山に吹く風は天気図から読みとれる場合もありますが地形的な影響も多分にあります。ほとんどの人は「アーベントテルミック」という言葉は知らないと思います。「モルゲンロートとアーベントロートは知っているけどね…」という感じだと思います。「アーベントテルミック」というのは、森が昼間の間に太陽熱を吸収して夕方になると放出する「静かな上昇気流」のことを言います。この上昇気流は尾根筋に流れていく場合もあります。山小屋のテラスで休んでいると、気付く人は気付く風です。パラやハングをやっている人はご存じの風です。
こういう地形的な影響による風などを“微気象”と言う場合もあります。「海風、山風、谷風」というような言葉を理科の教科書で覚えている人もいるかと思います。しかしながら、これらの地形的な風は現象としては面白いのですが、「風」そのものを理解するのには逆に難しいと私は思う訳です。(難しい話を最初にもってきてすみません。)
--------------------
さて、「風」を理解するために一番いいのは何と言っても台風です。
台風18号が今どんどんと接近しています。南南東の風が現在秒速15メートルで吹いています。
さて、この南南東の風はどこから吹いているのでしょうか?
A:「アホかおっさん、台風からに決まっているじゃん!」
B:「台風から吹いている風じゃないですか?」
ブブー。両者不正解です。
答えというか少し違いますが、「この風は台風に向かって吹いているのです」。
(ね、理解できますよね?)
台風は気流の渦です。お風呂の栓を抜くと渦が出来る時がありますが、そんな感じで台風に向かって風が吹きます。それが暴風になるのです。この暴風は台風から吹いている風ではなく、台風に向かって吹いている風です。
AB:「なぁ〜るほど!」
(と、納得できましたね)
気象庁が発表する天気図は「等圧線」を使って書かれています。(外国の天気予報番組では違う場合もあるようです。) 台風の時の天気図をイメージしてゆっくりと考えて欲しいのですが、台風を中心にして同心円がいくつも書かれています。多くの人はそれを何気なく見ていると思います。そこを一歩進めてください。
台風の時の「天気図を立体視」してください!
地図の等高線を立体視すると地形がより分かりやすくなります。それと同じように天気図を立体視するクセがつくと、気圧の谷や気圧の尾根がより見えてきます。天気図を立体視してみると、低気圧はまるで蟻地獄のような穴に見えてくるかと思います。
風は気圧の高い所から気圧の低い所に流れます!
先ほどの台風の風の質問の答えとして言うなら、気圧の高い所から台風に向かって風が吹きます。風が集まるところに雲ができるという現象も理解しやくなります。
しかしながら、地球が自転をしているために風には「コリオリの力」という力が働き影響されます。そのために、風は等圧線にほぼ平行に吹くようになります。このコリオリの力は海流にも影響しているようです。
あまり難しく考えると意味がないのですが、風が等圧線に平行に吹いていることを利用する方法で、「風を背にして左手方向が台風の方向」というのはご存じだと思います。それを等圧線の中でやればよく分かると思います。
あらためて言うと、風は等圧線にほぼ平行に吹くのです!(地表付近は少しずれます)
3000メートル級の山の稜線に吹く風は晴れている場合はだいたい西風が多いかと思います。高層天気図を見ると一目瞭然です。高層天気図の等圧線を見ると上空に行けばいくほど概ね西風です。700hPaの高層天気図を見ると天気が崩れる前は南西の風になったり、山で吹く風はそこに地形的な風が加わって様々な風になる訳です。
--------------------
登山においては天気は最も重要な要素です。山の天気を気にする時に、出来れば、「天気図を立体視」して欲しいことと、もう一つは、「風向」を意識して欲しいと思います。
山に行ったとき、「この風はどういう風なのか」を考えるのも楽しいものです。
--------------------
またまた、偉そうに知ったかぶりで書いちゃったかなと思いながらプリンを食べるmurrenでした。
ふむふむ
>風は等圧線にほぼ平行に吹くのです
ほぉー、低気圧の中心に向かって吹くって思ってた
でわでわ
uedayasujiさん
よいお答えです
次回から天気予報を見るだけでなく 天気図もじっくり見る事にして 自分でも考えながら計画を練るように使用と思います
続きを楽しみにしています
Bonosukeさん、
これまた良いお答えです
murrenさん、こんばんは。
そうですね、「アーベントテルミック」は、普通発生する条件と時間が限定されていますね。
夕暮れは心身ともに穏やかにしてくれますね。
>3000メートル級の山の稜線に吹く風は晴れている場合はだいたい西風が多いかと思います
確かにそうですね。その風が地球の自転で次第に右に回転し、日本付近では西の風となります。上空では殆ど西の風となっているため雲は西から東へ動き、天気も西から東へ変わっていきます。ただ地表に近い下界では東風などで雲が東から西へ動くことなどもあります。
ところで、murrenさんは気象について詳しいですが、もしかして其方方面の方?
