一昨日、お山ブームの発端のひとつとなった
漫画「岳」の最終巻が発売されたので、購読したのだけれども、
主人公の活躍ぶりは、あまりに超人的だったため、
(内容的にツッコミどころ満載、という側面は置いておいて)
フィクション内で同じく超人的な登攀をした「神々の山嶺」の主人公と対比の上、
現実にはどのようになっているのかについて、
各諸元をもとに検証、感想を述べてみたい。
まえがき:各諸元
【羽生 丈二(はぶ じょうじ)】
作品名:神々の山嶺(かみがみのいただき)
作者:夢枕 獏(原作)、谷口 ジロー(漫画)
年齢:50歳(出典:漫画版5巻 P124)
時期:厳冬期(1993.12.12〜12.18頃)
条件:完全無酸素、単独
ルート:エヴェレスト南西壁
ベースキャンプ(BC)→アイスフォール帯→ウェスタンクーム(C1・6500m)→ベルグシュルント6700m→軍艦岩6900m→灰色のツルム(C2・7600m)→ロックバンド→イエローバンド下部(C3・8350m)→ヘッドウォール→ピーク(8848m)
【島崎 三歩(しまざき さんぽ)】
作品名:岳(がく)
作者:石塚 真一
年齢:30歳代前半(あらすじより推定)
時期:プレ・モンスーン期?(あらすじより推定)
条件:無酸素(実質的に)、単独
ルート:ローツェ南壁からエヴェレスト南東稜への縦走
BC→南壁基部→ローツェ頂上直下(南壁はクリアしたが、登頂はしていない模様)→ローツェ北稜(?)→サウスコル(7900m)→エヴェレスト南東稜→南峰(8760m)→南峰コル→ヒラリーステップ(8750m)→サウスコル→ヒラリーステップ→サウスコル→ヒラリーステップ→ピーク
【エヴェレストについて】
1.全登頂者リスト
http://www.8000ers.com/cms/download.html?func=startdown&id=152
2.無酸素登頂者リスト
http://www.8000ers.com/cms/download.html?func=startdown&id=154
3.南西壁ルート登頂者
全登頂隊数:5隊
全登頂者数:15名
単独行者数:0名
厳冬期登頂隊数:1隊(6名)
無酸素:1名(チェコスロヴァキア隊登頂者)
4.南西壁登頂歴
(1)イギリス隊(ポスト・モンスーン期/初登頂)
Dougal Haston 1975.09.24
Keith Douglas Scott 1975.09.24
Peter Boardman 1975.09.26
Pertemba(ネパール人シェルパ) 1975.09.26
(2)チェコスロヴァキア隊(ポスト・モンスーン期)
Jozef Just 1988.10.17(無酸素。アタック隊員全員死亡、登頂者も下山中に死亡)
(3)日本・群馬県山岳連盟隊(厳冬期/初)
名塚 秀二 1993.12.18
後藤 文明 1993.12.18
田辺 治 1993.12.20
江塚 進介 1993.12.20
尾形 好雄 1993.12.22
星野 龍史 1993.12.22
(4)韓国隊(ポスト・モンスーン期)
KIM Young-Tae 1995.10.14
PARK Jung-Hun 1995.10.14
Tamang Ang Dawa(ネパール人シェルパ) 1995.10.14
Kipa(ネパール人シェルパ) 1995.10.14
(5)韓国隊(プレ・モンスーン期/初)
JIN Jae-Chang 2009.05.20
KANG Ki-Seok 2009.05.20
PARK Young-Seok 2009.05.20
SHIN Dong-Min 2009.05.20
5.冬期無酸素登頂
ANG RITA(ネパール人シェルパ) 1987.12.22 南東稜ルート
6.補足
イエローバンドからヘッドウォールを直登した史実はない。
イエローバンド下部を東へトラバースし、
南峰(8760m)のコルから南東稜ルートに合流して登頂するのが、
一般的に南西壁ルートと言われている。
【ローツェについて】
1.国別登頂リスト
http://www.8000ers.com/cms/download.html?func=startdown&id=194
2.ルート別登頂リスト
http://www.8000ers.com/cms/download.html?func=startdown&id=211
3.南壁登頂者
全登頂隊数:1隊(単独1人?)
全登頂者数:3名?
単独行者:1名?
厳冬期登頂者数:0名(未登)
無酸素登頂者数:1名?
4.南壁登頂歴
(1)単独行者(プレ・モンスーン期、単独、無酸素、初登)
Tomislav Cesen(旧ユーゴスラヴィア) 1990.04.24
(2)旧ソ連隊(ポスト・モンスーン期、酸素有、第二登)
Sergei Bershov 1990.10.16
Vladimir KARATAYEV 1990.10.16
5.補足
(1)Tomislav Cesenの登頂については、その信憑性に対する議論が多い
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A2%E3%83%BB%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%BB%E3%83%B3
(2)ローツェからエヴェレストへの縦走
長年、「登山界最大の課題」と言われている表題の縦走、
故・小西政継氏が1970年代には既に言及しているが、
史実では縦走に成功した個人、隊はない。
近年のトライは、以下の2例のみ。
ア.Denis Urubko(カザフスタン隊)
2009年、プレ・モンスーン期。成功の報はない。
http://www.mountain.kz/ru/news/326/proekt-lkhotsze-everest-sostoitsya-v-2009g
http://en.wikipedia.org/wiki/Denis_Urubko
イ.Simone Moro(イタリア隊、カメラマン2名と同行)
2012年、プレ・モンスーン期。群発落石のため、BCにて断念。
http://www.simonemoro.com/
http://www.planetmountain.com/News/shownews1.lasso?l=1&keyid=39595
なお、縦走ではなく、エヴェレストサウスコルからのピストンによる
エヴェレスト、ローツェの連続登攀は、
昨年4月、アメリカ人のMichael Horstによって達成されている。
http://www.climbing.com/news/hotflashes/everest_and_lhotse_in_less_than_21_hours/
その2では、羽生と三歩の足跡と現実の足跡を対比、検証してみる。
http://www.yamareco.com/modules/diary/19423-detail-39730
ちょうどまんがの「神々の山領」を読んだばっかりで、
「岳」は読んだことはないものの映画は観てて気になり、
ググったところ最終巻が出たばっかり&終わり方に賛否両論と今日知って、
個人的にもヒジョーーーにタイムリーな話題です。
「神々の山領」、泣きましたわ〜羽生さんかっこええ。
ただ、あの最後、すんごく気になることがあるんですよね・・・。
そう言った意味でも続き、楽しみにしております。
水玉さん、こんばんは。
ヒジョーーーにタイムリーですね(笑)
「神々の山嶺」は、
原作のそのあまりの衝撃的な結末に圧倒され、
漫画版があることを知って即買いしましたが、
漫画版が原作と結末が違うところにも、
またグッときましたねー。
リアリティという点にかけては、
「岳」を上回る超大作だと思います。
「岳」の最終巻については、mixiのコミュでも賛否両論ですよ。
ネタバレなとこもありますが、
多種多様なご意見を興味深く拝見しました。
「神々の山嶺」の「あの最後」って、
漫画のほうですかね??
果たして、その2以降で
水玉さんのご期待にお応えできるのかどうか・・・
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