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オーディブルはアイザック・アシモフ『銀河帝国興亡史Ⅰ ファウンデーション』の続き。
アナクレオンの若き王レオポルドの戴冠式に招かれたサルヴァー・ハーディンは、摂政のウェニスによって幽閉され、艦隊によってファウンデーションを攻撃すると脅されるが、ハーディンがタネを蒔いた科学宗教、宇宙霊を信奉する司祭と教会組織のネットワークはすでに毛細血管のように張り巡らされ、原子力(≒電力)というインフラまで支配下において、アナクレオン社会の生殺与奪の権利を握っていた。社会に広く張り巡らされた宗教ネットワークが世俗権力と対立する構図は、キリスト教の騎士団か、あるいは日本の源平時代に跋扈した寺社勢力、僧兵を思わせるが、なんのことはない、アシモフは『ファウンデーション』を書くにあたって、ギボンの『ローマ帝国衰亡史』を大いに参考にしたという。預言者ハリ・セルダンはキリストを、セルダンの教え(将来第二銀河帝国の再興)は神の再臨を思わせて余りあるが、それは、キリスト教に侵食され、イスラム教によって滅ぼされたローマ帝国の栄枯盛衰を下地にしているから当然だろう。だが、ハリ・セルダンの予測が正しければ正しいほど、それは暗黒の中世の到来を想像させる。いずれどこかの段階で、人々が神の命令に背き、あるいは、その圧力から逃れ、自分たちの自由意志を取り戻すルネサンスがやってくるのではないだろうか。
ハーディンの深慮遠謀によって、アナクレオンによるファウンデーションに対する攻撃(ファウンデーションの第二の危機)は未然に防がれた。そのタイミング(ハリ・セルダンの死後80年)で時間霊廟がふたたび開き、ハリ・セルダンが現れた。
「われわれの計算によれば、諸君は今ではファウンデーションを直接取り巻く野蛮な諸王国を支配する段階に達しているはずだ。最初の危機の時に、〝力の均衡〟を利用してかれらを撃退したと同様に、第二回目の危機では世俗的権力に対して宗教的権力によって支配権を得たものと思う。
(中略)この宗教的権力は、世俗的権力の攻撃を逸らすのには充分であっても、こちらから反撃するのには充分でない。なぜなら、地方主義とか、民族主義とかいう名で知られる反対勢力が絶えず成長してくるので、宗教的権力は優勢を続けることができないのだ。もちろん、これは決して新しい説ではないがね。
(中略)この場合、ファウンデーションは新帝国に通じる道の出発点に立ったばかりにすぎない。近隣の諸王国はきみたちと比較して、人力と資源においてまだ圧倒的に強力である。かれらの外側には、野蛮という広大な鬱蒼と茂ったジャングルがあり、それは銀河系全体に広がっている。その境界の内側に、まだ銀河帝国の残党が残っているーーそれらは弱体化し、頽廃に向かっているとはいえ、まだ比較を絶するほどの力を持っている」
「そして、80年前に、もうひとつのファウンデーションが設立されたことを、決して忘れてはならない。銀河系の反対側の端の、〝異界の果て〟の、ファウンデーションを。かれらがあそこにいることを、常に考慮に入れなければならないだろう。諸君、きみたちの前に920年の〈プラン〉が続いている。問題を解くのはきみたちだ! さあ、着手したまえ!」
第4部「貿易商人」より。
「正しい事をするのを、決して道徳観念に邪魔させてはならない!」というサルヴァー・ハーディンのモットーを受け継いだ貿易商人たちが、ファウンデーションの宗教的権威が及ばぬ辺境の地を旅していた。かれらは原子力(とそのコントロール)というファウンデーションのパワーの源泉を、宗教的権威を借りることなく、商売のネタとして、各地に売っていった。いったんその力に取り込まれた辺境の星系は、ファウンデーションの権威を受け入れざるを得なくなる。一度贅沢を知ったら、ぞれ以前の生活水準に戻れないのが人間だから。
第5部「豪商」より。
アーゴ家に支配されるコレル共和国という名ばかり共和国の領域内で1年間に3隻もの貿易船が姿を消した。ファウンデーションの知らないところで、コレルはどこかから原子力を調達している疑いがかけられ、その真相を探るために貿易商人ホバー・マロウが派遣される。宗教的権威が失墜したあとを受けるのは、疲れを知らぬ商売人たちの「利己的な欲求」ということか。それぞれが利己的に動き続ければ、やがて「神の見えざる手」が働いて市場は勝手に均衡する?
