人の優しさと猿の怖さを感じた蓮華岳


- GPS
- --:--
- 距離
- 13.6km
- 登り
- 1,472m
- 下り
- 1,473m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
針ノ木雪渓は全体的に落石危険地帯です |
写真
なんと、お住まいは私の隣の隣町でした(笑)
きっと針ノ木岳と蓮華岳両方行ってきたのだろうけど、すごく速く、かなりの健脚者です!ぐんぐん下りて行き、あっという間に見えなくなってしまいました〜
また後ろ姿を手を合わせ拝ませていただきました!(`´)
感想
まだ暗い時間、登山口を出発
樹林帯や数度の渡渉をし55分ほどで大沢小屋に到着
大沢小屋から先は、しばらく樹林帯を行き、間もなく視界が開けてくる
雪渓近くになると冷気が心地よく、天然のクーラーのようで暑さを凌ぎながら登る事ができた
右岸のガレ場を歩いていた所で猿の群れに会う
パラパラっと音がしたので、落石か!と上を見ると猿の群れがこちらを見てキーッと鳴きながら警戒している
子連れだから、子猿を守ろうとしているのだろう
「大丈夫だよ、何もしないよ、邪魔してごめんね」と良いながら歩くが、猿達が動くたびにパラパラと落石が落ちてくるので、こちらとしてはたまったものではない
なんとか落石にぶつからず通過できて良かった
途中、大きな沢を渡るのだが、設置されているはずの橋が見当たらない
どうやら見落として行きすぎてしまったらしい
来た道を戻り、無事に橋を発見した
登りの時は見つけづらいと思うのでご注意ください
今年は雪が少なかったため雪渓の通過はほぼない
でも10mほど歩ける個所が残っていたので、せっかくだから歩いてみた
やや硬い雪面で、早朝の下山時は滑りそうだ
だが軽アイゼンまでは必要ないかなと感じた
すぐ横に夏道もありますので、雪渓が不安な方はそちらを通過した方が良いと思います
仮設されている橋を渡り再度左岸へ
ここからは岩場になり、鎖場が続く
そんなに難しい鎖場ではないが、思ったより距離も長く疲れる
鎖場が終わると崩壊地に出た
ここで、再び親子連れの猿軍団に会う
さきほどの事を思い出し、なんだか嫌な予感が…
猿はこちらを見て警戒しているのか、先ほど同様キーっと鳴いて威嚇しているようだ
脚を止めて上の様子を見ていたら、50cmほどの巨大な落石が落ちてきた!
目の前をゴロンゴロンと音を立てて、岩にぶつかりながら落ちて行く
「やばい!下に人がいたらぶつかってしまう!」と思い、ラクっ!と叫ぼうとしたが、岩は人のいない方に転がっていき、雪渓の上でようやく止まった
脚を止めて良かった、あのまま行っていたらぶつかっていたかもしれないと思うとゾッとした
他の人達も歩いてなくて良かったと安堵したのもつかの間、
落石はまだ終わらなかった
上からパラパラと小さい岩コロが落ちてくる
いや、猿が故意に落としている?
猿は私の上まで徐々に移動してくる
やばい、このままでは真上から落とされるかもしれない
猿達はじっとこちらを見ながら移動している
身の危険を感じ、上を見ながら急ぎ足で通過した
猿の真下を通過するときは「落とさないで〜」と祈るしかなかった
なんとか落石の直撃にあわず通過できた
落石は動物が原因という事もあるのだな、これからは動物にも気をつけようと学習した
親猿は子猿を守ろうとしているのだろう
猿のテリトリーに人間は立ち入ってしまっているんだなと実感
なんだか申し訳ない気持になった
雪渓地帯が終わり夏道を登っていたら、ふくらはぎを攣ってしまった
元から酷い攣り癖があり、調子が悪い時は頻繁に攣ってしまうのだ
一度攣ったらなかなか治らずいつも難儀するのだ
立てなくなって倒れこんでいたら、下から人が来た
その人は、倒れこんでいる私を見て「大丈夫ですか、どうしたのですか?」
と声をかけてくれた
脚が攣って動けなくなってしまったと言ったら、
「自分も脚に攣り癖がある」と言い、ザックから攣った時用の飲み薬を出してくれた
「大丈夫です、しばらくすれば治まると思うから」と一度はお断りしたのだが、「良いんですよ、それは即効性もあるし効きますから飲んでみてください」と言って、その人は私にタブレットをくれた
「これからどこまで?」と聞かれたので、
「日帰りで蓮華のピストンをするつもりだったのですが、諦めて針ノ木峠までにします。でも脚の調子も悪いので、針ノ木峠もダメそうなら、人にもう迷惑をかけられないのでこのまま下山しようと思います」と言ったら
「そうですね、それが良いですね、気をつけて下りて下さい」
と優しい言葉をかけてくれた
めったに攣った時用の薬を持っている人はいないだろうし、さらに攣った直後にすぐに目の前に現れてくれる事は奇跡に近いだろう
きっと神様か仏様が救世主さんを連れてきてくれたのだろう
この出会いに感謝し、その人を「観音様の化身」と勝手に命名した
タブレットを飲んでしばらくするとやや攣りが治まり、なんとか歩けるほどに回復した
でも、やはりまだ脚の調子が悪い、動き方によってはすぐに攣ってしまいそうになる
「あぁ、今日はもうダメかな、このまま下りようか…」と考え、岩の上に座りボーっとしていたら、第二の救世主が現れた
