絶滅危惧種の有用性

まえ
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無事に購入に至ったプラスティック製の冬靴。
前回、新規で購入した時は10年前で、その際は選択にさほど困らなかった。
ところが、今回は散々探し回った挙句、
北海道の店舗からの取り寄せ、という結果になった。
よって、買い替えの時期にあたる5〜6年後には、
もはや絶滅しているのではないかと恐れている。

それでも、ぼくはこの絶滅危惧種たる
プラスティック製のブーツを愛用し続けてきたし、
今後は副次的に合成皮革のシングルブーツを購入するつもりではいるが、
基本的にはプラブーツが主体であることに変わる予定はない。

合成皮革とプラスティックの違いとは何か、
そして重くてクイックネスに欠けるという理由で、
マーケティングにおいてすっかり廃れてしまっているプラスティック製の
どこに有用性があるのか。

１．硬度
言うまでもなく、素材の硬度が違い、
それに伴ってクイックネスも相当に違う。
プラブーツは、ゲレンデスキーのブーツほどではないが、
足首の動きがかなり制限されるので、
足首を返しながら歩くというのがほとんど不可能で、
急斜面ではキックステップで登ることにほぼ特化していると言ってよい。
反面、合成皮革は夏靴と遜色ないくらいの感触であり、
クイックネスという点にかけては圧倒的に優れている。
さほど難しくなく、温度の低下も著しくはない、
たとえば南八ツの主稜線の積雪期縦走などでは、
プラブーツよりもパフォーマンスを発揮しやすい。

２．保温
これは圧倒的にプラブーツが優っている。
比べ物にならない、と言ってよい。
シングルの合成皮革でも、氷点下10度程度ならなんてこともないが、
氷点下20度以下で、かつ連泊の山行をする場合は、
圧倒的な差となってくる。
プラブーツは、インナーがテント内でのシューズとしても使えるので、
とにかく足の保温にかけてはピカイチ。
ゲイター付のブーツは履いたことがないのでわからないが、
I店の店員に聞くところによれば、
やはり保温力ではプラブーツには敵わない、とのこと。

３．ユーティリティ性
これも、プラブーツが圧倒的に優れていると思っている。
このブーツひとつで、バックカントリースキーもできるし、
シールもわかんもスノーシューも、何でも使える。
合成皮革のブーツだと、スキー滑降がほとんどできない。
靴が柔らかすぎて、よほど優れたスキーの技術を持たないと、
コントロール不能だろう。
シール歩行も、ちょっと斜度がきつくなるだけで相当に厳しいように思う。
いろんなパターンの縦走をするのであれば、
やはりプラブーツのほうが何枚も上手だ。
ただ、バックカントリーに特化するのであれば、
プラブーツよりもテレマーク用のブーツのほうが遥かに優れており、
プラブーツは中途半端な感が否めない。

結論としては、厳しいピークハントやミックス縦走をしないのであれば、
プラブーツはオーバースペックな上に不便だし、
スキーをするにはパフォーマンス不足となる。
クイックネスが効かない点については、
結局は歩行技術でカバーするしかないということになるが、
この考え方は今のお山ブームに沿ってはいないのだろう。

ただ、GPSマップの普及と読図の相関性でも同じ事が言えるが、
より新しいものに頼り切ってしまうと、
本来有していたはずの原理的な要素が廃れてしまう。
即ち、アイピンワークの基本な技術や、
プラブーツを履いているからこその慎重な動作が、
合成皮革のブーツによる機動性の良さによって殺されてしまい、
より大きな事故につながってしまうのではないか、
という「考えすぎだろそりゃ」と言われかねないような懸念を抱いている。

それぞれの良さを知った上での道具選びができれば、申し分ない。