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2019年07月21日 13:29独り言全体に公開

百名山の思い出−3座目:富士山 2007年8月26日

山好きママさんには山仲間が大勢いた。主に近場の山を登っていて、年数回、アルプスなどに遠征している。それでママさんが計画していた一泊二日の富士登山にドタ参させてもらった。同行者はみんなスナックで顔なじみ。S君−30代独身、Kさん−60代男性、Aさん−60代男性で、男性4名にママさんという編成になった。

8月25日の早暁、スナックに集まり、S君のステーションワゴンに乗って出発。昼過ぎに標高2,400mの新五合目富士宮口に到着。駐車場は既に満杯だったが、ちょうど大きなオートバイが出てくれてすんなり停まれたのはラッキーだった。レストハウスで軽く昼食を取ってから15時40分に登山開始した(この山行からコピーした地図に時間を記録するようになった)。宿舎の新七合目の山小屋にはちょうど17時到着。

早めの夕食はプラスチックか紙製のトレーに乗ったボンカレー風のルー、少な目のご飯に福神漬けがちょびっと。噂には聞いていたが、ぎゅうぎゅう詰めで仮眠させられたのには参った。布団一枚に2、3人寝る始末で、両隣の人と完全密着しており、身動きもできない。おかげでろくに眠れないうちに起床時間を迎えた。山小屋デビューが富士山というのはついてない。

夜半0時20分にヘッドライトを点けて小屋を出発。既に噂通りの大行列が動いている。それにしてもこんなにもご来光目当ての登山者が多いことにびっくり。自分もそのうちの一人だが。八合目2時7分、九合目3時20分、九号五勺4時35分。そのうち空が白み始め、浅間大社頂上奥宮に着く前にご来光は上がってしまい、拝めなかった。5時40分奥宮到着。その後、剣が峰へ向かったのだが、山頂付近は大混雑しており、最高地点まで上がったかどうか記憶がない。どちらかというと、日本一の山に登ったという話のタネが出来た程度の感激しかなかったように思う。途中で高山病や疲労で苦しむ人たちを何人も見たが、我々のグループは問題なく登れて良かった。それに天気が良かったのも幸いした。

7時ちょうどに下山開始。ここで問題発生。Kさんが膝を痛めてしまい、動きが極端に遅くぎこちなくなった。登りで酷使した膝が下りで一気に悪化したようだ。ブレーキが効かないのでずるずると走り出してしまい、すぐ転ぶ。Aさんと二人でKさんの両肩を持って歩くが、道幅の狭いところ、足場の悪いところが多く、ずっとは歩けなかった。しまいにはベルトをKさんの腰につけ、後から引っ張りながらだましだまし下っていった。

5時間40分後の12時40分にようやく登山口に到着した。翌年、息子、娘たちと日帰りで登ったときは下山にちょうど3時間かかったから、倍近い時間がかかっている。Kさん本人がもちろん一番痛いのだが、同行者も心身ともに苦労することを身をもって体験した。このときは後日、自分も膝痛で苦しむことになるとは夢にも思わなかった。

富士登山は二回ともいわゆる弾丸登山。苦労の割に感激が薄かったせいもあり、長い間、富士山は登る山じゃなく眺めてナンボの山だと勝手に思っていた。富士初登山から3年後、北岳に登るため北岳山荘に泊まった。小屋仕舞いの日で客は少なかった。小屋のご主人にそのこと(富士山は眺める山)を話したら、ご主人は長いこと富士山の山小屋で小屋番をしていたと語り、「富士山の良さは弾丸登山なんかじゃ絶対理解できないよ。何日か滞在して朝夕の景色をじっくり眺めたら分かる」と。そして一週間ほど泊まっていたという富士山が専門のプロカメラマンを紹介してくれた。数日後、地元の図書館で彼の写真集を見てびっくりした。それ以来、あちこちの図書館にある富士山の写真集を鑑賞するようになった。そして今ではいつか富士山に何泊かして本当の富士山に近付きたいと思っている。まだ自分の中では富士登山は終わっていない。カメラマンの名前は大山行男さん。

写真1:剣が峰
写真2:空撮富士山
写真3:三ツ峠山から
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