合コンじゃなくて、昔は合ハイというものがあったと、朝日の土曜別刷りに書いてある。男女合同ハイキングというやつだ。それがきっかけで結婚したカップルもあるという。昭和36年に大学生だった人の話。
確かにこの時代、異様にハイキング人気が高まったらしい。知り合いも全く同年代で、そのころ単独で西穂あたりに散策に行ったことを、クラブの記念誌に書いている。どうも付近で男女のカップルが遭難したと、夜になって小屋や客が探しに回る騒動に出くわした。女性が先に安否確認できて、不明の男性はどういう人かと聞くと「知らない」という。どうも島々の駅でお互いナンパし合って意気投合して登山を始めたらしい。それが西穂の小屋どまりの夕方に夕焼けを一緒に見に出て、ガスに巻かれてはぐれたということだ(その後男も無事に保護された)。
そういうカップルが多くて、そういう時代だったらしい。どうにも三島由紀夫のようなインテリ学生の間で流行ったようだし、社会人じゃそこまでまだ小遣いがない時代だ。
時代は昭和元禄と言われて、この時代の学生とは安保年代くらいで、昭和15年生まれ。東京五輪の前で、まだまだ世の中は貧乏だったけど、今の天皇が結婚して時代は湧いていた。家庭にテレビはまだないが、他人の家で力道山のプロレス見たり、時代は自由になっていたころに、どうせイギリスドイツあたりのハイキング文化が入ってきたのだろう。歌声喫茶とか、そこで山の歌を歌うというか。
いま70歳くらいがその年代である。だが思うが、その人がこの時代のハイキングブームを経験したインテリ学生かというと、別の人たちである。ほんの一握りがハイキングしていただけで、同年代のほとんどはそんな余裕がなかった。いや、遊んでいる暇があるなら働けという時代である。彼らはそんな恵まれた一部の学生を知っていたか知らないか、しかし今の時代になって登山を始めている。
その後時代は全共闘になり、そうなると一斉にアルバイト学生が増えて、しかしこういう大民族はハイキングとは関係なしに同時代を過ごして、彼らはいま65歳くらいになったが、その年代のオヤジおばさんハイカーも、いまの年代になって登山をやっている。
合ハイなんていうブームは、ハイキングというものが男女交際のきっかけに流用されただけの、奇妙な時代なのだろうね。
私が登山を始めたその15年後でさえ、あの小屋の汚らしい落としのトイレ(今でもそうだが)に閉口したものだが、それ以前の環境でも、街中の男女交際さえ難しい時代に、ハイキングを出しにして、ひそかに合ハイしたとは、なんだか今じゃ、アナクロチックで、歴史上のエピソードに思える。
こんちは。
相変わらずお元気そうでなによりです。
日記の連続投稿してると、国語の先生にぼやかれたりしますのでお手柔らかに
昔の話、時代背景ってのは面白いですね。
現代は現代で、ゆとり教育やら消費社会、渡航の自由化や円高の中で育った子ども達が、明るく楽しいアドベンチャーを満喫しているようです
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