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当初は天元台からロープウェイ、スキーリフトを乗り継ぎ、最短ルートで西吾妻山を目指すつもりだった。ところが出発前にネットで登山情報を調べているうち、白布峠から西大巓を通るコースが面白いという記事を見つけたこと、ロープウェイ運行が8時20分からと遅いことから、白布峠から登ることに出発直前で計画変更した。【失敗� �天元台コースは持っていたガイドブックに詳しく書いてあったが、白布峠コースは記載はなく、ネット情報だけが頼りだったにもかかわらず、プリントしてこなかった。最低限、国土地理院の地形図が必要だったが、ガイドブックの案内図のコピーしか持参しなかった。準備不足】
白布峠の広い駐車場で前泊したのは良いけれど、翌朝は雨が降っていた。10時ころになってようやく雨も止んだので、準備して10時10分に入山した。【失敗�◆Д好拭璽箸�遅くなったのだから所要時間の短い天元台コースにすべきであった。判断ミス】登り始めてしばらくすると雪が出てきた。アイゼンは持ってきていたが、登山口付近に雪がなかったので車に置いてきてしまった。【失敗��：先のことを考えるとアイゼンを取りに戻るべきであった。もっとも実際はアイゼンよりワカンあるいはスノーシューが必要な状況だった。準備不足＆判断ミス】【失敗�ぁГ修發修眛酖賈未箸呂い─�東北の山に登るのに雪の情報、知識を持たず、入山したのは軽率であった。最低限、白布峠からのコースは止めて、他の入山者がいるという条件で天元台コースを選択すべきだった。準備不足＆判断ミス】登るにつれて雪は深くなり、かすかな踏み跡は消え、ルートはところどころにある赤テープが頼り。そのテープもじきに見失ってしまった。【失敗�ァ�遅くともこの時点までに引き返すべきであった。雪山の怖さを知らぬ故の特攻を続けてしまった。判断ミス】
13時13分になんとか西大巓に到着。雪のないガレ場の夏道を下った先に水場があった。その先は雪に覆われ、ルートは分からなくなっていた。後で読んだ山行記によれば正面の林の中に入るのが正しいのだが、このときは林を避けて左の斜面を上がっていった。【失敗�ΑД襦璽箸�分からないのだから、どちら(林か斜面か)に進むべきか慎重に判断すべきであったが、何の根拠もなしに斜面を選択した。判断ミス＆準備不足】斜面を上がってもルートらしきものは見つからず、間違ったかなと思い、水場の先のルートに合流したい一心で一旦下った。下ったものの、その先はさらに深い沢筋になっていた。不安になって再度、斜面を上がった。結局3〜4時間、上がったり下ったりを繰り返しているうちに薄暗くなってきた。【失敗�А�迷ったら高いところに行けという格言を忘れ、むやみに上がったり下ったりを繰り返した。冷静ではなかった。判断ミス】おまけに一度転げ落ちたとき、アルミ製のストックが折れてしまい、さらに左膝が悲鳴を上げるようになってもいたので、ビバークせざるを得なくなった。
今更ながら、迷ったら高いところに行けという山の格言を思い出し、ビバーク場所を探そうと高い場所を目指した。ところが上の方はなだらかで稜線は分からなかった。風が強かった。仕方がないので出来るだけ風雨がしのげるように適当な木陰でビバークすることにした。残った一本のストックと傘でツェルトを張った。簡易シートを敷き、ザックを背中に当ててなんとか寝る態勢はできた。水は尽き、食料も残り少なくなっていた。バーナー、コッヘルなどは持ってきていなかった。近くの雪をコップにすくい、時間をかけて溶けるのを待っては飲んだ。だんだん寒くなり、太腿がガタガタ震え、風音も強くて眠気どころではなかった。このまま遭難するのかな、と不安がつのり、携帯電話のメモ帳に家内宛ての遺書を3通書いた。後で読み返すと恥ずかしいような内容だが、その時は必死で本当の気持ちを書いたつもりだった。
眠れないまま不安な一夜を過ごしたが、もし眠っていたら間違いなく低体温症で死んでいただろう。体の震えとやかましい風音のおかげで眠れなかったのが幸いした。それ以前にツェルトがなければ絶体絶命だった。ツェルトは命の恩人である。
