多峰古峰山〜モユクンタプコプ山〜瘤山


- GPS
- 04:29
- 距離
- 10.0km
- 登り
- 644m
- 下り
- 644m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
一般登山道はなく、積雪期限定のルートであるが、危険箇所は特になし |
写真
感想
北海道滞在の二日目は支笏湖に移動する。支笏湖のほとりに沸く丸駒温泉に泊まることにしたためでもあるが、支笏湖の畔には遅い出発時間からでも4時間前後で登ることが出来る手頃な山がいくつもあるのが有難い。何より、支笏湖は湖水の温度が高いせいで厳冬期でも湖面が凍ることがないため、紺碧の湖水と湖を取り巻く白い雪山とのコントラストが楽しむことが出来る北海道では例外的な場所らしい。嬉しいことにこの日は夕方まで晴天が続く予報である。
当初は湖の南東にある風不死岳に登ることを目論見ていたが、その西側に多峰古峰山(タップコップ山)という変わった名称の山があることに気が付く。北海道は山名に限らず、地名はほとんどがアイヌ語に由来するので、変わった名称が多く、またそのほとんどが難読地名である。地理院の地図でもひらがなで読み方がふってある。タップコップとは小さく盛り上がった丘という意味で、北海道にはなんとかタップコップ山という名称の山が各地にあるようだ。
この多峰古峰山はいわゆる登山道はないので、積雪期限定である。さらにこの山が魅力的に思えるのは山から西側にひたするら平坦な台地が延々と広がっていることだ。果たしてどのような景色が広がっているのだろうかと興味が唆られる。スノーシューを履いて、この広大な台地を気ままに逍遥してみるのも悪くないと考える。
札幌のホテルで朝食を済ませると札幌から快速エアポート・ライナーに乗って新千歳空港に向かう。快速列車は大きなスーツケースを抱えた乗客でほぼ満員であった。新千歳空港でレンタカーを借りると一路、支笏湖畔を目指す。道路には雪はないが、道路の周辺の雪から溶け出した水により路面は濡れており、トラックの後を走ったせいで借りたばかりの白いレンタカーのフロントガラスは瞬く間に汚れてゆく。
多峰古峰山が近づくと路肩の道路余地に車が数台並んで停められているので、すぐに登山口が判る。車から外に出ると風もなく、前日と同様、かなり気温は高めである。空には雲ひとつない蒼空が広がっている。アウターを車に置いて、フリース一枚で登ることにする。
登山道はしっかりと踏み固められたトレースが出来ている。トレースはスノーシューで歩いている人が多いようだが、スノーシューやアイゼンを着けるまでもないように思われるので、何もつけずに登る。
登り始めは急登から始まる。すぐにも樹木のない尾根となり、背後に支笏湖の青い湖面の対岸に恵庭岳の展望が広がった。トレースの周囲の雪面からは随所で丈の高い笹が露出している。ということはこの雪の下には笹藪が埋もれているのであろう。100mほど登るとすぐにも右手に伸びるなだらかな尾根に移行する。続々と上から降りてくる人達とすれ違う。多峰古峰山までのピストン登山であれば、すでに下山するタイミングなのだろう。
急に平坦になったと思い、GPSで確認すると既に広大な台地の一角に辿りついたようだ。すぐに右手に分岐するトレースが現れる。台地の北西方向にある△614.2mの瘤山に向かうトレースである。
まずは多峰古峰山を目指す。トレースを辿り、100mほど登ると、山頂の一角に飛び出す。山頂は東西に細長く、東に進むと樹木が完全に切れて大きく展望が広がる。正面には風不死岳と樽前山、北側には支笏湖の湖水を挟んで恵庭岳と周辺の山々が期待通りの白とブルーの美しいコントラストを見せている。恵庭岳の左手で一際白くなだらかな稜線を見せているのは漁岳だ。時間があれば是非、登ってみたいところではあるが、この山は距離が長いため、時間を要する。また、かなり天気が良い時に限られるだろう。
そして南側にはこれから訪れる予定のモユクンタプコプ山の山容がすぐ目の前に広がる。モユクンとはアイヌ語でたぬきまたは小さいという意味らしい。モユクンタップコップとは果たして小さいタップコップという意味なのか、たぬきの様なという意味なのか。確かに山容はドーム状で狸の様にも見える。
