ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 7052841
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
塩見・赤石・聖

塩見岳と蝙蝠岳 蝙蝠は眠れない

2024年07月21日(日) [日帰り]
情報量の目安: S
都道府県 長野県 静岡県
 - 拍手
体力度
8
2〜3泊以上が適当
GPS
18:03
距離
37.5km
登り
3,150m
下り
3,152m
歩くペース
速い
0.80.9
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
15:05
休憩
2:58
合計
18:03
距離 37.5km 登り 3,150m 下り 3,152m
3:36
10
鳥倉林道第2駐車場
4:21
4:23
38
5:01
29
5:30
5:40
18
6:19
6:34
1
6:35
6:38
9
6:47
6:48
37
7:25
7:30
74
8:44
8:51
57
9:48
9:52
2
9:54
10:00
17
10:17
10:20
13
10:33
60
11:33
11:51
85
13:16
22
13:38
13:44
32
14:16
14:17
2
14:19
14:24
52
15:16
16:00
68
17:08
17:25
44
18:09
18:10
9
18:24
18:31
11
19:05
19:08
34
19:42
19:43
59
20:42
20:44
41
21:39
鳥倉林道第2駐車場
天候 🌤️
過去天気図(気象庁) 2024年07月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
林道バス以外はゲート内侵入不可。
日曜登山の駐車場確保は結構厳しい模様。
01:00前で第2駐車場がギリギリだった。
コース状況/
危険箇所等
【林道】
ゲート内は自動車侵入禁止。
自転車の持ち込みは可能。

【登山道~三伏峠】
約4kmで高度800m以上を稼ぐ。
木製足場の腐食が進み、
新たな金属製足場への
付け替えが進んでいる。
実際に歩いてみて、上り以上に
下りが大変な道という印象。

【三伏峠~本谷山~塩見小屋】
樹林やハイマツ帯を行く。
細やかなアップダウンが堪える。
塩見小屋までの登り返しは岩がゴロゴロ。

【塩見小屋~塩見岳】
山頂直下と手前の頂は岩場。
鎖付きのところもある。
誤って石を落としたら事故に繋がるだろう。
ヘルメット装着推奨。

【蝙蝠尾根】
ザレた馬の背、ガレ道、断崖を行く岩稜地帯、
草木や花が咲いている日当たりの良い樹林帯、
風の影響をもろに受ける場所も多い印象。
様々な顔を持つバラエティーに富んだ道。
細やかなアップダウンをしながら
7km行った先には、蝙蝠岳が待っている。
予約できる山小屋
塩見小屋
第二駐車場からだったが、
ほぼ予定通りの出発になった
2024年07月21日 03:51撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 3:51
第二駐車場からだったが、
ほぼ予定通りの出発になった
少しずつ時間の貯金を作って
行きたいのは山々なのだが…
2024年07月21日 04:22撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 4:22
少しずつ時間の貯金を作って
行きたいのは山々なのだが…
多度山のそれとは訳が違う
次の数字が中々出て来ない
2024年07月21日 04:55撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
7
7/21 4:55
多度山のそれとは訳が違う
次の数字が中々出て来ない
痛そうな葉っぱ
2024年07月21日 05:09撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 5:09
痛そうな葉っぱ
良い仕事されてます
2024年07月21日 05:11撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 5:11
良い仕事されてます
ほとけの清水
南アルプス天然水
ここでの給水を当てにしてた
2024年07月21日 05:32撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
6
7/21 5:32
ほとけの清水
南アルプス天然水
ここでの給水を当てにしてた
新たな足場が組まれている
2024年07月21日 05:54撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 5:54
新たな足場が組まれている
ここから意識して少し歩幅を
広げて歩く…
2024年07月21日 06:15撮影 by  iPhone SE (2nd generation), Apple
4
7/21 6:15
ここから意識して少し歩幅を
広げて歩く…
209歩…負けた(誰に?)
2024年07月21日 06:19撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 6:19
209歩…負けた(誰に?)
いつか日帰りでない登山も
してみたいと思ったりする
2024年07月21日 06:31撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 6:31
いつか日帰りでない登山も
してみたいと思ったりする
左 塩見岳を目指す
2024年07月21日 06:38撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
3
7/21 6:38
左 塩見岳を目指す
ああ、雲が…
2024年07月21日 06:46撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 6:46
ああ、雲が…
あっちも…
2024年07月21日 06:46撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 6:46
あっちも…
右が蝙蝠岳だろうか?
2024年07月21日 06:49撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 6:49
右が蝙蝠岳だろうか?
覗き岩から
2024年07月21日 07:10撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
6
7/21 7:10
覗き岩から
いちばん右の頂のちょい左下
三伏峠の小屋が見える
2024年07月21日 07:10撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 7:10
いちばん右の頂のちょい左下
三伏峠の小屋が見える
本谷山に到達
三等 『黒川』2658.33m
2024年07月21日 07:25撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
6
7/21 7:25
本谷山に到達
三等 『黒川』2658.33m
塩見小屋を目指す
2024年07月21日 07:26撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 7:26
塩見小屋を目指す
山頂は未だガスの中
2024年07月21日 07:50撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
3
7/21 7:50
山頂は未だガスの中
陰に佇む存在感
2024年07月21日 07:53撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 7:53
陰に佇む存在感
甲斐駒、仙丈、白峰三山
全て雲に隠れる…
2024年07月21日 08:37撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 8:37
甲斐駒、仙丈、白峰三山
全て雲に隠れる…
来た道を振り返る
2024年07月21日 08:42撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 8:42
来た道を振り返る
ほぼ予定時刻に塩見小屋到着
順調!
とか、この時は思っていた…

