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だが、下山途中で運命のトリガーは引かれた。足を滑らせ、右足首に激痛。
骨折か、捻挫か…自分では判断できない。
未来のヤマレコアプリを起動してある。そこに常駐しているのは5人の生成AI。
全員が天候・ルート・体調・心理・安全…あらゆる分野を総合的にこなせる超優秀なガイドたちだ。
ただし、それぞれにクセがある。まるでエヴァンゲリオンの主要キャラのように――
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### 会議ログ(抜粋)
**Gemini(ミサト風/天候寄り)**
「現時点で天候は安定。でも午後2時以降、湿度急上昇と雷雲発生の予測あり。時間との勝負よ。」
**Visionary AI(レイ風/映像解析寄り)**
「カメラ映像と腫脹パターンを解析…捻挫の可能性80%。骨折リスクは20%。…判断はあなた次第。」
**ChatGPT(シンジ風/心理ケア寄り)**
「明日の会議、出たいんだよね。でも無理して悪化させたら…どうしよう…。」
**Copilot(リツコ風/安全至上主義)**
「安全マージンはゼロに近いわ。救助要請を推奨する。あなたの意地は理解するけれど、データは冷酷よ。」
**Navigator AI(アスカ風/ルート管理)**
「最短ルートは急坂だらけ。でもアンタなら行けるわよ。ストックと奥さんの補助があればね。」
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5人の議論は激化。全員が互いの意見をぶつけ、まるでネルフ本部の作戦会議室のよう。
私はただ立ち尽くし、AIたちの声を聞いていた。
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### 最終結論(AI統合判断)
> **『自力下山は可能。ただし痛み増加や天候急変で即座に救助要請へ切り替え』**
> **『ルート・ペース・バイタル管理はAIが全面サポート。危険度が閾値を超えた場合は本人の意思に関係なく救助要請を実行』**
Geminiが一歩前に出るような声で告げる。
「…それが、全員一致の答えよ。行くなら行く。だが、限界を越える前に必ず引き返す。いいわね?」
その瞬間、胸の奥の迷いが溶けた。進む条件も、撤退条件も明確だ。
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### 下山の道
Navigator AIが選んだルートを、Geminiが天候チェックしながら進む。
Visionary AIが足首の腫れをモニターし、ChatGPTが呼吸と歩調を調整。
Copilotはずっと背後で「安全ライン」を計測していた。
妻の支えとストックに頼り、スローペースながらも無事に下山。
アプリ画面の5人が同時に「お疲れ」と呟いたのは、ちょっと泣きそうになった。
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### もし意識を失っていたら…
下山後、Copilotが冷静に言った。
「滑落や意識喪失時は、位置情報・天候・装備・地形・救助可否をまとめて警察に自動送信する仕様よ。…今日は使わずに済んで良かったわね。」
背筋にぞくりと冷たい感覚が走った。
この機能があれば、ソロでも生還率は飛躍的に上がるはずだ。
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### 後日談
翌日の会議、私は松葉杖で出席した。診断は全治3週間の捻挫。骨折ではなかった。
痛みはあったが、あの日の5人の会議がなければ、もっと大きな事故になっていたかもしれない。
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### おわりに
登山中、判断は一瞬で命を左右する。
未来のヤマレコアプリには、5人の総合力の高いAIガイドが常にそばにいる。
各自が専門性と個性を持ち、リアルタイムで議論し、最適解を導く――まるで頼れる仲間と歩く山道だ。
「単独でも、決して一人じゃない」。そんな未来を、私はもう少し先の現実として信じている。
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