大雪山系縦走(旭岳・間宮岳・中岳・黒岳) ※紅葉の大雪山を見ようと初めての山登り。軽く往復して帰るつもりが……。
- GPS
- 10:40
- 距離
- 18.6km
- 登り
- 1,574m
- 下り
- 2,039m
天候 | 快晴 |
---|---|
アクセス |
感想
ある日学生時代の友人Gと紅葉の旭岳を見に行くことにした。どうして、見に行くことにしたのか、今となって詳しい理由は分からない。というのも、この記事を書いているのは登山を本格的に再開した平成22年現在で、あれから14年の歳月が経っている。おそらくは、単に日本で一番早い紅葉を見に行くという単純な理由からだと思われる。
さて、出発の日、朝早く旭岳登山口に着いたものの、ロープウェイの運行開始まで1時間近くもあり、しかも料金も高いので、ロープウェイを使わずに歩いて姿見駅まで登っていくことにした。しかし予想外に時間が掛かり、日頃の運動不足からかかなりキツイ。ようやく姿見の駅に着いたと思ったら、ロープウェイの利用者がアリの巣から出てくるように、うじゃうじゃ出ている。やはり、ロープウェイの方が早かったなと思いながら、姿見駅周辺を散策してみた。姿見の池周辺は青い空にナナカマド類の赤やハイマツの緑が映えて素晴らしい景色だ。姿見の池を横目に見ながら旭岳へ向けてのアタック開始とした。
本格的な登山など経験は無く、しかも旭岳の往復と言うことで物凄い軽装で、ガッチリ装備を施した周りの登山者とは一種違和感を感じる。しばらく登っていくと、旭岳の噴煙が間近に見られ、そのエネルギーの大きさを肌で感じる。しかし頂上まではまだまだである。しかし、おっさんやおばはんがやたら多い。登山は中高年のブームという話は聞いていたが、まさかこれほどとは驚きである。それからかなり、登ったところに「金庫岩」と呼ばれる大きな四角い岩に着いた。ココまで来ると、あと少しである。急坂をはぁはぁ言いながらようやく山頂に着いた。
「よっしゃー。」友人Gと固い握手だ。さすがに山頂は少し寒い。しかし、その素晴らしい絶景と北海道で一番高い所に立てた満足感で一杯になった。山頂では、持ってきたお菓子やパンなどをほおばるが、なぜかいつもより旨い。外で食うと何でも旨く感じるが、山頂ではその何倍も旨く感じるのだ。山頂での一時を充分楽しんだ後、下山の準備にかかる。
ここで、ふと気づいたのだが、我々が登って来た姿見の池方向と逆方向へ行く人が結構多い。そのうちの一人に話を聞いてみた。すると、旭岳から黒岳へ縦走するのだという。その答えを聞いて既にオレの腹は決まっていた。Gにも一応確認してみた。「なぁG、オレたちも黒岳へ縦走しようや。」もちろんオレは「おう、やろう。」と言うのかと思ったのだが、ヤツは違っていた。「そんなん、無理に決まってるやろう。」と厳しいお言葉。「だいたい、こんな軽装じゃ無理やろ。危なすぎる。それにここから黒岳までどれだけ掛かるか分からんぞ。だいいち、黒岳から層雲峡に下山したら、車はどうするんや?」
なるほど、ヤツの言うことはいちいち正しいが、これで怯んでは男が廃る。「いや、大丈夫や。さっきの人は1日あれば十分黒岳まで縦走可能ってと言うとった。今の俺たちの足やったら、絶対に何とかなる。それに車のことやけど、向こうに着いたらヒッチハイクでもして、車を捕まえたらええ。今日中に旭川くらいまで行ければ、なんとかなるやろう。」ここまで言ってもGは相変わらず乗り気でない。「大丈夫やって。俺が何とかするから。」で、出たー!オレの得意の決めセリフだ。Gもようやく納得したようだ。
しかし、10年以上経って今さらながら考えてみると、俺は本当に無鉄砲というか、ムチャクチャな男だ。だいたい何とかするって、地図もコンパスもなく、こんな軽装で遭難したらどうするんや?まぁ、何はともあれ、Gの合意を取り付け黒岳へのトレッキングを開始した。もちろん、オレは自分の意見が通り、意気揚々だ。