重大な勘違いをしている
2024年07月21日 08:45撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
3
7/21 8:45
ほぼ予定時刻に塩見小屋到着
順調!
とか、この時は思っていた…

重大な勘違いをしている
あれを登るんか…
2024年07月21日 08:53撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
6
7/21 8:53
あれを登るんか…
雲が取れてきた
2024年07月21日 08:54撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
3
7/21 8:54
雲が取れてきた
岩場経験が乏しいこともあり
かなり緊張している
2024年07月21日 09:18撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
7
7/21 9:18
岩場経験が乏しいこともあり
かなり緊張している
すげーな!
あんなとこ歩いて良いのか?
2024年07月21日 09:26撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
6
7/21 9:26
すげーな!
あんなとこ歩いて良いのか?
塩見岳西峰に到達
2024年07月21日 09:52撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
8
7/21 9:52
塩見岳西峰に到達
二等 『塩見山』3047.28m
2024年07月21日 09:50撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
7
7/21 9:50
二等 『塩見山』3047.28m
東峰に到達
ガスはこの先晴れて行く予感
2024年07月21日 09:56撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 9:56
東峰に到達
ガスはこの先晴れて行く予感
西峰を振り返って悩んだ
さてこの先、どうするんだ?
2024年07月21日 09:56撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
6
7/21 9:56
西峰を振り返って悩んだ
さてこの先、どうするんだ?
蝙蝠尾根が続く
2024年07月21日 09:57撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 9:57
蝙蝠尾根が続く
巨大な蟒蛇の如く艶めかしい
うねりに暫し見入ってしまう
2024年07月21日 10:00撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
6
7/21 10:00
巨大な蟒蛇の如く艶めかしい
うねりに暫し見入ってしまう
決めた!行こう、
あの尾根の向こうに座る頂へ
2024年07月21日 10:00撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
6
7/21 10:00
決めた!行こう、
あの尾根の向こうに座る頂へ
苦難の道を敢えて選んだ訳を
2024年07月21日 10:04撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 10:04
苦難の道を敢えて選んだ訳を
きっと
あの秀麗な頂が知っている
2024年07月21日 10:11撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 10:11
きっと
あの秀麗な頂が知っている
蝙蝠岳が知っている
8
蝙蝠岳が知っている
バランスを取って進む馬の背
2024年07月21日 10:13撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 10:13
バランスを取って進む馬の背
この先は北へと伸びる縦走路
右折して北俣岳方面に進む
2024年07月21日 10:20撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 10:20
この先は北へと伸びる縦走路
右折して北俣岳方面に進む
先ほど分かれた道
間ノ岳や北岳、仙丈ケ岳にも
繋がってゆく
2024年07月21日 10:21撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 10:21
先ほど分かれた道
間ノ岳や北岳、仙丈ケ岳にも
繋がってゆく
苦手な岩場が何度も何度も…
蝙蝠岳が本当に遠い
2024年07月21日 10:22撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 10:22
苦手な岩場が何度も何度も…
蝙蝠岳が本当に遠い
甲斐駒が見えそうで見えない
2024年07月21日 10:35撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 10:35
甲斐駒が見えそうで見えない
小河内岳かな
2024年07月21日 10:47撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 10:47
小河内岳かな
何となくもう直ぐに見えるが
実はまだまだ遠い蝙蝠岳
この時は「あと20分かな」と
目測していたが、全く違った
2024年07月21日 10:50撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
7
7/21 10:50
何となくもう直ぐに見えるが
実はまだまだ遠い蝙蝠岳
この時は「あと20分かな」と
目測していたが、全く違った
雲の中に巨大な影が姿を現す
2024年07月21日 10:52撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
7
7/21 10:52
雲の中に巨大な影が姿を現す
久しぶりに樹林帯がお目見え
