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Yamareco

記録ID: 65599
全員に公開
雪山ハイキング
日高山脈

北海道日高

2010年05月02日(日) 〜 2010年05月03日(月)
 - 拍手
GPS
240:00
距離
10.6km
登り
1,318m
下り
850m

コースタイム

本文参照
天候 晴れ強風
過去天気図(気象庁) 2010年05月の天気図
アクセス
コース状況/
危険箇所等
本文参照

感想

ルート/野塚トンネル北口〜1200稜線〜トヨニ本峰〜北峰手前〜本峰〜野塚岳〜野塚トンネル北口
タイム/2日7時11分トンネル北口〜8時40分1200〜12時10分トヨニ本峰13時10分〜13時40分1480C1
3日5時半C1〜6時10分本峰6時55分〜10時25分野塚西峰〜11時野塚岳11時26分〜12時23分トンネル北口
天気/晴れ強風
メンバー/単独

★計画
GWは一人で行くと決めていた。
最大の理由は下降している体力だ。
これまでは誰に遠慮することはなく、勝手気ままに行動できたが、段々と落ちつつある持久力に、下手すると同行者に迷惑をかけると思っている。
一人なら撤退するのも行き先を変えるのも自分の意思の任せるままだ。
当初は神威岳からソエマツ岳をやろうと思ったが、林道歩きが13キロあると知り、あっさりと諦める。
そこで今回は以前から気になっていたピリカヌプリの南西にある春別山1293mを標的にする。
春別と名が付く山はこれを入れて3つだと思う。
外2つは最後は岳だが、既に登頂済だ。
長い距離だから稜線2泊は必要だ。
天気さえ持てば何とかなるだろうと札幌を1日に後にする。

★獲らぬ狸
始めは1日から登る積りだったが、天気が悪く一日順延した。
1日午後から家を出てわざわざ遠回りして剣小屋へ向かう。
渋滞もなく午後5時小屋に着くと先客が3パーティーいてストーブが炊いてあり助かる。


隣の老夫婦は恵庭から来たU原さんだ。夏にピリカに登ったということから沢屋だと知る。
持参したガイド本のゲラを見せると酒を呑むのを止めて熱心に見入る。
さてこれで1冊売れたとするのは獲らぬ狸か。
皆さん行儀がよく20時には全員寝入る。
おでんと鯖の缶詰を食べ、ふなぐちを呑むと私も奈落の底に落ちた。

★俊一さん
野塚トンネルに着くと既に20台近い車がある。
早速準備を整え7時11分沢向かいの谷間を進む。
しっかりした踏み跡があって、いつもは右の尾根に取り付くところを、左尾根へ向かう。


トヨニ岳へは多少遠くなるが、ザックが重たいから楽をさせてもらう。
青空が広がり、天候は心配ない。
かつての早歩きの陰は見えない。
一歩一歩数えるように足を上げる。
1時間半かかって1200の稜線に上がると、先を行く10名の団体が見える。
つぼ足でここまで来る。
トヨニ岳の真っ白い山容が早く来いよと誘っているが、長い稜線が待っている。
1120に着く右の尾根から一人上がってきた登山者と話をする。
どうも聞き覚えのある話方だ。
「俊一さん?」と声をかけると「あら、ganさん」と久々の再会を喜び合う。
過去の沢本にも登場している俊一さんは今度のガイド本では二岐岳でその姿を見ることができる。

★恐怖
スノーシューの俊一さんとつぼ足の私が前後して歩く。
少しして10名の団体を追い抜くが、大橋さんのガイドツアーだ。
1251峰手前でアイゼンを付けていると団体が追いつく。
中の一人が「ganさんでしょ」と声をかけてきた。
よく見るとマリッカさんの友達のG藤さんだった。
その台詞に噴出した。
「何か似てるなあと思ったけれど。ズボンの膝に貼ったガムテープで確信したわ」だと。
失礼しちゃわう(爆)。
もう一人は「1月に喜茂別岳でお会いしました」と言われ、白老山岳会の中の一人だった。
さて問題の1400付近に来た。
僅か20mほどだが、ここを平気で通れるほど度胸は座っていない。
僅か4、50cmのナイフリッジの左右は落ちたら数百M谷底へ行く。
ザックの重さが恐怖心に拍車をかける。
簡単に行ってしまった俊一さんの姿は見えない。
ゆっくりと慎重に慎重に、ピッケルを刺しながら恐る恐る通過する。

★決断
5時間かかって山頂に着いた。
それにしても風が強い。
黙って立っていられないほどだ。
その内東峰から夫婦連れが着いた。
宮城からきた二人は天気が悪く、1200付近にテントを張っていたという。
30分余り、こちらが口を挟む余地がないほどしゃべりまくる。
相当ストレスが溜まっているようだ。
私は本峰より標高の高い北峰行きを勧めたが、あっさりと諦めていた。
俊一さんを見送り、私も出発する。
予定では北峰の先の稜線でテント泊だ。
北峰手前のニセピークにさしかかる。
日高側からの突風に体が揺られる。
その急斜面を見ると自信が消え伏せた。
行けるだろうと90%は確信が持てたが、残り10%に気持ちが萎えた。
情けなかったと素直に思う。
太陽はまだ真上に近い。
13時40分、ここに泊まろうと決断を下した。

