塩見岳と蝙蝠岳 蝙蝠は眠れない


- GPS
- 18:03
- 距離
- 37.5km
- 登り
- 3,150m
- 下り
- 3,152m
コースタイム
- 山行
- 15:05
- 休憩
- 2:58
- 合計
- 18:03
天候 | 🌤️ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
日曜登山の駐車場確保は結構厳しい模様。 01:00前で第2駐車場がギリギリだった。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
【林道】 ゲート内は自動車侵入禁止。 自転車の持ち込みは可能。 【登山道~三伏峠】 約4kmで高度800m以上を稼ぐ。 木製足場の腐食が進み、 新たな金属製足場への 付け替えが進んでいる。 実際に歩いてみて、上り以上に 下りが大変な道という印象。 【三伏峠~本谷山~塩見小屋】 樹林やハイマツ帯を行く。 細やかなアップダウンが堪える。 塩見小屋までの登り返しは岩がゴロゴロ。 【塩見小屋~塩見岳】 山頂直下と手前の頂は岩場。 鎖付きのところもある。 誤って石を落としたら事故に繋がるだろう。 ヘルメット装着推奨。 【蝙蝠尾根】 ザレた馬の背、ガレ道、断崖を行く岩稜地帯、 草木や花が咲いている日当たりの良い樹林帯、 風の影響をもろに受ける場所も多い印象。 様々な顔を持つバラエティーに富んだ道。 細やかなアップダウンをしながら 7km行った先には、蝙蝠岳が待っている。 |
予約できる山小屋 |
塩見小屋
|
写真
感想
結局、一睡も出来なかった。
夜間の長距離運転を案じて飲んだ
ドリンク剤が災いしたか?
それとも、昂る気持ちがそうさせたのかは
分からないが、とにかく時間は来てしまった。
状況に焦る気持ちを一旦落ち着かせ、
長い長い一日が始まった。
行動開始から3時間弱。
思いの外、早く辿り着いた三伏峠小屋。
予定より30分以上早い到着に少しだけ安心する。
この調子で落ち着いて行けば良い。
そう自分に言い聞かせた。
小休憩の後、三伏山より下って上って本谷山。
その先またしばらく下り、塩見小屋まで上り返す。
上りになると苦しくて変な汗が出てくる。
所々で立ち止まってスムーズに進めなかったが、
一応計画していた通りの時刻に塩見小屋に到着。
「意外にペースは好調だ。」とか思っていた。
が、ちょっと勘違いをしている。
三伏峠小屋出発の時にあった30分のマージンが
見事にゼロになってる事に、この時点で
全く気付いていない。やはり肌感は正しかった。
既に歩行ペースは低下していたのだ。
ヘルメットを装着し、意気揚々と塩見岳を目指す。
これまでに本格的な岩場を歩いた経験が殆どない。
だから苦手意識はかなり強かった。
誤って石を転がさぬ様、じっくりと慎重に進む。
塩見小屋~山頂はやや渋滞も起こる為、
計画通りとは言わないが、想定内のペースだ。
到達した塩見岳西峰から早々に東峰へと移る。
湧き上がっては流れるガスの合間から見えたのは
遠くに見える蝙蝠岳と、そこへと続く蝙蝠尾根。
この時点で、大きなペースの遅れや体力的な限界を
特に感じてはいなかった。
不眠に対する一抹の不安がなかったと言ったら
嘘になるが、嫌でも昂る気持ちが背中を押した。
両足は引き込まれる様にその先へと動き始めた。
細やかなアップダウンを繰り返しながら、
ザレた馬の背を、ハードな岩陵地帯を、
花の咲く樹林帯を越えて行く。
その道は見た目以上にかなり長かった。
やっとのことで辿り着いた独り占めの蝙蝠岳。
悠久の尾根の向こうに座っている、すっかり
遠くなった塩見岳がこの上なく立派に見えた。
普段は近隣の里山ばかり歩いていることもあって、
南アルプスという山域のスケールの大きさに、
只々驚かされてばかりだった。
さて、こんな山奥深くまで来てしまったからな。
ここから頑張って、また戻らなければならない。