2024年07月21日 11:02撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
3
7/21 11:02
久しぶりに樹林帯がお目見え
樹林帯からの先が長かった
これが最後の上り
2024年07月21日 11:30撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 11:30
樹林帯からの先が長かった
これが最後の上り
見えた あそこだ
2024年07月21日 11:32撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 11:32
見えた あそこだ
やっと蝙蝠岳に到達
20分以上も遅れてしまった
2024年07月21日 11:34撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
9
7/21 11:34
やっと蝙蝠岳に到達
20分以上も遅れてしまった
三等『中俣』2865.13m
2024年07月21日 11:34撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
7
7/21 11:34
三等『中俣』2865.13m
遠くに見える塩見岳
歩いてきた道は厳しかった
2024年07月21日 11:43撮影 by  iPhone SE (2nd generation), Apple
7
7/21 11:43
遠くに見える塩見岳
歩いてきた道は厳しかった
仙丈ヶ岳と白峰三山
遂に仙丈ヶ岳の雲が取れた
2024年07月21日 11:43撮影 by  iPhone SE (2nd generation), Apple
6
7/21 11:43
仙丈ヶ岳と白峰三山
遂に仙丈ヶ岳の雲が取れた
甲斐駒は未だ見えず
2024年07月21日 11:49撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 11:49
甲斐駒は未だ見えず
雲間から覗いた日本の誇り
2024年07月21日 11:35撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
7
7/21 11:35
雲間から覗いた日本の誇り
ラスボス感が漂うその姿
2024年07月21日 11:43撮影 by  iPhone SE (2nd generation), Apple
6
7/21 11:43
ラスボス感が漂うその姿
2024年07月21日 11:41撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
3
7/21 11:41
たぶん悪沢岳方面
2024年07月21日 11:49撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 11:49
たぶん悪沢岳方面
小河内岳と烏帽子岳
2024年07月21日 11:43撮影 by  iPhone SE (2nd generation), Apple
6
7/21 11:43
小河内岳と烏帽子岳
何か30分前より身体が重い…
もしや、昨夜のドリンク剤の
効果が残っていて、そいつが
今になって切れた…とか?
だとしたらかなりマズイよな
2024年07月21日 11:53撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
6
7/21 11:53
何か30分前より身体が重い…
もしや、昨夜のドリンク剤の
効果が残っていて、そいつが
今になって切れた…とか?
だとしたらかなりマズイよな
ここに来て徹夜明けの本来の
疲れが身体に重くのしかかり
足下が少しフラフラする…
くそ、石の精霊みたいなのが
話し掛けてきやがる…
2024年07月21日 12:05撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
7
7/21 12:05
ここに来て徹夜明けの本来の
疲れが身体に重くのしかかり
足下が少しフラフラする…
くそ、石の精霊みたいなのが
話し掛けてきやがる…
やや足下がおぼつかない
自分の足が信用しきれない
往路に比べて道が怖く感じる
2024年07月21日 13:50撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 13:50
やや足下がおぼつかない
自分の足が信用しきれない
往路に比べて道が怖く感じる
甲斐駒が大分見えてきた
やはりあの白さは際立つな
2024年07月21日 13:52撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 13:52
甲斐駒が大分見えてきた
やはりあの白さは際立つな
間ノ岳の奥に北岳も覗いた
2024年07月21日 13:52撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
4
7/21 13:52
間ノ岳の奥に北岳も覗いた
塩見岳西峰で靴裏に違和感…
ソールの一部が取れてしまう
『ソールごと』でなくて幸い
こんなとこで壊れたら…
完全に詰んでしまう
2024年07月21日 14:25撮影 by  Canon PowerShot SX610 HS, Canon
5
7/21 14:25
塩見岳西峰で靴裏に違和感…
ソールの一部が取れてしまう
『ソールごと』でなくて幸い
こんなとこで壊れたら…
完全に詰んでしまう
ゴゼンタチバナ
タカネツメクサ?
5
タカネツメクサ?
ミヤマダイコンソウ?
4
ミヤマダイコンソウ?
チシマギキョウ?
5
チシマギキョウ?
イワベンケイ
タカネシオガマ
イワオウギ?
ハクサンフウロ
ミヤマオダマキ
ウスユキソウ
ハクサンシャクナゲ
5
ハクサンシャクナゲ
ミヤマキンポウゲ?
4
ミヤマキンポウゲ?
ツマトリソウ
タカネコウリンカ
5
タカネコウリンカ
本当に厳しい道のりだったが
蝙蝠岳から見た景色の衝撃が
今も忘れられない
2024年07月21日 11:52撮影 by  iPhone SE (2nd generation), Apple
8
7/21 11:52
本当に厳しい道のりだったが
蝙蝠岳から見た景色の衝撃が
今も忘れられない

