いていいものやら。基本、幕営指定地でのみ、テントを張っていいとなっているからだ。それでも正直に「祖父平」と書いたら、小屋のにいちゃん、「ビバースですか、すごいですね」だと。そんなこと言っていていいのか、って感じだが、実に拍子抜けした。
こうして雨に祟られることもなく、鮮烈な記憶を残して最高の山行は無事終了となった。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する