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オーディブルはアイザック・アシモフ『銀河帝国興亡史Ⅰ ファウンデーション』が今朝でおしまい。
コレル共和国の兵士がもっていた原子銃には「宇宙船に太陽」のマークが入っていた。銃の出処は銀河帝国だった。中心部ではまだ帝国が命脈を保っていたのだ。ホバー・マロウは銀河系の中心部?にあるノーマ星区の以前の首都シウェナに忍び込み、そこの原子力システムの現状を確認する。かれらには都市や船を守る巨大な原子力シールドはあるが、ファウンデーションのように一人の人間を守る極小の原子力シールドはない。それは、天然資源(金属や石炭、石油など)をもたないターミナスでは、巨大な原子力装置などをつくることができなかったからだ。だから、自分たちのリソースに合わせて、技術を最適化するしかなかった。しかし、そのことが技術革新を生み、帝国全体を覆った重厚長大な技術的停滞から自由でいられた理由でもあった。
マロウをコレルに派遣した政治家ジョレイン・サットは、ハーディン由来の宗教政策の信奉者だった。だが、商人のマロウにとっては、それはもはや時代遅れの遺物にすぎなかった。
「もうだめなんだよ」「そいつは時代遅れの、危険な、不可能な政策になっちまったんだ。あんたがたの宗教が〈四つの王国〉でどんなにうまくいったとしても、その他の辺境の世界ではほとんど受け入れられていない。われわれが〈四つの王国〉の支配権を握った時に大勢の亡命者が出て、その連中が、サルヴァー・ハーディンが司祭階級と民間の迷信を利用して、その世界の独立と、世俗の君主の権力を転覆させたという話を広めてしまったんだ。これでも足りなければ、20年前のアスコーンの例もある。今や、辺境の支配者で、ファウンデーションの司祭を自分の領土に入れるくらいなら、自分の喉を掻ききったほうがましだと思わないやつは一人もいないぞ。
コレルであろうと、他のどんな世界であろうと、かれらの望まない物を無理に受け入れさせるなんてことは、ぼくは賛成できない。ご免こうむるよ、サット。もし原子力がかれらを危険にするというなら、憎まれている外国の宗教勢力の優位性を頼りにした、不安定な大君主制度よりも、貿易を通じた真面目な友情のほうがよっぽどましだ。そんな制度はいったん、ほんのすこしでも弱体化すれば、たちまち全部崩壊してしまって、後には不滅の恐怖心と憎悪以外には、実のあるものは何ひとつ残らないだろう」
サットは、マロウが助けを求めてきたファウンデーションの司祭をコレルの怒れる群衆に引き渡し、されるがままにしたという疑惑をタネに、裁判闘争に持ち込む。証人は、かれがひそかにスパイとして送り込んだジェイム・トゥワーだ。しかし、海千山千の商売人を相手にしてきたマロウのほうが一枚上手だった。コレルで八つ裂きにされたという逃亡宣教師が実はコレルが送り込んだ秘密警察の人間で、かれらの罠だったと証明したのだ。
「検察側はジョード・パーマに関する詳細を提出しないでいますが、それは、できないからなのです。いまご覧になった録画がうさん臭いのは、ジョード・パーマがうさん臭いからなのです。ジョード・パーマなる人物はそもそも存在しないのです。この裁判自体が、まったく存在しない事件をもとにでっちあげられた、最大の茶番劇なのです」
「このように見てくると、検察側のいう事件はいったいどこにあるのでしょうか? かれらはすでに、わたしがこの宣教師のために法に反して闘うべきであったと、そして、わたしの任務も船も、そしてわたし自身をも、ファウンデーションの〝名誉〟のために犠牲にすべきであったと、奇々怪々な示唆を何度も何度も行っております。
しかし、それを詐欺師のためにせよというのでしょうか?