感想

結局、一睡も出来なかった。
夜間の長距離運転を案じて飲んだ
ドリンク剤が災いしたか?
それとも、昂る気持ちがそうさせたのかは
分からないが、とにかく時間は来てしまった。
状況に焦る気持ちを一旦落ち着かせ、
長い長い一日が始まった。

行動開始から3時間弱。
思いの外、早く辿り着いた三伏峠小屋。
予定より30分以上早い到着に少しだけ安心する。
この調子で落ち着いて行けば良い。
そう自分に言い聞かせた。

小休憩の後、三伏山より下って上って本谷山。
その先またしばらく下り、塩見小屋まで上り返す。
上りになると苦しくて変な汗が出てくる。
所々で立ち止まってスムーズに進めなかったが、
一応計画していた通りの時刻に塩見小屋に到着。
「意外にペースは好調だ。」とか思っていた。
が、ちょっと勘違いをしている。
三伏峠小屋出発の時にあった30分のマージンが
見事にゼロになってる事に、この時点で
全く気付いていない。やはり肌感は正しかった。
既に歩行ペースは低下していたのだ。

ヘルメットを装着し、意気揚々と塩見岳を目指す。
これまでに本格的な岩場を歩いた経験が殆どない。
だから苦手意識はかなり強かった。
誤って石を転がさぬ様、じっくりと慎重に進む。
塩見小屋~山頂はやや渋滞も起こる為、
計画通りとは言わないが、想定内のペースだ。

到達した塩見岳西峰から早々に東峰へと移る。
湧き上がっては流れるガスの合間から見えたのは
遠くに見える蝙蝠岳と、そこへと続く蝙蝠尾根。
この時点で、大きなペースの遅れや体力的な限界を
特に感じてはいなかった。
不眠に対する一抹の不安がなかったと言ったら
嘘になるが、嫌でも昂る気持ちが背中を押した。
両足は引き込まれる様にその先へと動き始めた。

細やかなアップダウンを繰り返しながら、
ザレた馬の背を、ハードな岩陵地帯を、
花の咲く樹林帯を越えて行く。
その道は見た目以上にかなり長かった。

やっとのことで辿り着いた独り占めの蝙蝠岳。
悠久の尾根の向こうに座っている、すっかり
遠くなった塩見岳がこの上なく立派に見えた。
普段は近隣の里山ばかり歩いていることもあって、
南アルプスという山域のスケールの大きさに、
只々驚かされてばかりだった。