タップコップ山からモユクンタップコップ山に向かうトレースはない様だ。いよいよここでスノーシューを装着する。準備をしていると、後ろから四人の男性が山頂に到着された。まずは山頂から東に伸びる樹木のない尾根を辿ってから、その先に樹林の中をトラバースしてモユクンタップコップ山との間の鞍部に向かうことにする。気温が暖かいのはいいが、陽当たりの良い南斜面は完全に雪が緩んでおり、スノーシューを履いていても緩んだの雪の中にかなり沈むことになる。
モユクンタップコップ山との鞍部に至ると、微かに数日前のものと思われるトレースの痕跡があるが、ほとんど消えている。北斜面に入ると少しは歩きやすくなった。緩やかな登りを辿るとすぐに樹林に囲まれた山頂に至る。樹林の間から西側には広大な台地が広がっているのが見える。その南側には送電線が走り、その下は広範囲に雪原が広がっている。台地の上には自然林の叢林が広がっているが、所々にで広い雪原が広がっており、樅の木と思われる針葉樹がジオラマの様な景色にアクセントを与えている。本州ではこの様な地形が広がっているところが思い当たらない。
西側の樹林の中を下降するとすぐにも広々とした雪原の一角に飛び出した。上から見るとひたすら平坦に見えた台地であるが、その中を流れる小さな河川が襞のような浅い谷を形成していることに気が付く。小さな谷を横切ると送電線の走る雪原に出る。しばらくは送電線に沿って北西に向かうが、送電線は広い谷を横切ることになることに気が付く。地理院の地図では実線で記されている道が記されているので、この道に沿って北上することする。とはいえ道は完全に雪に埋もれており、どこにあるのかも定かではない。
叢林の中を進み、小さな谷を横断すると再び忽然と広い雪原に出る。雪原の右手には叢林の上にタップコップ山が顔を覗かせている。雪原を辿るうちに右手から伸びる明瞭なトレースが目に入る。タップコップ山から瘤山に向かうトレースだ。雪原の先にも瘤山が小さな
トレースに合流すると、トレースの上を歩いているのはほとんどがスノーシューのようだ。スノーシューの向きがいずれも東に向かっているのは、登山者たちがいずれも瘤山を往復して帰路についたからであろう。
トレースはしっかり踏み固められているのでスノーシューを外して歩く。瘤山の手前でスノーシューを置いてピストン往復することにする。しかし、この判断は良くなかった。瘤山の斜面は雪が緩んでおり、頻繁に踏み抜くことになる。
瘤山の山頂には瘤山と記された山名標の他に多武古峰山と記されたプレートが二つ架けられていた。ここも元来はタップコップ山であり、多峰古峰山と区別するために山名が短縮されたことが容易に想像される。樹間からは支笏湖と対岸の山々を垣間見ることが出来るが、山頂は樹林に囲まれていて北側の眺望が大きく広がることはない。南東の斜面は樹木がなく、逍遥してきた広い台地を展望することが出来る。
雪を踏み抜きながらトレースを引き返す。復路は叢林の樹々の間を縫って多峰古峰の方角に進む。トレースが踏み固められているせいもあり、多峰古峰山へのトレースとの分岐点には瘤山から30分ほどで帰還する。
台地の北側の樹木のない斜面からは再び正面に支笏湖を挟んで斜陽を浴びる恵庭岳や周辺の山々の展望が広がる。いざ、尾根を下降しようとして、ここでアクシデントが発生する。スノーシューの真ん中のストラップ(ゴムバンド)が切れてしまう。この先端のストラップのみではスノーシューの装着には不十分の様だ。スノーシューを諦めてつぼ足で歩行する。
時折の踏み抜きはあるものの北側の斜面のせいだろうか、瘤山の下りほどは踏み抜きはない。それにしてもここまでスノーシューのストラップが持ち堪えてくれて良かったと考えるべきであろう。踏み固められたトレースを下降り、まもなく無事に出発地点に戻ることが出来る。夕陽の反射する湖面を周回して、本日の宿泊先に向かうのだった。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する