常念岳〜燕岳☆テン泊で色づく縦走路に
- GPS
- 11:42
- 距離
- 22.9km
- 登り
- 2,505m
- 下り
- 2,350m
コースタイム
- 山行
- 4:32
- 休憩
- 0:36
- 合計
- 5:08
- 山行
- 7:20
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 7:47
天候 | 二日間とも晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
中房温泉温泉からはバスで穂高駅へ |
コース状況/ 危険箇所等 |
全般的に良好に整備された一般登山道 大天井岳の北稜は登山道のないバリエーション・ルート 短い区間ではあるが山頂直下に岩場の危険箇所あり、下降はおすすめ出来ない |
その他周辺情報 | 中房温泉は¥850 JAF会員証で¥650 |
写真
感想
この週末は土日ともに広い範囲で快晴が見込まれる天気予報だ。久しぶりに家内も高山への山行に興味を示している。単独行であれば金曜日のうちに空席のある夜行バスを探すところではあるが、家内は夜行バスで前夜から出かけるのは嫌だというので、特急しなの号の始発でアプローチ出来る山を探すことになる。選択肢は非常に限られることになる。混雑が心配ではあるが、常念岳から燕岳への稜線の縦走を計画することにする。
この常念岳と燕岳の尾根を歩くのは私が10歳の時、当時8歳だった妹と共に家族で縦走した時、実に42年振りだ。当時は一泊目は燕山荘、二日目は大天井岳から常念岳を往復して槍ヶ岳の殺生ヒュッテまでとかなりの長距離コースだったこと、朝から夕方まで雲のない快晴に恵まれた山行であったことが遠い記憶に残っている。
京都駅からの新幹線のホームは早朝からかなり混雑している。旅行に出かけるひとも多いのだろうか。名古屋駅で乗り換えて特急しなの号のホームに上がると、こちらも自由席はかなり混んでいる。我々は指定席を押さえていたので無事に座ることが出来たが、社内では座ることの出来ない乗客が車掌に空席を尋ねていた。
大糸線が松本駅を出ると左手の車窓風景で否応なく目を惹くのは常念岳の鋭鋒、その左手でたおやかな稜線を見せているのは蝶ヶ岳だ。大糸線が北上するにつれ常念岳の右手には燕岳への稜線が見えてくる。
松本駅からの大糸線も車内はかなり混んでおり、登山客の姿が目立つ。立っている乗客も多いなかでリュックを隣の座席に座らせている登山者の存在が否応なく気になる。穂高駅に到着するとかなりの数の登山客が下車する。登山客のほとんどは駅前のマイクロバスに次々と乗り込んでゆく。どうやらクラブツーリズムのツアーらしい。
駅前には我々が予約していたタクシーが停まっているが、他にはタクシーは見当たらない。タクシーに乗り込もうとすると単独行の女性登山者に「どちらまで行かれますか?」と声をかけられる。「一の沢まで」とお答えすると女性はなんとも残念そうな顔をする、どうやら中房温泉まで行きたかったようだ。
中房温泉への次のバスは1時間20分後の筈でだ。タクシーに乗り込んでから運転者の方に聞くと中房温泉の登山口までは¥8500かかるらしい。単独行では躊躇する運賃だろう。
登山口には複数の駐車場があるが、いずれも満車で、さらに道路にも多くの車が路駐している。。道を歩き始めると既に下山される多くの登山者と対向する。
一ノ沢コースはしばらくは谷沿いのなだらかで歩きやすい道が続く。谷からは左手に常念岳を、稜線近くは斜面の樹々が色づいているのがはっきりと見てとれる。
右岸に渡渉すると樹林をぬけて、疎らに生える白樺とその間に色づきはじめた低木が目立つ。最後の谷を渡渉すると最終水場があり、滾々と流れる冷たい水を
紅葉の樹々が増える。
ここからは常念小屋までわずか1kmだ。尾根の急登ではあるが、九十九折りに登っていくので、それほど急登は苦にならない。30分ほど登ったところで樹林帯の上に抜け出し、常念岳が視界に大きく飛びんでくる。
常念乗越の稜線に上がると、雲の上に槍ヶ岳の鋭鋒が突き出ている。時間は13時45分。ここに13時半までに到着し、常念岳を15時までに戻ってくることが出来たら大天井岳にある大天荘まで進もうと考えていたのだったが、それは難しいかもしれない。リュックをデポして常念岳の山頂を目指す。
