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記録ID: 56168
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無雪期ピークハント/縦走
妙高・戸隠・雨飾

40.火打山 「一瞬の夏」

2009年07月18日(土) 〜 2009年07月19日(日)
 - 拍手
GPS
32:00
距離
14.1km
登り
1,458m
下り
699m

コースタイム

7月18日(一日目):笹ヶ峰キャンプ場−黒沢−十二曲り−富士見平−高谷池ヒュッテ−雷鳥平−山頂−雷鳥平−高谷池ヒュッテ(小屋泊)
7月19日(二日目):高谷池ヒュッテ−黒沢池ヒュッテ−大倉乗越−・・・・
天候 一日目:雨
二日目:曇り
過去天気図(気象庁) 2009年07月の天気図
アクセス
火打山山頂で鬼瓦!
(C)オードリー春日
火打山山頂で鬼瓦!
(C)オードリー春日
笹ヶ峰キャンプ場で幕営
笹ヶ峰キャンプ場で幕営
登り始めはこんな感じ
登り始めはこんな感じ
十二曲り
登山道はこんな感じ
登山道はこんな感じ
富士見平の分岐
もうすぐ高谷池ヒュッテ
もうすぐ高谷池ヒュッテ
高谷池ヒュッテ
雨でも山頂を目指す
雨でも山頂を目指す
イワイチョウ
天狗の庭 その1
天狗の庭 その1
天狗の庭 その2
天狗の庭 その2
天狗の庭 その3
天狗の庭 その3
この日の夕食
べべロンチーノ・白飯・焼き鳥の缶詰
この日の夕食
べべロンチーノ・白飯・焼き鳥の缶詰
19日、火打山が見えた
19日、火打山が見えた
黒沢池ヒュッテ

感想

第40座 一瞬の夏

7月17日、僕が今回の山旅に出るにあたって、テレビのニュースで北海道の大雪山からトムラウシへ縦走していたツアー登山のパーティーが遭難したとの報道があった。
 それを観た家族が「今回はいかないほうがいいんじゃないの?」とはいわなかったが、
(今回ばかりはいおうと思ったのかも知れないが・・・・)
「あんたも気を付けなよ」といわれた。この時点での僕は天気が悪くたって、必ず生きて帰って来られる。そんな根拠のない自信を抱いて自宅を後にした。
 