旭岳を下っていくと雪渓が見えてきた。雪渓を踏みながら、はしゃぐ俺たち。雪渓を越えて、軽くなだらかな坂を登ると、間宮岳に着いた。山を登った感触はなかったが、2つ目の頂きを制覇し俺たちは再度固い握手を交わす。間宮岳を過ぎると、お鉢と呼ばれる大きな火口の窪みが見えてきた。雄大な景色にしばし圧倒される。今度は3つ目の頂である中岳に到着。もちろん3回目の握手だ。中岳を過ぎ、お鉢巡りともお別れだ。黒岳に向かって、なだらかな道を歩いていく。遠くに黒岳の石室が見えてきた。体はかなり疲れてきたが、目標を見つけると俄然元気が出る。目標の石室に向かって歩き、ようやく石室に着いた。
石室には売店があり、ジュースやビールの他、みそ汁やライス等、ちょっとした軽食も味わえる。と、思ったら料金が物凄く高い。値段までははっきり覚えていないが、ジュースが500円、みそ汁が1000円だったと記憶している。しかし、ここまできたら値段などはどうでもいい、500円のコーラで乾杯だ。「う、うまい。うますぎる!!」コーラとはこんなにうまいものだったのか?いや違う、今まで歩いてきた辛さ、そして何よりもこの素晴らしい景色がうまくさせているのだ。絶品コーラを飲み終え、黒岳への最後の登りとなる。気合を振り絞り、この行程最後の頂である黒岳に辿り着いた。黒岳でGと友情の握手をし、下山することにした。下山している途中、でっかいショイコを担いだ若者とすれ違った。見るとジュースやビールなどが積まれている。荷物なしでもこの急坂を登るのは相当大変だが、あんな思いものをよく担いで登っていくもんや。コーラが500円するのも納得である。
急坂を下り、リフトとロープウェイを乗り継ぎ、層雲峡温泉街に着いた。さぁ、ここからが問題である。どうやって帰ろうか。まずは旭川方面のバスがあるか確認したが、ダメだった。Gと相談して、やはり最終手段として、なんとかヒッチハイクで旭川方面に行くことにした。幸いなことに紅葉時期であり観光客や我々のような登山者などが結構多い。これはなんとかなるなという感触はあった。しか〜し、これがなかなかうまくいかない。片っ端から車に声を掛けるが、30分経っても捕まらない。そうこう言う内に陽がだんだん傾き、暗くなりだしてきた。
おいおい、やばいぞ。早くなんとかせな!声を掛け始めて40分くらい経ったであろうか、1台の車が停まった。よっしゃ、なんとかこの車をものにせんと。車には我々と同じくらいの学生らしい若者が2人乗っていた。向こうから聞いてきた。「どこまで行きたいの?」「旭川方面です。」「それだったら、乗っていく?俺たちちょうど旭川に帰るところだから。」これは、ラッキーだ。しかも目的地の旭川に一発でいける。やはり「為せばなる、為さねばならぬ何事も。」である。しか〜も、「今日はオレの家に泊まっていきなよ。」と誘われるという厚遇ぶり。こんなラッキーなことがあり得るだろうか?当然即答で、「お願いします。」と言っていた。
なんでも、その2人の若者は、藪こきをしていたらしく、ヒッチハイクは自分たちもよくやっているとのこと。若者の家に着き、今日はいろいろお世話になったお礼として、飲み代をすべて持つので、どこか飯に行こうと申し出た。近くの居酒屋に行き、酒も入り4人はすっかり打ち解けあった。しかし、俺たちも素晴らしい山行だけでなく、こんな素晴らしい出会いがあるとは思ってもいず、うまい美酒に酔っていた。ここで、オレの口先が火を噴く。「いやぁ、しかし旭岳の紅葉はすばらしかったな。アレは見な負けやで。」出たー!得意の〜しないと負け発言。予想通り喰い付いてきた。「そんな良かったのか?」「当たり前やん。絶景や!」なんと、「俺たちも明日見に行ってみるわ。」との発言。これは渡りに船だ。結局、明日車のある旭岳まで送ってもらうことにした。旭岳駐車場に着き、2人と別れをした。その瞬間Gに言った。「なぁ、俺が何とかしたやろう。」当初、縦走に反対したGも何にも言えずだ。コイツは笑いが止まらない。大・大・大満足で帰宅の途についた。
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