6回目 判断を歪める特性 〜バイアス〜
前回までは、エラーの種類とかの言葉の定義にお付き合いいただきました。
今回からは、人間は何でミスをするのかという核心に対して、「バイアス」という人間の思考の特性からアプローチしていきたいと思います。
早速、バイアスという言葉がでてきましたが、認知心理学等で用いられる言葉で、「認知バイアス」ともいいます。
私は、専門的に認知心理学を学んだわけではないので、間違いがあるかもしれません。その場合は教えてくださいm(_ _)m
バイアスとは、人が何かを判断するときに自分の状況や周りの環境によってその判断に偏りや歪みが生じることをいいます。
バイアスには、いくつかの典型的な例があります。
1 コンコルド効果
もうすぐ山頂だ、天気悪くなってきたけど…行くぞ!
2 確証バイアス
この道なんか違う気もするが、この木見たことあるぞ!
この道で合ってるに違いない!
3 ハロー効果
ヒマラヤ経験者の彼が言うんだから間違いない!
4 正常性バイアス
「落石注意」って看板がこの辺多いけど、
今まであったことないし、どうせ大丈夫だろう
5 後知恵バイアス
俺は最初からそう思っていたんだ!
6 認知的不協和
あんなアイテム、無くたって問題ない!
バイアスには、他にも例があるんですが、ここでは、山行に特に関係あると思われるものをピックアップしました。
次回以降、これらを1つずつ詳しく見ていきたいと思います。
さて、なぜバイアスなんてもんが人間にはあるのでしょう。
それは、「素早く簡潔な判断」と「ストレスの回避」のためです。
この2つは、非常に大きなメリットであり、バイアスがなければ、疲れ果ててしまうでしょう。
例えば、山道具屋で新しいザックを買うとしましょう。
AとBの2つのザックで悩んでいるとき、皆さんはどうしますか?
店員さんに聞いたり、ネットでレビューを調べたりしますよね。
これは、「経験者の意見は、自分の意見より正しい可能性が高い」という考えによるものです。
AかBどっちが最適かを判断しようと思えば、両方買って同じ条件で使用して比べてみるくらいしかないですね。
でも、そんなことしていたら、お金も時間もかかって非効率です。
だから、あなたの判断を素早く簡潔にするためにバイアスをかけるのです。
これは、ハロー効果がポジティブに働く例です。
では、ここであなたは、店員の意見を参考にAのザックを買ったとしましょう。
しかし、Aを使用しているうちに不満が出てきました。背負い心地が微妙にしっくりこないし、容量が少し足りないことがある。
背負い心地に定評があり、容量も少し多いBの方がよかったかも・・・と思うようになってきました。
しかし、多くの場合、Aで良いと思うようになると思います。
なぜかというと、Bの方が良いかもしれないということに対し、あなたはストレス感じます。すると、ストレス回避のために、やっぱり、Bより自分が買ったAの方が、軽くて機能も優れている・・・というように都合よく考えるからです。
これは、認知的不協和の例です。ここで、認知不協和が働かなければ、いつまでもぐじぐじ悩んで山行どころではなくなるでしょう。
このように、人間はバイアスによって効率的に判断を行い、また、ストレスから回避しているのです。人間の思考にバイアスがかからなかったら疲れてしょうがないですね。
しかし、困るのが、バイアスがかかってほしくない時にバイアスがかかることがあるということです。
繰り返しますが、バイアスは「素早く簡潔な判断」と「ストレスの回避」のために存在します。
逆に言うと、「素早く簡潔な判断」と「ストレスの回避」が必要なときは、より強くバイアスがかかりやすくなります。
つまり、焦っているとき、疲れているとき、なんらかのストレスがかかっているときに強いバイアスがかかりやすいのです。
皆さんが判断ミスするときの多くは、「焦っているとき」「疲れているとき」「不安なとき」ではないですか?
それは、焦りや疲労、不安感などから皆さんの思考にバイアスがかかってしまって、論理的な思考が歪められた結果なのです。
では、「焦っているとき」「疲れているとき」「不安なとき」にバイアスによって思考を歪められないようにすにはどうすればいいでしょうか?
どうしようもありません!!
「え〜っそんな!」っという声が聞こえてきそうですが、バイアスは人間の特性なので、どうしようもないんです。
大事なのは、
バイアスの特性を知り、
バイアスがかかりやすい状況を避ける。
次に、
バイアスがかかりやすい状況であることを認識する。
そして、自分の判断にバイアスがかかっていることを認識する。
もうすぐ山頂だけど、急に天候が悪化してきたとき、あなたの判断にはバイアスがかかっています。
それを認識できれば、たとえ「強行しよう」と判断したとしても、立ち止まってもう一度考えて「やっぱりやめとこう」っと判断できるはずです。
「焦っているとき」「疲れているとき」「不安なとき」あなたの判断は歪んでいるのです。
ちなみに、バイアスは英語で「bias」であり、「偏り」や「先入観」といった意味です。
次回は、早速、コンコルド効果について詳しく見ていきたいと思います。
お疲れ様です。
> それは、焦りや疲労、不安感などから皆さんの思考にバイアスがかかってしまって、論理的な思考が歪められた結果なのです。
うーむ、いちいち思い当たります。自戒せねば。
次回がますます楽しみです。
ttmhajimeさん、こんにちは。
そうですね、人には「バイアス」が不可欠ですね。
私のつまらない例です。
(コンコルド効果)
前回ここの売り場で200枚買って、一千万円当たった・・今回は2000枚買って一億円を当てるぞ。
(確証バイアス)
友人と松茸狩りに出かけ、自分は松茸のある場所の見当はついていて・・友人にない場所を捜さす。
(ハロ−効果)・・ボジティブとネガティブが有り。
あの方は、有名大学を首席で卒業している・・面接試験不要で、即採用ですね。
(正常性バイアス)
雪崩は午後に起こるから、午前中ならまず大丈夫・・安心して移動できるぞ。
(後知恵バイアス)
だから、あの時に株を売っとけば・・損しなくて済んだのに。
(認知的不協和)
高い登山靴を買って、ネットや専門店で仕様の確認や他の靴と比較をして納得する人・・やっぱりこの靴いいな〜あ。
>自分の判断にバイアスがかかっていることを認識する
確かにそうですね、バイアスの特性を体系的に解明されれば、失敗の予測も可能になり、それをを回避する方法も発見できますね。
『ヒューマンファクター』奥が深いですね。
では、この辺で・・失礼します。
>tatsucaさん cprrescueさん
いつも応援ありがとうございます。
次回もがんばります
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