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昔から疑問に思っていたことがある。
浅間山ほどの存在感のある山であれば、当然、信仰の対象となったはずなのに、その遺構や文献などをほとんど目にしないのは何故なのか。
疑問を抱いていたことさえ忘れそうになった頃、本書を手に入れた。
本書は、浅間山信仰の歴史についてまとめた教科書や専門書の類ではない。
各時代に散らばった痕跡から過去を丁寧に繙いていく著者の記録を軸として、謎解きの物語が展開されている。
浅間山信仰の歴史において注目すべき点は、信仰の象徴となる神仏が幾度となく交代しているということだろう。この物語の主人公は、副題にもある「鬼と仏と女神たち」だと思う。
移民の進攻、人々の生活や思想の変化、時の権力者の思惑により、浅間山信仰の在り方は劇的に変わっていった。そしていつの間にか、信仰そのものが姿を消してしまったという。
本書を読み進めていくと、多くの文献や現地調査をもとに推理が進められ、まるで著者に案内されながら、浅間山を通して時代を超えた旅をしているように感じる。
浅間山に畏敬の念を抱く人、そして浅間山に限らず日本の山岳文化を親しむ人にとって、必読の価値がある一冊だと思う。
<出版社ウェブページ>
https://shop.shinmai.co.jp/books/products/detail.php?product_id=2065
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