ここで常念岳への距離とコースタイムを冷静に計算すれば、大天井まで行くことを諦めて早々にテントを張るべきだったのだ。登るにつれて眼下に常念小屋のテント場が見えるようになるが、既に場所がかなり埋まっている。そして常念岳からは続々と登山者達が降りてこられるが、テン泊装備の方も多い。果たして我々が戻ってきた時にデントを張る余地が残っているか心配だ。
空身ではあるが、家内の足取りは遅く、常念岳への往復には意外と時間がかかりそうだ。東側の松本盆地方面はすっかり晴れているが、西側の槍ヶ岳から穂高岳への稜線は瞬く間に雲に呑み込まれてゆく。
常念の乗越から目の前に見えているピークは偽ピークであり、山頂はさらにその先にあることを降りてきた女性が教えて下さる。高度が上がるにつれて背後には横通岳の彼方に大天井岳、その彼方に燕岳が見え始める。以前の少年時代の山行の記憶では大天井岳からさほど遠くなかった覚えがあるのだが、ここから大天井岳への距離を見ただけでかなりの距離があることに今更ながらに驚く。
常念の山頂に到着したのは15時過ぎ、常念小屋から1時間以上を要した計算になる。常念岳の山頂からは蝶ヶ岳へと続く稜線が視界に入る。大糸線の車窓から見上げた時にはなだらかな稜線が続いているように見えたが、ここから眺めると意外とアップダウンがあるように見える。眺めているうちにも蝶ヶ岳への稜線に瞬く間にガスがかかり始めるが、少し遅れて家内が到着した時にはガスは再び晴れていた。
常念小屋に戻りテント場に空きスペースを探すも、見当たらない。ワンポール・テントは傾斜に弱いという欠点があるのだが、結局、テント場を囲む柵の脇の傾いた場所にテントを張る羽目になった。
テントを張った場所は稜線に近いので風の影響が大きいことが懸念されたが、有難いことに夜中も全くといっても良いほど風がない。夜中に起き出してみると、先週に引き続き今回も満点の星空が広がっている。
翌朝、3時半に起床、テントを畳み出発するのは4時半になった。4時頃から続々と出発してゆく登山者がいる。登山者のほとんどは常念岳に登っているようだ。常念岳の斜面に登山者達のライトが点々と続いている。一方、横通岳に登っている先行車はわずかに一名のみのようだ。
横通岳への登りは常念岳に比べるとかなり緩く感じられる。後ろから数名のパーティーが登って来られるが、ご来光目当てなのだろうか、横通岳の山頂に登っていかれる。
横通岳のトラバース道を進む。横通岳の北西の鞍部ではテントがひと張りあり、外国人のカップルがテントの前から朝焼けの景色を眺めていた。昨日、常念岳への登りですれ違った二人だ。確かにテントを張るには絶好の場所だ。しかし、北アルプスを含め、国立公園では指定場所以外ではテントを張るのは禁止されているということをご存じないのだろう。
東の空が茜色に染まる。八ヶ岳の右手には富士山のシルエットが明瞭に浮かび上がる。もうすぐご来光の時間だ。もう一つ、小さなピークを巻いたところでご来光が眺められるかと期待したが、すぐにも地平線から朝陽が昇ってきたようだ。
穂高岳が一瞬、紅く染まる。残念だったのは槍ヶ岳が丁度、東大天井への稜線の陰に隠れてしまったことだ。東大天井との鞍部に至ると既に浅間山の右手から朝陽が昇っていくところだった。長野盆地の方面は綺麗に雲海が広がっていいる。
東大天井の登りに差し掛かると途端に多くの登山者とすれ違う。丁度、大天荘を朝に出発した登山者達とすれ違うタイミングのようだ。
東大天井岳の肩を過ぎると再び槍ヶ岳が姿を見せる。今度は槍ヶ岳の右手に双六岳、三俣蓮華、水晶岳といった裏銀座の山々を俯瞰することが出来る。
大天井岳が近づいたと思いきや、大天井と思っていたピークはもう一つ先であった。常念小屋からは意外と長い時間を要した。大天荘からは家内はトラバース道を通って先に行ってもらい私は山頂を踏みに行く。山頂からは右手のトラバース道を歩いている家内がよく見える。
山頂から北稜の下降を試みるが予想以上に急下降だ。核心部は山頂直下の岩場だろう。左から巻いて岩場を通過する。マーキングの類は一切ないが、尾根芯に沿って微かな踏み跡が続いている。尾根のすぐ下には大きな猿がいた。あまり餌のなさそうなこんな稜線でも猿が棲息していることに驚く。