 長野に向かう特急列車は、途中降雨による土砂崩れのため、80分遅れで長野に到着した。その時には雨はあがっていた。その後、直江津へ向かって北上する信越本線の電車に乗り換え妙高高原駅で下車し、登山口のある笹ヶ峰までいくバスは既に発車された後だったのでタクシーでそこまで向かった。この日は笹ヶ峰キャンプ場で幕営した。 7月18日の夜中から雨は降っており、6時に笹ヶ峰登山口から出発した頃も雨が降っていた。登山中は雨が強くなったり、弱くなったりと止むことがなかった。10時頃に高谷池ヒュッテ(山小屋)に到着し、降り続く雨の状態を考慮して、当初テント場で幕営予定だったが、山小屋素泊まりに変更した。 その後、アタックザックに必要最低限のものを詰めて、火打山を往復して登って来た。
これで僕の日本百名山は丁度40座となった。 7月19日、5時頃に高谷池ヒュッテを出発。この時は雨はぱらついていて、登山道は泥でぬかるんでいた。6時頃に黒谷池ヒュッテを到着。 大倉乗越のきつい登り坂を登り、降って妙高山へ取り付く急な登り坂の前の平坦な登山道で事は起こった。左足が登山道を踏み外し、気が付けばバランスを崩し70メートル下へ回転しながら滑落し、笹林があるところで止まった。すぐに立ち上がってケガの確認をしたら、左頭上部をパックリ切って流血していた。出血はそんなに多く流れていなかった。左肩も痛みがあったが、取り合えず意識はある。足は大丈夫であることを確認して、この窮地をどう脱するか考えた。 前方に長助池という池塘が確認出来た。そこまでいけば別の登山道へたどり着けるかも知れないと考えたが、遭難した時は下山していけないという鉄則を踏まえ、それは諦めた。(何故ならば、降れば降るほど崖や沢で進路を阻まれ進退を窮するから) 次に何とか、よじ登ってもといた登山道に復帰出来ないか? ということを考えた。ザックの中からアタックザックを取り出し、ビバーク(緊急野営)に必要な水や炊事道具、エマージェンシーグッズが入った袋、ツエルトを詰めて崖を登ってみたが、手場や足場に乏しく、それも断念した。 携帯電話を持っていたので、山小屋や110番通報を試みたが電波が届かず、最後の手段として人に助けを求めることにした。こういう時のためにホイッスルは持っていたので、四六時中吹き続けた。 そのうちにここを通りかかった3人の女性のパーティーが気付いてくれて、その時初めて、大声を出して「滑落して、ケガをしているので助けて下さい!」と叫んだ。 しばらくして、黒沢池ヒュッテの男性スタッフが駆けつけて来て、「救助ヘリを呼んだので、そこを動かないで下さい」といわれた。その間僕はツエルトを頭からかぶり、その下にエマージェンシーグッズの入った袋から、サバイバルシートという薄手の銀のラップ状のシートを体に巻いて体温を下げないようにした。 時間が経って新潟県警のヘリが救助に飛んで来て、二人のレスキュー隊員によって救助された。放棄されても仕方がないのに、ザックやアタックザックも回収して頂いた。タダでさえ命懸けなのに、そこまで気を遣ってもらって頭を何度下げても足りないなという思いだった。 こうして、どこかのヘリポートで降ろされ、救急車で新潟県立中央病院に収容された。救急病煉で治療を受けている間の僕は大声で泣き続けた。助かったという思いと、自分の命を自分自身で救えなかったという情けなさから。

 両親はその日の夜遅くに到着した。僕は母だけが来て、体が不自由な父はここには来ないと思っていた。しかし、不自由な体を押して父も一緒に来てくれたのだ。この時も僕はとんでもないことをしてしまった申し訳なさでまた泣いた。僕が意外に元気だったのを見て安心したのか、父は翌朝家に帰った。僕は三日間入院したが、その間母も一緒にいてくれた。

 三日後に母と一緒に帰宅。一宮の病院で診察を受け、頭の傷は案外軽く済んだのだけれど、左肩鎖骨骨折で全治三ヶ月と診断され、その後一週間は自宅療養、思いの他早く職場に復帰したが、11月中旬の完治まで治療とリハビリに費やすこととなり、その間に計画していた登山やマラソン大会出場を泣く泣く断念した。 
 その間、僕は今回の登山について悩んでいた。
なぜ僕は山で遭難したのだろう? ということを。

 頭の中で遭難した目前まで振り返ると、その時僕が考えていたのは、これから先に訪れる危険な場所を無事に通過出来るかということを考えていた。だから、今歩いている登山道に潜む危険を察知出来ずに、足を踏み外したという訳だ。いずれにせよ、今回の登山で
「踏み出す一歩の恐ろしさ」というものを感じた。危険な場所を通過しているという自覚が欠如しているから、今回の事故が起こったのだと思っている。
 
また、僕は安易に救助隊を呼んだのではないか? とか、足がケガしていなければ、自力で山を下りられたのではなかったか? 

 そのことで悩んでいたけれど、この後の生活も今まで通りの暮らしに戻っていることを考えると、それで正解だったと言い聞かせている。

 あとは、山と向き合う姿勢だとか、「日本百名山を登る」ことに頑なになりすぎて、知らず知らずのうちに危険な登山をしてしまう僕の行動を改めなくてはとも思った。再び春が訪れ山に登れるようになるまで、この時こそココロの充電期間なのだと思って、日々を過ごしていこうと思った。

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