「われわれはセルダン危機のまっただ中にいるんだよ」
「銀河帝国は外縁部を放棄し、また、われわれもいまだかつて原子力を持つ敵に遭遇したことがない。今度、初めてそのような敵に出会った。これがたとえ孤立した事件だとしても重大な意義があるように思われるが、これは孤立した事件ではない。70年以上たって、われわれは初めて大きな国内的な政治危機に直面している。この内部と外部の、二つの危機が時を同じゅうして起こったことで、すべての疑いは消し飛んでしまうと、わたしは思う」
「その危機(第3のセルダン危機)は近づいている。どんな馬鹿でも危機がくれば、わかる。国家に対する真の奉仕はそれが胎児のうちに探知することだ。いいかい、マンリオ、われわれはあらかじめ計画された歴史を歩んでいる。われわれはハリ・セルダンが未来の歴史的確率を算出したことを知っている。いつの日かわれわれは銀河帝国を再建することを知っている。それには千年くらいかかると知っている。そして、その間に一定の危機に直面することを知っている。
さて、ファウンデーションが設置され50年後に最初の危機がきた。そして、それから30年後に二番目のやつがきた。それ以来75年になろうとしている。もうその時期だよ、マンリオ、もうその時期だよ」
「原子力という外来の脅威に立ち向かうことができるようになるには、まず、自分自身の家の中を整理しなければならない。あれらの貿易商人たちはーー」
「そう、あれらの貿易商人たちがねえ。かれらは役立つが、力が強すぎるしーーそれに、あまりにも統制がきかない。かれらは外来者であり、宗教と切り離された教育を受けている。われわれは一方ではかれらの手に知識を押しこみ、もう一方で、もっとも強力な手綱をかれらからはずしてしまった」
「もし、裏切りが証明されたら?」(とマンリオ)
「そしたら、直接行動が簡単にして充分な方法だ。しかし、そんなことはたいしたことじゃない。たとえ、かれらの中に裏切りが存在しなくても、かれらはわれわれの社会の中の、一種の不穏分子となる。かれらは愛国心や共通の血筋はいうまでもなく、宗教的畏れによってさえも、われわれと結ばれていない。ハーディンの時代以来われわれを〝聖なる惑星〟と仰いできた外部領域は、かれらの世俗的リーダーシップのもとで、離脱するかもしれない」
「至急、対策を講じなければならないね、セルダン危機が激化する前に。もしも、原資兵器が外にあり、人心の離反が内にあれば、由々しき事態だよ」
マロウはコレルの主席アスパーと会合を持つことに成功し、自由貿易という名の取引をもちかける。
「あなたがたはいつも、あまりにも理不尽だ。われわれの経済が耐えうるかぎり、わたしはあらゆる貿易に賛成です。しかし、それはおたくの言いなりになるということではない。私はここで唯一の主人ではないのです」「わたしは大衆の意見のしもべなのです。わたしの人民は、緋色や黄金色にきらめく商業は受け入れないのですよ」
「強制的宗教?」
「結果的にいつもそうなります。20年前のアスコーンの場合を、きっと覚えておいででしょう。最初、かれらはおたくの商品のいくらかを売りつけられた。それから、それらの品物が正しく使われるように、宣教師の布教活動の完全な自由をあなたがたは要求した。つまり、〝健康の神殿〟を設立させろと。それから、宗教学校が設立され、宗教関係のすべての職員の自治権を獲得した。その結どうなりました? アスコーンは今やファウンデーション組織の完全な一員になり、あそこの大君主は自分の下着さえわがものと呼ぶことができなくなっている。まっぴらご免です! 独立人民の尊厳はそのようなことを絶対にたえ忍ぶことはできません」
「わたしが申し上げようとしていることは、そういうことではありません」
「違う?」
「はい。わたしは主任貿易商です。金がわたしの宗教です。あのような神秘主義や宣教師どもの奇術はまったく困ったものです。あなたが好意を示すのを拒否されたことは、喜ばしいことです。これでわれわれが馬が合うことがわかりました」
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