気を引き締め直して歩き出す。
帰りのアップダウンは往路以上に響く。
ここに来て、昨夜一睡も出来なかった本来の疲れが
ドバドバと溢れ始めていた。
ふらつく足、散漫になってゆく集中力との戦い。
断崖鎖場では特に慎重を重ね、時間が零れ落ちる。
蝙蝠岳の出発時に30分ほどだった遅れは
再び塩見岳に到達する頃には1時間半、
塩見小屋に着く頃には2時間近くまで達していた。
塩見小屋では15分の休憩を予定していたが、
伝達ミスと勘違いで余計に30分を失ってしまい、
本谷山では体調不良による休憩も余儀なくされた。
三伏峠小屋に辿り着いたのは18時25分…。
予定の遅れは3時間20分にまで肥大していた。
砂の上に建てた塔が傾き、やがて崩れゆくように
計画は破綻していった。
結局、最終的に復路で要した時間は
往路の二割増しだったと後で知った。
間もなく日が暮れる。
この先、登山口までの道はハッキリしている。
迷うことはなさそうだが、要注意なのは急勾配と
古びた木製足場、所々にある切れ落ちた崖だ。
ヘッドライトを準備し、落ち着いて歩を進める。
膝痛は特になかったが、脚全体から来る疲労痛が
普段の数倍はある様に感じていた。
水場を過ぎ、暫く進んだところで灯りを灯す。
下る者も上る者も誰もいない隙間の時間帯。
照らす灯りには白い蛾が群れ羽ばたき、
この状況が永久に続くかの様な錯覚を覚えた。
ライトの光、自身が立てる足音と熊鈴の音だけが、
山深い森に広がる漆黒の闇と静寂を乱していた。
不安や恐れ、欲求、不必要な感情を全部殺して
持ち得る残り僅かな精神力を周囲警戒と安全歩行に
全振りし、マシーンの様に歩き続けた。
登山口に辿り着いたのは20:40も過ぎた頃。
闇に慣れた眼には、月明かりがとても眩しかった。
ヘッドライトを消して林道をとぼとぼ歩く。
前日の1時間足らずの仮眠から既に30時間以上、
未だ一睡も出来ていない。
歩きながら眠ってしまいそうな顔のすぐ脇を、
何かが音も立てずにかすめ羽ばたき
夜の闇に消えていった。
コメント
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いつ以来でしょうか?久々にワンデイ超ロングが炸裂しましたね。
こんな歩き方を実行できる体力と精神力は私から見ると驚異的。厳しいはずなのに、ただ歩くだけじゃなく周りの植物に気を配ったり、風景を絵のように切り取ったりできるのがhiroCさんの良いところですね。
日程的に難しいと想像しますが、その体力とセンスを、余裕が持てるスケージュールで活かしてもらえれば、さらに深く山が楽しめると思います。
余計なことを申しましたm(_ _)m
「コウモリ岳が知っている」大変お疲れ様さまでした。
コメントを頂き、ありがとうございます。
今回は林道歩きも結構あり、こんな距離になってしまいました。
30km越えは10年ぶり位かと思います。
3,000m峰もそんな頃から登ってません。
天気と高山病は強く警戒していたつもりでしたが、まさか現地到着後に眠れなくなるとは考えもしませんでした。
いつもならコーヒー等を飲んでもすぐに寝ついてしまうのに、久しぶりに飲んだドリンク剤の効き目に驚きです。
助言をいただいた通り、余裕なくいつもバタバタした行程ばかりでお恥ずかしい限りです。
たらればを言うなら、塩見岳到達の時点で状況予測をして引き返すべきでしたし、何なら駐車場確保戦には名乗りを上げず、自宅で眠ってからの早朝到着、第3駐車場から自転車で登山口まで移動することも素直に考えるべきだったかもしれません。変な部分でこだわってしまいました。
『コウモリだけが知っている』
自分の世代が、分かるギリギリのラインでしょうね。
ところで白山での足のお怪我の具合は如何でしょうか?
しっかりと治していただいてからの山行再開を楽しみにしています。
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