下から登って来られるカップルと遭遇する。男性はここを登られたご経験があるようだ。この降りを下降する気にはなれない」と仰るが確かに登りの方が安全だろう。しかし、後ろを振り返るとかなりの急斜面だった。
登山道と合流すると先を行く家内が鞍部の梯子を登り返しているのが見える。鞍部まではかなりの下降だ。少年時代の山行の記憶では燕岳から横通岳までなだらかな尾根が続いているように憶えていたが、当時の印象など全く頼りにならないものだ。それにしてトラバース道を通るのと大天井のピークから下降するのとではこの稜線の印象は大きく異なるのかもしれない。
燕岳への登山道を北上すると大天荘から出発された登山者達が数組歩いておられる。前からは30名ほどの大パーティーが稜線を辿って来られる。昨日穂高駅で見かけたクラブ・ツーリズムのパーティーだった。稜線では紅葉が綺麗だ。
燕山荘が近づく、前を行くカップルの方が雷鳥がいることを教えて下さる。尾根筋に登ってみると5羽の雷鳥の群れがいた。2羽は私の気配を察知して、近くのハイ松の中に逃げ込んでしまったが、2羽はすぐ近くまで近づいても警戒する素振りもない。雷鳥の天敵の一つに猿がいるが、果たして猿に襲われなければいいがと心配になる。
燕山荘に到着すると途端に多くの人で賑わっている。ここでバスの時間が気になるのであれば家内は燕岳は諦めてもいいというので、家内には中房温泉への下山路を先に降ってもらい、私は燕岳のピークを一人で踏みにいく。
先月に登った鳳凰三山もそうであったが、まさに白砂青松の山であり、オブジェのような花崗岩の大岩が独特の景観を呈するところだ。山頂からは北燕岳を経て餓鬼岳へと続く稜線が視界に飛び込む。この稜線は昔から縦走したいと思っていた計画を温めていたところであり、今回も真っ先に考えたところではあるが、上述の条件ではどうしても無理だ。
燕山荘に戻ると中房温泉への下山路を急ぐ。しばらくは色とりどりに色づいた低木の樹林の中を下降する。先をすすむ女子のパーティーが「綺麗!」と歓声を上げている。ご挨拶ついでに「紅葉が綺麗ですね」と言葉を交わすと「綺麗すぎてなかなか進めません」と返ってきた。
それにして驚くのは登ってくる登山客の多さだ。連綿と登山者が続いている。中には二組ほど20名くらいの大パーティーもおられる。多くの登山者は日帰りだろう。この時間からでも夕方までには下山出来るタイミングなのだろう。先週の槍ヶ岳でも多かったが、その比ではない。ただ、急登が続くせいだろか。前日に登った常念への一の沢ルートよりもこちらのルートの方が遥かにしんどそうである。
11時過ぎにca850mのあたりで家内に追いつくと、ようやくすれ違う登山者もまばらになる。最後は色づき始めた落葉松林の木漏れ日の中を下る。そういえば落葉松の林は他の針葉樹林と違って晴天の日は樹林が明るいのが特徴だ。
中房温泉に着くとバスの出発時間まで20分。温泉の受付の一人しかいない男性は下山したばかりの登山者達に生ビールやソフトクリームを提供するのに忙しく、我々が温泉に浸かる時間はますます短くなってゆく。まさに烏の行水で汗を流し、バス乗り場に向かうと発車時間ギリギリであった。
バスの登山者は有明神社と穂高公園で下車される人が多い。どうやら早朝のうちに中房温泉の駐車場が満車になってしまったので、有明神社や穂高公園の駐車場に車を停めてバスで登山口に向かうことを余儀なくされた方が多かったようだ。
松本駅に到着するとまずは信州の地酒を売っている酒屋に酒を買いに行く。街中は暑く感じられるが、それでも京都に比べると空気が清澄に感じられる。駅に戻ると驚いたことに駅の手打ちそば「樽木野」の店の前には登山者が行列していた。駅ビルの中の手打ちそばの店に入るが、十分に美味しく感じられた。
先週の山行後とは異なり、今週は全く筋肉痛を患うことはなかった。今週末からは急に気温が冷え込むようだ。夏山装備で登山が出来るのは今シーズン最後の機会だったのかもしれない。家内と次はもう少し静かな山にしようと心に決めるのだった。
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