絶滅危惧種の購入

冬靴を4年ぶりに新調することにした。
新調したと言っても、前の靴はひとから譲ってもらった中古なので、
実質10年ぶりの新規購入だ。

昨今はナイロンやスウェードの合成皮革のシングルブーツが主流となり、
その手のカラフルな靴がとても高い価格で販売されている。

しかしながら、ぼくは凍傷が怖いということと、
かつて北アルプスで吹雪に6日閉じ込められたときの経験から、
シングルの冬靴を雪山で履くのは憚られ、
かと言って、ゲイター付の合成皮革ブーツはあまりに高価過ぎ、
とてもではないが手が出せないので、
クラシックなブラスティックの二重靴を愛用している。

この度、新調するにあたって、
ネットやら店やらをあれこれと物色したのだが、
ラインナップはもはや風前の灯火と言ってよい。
現在の空前のお山ブームとはまるで関係なく、
店頭からひっそりと消えていくことが宿命のようだ。

それでも、ラインナップは少ないながらも絶無ではないので何とかなるが、
もうひとつの問題はかなり深刻だった。
ぼくの足に適合するサイズがないのだ。

夏靴はJP/28、EU/44.5を履いているが、
冬季山行は時間が経てばたつほど、足が必ず浮腫むので、
JP/29、EU/45.5とワンサイズ大きい靴を履いてきたのだけど、
このサイズがネットで探してもなかなか見つからない。
ネットでないなら足で探すしかないと思い、
池袋にある行きつけの山店にいくも、
そもそもそのサイズを仕入れていないとのこと。
さらに、駅の反対側にある某KJ店にいくも、
「ニーズがほとんどない」という理由で、予想した通り扱ってすらいない。
新宿に足を伸ばし、南口のMB店、
そして最近オープンしたビックロの中にあるI店に行くも、結果は同じ。

されば、ということで、登山用品店の聖地である神保町まで足を伸ばした。
ここで見つからなければ、もう輸入するしかない。

ぼくが欲しいのは、SCARPAのVEGAというロングセラーブーツで、
コストパフォーマンスに極めて優れているのだが、
シングルに比べると重いし、素材的に合成皮革に比べると
特に足首の部分がうんと固く、
そのためクイックネスに欠けるということもあり、人気は薄い。

神保町では、まずはSKIY店に行くも、売り切れ。KMSK店もダメ。
これでリーチである。

残るは、I本店だけ。文字通り最後の砦だった。

店員に恐る恐る訪ねると・・・隅っこにひっそりとあったっ！
さすがは老舗の本店！
しかし、在庫サイズの最大が28.5しかないという。
ひとまず試着してみる。

持参した靴下を三重にしてインナーを履くと、まあ何とか。
ところが、アウターを履くと、明らかに厳しい。
ちょっとがっかりして靴下を二重にすると、入るは入るが、
あまりにピッタリで、浮腫を計算すると、明らかに小さい。

ついに本丸も陥落か・・・と思ったところで、別の店員から天の声が。
「他の店舗にワンサイズ大きい靴の在庫を問い合わせてみましょうか？」
何故新宿の店員はそれを言ってくんなかったんだろうと思いつつ、
「お願いします」

しばらくのち、店員が戻ってきて曰く、
「1つだけありました！」

おお！

「札幌店に」

「！？」

そう、首都圏のI店は絶滅していたのであった。
これでは、吉祥寺に行こうが、川越に行こうが結果は同じだっただろう。
さすがは日本で最も厳しい冬期山行をする登山者が集まる北海道である。
よもや、知床山脈や大雪山系をシングルブーツで縦走するのは、無茶だろう。
（実態は知らないが、少なくともぼくには怖くてできない）

「お取り寄せできますが、休み明けになってもよろしいですか？」
「もちろんです！」
ぼくは即答して取り寄せ伝票にサインをし、
意気揚々な気持ちを押し込んで帰路についた。

これで、来年早々に予定している雪上訓練には、新しいブーツで臨むことができる。

つづき
http://www.yamareco.com/modules/diary/19423-detail-63407

コメント

1955

RE: 絶滅危惧種の購入
てっきり北海道遠征につながるのかと思いましたが、靴の方から飛んでくるのですね（笑

加藤文太郎さんなら夏靴で歩いていたりして

先日の杣添尾根で出会った方の一人がプラブーツでしたね。
山で実際に見るのは初めてでしたから、ジロジロと見入ってしまいました。

motch

RE: 絶滅危惧種の購入
>>1955さん

そうきましたか（笑）

全てを放り出してそちらへ飛んでみたかったです。

それにしても、久々にプラブーツを新規購入したわけですが、
ここまで廃れきっているとは思いませんでした。

あと、真面目にレスいたしますと、
文太郎氏の冬期の出で立ちは、
ゲートルに4重のウール靴下だったようです。
さすがに地下足袋では