昨日、秩父山域の伊豆ヶ岳を歩いてみました。男坂という、50mの長さの鎖がある岩場歩きを楽しめるようです。初めての場所なのでヤマレコや動画サイトであれこれと予習をし、行けるのではないかと感じたので挑戦してみました。結果、乾いていれば難しいところはなく、まっすぐ立って歩ける場所という感想を持ちました。
長い岩場です。予習していく中では動画サイトやネットの個人ブログなど、スリルある難所という紹介も多く見ました。では、自分の何がよくて違う感想を持ったのだろう。今日いちにち、ぼんやりとそんなことを考えておりました。なんといっても私は、若いころに山岳部でみっちり仕込まれたということもなく、また山の何たるかを教えてくれる師匠もいない。見様見真似の聞きかじりをしている初心者に過ぎないのです。その何がよくて困難を感じなかったのか。いつもは悪かったところばかり思いつくものだけど、たまにはよかったところについて考えてみよう。
思いつく一つ目は、写真や動画を見て、どう登るかのイメージを持てたことかもしれません。右側の斜めになっている所から取り付けば、手を使わなくとも立って歩けそうだ。ただ本当に足場があるかは映像ではわからなかったから、実物を見て足を置けなさそうだったら「ここは自分には登れない」と理解して、諦めて巻くのがいいかな。そして実物を見て、よし。これなら足を置いても大丈夫。
そこで二つ目は、足を置いても大丈夫という判断に自信を持てたことでしょうか。足場としたところは、幅10cm程だったでしょうか?常識的に考えれば、足がかりとするには狭いです。そこを足がかりにすることに自信を持てた理由はきっと、ささやかなりとも重ねてきた経験なのでしょう。岩の上だけでなく、土の道でも。狭い足場を迂闊に踏んでグラついた経験だったり、恐る恐る足を下ろして滑らなかった経験だったり、踏んでも大丈夫なところは見てわかるようになったかな?
そして三つめは、そうして見つけた足場に、きちんと骨盤を起こしてまっすぐ体重を乗せる歩行を覚えたことのように思います。実は過去の山行中にふとした思い付きで、スマホを地面に置いて自分の歩行姿勢を録画してみたことがあるのです。するとひどいものです。大きい段差を踏んだ時に、上体がカクンと前に倒れてしまっているではないですか。「こりゃいかん」とその矯正を試みるうちに、「骨盤がまっすぐ立っていれば体重は踵の上にまっすぐ乗るのだ」ということがわかってきました。そうするとグラグラしない。おヘソをぐーっと前に突き出して胸を張ると片足立ちになっても体が安定するから、足を踏み出しても怖くない。「岩場で腰が引けると危ない」とよく聞くけど、これなんだな。
私にとっての山登りは、大人になってから一人で始めたものです。やっていることが正解なのかどうなのか、それすらわからないことが多いですし、先述の自撮り動画のごとく、できているつもりのことが本当にできているかもわからない。自信を持ちづらいのですね。そんな中で昨日のように、スッと岩場を通過できたようなことがあると、これまで心がけてきたあれこれのおかげで少しは上達できているように思える。報われたような気がします。山に限らず日常生活においても仕事でも、報われたと感じられることってなかなかないような気もしますので、ますます嬉しい山行になりましたという、そんなお話なのでした。
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