![]() |
##朝ラン #早朝ラン #ランニング
オーディブルは前野ウルド浩太郎 『バッタを倒すぜアフリカで』の続き。
ウルド氏の「集団別居仮説」は、Lekと呼ばれる現象(あるエリアにオスが集合し、交尾しにやってくるメスに選んでもらうため、オスが自身の魅力をアピールするなんらかのディスプレイをして競い合う現象)の一類型ではないかと判明する。
「レックは自然界の最大の驚異の一つである。鳥類、哺乳類、昆虫などのオスの集団であるレックは、メスがやってきて、1匹または複数の人気の高いオスと交尾し、子孫を残すための精子だけを得て、去っていく交尾の場としてのみ存在し、何世紀にもわたって自然学者を魅了してきた。鳥類の行動と性選択の専門家であるHoglundとAlataloは、これらの疑問に答え、レッキングシステムを性淘汰理論の広い文脈に位置づけることを試みている」
「メスが交尾するためだけに訪れるオスの集団」という点が、サバクトビバッタの集団別居仮説とかぶる。そのことを知ったウルド氏は、「無知ゆえに、研究テーマとしてすでに確立されていることに今世紀最大の衝撃を受けた。無知の良いところは、自分で大発見したかのように、愛情が湧き、新鮮な快感を味わえることだ」。なんとポジティブな。でも、その感覚はすごくわかる。記憶力がない自分も、昔読んだ謎解きミステリの内容をすっかり忘れ、まっさらな状態で、二度三度味わうことができる。無知と同時に、忘却も、新鮮な感動を味わうためのスパイスではないか。
オスとメスが同数でも、ある時点・あるエリアにおける繁殖可能なオスとメスの割合は1対1ではない。メスのほうがオスよりも繁殖に復帰するまで時間がかかる傾向にあるため、交尾可能なメスの数が少なく、オスがあぶれている状態になりやすい。これを実効性比という。この偏りのため、希少価値の高いメスが余っているオスを選ぶことになり、オスは選ばれるために魅力(体の大きさ、歌声、翅の長さ、巣作りの巧みさなど)を競い合うように進化した。同時に、希少なメスをめぐるオス同士の争いは、時に、巻き添えをくったメスの生命を脅かす。オスによる交尾欲求がエスカレートすると(本来の意味のセクシャルハラスメント)、メスは傷つけられたり、エネルギーを浪費したり、逃げ遅れて捕食者に捕まったりするリスクが高まる。そこで、余計なオスを排除するべく、オスメス間で軍拡競争(交尾のためのマウントがしにくい形態に進化するなど)がくり広げられる。しかし、軍拡競争には歯止めがかかりにくいことから、別の解決方法が求められる。それが「別居」ではないか、というのがウルド氏の見立て。
「別居することで、メスはオスからの不要な嫌がらせ(ハラスメント)を受けることなく、必要な時だけオスと交尾し繁殖できる上、たくさんいるオスの中から好みのオスを選ぶことができる。オスとしても繁殖の準備が整ったメスに巡り合うことができる。
すなわち、別居とは、雌雄が物理的に距離を取ることで、平和的に性的対立を解決し、ベストカップルを誕生しやすくした自然の営みなのである」
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する