★唸り
20mほど戻り、十勝側にテント設営の場所を決める。
ビールの栓を開け、呑みながらの作業は遅遅として進む。
日高側は壁があるからと十勝側を中心にブロックを積む。
テントを張り終える頃にはビールからペットボトルに入ったふなぐちをラッパ呑みだ。
十勝側へ越える風がヒューヒューと唸りを上げる。
ここにテントは張ったということは明日はかなりきつい行程になるということだ。
ま、自然と自分の心には逆らえないか。
生米を2合半持参した。
それを炊いてサンマと鯖の缶詰をおかずに飯を食べる。
ふなぐちを明日の晩用に半分残し、ウイスキーに移った。
いつの間にか眠りに落ちた。

★影響
目覚めると周囲はガスの中だ。
テントが大きく波を打つ。
日高側からの風は計算済みだ。
ということは風向きが変わったか。
外に出てブロックをさらに積みます。
予報では明日夜は雨もあるという。
ということは明日の稜線泊まりは止めた方がいいだろうと明日の下山を決める。
せめて春別山は無理でもピリカヌプリは往復したい。
ローソクに火を灯し、ラジオ付ける。
再びウイスキーを水で割る。
これ以上呑むと明日の行動に影響があると分かっていながら、カップを傾けた。

★うめき声
4時頃激しいテントの音で目覚めた。
積んだブロックも数個飛ばされている。
十勝側からの風がうめき声に似てきた。
まずいな、これは。
とにかくご飯を済ませて出発の準備に取り掛かろう。
残ったご飯はチーズ茶漬けの予定だったが、その茶漬けが見当たらない。
ラーメンのスープを入れたが、これが最悪の味だ。
何を食べても美味しいこの私の舌が拒否する位の山岳史上空前絶後の不味さだった。
テントをこのままにするのには不安だった。
サブザックに最低限の物を詰め、外はザックに仕舞ったが、風は以前と変わらない。
せめて北峰を踏み、北東の尾根にある1438峰を踏もうと思って様子を見たが状況は変わらなかった。
2回目の決断を下さざるを得ない。
5時半本峰とへ歩みを進める。

★消化不良
本峰と着くと前日私の後から着いた山岳無線マニアの方の外にもう一張が山頂直下に張ってある。
中から顔を出したのは亡き鈴木和夫さんのお兄さん一行だ。
見慣れた4人は全員が日本山岳会会員だ。
再会を喜び合い、珈琲と卵ぞうすいの歓待を受ける。
前日の団体一行は結局南峰手前の稜線にテントを張っていた。
風は強いが眺めは素晴らしい。
このままトンネルに戻るのは消化不良気味に思えた。
6時55分野塚岳へ向かって歩き出す。
はるか彼方にその姿は映る。
行けるかどうか自信はなかったが、駄目ならエスケープできるという気楽さがあった。

難所もゆっくりと通過して、後は体力が持つかどうかだ。
1200でアイゼンからわかんに履き換える。
途中2組のパーティーとすれ違い、1200の下降尾根に来た時、ここから降りて楽をするか、野塚へ向かうか1分間の迷いがあった。
「よし、行くか」と駆り立てたのは今夜は札幌に帰らず、剣小屋に泊まればいいさ、という理由にならない理由だった。

★テンション
トヨニ岳と野塚岳の稜線歩きは日高通なら一度は歩きたいところだ。
過去繋いではいるが、一度で歩き通したことはなかった。
野塚西峰手前の1268峰への登りに亀のように歩く自分がいる。
上を見るとテンションが下がるから足元だけを見ていた。
上がったところでわかんからアイゼンに換える。
10時25分西峰に着いた時、やっと心の負担が消えた。
西コルにザックをデポし、山頂に着いたのは本峰から5時間後のことだ。
風の音だけある無人の山頂に、数分遅れてスキー担いで上がってきたのはHYMLの陽さんだった。
またここでも知り合いに逢う。
山の世界は狭い、という当たり前すぎる結論に納得していた。

★功績
山頂からは1時間でトンネルに着いた。
まだ12時半を回ったばかりだ。
普段は通り過ぎている中川一郎記念館で小1時間かけて彼の功績を見る。
芽室町の鳳の舞温泉は私の気に入りだ。
シャンプー、石鹸、サウナ付き400円はイチオシだ。
ぬるぬるの泉質がまたいい。
剣小屋には誰もいなかった。
すっかり酔って18時半には寝ていた私だったが、気付くと隣に二人が来ていた。
雨が天井を叩き、下山してよかったなと自分を納得させていた。
翌朝4時、剣小屋を発つ。
予定通りではなかったが、満足感溢れる山行がまた一つ心に刻まれた。
沢もいいけれど残雪季もまた捨てられないなあ。

★おまけ
体力派ならピリカヌプリは十分1泊で行けます。
後1週間はまだ稜線も雪タップリです。

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