さて、こんな山奥深くまで来てしまったからな。
ここから頑張って、また戻らなければならない。
気を引き締め直して歩き出す。
帰りのアップダウンは往路以上に響く。
ここに来て、昨夜一睡も出来なかった本来の疲れが
ドバドバと溢れ始めていた。
ふらつく足、散漫になってゆく集中力との戦い。
断崖鎖場では特に慎重を重ね、時間が零れ落ちる。
蝙蝠岳の出発時に30分ほどだった遅れは
再び塩見岳に到達する頃には1時間半、
塩見小屋に着く頃には2時間近くまで達していた。

塩見小屋では15分の休憩を予定していたが、
伝達ミスと勘違いで余計に30分を失ってしまい、
本谷山では体調不良による休憩も余儀なくされた。
三伏峠小屋に辿り着いたのは18時25分…。
予定の遅れは3時間20分にまで肥大していた。
砂の上に建てた塔が傾き、やがて崩れゆくように
計画は破綻していった。
結局、最終的に復路で要した時間は
往路の二割増しだったと後で知った。

間もなく日が暮れる。
この先、登山口までの道はハッキリしている。
迷うことはなさそうだが、要注意なのは急勾配と
古びた木製足場、所々にある切れ落ちた崖だ。
ヘッドライトを準備し、落ち着いて歩を進める。
膝痛は特になかったが、脚全体から来る疲労痛が
普段の数倍はある様に感じていた。

水場を過ぎ、暫く進んだところで灯りを灯す。
下る者も上る者も誰もいない隙間の時間帯。
照らす灯りには白い蛾が群れ羽ばたき、
この状況が永久に続くかの様な錯覚を覚えた。
ライトの光、自身が立てる足音と熊鈴の音だけが、
山深い森に広がる漆黒の闇と静寂を乱していた。
不安や恐れ、欲求、不必要な感情を全部殺して
持ち得る残り僅かな精神力を周囲警戒と安全歩行に
全振りし、マシーンの様に歩き続けた。

登山口に辿り着いたのは20:40も過ぎた頃。
闇に慣れた眼には、月明かりがとても眩しかった。
ヘッドライトを消して林道をとぼとぼ歩く。
前日の1時間足らずの仮眠から既に30時間以上、
未だ一睡も出来ていない。
歩きながら眠ってしまいそうな顔のすぐ脇を、
何かが音も立てずにかすめ羽ばたき
夜の闇に消えていった。

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コメント

おはようございますhiroCさん
 いつ以来でしょうか?久々にワンデイ超ロングが炸裂しましたね。

 こんな歩き方を実行できる体力と精神力は私から見ると驚異的。厳しいはずなのに、ただ歩くだけじゃなく周りの植物に気を配ったり、風景を絵のように切り取ったりできるのがhiroCさんの良いところですね。

 日程的に難しいと想像しますが、その体力とセンスを、余裕が持てるスケージュールで活かしてもらえれば、さらに深く山が楽しめると思います。

 余計なことを申しましたm(_ _)m
「コウモリ岳が知っている」大変お疲れ様さまでした。
2024/7/29 6:25
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1
てっぱんさん、おはようございます。
コメントを頂き、ありがとうございます。

今回は林道歩きも結構あり、こんな距離になってしまいました。
30km越えは10年ぶり位かと思います。
3,000m峰もそんな頃から登ってません。
天気と高山病は強く警戒していたつもりでしたが、まさか現地到着後に眠れなくなるとは考えもしませんでした。
いつもならコーヒー等を飲んでもすぐに寝ついてしまうのに、久しぶりに飲んだドリンク剤の効き目に驚きです。

助言をいただいた通り、余裕なくいつもバタバタした行程ばかりでお恥ずかしい限りです。
たらればを言うなら、塩見岳到達の時点で状況予測をして引き返すべきでしたし、何なら駐車場確保戦には名乗りを上げず、自宅で眠ってからの早朝到着、第3駐車場から自転車で登山口まで移動することも素直に考えるべきだったかもしれません。変な部分でこだわってしまいました。

『コウモリだけが知っている』
自分の世代が、分かるギリギリのラインでしょうね。

ところで白山での足のお怪我の具合は如何でしょうか?
しっかりと治していただいてからの山行再開を楽しみにしています。
2024/7/30 8:39
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