「どうしたの?」と声をかけてくれたそのおじさま
「ちょっと脚の調子が悪くて、休んでいます。先ほど親切なお兄さんから頂いた攣り用の薬を飲み回復してきているので様子を見ながら登っています。せめて針ノ木峠までは行こうと思うのですが、ダメそうなら下りようかとも思っています」と言ったら
おじさまは「自分はゆっくりだから、今日もここまで沢山の人に抜かされちゃって〜、針ノ木ピストンするつもりだったんだけど、けっこう時間かかっちゃってるからなー、どうしようかなー」と優しい笑顔で話し、一緒に休んでくれた
おじさまと話をしていたら、なんだから元気が出てきた
「よし、とりあえず針ノ木峠まで行ってみよう、そこまで行って蓮華の事はまた考えよう、針ノ木峠まで行って北アルプスの景色を見なければ!」と思い、再び歩き始めた
いや〜きついですね〜。と笑いながら、二人でざれた急登のジグザグ道を登る
おじさまと話しながら一緒に登っていると、安心感もあるし元気も出てくる
本当にありがたい
そして針ノ木峠に到着
目の前には美しい北アルプスの大パノラマが広がる
がんばって良かった…
蓮華行きを躊躇していたが、おじさまが元気をくれたので挑戦してみる事にした
ザックをデポし、サブザックに必要最低限のものを詰め身軽になる
「同じようなコースタイムだからまたここで逢うかもしれないね、頑張りましょう!」とお互いに声を掛け合い、おじさまは針ノ木岳へ、私は蓮華岳へと向かった
脚の調子は思わしくないが、お兄さんのくれた薬のおかげで大丈夫そうだ
蓮華へ絶対に行ってやる!と強い思いに変わってきた
登り始めは急登だが、しばらくすると気持ちのよい白い縦走路となる
コマクサが咲き乱れ天国のような場所だ
ピークだと思っていた所は蓮華の山頂ではなくてガッカりしたが(笑)
おじさんから「蓮華は一度だまされるよ(ニヤリ)」と言われていたが、こういう事かと実感(笑)
無事山頂に着き、お社の神様に手を合わせた
今日は、二人の方に助けられここまで来られた事、猿の落石に直撃されず来られた事を神様に感謝する
さて、下るか
山頂を後にし、しばらくすると薬をくれたお兄さんが下から登ってきた
「あ!さきほどの方ですね!」とお互いに声をかけあう
「脚はどうですか?」と優しいお兄さん
「おかげさまで回復して、諦めようと思っていた蓮華の山頂に立つ事ができました!お兄さんがいなかったら私は今日蓮華の山頂に立つことはなかったでしょう、本当に感謝しています、本当にありがとうございます!」とお兄さんに伝える事ができた
そして、お兄さんは「これも持っていってください」と言って、攣りに効く漢方薬を出してくれた
「もう大丈夫です、だからそれはお兄さんが持っていてください、今日はまだ縦走があるのではないですか?だから本当に大丈夫です」と言ったら
「私は、今日はもう下りるだけです。これも3つあるし、だから大丈夫ですよ」
と再び私に薬をくれた
なんて人なんだ!本当に観音様の化身かもっ!まちがいないっ!
勝手に観音様の化身にされたお兄さんは、山頂へと向かっていった
私は、お兄さんの後ろ姿に向かって「ありがとう、ありがとう!観音様ありがとう!」と手を合わせた
とてつもなく怪しい光景だ
下山になり、今度はふくらはぎの攣りではなく、持病の膝痛が悪化してきた
まともに歩けなくなりなんとか針ノ木峠に到着
まだおじさまは戻ってきていなかった
しばらく待ってみたが、戻ってこないので、先に行く事にした
私はゆっくりだから、もしかしたら途中で追いつかれるかもしれないし、と思ったのだが、下山の際おじさまに再びお会いすることはなかった
お礼を言いたかったので、残念だ…
お兄さんにいただいた漢方薬を飲み下山開始
膝がすこぶる痛くて、いつもの倍時間がかかってしまうが、ゆっくり行けばなんとかなるだろう
ピョコタンピョコタンと歩いていると、皆が「脚大丈夫?」と声をかけてくれる
皆、本当に優しい人ばかりだな、としみじみ思う
脚が痛くて岩の上で休んでいたら、観音様の化身のお兄さんが私に追いついた
さすが健脚だ!あっという間に追いつかれてしまった〜
「脚はどう?」とお兄さん
「いただいた薬と漢方のおかげで回復しました!今は持病の膝痛が出てちょっと難儀していますが、ゆっくり下りるので大丈夫です!」
と言ったら、また励ましてくれた
「これから帰るの大変だね大丈夫?どこまで帰るの?」というような話から、お兄さんの住んでる場所が私の隣の隣町ということが判明(笑)
観音様の化身は案外近くに住んでいるんだな!と思った
そして、お兄さんは颯爽と下って行き、すぐに姿が見えなくなった
おそらく針ノ木岳も行ったのだろう、蓮華にも行ってあのペースとは…
お兄さんは、かなりの健脚とみた
予定よりも大幅に時間がかかったが、下山は猿の落石攻撃に合う事もなく、無事に下りる事ができた
今回、人の優しさやありがたみを感じられたり、
動物による落石の危険性を知ったりと、
とても有意義で濃厚な山行となった
蓮華岳、登れて良かった
お兄さん、おじさま、本当にありがとうございました
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