とすると、おそらくアナクレオンの追放者から借りた衣装と呪文で飾り立てたコレルのスパイのために、わたしがそれをすべきだったというのでしょうか? ジョレイン・サットとパブリス・マンリオが、わたしを愚劣な、醜悪な罠に欠けたのでしょうかーー」
マロウは勝利した。そして市長の座についた。マロウの予言通り、2年後に(帝国の力をバックにした)コレルはファウンデーションに対して宣戦布告する。が、マロウは何もしなかった。何もしなくても、コレルの人民は、戦争の継続を望まなかったからだ。なぜなら、かれらの日常生活の隅々にまで、ファウンデーション発の小さな原子力機器が浸透していたから。それらが一斉に停止した状態に長く耐えられるほど、かれらは忍耐強くなかったのだ。
「これはセルダン危機だ。われわれはそれに直面しているのだ、サット。そして、セルダン危機は個人によって解決されるのではなく、歴史的な力によって解決されるのだ。ハリ・セルダンはわれわれの未来のコースを計画した時、華麗な英雄的行為を当てにせずに、経済学と社会学のとうとうたる流れを当てにした。だから、種々の危機は、その時どきに利用可能になった力によって、解決されるはずなのだ。
この場合はーー貿易だ!」
「いいかね、きみ、帝国は何も補給することはできないのだ。帝国は常に広大な資源の王国だった。かれらは何もかも、惑星群の規模で、星系群の規模で、銀河系の全星域の規模で計算してきた。かれらは途方もなく巨大な規模で物事を考えた。だから、かれらの原子炉は途方もなく大きい。
しかし、われわれはーーわれわれ小さなファウンデーションはーーほとんど金属資源のない単一の世界はーー非常識な経済で仕事をしなければならなかった。われわれの原子炉は人の親指ほどのサイズでなければならなかった。なぜなら、せいぜいそのくらいしか、金属を使うことができないからだ。われわれは新しい技術、新しい方法を開発しなければならなかったーー帝国が追従できない技術や方法をだ。なぜなら、帝国は真に生命力のある科学的進歩をすることができる段階を超えて、退化してしまっているからだ。
かれらは一隻の宇宙船を、ひとつの都市を、ひとつの世界全体を守るのに充分な大きさの原子力シールドを持っていながら、一人の人間を守るシールドをついに作ることができなかった。ひとつの都市の光熱を賄うために、かれらは六階建てのーーぼくは見たことがあるーーモーターを持っていた。われわれのものはこの部屋の中に入るのにね。そして、かれらの原子力専門家の一人に、くるみほどの大きさの鉛の容器に原子炉が入っていると、ぼくがいったら、そいつはその場で憤慨して窒息しそうになった。
おい、かれらはもはや自分たちの巨大技術すら理解できなくなっているんだぞ。機械は自動的に世代から世代へと動き続けている。そして、保守要員は世襲制のカーストになっていて、あれだけの巨大な構造の中のたった一本のD=チューブが焼き切れただけで、お手上げになってしまうんだ。
この戦争全体は二つのシステムの間の闘いだ。帝国とファウンデーションとの。大きいものと小さいものとの。かれらはひとつの世界の支配権を握るために、賄賂として、戦争はできるが経済的意義のまったくない巨大な宇宙戦艦を贈る。われわれはそれと反対に、戦争には役立たないが繁栄と利益に不可欠の小さな物を、賄賂に贈る。
王も、主席も、宇宙船を取り、戦争さえもする。歴史全体を通じて、専制的支配者は常にその臣下の幸福と、かれらが名誉、栄光、征服と考えるものとを、交換してきた。しかし、ものを言うのは、やはり生活上の小さな物なのだーーそして、アスパー・アーゴは2、3年のうちにコレル全土を席巻する経済不況を無視して、無茶をすることはできないだろう」
「今ここでサットに言わなかった事が、いくつかある。かれは外部世界でやったように、宗教の力でファウンデーションそのものを支配しようとし、そして失敗したーーこれはセルダンの計画の中で、宗教の力が尽きたもっとも確実な兆候だ。
しかし、経済的支配は別の作用をする。そして、有名なサルヴァー・ハーディンの言葉のきみの引用を、言い換えれば、両側に向かない原子銃は良い武器ではない、ということになる。もしこれるがわれわれの貿易で繁栄するとすれば、われわれも繁栄する。もしコレルの工場が、われわれと貿易ができなくなって、だめになれば、そして、もし外部世界の繁栄が、商業的孤立によって消滅するなら、同様にわれわれの工場もだめになり、繁栄も消滅する。
そして工場も、貿易の中心地も、輸送ラインも、ぼくの支配下にないものはひとつもないし、ぼくが握り潰すことのできないものはひとつもない。たとえ、サットが革命的宣伝を試みたとしてもだ。どこであろうと、かれの宣伝が成功する場所では、いや、成功しそうに見える場所でさえも、繁栄が消えることを思い知らせてやる。かれが失敗する場所では、繁栄は続く。なぜなら、ぼくの工場の職員が無傷で残るからだ。
だから、コレルの人民が繁栄にもとめて叛乱を起こすことを確信するのと同じ理由で、われわれが繁栄にそむいて叛乱を起こすことはないと、ぼくは確信するのだ。徹底的に競争してやろうじゃないか」
「それでは」ジェイルがいった。「きみは金権政治を打ち立てようとしているのだな。きみはここを、貿易商人と豪商の国にしようとしているのだな。それで、未来はどうなるのだ?」
「未来など、おれの知ったことか? セルダンが予見して準備をしてあるに違いない。今、宗教の力が死んだように、将来、金の力がなくなった時にまた別の危機が発生するのだろう。今日おれがそのひとつを解決したように、それらの新しい問題は、おれの後継者に解決させるがいい」
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