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稜線に出ると展望は良いのだが風が強くて冷たかった。体感温度はかなり低い。踏み跡のない稜線を歩き、北岳山荘を過ぎ、中白根山を越えて間ノ岳山頂に14時11分到着。99座目、いよいよ完登にリーチがかかった。山頂標識まで撮ったところでカメラが動かなくなった。寒さでバッテリーが弱くなったのか。困った。仕方がないので北岳山荘に戻った。
北岳山荘の営業は今夜まで。宿泊者は数組だけだった。食堂のストーブの前でカメラを温め、あれこれいじってもうんともすんとも言わない。明日はガラケーで写すしかないと諦めた。小屋のご主人と喋っているとき、富士山の弾丸登山を念頭に「富士山は眺める山で登る山じゃないですよね」などと言うと、長いこと富士山の山小屋で小屋番をしていたというご主人は「富士山の本当の良さはご来光登山や日帰り登山では味わえない。山小屋に数泊して朝夕の景色をじっくり眺めれば少し分かるかも」と。
翌朝、北岳山頂でご来光を拝むため外で準備していると、小屋の前で富士山に向けて黒い布をかけた箱を二つ立てている人がいた。聞くと富士山の写真を撮るために一週間前から泊まっている、富士山を得意にしているプロカメラマンとのこと。天気が悪いのでずっと延泊していて、昼間はすることがないので小屋閉めの手伝いをしているらしい。黒い箱は手作りの大判(8X10)の銀板カメラで、一回一枚しか写せないとのこと。ということは一回2ショットしか撮れない。こんな嵩張って重いものを荷揚げして、2ショットのために何日も山の上に滞在して一瞬を待つ人。来年のカレンダー用の写真を狙っているとのことだったが、最終日の朝、ベストショットは撮れるだろうか。
プロカメラマンの名前は大山行男さん。小屋で聞いたときは恥ずかしながら名前を知らなかった。下山して地元の図書館に行くと彼の写真集が置いてあった。それは今まで持っていた富士山のイメージを完全にぶち壊すものだった。その後も本屋や別の図書館で写真集を見て彼の世界に引き込まれていった。結局、自分は富士山の表面しか見ていなかったことを痛感した。いつか富士山の山小屋に数泊して存分に富士山を味わい、感じてみたいと思うようになった。宿題が増えた。
写真左:間ノ岳山頂
写真中:トラバース道から
写真右:北岳側から(2012年9月)
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