ぼくは百名山とか、百高山とか、
そうしたアイコン的なものに対してまったく興味がないし、
たぶんこれからも興味を抱かないだろう。
百名山は、故・深田久弥氏が数多く登ってきたお山の中で
素晴らしい百山を私的に選択して著したものだけれど、
それが登山者の間に広く認知されたもの。
この選択には賛否両論あると思うし、
「なぜこのお山が入ってない?」と感じるものもある。
(個人的には、妙義連峰が百名山に入っていないのが不思議でならない)
ただ、いずれにせよ言えることは、
どのお山も素晴らしいお山であって、
わざわざ行く価値がある、ということだ。
したがって、それをお山における一つのベンチマークとする人々が
多くいることに関しては何の異論もないし、
それを目指すことに対しては敬意すら表したい。
田中陽希さんが「百名山/二百名山一筆書き」と銘打って、
日本中を歩き回っていることに対して多くの人々が感銘を受けるのも、
このアイコンにそれだけの価値があるからだと思う。
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話は変わるが、お山における「ヴェテラン」の定義は何だろう?
経験年数?登頂の回数?体力?岩の技術?読図力?
そのあたりのことについて、ぼくにはよくわからない。
ただ、一つ思うのは「ヴェテラン」は技術や体力など、
数値的に測定可能なものについて熟達している以上に、精神や心など、
目に見えない部分について熟達していることを言うと思うし、
「ヴェテラン」でない人に対して、
後者の点でより規範的な存在であることが肝要ではないか、ということだ。
昨今、空前のお山ブーム故、
それをきっかけとしてお山と接するようになった人は数多くいる。
お山の良さを多くの人が知ってくれることを喜ばしく思うけれど、
確かに新たにお山に接する人が増えたゆえの弊害があることも理解している。
事故や急病による遭難の件数も明らかに増加した。
それに対して、「初心者」とか「観光客」といった、
属性化させて人々を貶める発言を
SNSという開かれた場で公然と行う者が見受けられる。
では、その者が「ヴェテラン」だというのか?
少なくとも、ぼくが思う「ヴェテラン」の定義からすれば、
全く当てはまらない。
かつて、名勝・那智の滝へ不法侵入し、ロッククライミングをした者がいた。
その者は業界ではかなり知られており、海外登山の経験も豊富であるが、
何故那智の滝が御神体と崇拝され、無断立入を禁じているかの意味を考えず、
自分の技術力やら、登攀欲やらを解放させたい、
などという考えで登るなどとは、
極めて幼稚で、自己中心的、無節度、無節操としか言いようがない。
こういう者を「ヴェテラン」と言えるものか。
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話を戻そう。
百名山全山登頂は、多くの人々にとって目標だと思う。
全国一万超と言われるお山のうちの、
津々浦々に散らばる百のお山を登ることは、
並の労力ではなしえないことだし、ある程度の経済力も必要だ。
冒頭に記したとおり、ぼくは百名山にはまったく興味がない。
ただ、それを目標に登る人には敬意を抱いているし、
そのために日本全国を訪れることで、
各地の風土や文化に触れる機会を持ち、
知見が拡がるのも、また素晴らしいことだと思う。
こうした行為に対して、
自称「ヴェテラン」により「スタンプラリー」などと
露骨に卑下される声を聞いた。
この行為に熱意をもって取り組んでいる登山者を、
下品な表現で貶めたり、一括りにしたりすることがどうしてできるのか、
ぼくにはまるで理解ができない。
登りたいお山に登ることは、個人の自由以外の何物でもないし、
その気持ちがあるが故に日々の活力となっているのであれば、
それは素晴らしいことだと思わないのだろうか。
経験年数や体力など、
数値的に測定可能なものがどれだけ熟達していようが、
お山とお山に登る人々に対して、敬意や思いやりを持てないような者は、
那智の滝を攀じ登った愚か者と何も変わりがない。
深田氏が後世に残してくれた百のアイコンを目標にする。
それをなした後、また次の目標を見つける。それでいいではないか。
ブームの何が悪い?スタンプラリーの何が悪い?