>風は等圧線にほぼ平行に吹くのです
これって、イマイチ良く分かりません。本当ですか?
コリオリの力が働かなければ圧力勾配方向に(等圧線に直交方向に)吹くはずですよね? それが地球の自転の影響を受けて斜めに吹き込むのではないですか? コリオリの力の方が圧倒的に大きいという意味に成るんでしょうか。
なんか「水は等高線に平行に流れるのです」と言われているような感じですが、水と空気にはそれだけの違いがあるのかな?
(私は気象に関してはあまり詳しくないので的外れなのかも知れません)
沢は水の比重が大きいので等高線に直交する方向に流れます。
cprrescueさん、
コメントありがとうございます。
学生時代、私は記録でしたので天気図を書いたり天気予報をする担当でした。その後かなりたってパラグライダーの教員資格もとったりして気象などを勉強して風について真剣に向き合った時代もありますので普通の人よりは少しは詳しいのでこんなことを書いております。
アーベントテルミックは、穏やかな午後、下から見ていて「なかなか落ちてこない」という場合はこれだと思います。均質な上昇気流なのでアクロバティックな旋回などを試すことができるチャンスでもあるんですね。山ではなくてパラの話で恐縮です。
fireboltさんこんばんは。
「コリオリの力」をこの場で説明するのは困難ですし、気象についてコリオリから入ると挫折する可能性が高いので、そういう現象なのだというスタートの方がいいかも知れませんね。
天気図の等圧線を高さに換算したプラスチックの模型で水を流すと水は高い所からストレートに低い所に流れてしまいますね。
ところが、富士山のような雪山を高気圧だと思ってください。そこを私が尻セードで下ります。するとだんだんと下に滑っているつもりが右に曲がっていくのですね。そしてグルグルと富士山を周回するようになります。これが高気圧の周りの風向のイメージです。上から見ると風向は高気圧ですから時計回りになります。
低気圧の場合は、巨大なすり鉢状の地形を尻セードで滑ると考えます。同じように右にずれながら回っていきますが、上から見ると反時計回りになります。
これが南半球の台風(サイクロン)だと反対になります。
これがコリオリの力による影響だという理解にしてください。
地上天気図だと風向は30度ぐらいずれます。地面による摩擦です。これは地上天気図を書く時の知識としては必要です。しかし、高層天気図を見てもらうと分かりますが、上空に行けばほとんど等圧線(高層天気図の場合は等高線)に沿って平行です。
はい、よくできました
fireboltさん、少し補足です。
宇宙空間というか空気がある宇宙船内のようなモデルでもいいですが、ほとんど摩擦がないのでわずかな力でも、その力が加わり続ければ動きとしては大きな影響がおこります。
そういうイメージで、上空の空気の流れ(すなわち風)も、摩擦が非常に少ないのでコリオリの力はわずかですが永続的に続くので極限まで(すなわち等圧線と平行になるまで)いくことになるんじゃないでしょうか。
murrenさん、こんばんは。
>「この風は台風に向かって吹いているのです」
数年前、波乗りにハマッていた時には、まさしくその様な場面を
待ち望んで海に行っていましたね♪
日本海側に高気圧があり、太平洋側の台風が本土に近づく2〜3日前ぐらいに行っていました。
台風に向かって高気圧から流れてくるオフショアの風が波の面をキレイに立たせてくれ良い状態の波が期待でき
テンションが上がっていました
山を始めてからは、テンションが↓下がりますけどね
>「天気図を立体視」
地図を立体視するのはできるんですが・・・天気図・ん〜
本当に、つくづく思いますが天気図を見て天気を読む事は、とても難しいですね!!