翌朝は風も止んで、晴れていた。動くか、留まって救助を待つか迷ったが、自分が遭難したことは誰も気づかないのではないか。家内と何日も連絡しないことはしょっちゅうあったし、辺鄙な登山口にある車が放置されていることに誰が気づくだろうか？【失敗�─�登山届を出し、家族とも共有すること。下山予定日に下山連絡がなければ家族から警察に届けられるようにルール決めをしておくこと。これらがすべて出来ていなかった。準備不足】結局、動かないと体温は下がってくるし、食料も尽きる。救助の見込みはないから動くしかないと決心した。
雨で薄れてきた地図とコンパスを頼りに、北へ行けば天元台スキー場に出ると判断し、行動開始。樹林帯の中を歩き始めてまもなく、ひょっこり西吾妻山の山頂標識に出くわした。助かった！なんのことはない、山頂付近でビバークしていたのだった。そのうち登山者がやってきたので聞くと、天元台から登ってきたと言う。これは天元台に降りるしかない。
10時34分に山頂を出て、梵天岩、天狗岩、人形石経由で北望台のリフト乗り場に着いた。このコースは案内や踏み跡がはっきりしており、登ってくる登山客も多くて迷うことはなかった。ただ、左膝を痛めていたので歩行にたいそう難儀した。雪が柔らかくツボ足歩きになったので、ワカンかスノーシューがあればもう少しは楽に歩けただろう。北望台からリフト3本とロープウェイを乗り継ぎ、ようやく13時46分に麓の白布湯元に着いた。
白布湯元から白布峠までコースタイム2時間40分の舗装道路の登りである。痛めた左足を引きずりながら西吾妻スカイバレーを歩き始めた。観光道路なので車の往来が多い。誰か乗せてくれるだろうと、後ろを振り向いて立ち止まったり、右手を挙げても誰も停まってくれなかった。結局1時間ほど歩いたところで宮城ナンバーのミニバンが停まってくれた。23台目だった。感じの良い若いカップルだった。まさに地獄で仏とはこのことだ。白布峠には15時7分に着いた。計画では前日に西吾妻山、今日が磐梯山の予定だったが、磐梯山どころではない。早々に栃木に向けて退散した。
今回は反省点ばかり多い問題山積の山行となったが、その中で
イ）ツェルトを持参していたこと
ロ）遅ればせながら「迷ったら高いところに行け」を実践したこと
が生死の分かれ目だったと言える。もっとも山頂標識を見つけたのは本当に偶然であり、方向を違えていたら今頃行方不明のままだったかもしれない。
その後、同僚のYさん、Aさんの百名山登頂に付き合って2011年6月に西吾妻山を再訪した。このときはまず一切経山に登った後、グランデコスキー場のゲレンデを登り、西大巓から西吾妻山頂を目指した。水場の先で今回迷った場所を確認したが、林の中に入っていればあそこまでは迷わなかったのではないかと思えたが後の祭り。やはり分岐や踏み跡が不明瞭な場所で、一旦立ち止まって考える癖が身についていなかったことが問題だったのだと思う。これは今でも自信がないが、、、
後日、現在位置確認用にGPSが有効と思い、高価なガーミン製GPSを買ったのは良いが、PCに疎くてCDに入った別売り地図データを取り込めず、結局宝の持ち腐れになってしまった。その後、SonyのポータブルナビにPCから地図データを入れて、やっとGPSを自分のものにすることが出来た。今はスマホの登山アプリがあり便利になったが、当時としては読図くらい勉強しておくべきだったのだと思う。
写真左：白布峠〜西大巓
写真中：水場。この先で道迷いした
写真右：西吾妻山山頂。標識の裏側の藪の中でビバークしたようだ
ほぼ地元の山なので拝見させていただきました。西大巓と西吾妻山の間の水場ですが、今は標柱はなくなっていて貴重な画像であります。
chan-reiさん、初めまして。
2011年6月にはまだ水場の標柱はありました。流れている水量は僅かで、汲んでまで飲む気にはなれませんでしたが。
だいたい入山者の少ない西大巓と水場のある鞍部の間の誘導ロープの保全もままならない、という記事を読んだことがありますから、標柱も雪で倒れたままになり、復元されないまま放置。そのうちなにかの機会に撤去されたのでしょうか。あるいは水が少なくなって水場の役目を果たせなくなったか。いずれにしても思い出の標柱がなくなっていたとは残念です。情報ありがとうございました。
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