長く、安全にお山に接することが出来る身体と心があれば、
それでいいではないか。
まったくの蛇足だが、ぼくの百名山登頂数を数えてみたら、
先の飯豊本山登頂により54となった。
ぼくの場合、これはただ登山を続けてきた結果に過ぎず、
「ヴェテラン」とかそうでないとかは
まるで関係がないことを申し添えておきたい。
もちろん、残りの46の頂を目指す心積もりもない。
百名山には「多くの人が歩いた跡だから大丈夫だろう」という経験則と、多くの人が歩くからこそのインフラ整備による「比較的安全」という付加価値が付いています。
ウェストンが上條嘉門次とともにそれなりの覚悟で入ったところに夏の間常駐の救助隊が居たり、単独で転んでも他の多くいるハイカーが見ていてすぐにヘリが来たりしますが、これまで何度かあったブームのおかげでもあるのでしょう。
百名山ブームがあったから今の「山ガール」に代表されるブームもあるのだと思いますよ。(だから?今、ヤマレコは安全なコースで距離と速さを競うこと・・も流れのような気がして面白いですね)
そんな商業的な意味において「百名山」は偉大です。そして作者の他の著述はほとんど「有名」ではないですね(笑)
他方、ウチの近所の藪山は未だ山ガールなどいない危険な魔境です。先日も山菜採りをして道を「ロスト」し「救助隊」(同じ入会の人たち)に迎えに来てもらいました。(笑)
ふと思いついて・・長々と失礼・・
はじめまして、でしょうか?こんばんは。
お書きの「百名山の付加価値」の内容につきましては、
概ね同意いたします。
アクセスの悪い地方のお山ですら一定のアプローチ性がある点は、
まさに「百名山」という名による付加価値でしょう。
深田氏の他の著述云々については、
経過や評価を存じ上げてはおりますが、この場での言及は控えます。
motchさん こんにちわ
おっしゃる通りで「百名山、百高山」に関しては
登りたいと思うからその方たちは登っているので
あって、他人がどうこう言える事ではないと
私はおもいますね
所詮、趣味で登っている山
どんな風に登るのかは、その人の嗜好の問題で
あって、それはその人の自由です
ちなみに私はmotchさんと同じで、百名山とかには
興味はありあせんが、しかしそうだからと言って
それを目標にされている方たちを見下す事は
したくありません
(ちなみに私はピークにもこだわっていません
ようは綺麗な景色や見たことも無い尾根や谷
人の入らないところに興味がありますので
まぁ、変ですかね)
お互いに登りたい山にのぼればいいんですから
あと、ベテランという話がありましたが
本当のベテランと言われる人たちは、技術や
知識、経験そしてそれ以上に人間性も
豊かな人たちばかりです
(みんなから尊敬される山屋さん達です
ただ、中には嫌われている人もいます
そういう人は誰からも相手にされません)
長く山をやっているからベテランなのか?
そういう意味では私も30年近くやっていますが
正直、私の知っている「ベテラン」と言われる
方たちにはとても追いつけないと思っています
で、今回のお話しの内容を読ませていただいて
思ったのは、ようは20年以上前の百名山の
ブームから今にいたる登山者の状況
ようは山でのルールが理解でできない人が
増加しているという事に尽きると思います
これは登山を始めたばかりの人たちだけでは
なく、長年やってきた人たちも含めてです
例えば自分の力量以上の山に登ろうとする人たち
これは初心者と言われる人たちだけではありません
長年やってきた「ベテラン」と思われる人も
同じです
そこで事故や遭難などになる
ようは、山に登り始めた人は自分の力量が
自分で判断できないでいる場合が多いし
(体力や知識、技術など)
そして長年やっていた人は自分の力を過信する
(特に体力や古い知識や技術に固執する)
そういう意味ではおんなじなんですよ
だからこそ謙虚に山に向かう人が今は
一番頑張っている人たちなんだと思うんですがね
ただ、正直いいまして昔の事故や遭難とは
本当にその内容が大きく違うのは事実です
私もいろいろ見てきましたが、自力で降りれるのに
ヘリ読んだり、地図も読めないのに山に入り
迷うなんてなかなかありませんでした
まぁ、こんなこと書くと非難されるのかもしれませんが、こういう事がベテラン風(?)の人たちから
なにかと言われることかもしれません
とにかく、今の登山者だって知識や技術を
学ぼうとしている人はたくさんいます
(私の周りではたくさんいます)
そして、長年山をやって来たものは
そういう人たちに自分の経験など伝える
事が出来ると思います
もちろんそれを聞いてどうするのかは
聞いた方の判断ですけど
そういう意味で、ベテランをもっと
使う事をお勧めしますね
もちろん、本当の山の先輩になりえる人をですが
PS 那智の滝の○○○○ボーイズさん達ですが
山屋仲間では、「技術以前に呆れる」という
話です(ガイド関係者によりますと)
はじめまして、こんばんは。
長文コメント、ありがとうございます。
スタイルは人それぞれですので、
百名山登頂も、名もなき藪山縦走も、
ピークハントではなく自然に触れることを目的にするのも、
変でもなんでもないと思います。
(私の嗜好は、山行記録から概ね読み取れるかと存じます)
おっしゃる「ベテラン」の定義もさることながら、
事故や遭難の一因について、
昨今は情報があまりに多いゆえ、
そこから取捨選択が難しくなっていることもあるように思います。
温故知新が理想形であるとは思うのですが、
どの故とどの温が螺旋的に構成されうるか、
これまた難しい問題ですね。
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