> 上空に行けばほとんど等圧線(高層天気図の場合は等高線)に沿って平行です
実際にそうなんですね。高層天気図は難しく、ラジオ短波も上手く取れなかったので殆ど書いたことはありませんでし、忘れていました。
一方で地上天気図は散々書かされましたので30度くらいの角度であることは知っていました。ただ、自転の影響が全くないとすれば「平行ではなく直交」と思います。シンプルな物理現象としては気体でも電子でも「場の勾配に沿って移動する」ので感覚的に納得感が無かったのです。
高層では完全に等圧線と平行に流れてしまうと始終点が一致して「???」となるわけですが、そこは上昇気流があるのでつじつまが合うのか〜
やっぱ、パラをやっておくべきだったか
あ、補足と被ってしまいました。失礼しました。
ryuu88さん、こんばんは。
台風の時にサーフィンにでかけるのですか?クレージーでしたね。まるでハワイの冬のノースショアみたいなかんじなんでしょうか?
天気図というより天気は終わりがないほど難しいと思いますね。
ただ天気図の立体視は私はそんなに難しいことではないと思います。気圧の谷の発見には役立ちますよ。
fireboltさん、補足とは被っていないですよ
流体力学は私は不得意なので単純な物理の力学で考えようとしているのでイメージの説明がむずかしく理解しずらいかも知れませんね。
尻セードの代わりに、ルーレットの玉の方が良かったかもしれません。あれは最初の打ち出しだけ力が横にかかっていますが、回っている間中横に力がかかっているので永久動力みたいになってしまう感じでしょうか。熱力学的には永久動力はありえないので、そこの説明がないと不完全ではありますね。なんかだんだんモヤモヤの深みにはまっていくようですみません。
ちょっとしつこくなってしまったかも知れません。
流体に限らず、物理的な運動と場の力の間にはシンプルな関係が成り立つので、例えば反対の方向(原因と結果を入れ替えてみる)、つまり通常は「風が起きれば風上と風下には圧力差が生じる」はずなんですよね。
でも高層では(自転力を考慮しないと)ぐるっと一周して圧力差は生じない(風上も風下もない?だから等圧?)・・・。何か良く分からないという事なんです。
これが磁場であれば必ずクローズするし、鉛直方向の電流に起因する訳ですが、電流を上昇気流に置き換えると・・・
fireboltさん、遠慮なくどうぞ
もしも地球が自転していない状態だと、自転している状態と何が違うかということは、やはり平面的な大きな渦が出来ないということなんでしょうね。(断面的な渦はできますね)
地球が自転していなくて、太陽の光が赤道上の全ての面から等しく照らしておれば、赤道上で巨大な上昇気流が帯状に発生して巨大な雲ができ、風は極から常に赤道に向かって吹き、つまり赤道上は常に雨の天気になる感じでしょうか?
その状態から地球が回転しだすと、・・・うーーーん、、
本日はここまでですね。ザッツオールフォーツデイ。
初めまして。
懐かしい単語、アーベントテルミックに反応してしまいました。
学生時代グライダーをやっており、
アーベントテルミックにはよくお世話になっていました
50代以上の先輩が主によく使っており、
若い人は英語を使うようになってきたので
久しぶりに聞き懐かしくなりましたよ。
気象のお話、勉強になりました。
その2も楽しみにしてます。
wasabi_oさん、こんにちは!
コメントありがとうございます。グライダーをやっていらしたんですね。
グライダーはパラに比べれば滑空比がバツグンなのでアーベントテルミックはとても利用価値が高いんでしょうね。言葉としてはハング・パラの人はドイツ語をそのまま今も使っていると思います。
グライダーに比べてパラは非常に小さなサーマルを拾えるのでその点を生かせばトンビのようにソアリングが出来るのでその点がいい所ですね。
その2は時をみて書かせてもらいます。
対気速度とかそのあたりの風の話を書けば切りがないですが、そうなると丸でグライダーの座学になってしまうので、そういう中から登山用に選んで書いていこかなと思ったりしています。ま、お恥ずかしながら私の作文の練習みたいですが
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する