“アイスクライミング”とか、”氷瀑登攀”とか、単純に“氷”とも呼んでいるアイスクライミングは、登山の方法の中でも最も「カッコイイ」登り方の一つだと思います。そういう氷瀑を迅速に効率よく登る技術である「ダブルアックス」で登るコツは必ずしも難しいことではありません。すでに春になってしまったので書こうか迷いましたが、写真を見て「スタンスの取り方が変だな」と思うことも多かったので、来季のためにメモしておくことにしました。(昔とった杵柄ですので文章中に間違いがあったら指摘してください。)
【ダブルアックスのコツ】
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1.両足と両手は同じ高さに揃えるといい
氷を登る場合、岩とは違って原理的にはどこにもスタンスやホールドを取ることができます。このことが「氷は、ある意味岩よりもやさしい」とも言われる所以です。両足を同じ高さに揃えることで腕力の負担が大きく減ります。また、墜落の危険性も大幅に減少します。
両足の高さを違うようにして登っていると写真写りは良いのですが、合理的ではないし安全な登攀ではありません。
2.一時的に両手に体重を預けて両スタンスを上げる
出っ歯のアイゼンの爪(ツァッケ)を氷に蹴り込む場合、原則的に右足→左足(反対でもOK)というように連続して蹴り込んでください。その場合、両手に均等に一時的に体重を預ける(ぶら下がるイメージでもOK)ようにして左右のアイゼンを連続して蹴り込み、スタンスを同じ高さにします。
3.「足・足」→「手・手」で登っていく
上記の1と2の説明の通り、右足→左手→左足→右手ではありません。左右どちらでもいいのですが、「足・足」→「手・手」が正しいダブルアックの氷瀑での登り方です。(岩とミックスした場合は異なりますが原則的にはそんな感じです。)
3.踵(かかと)は上げ目
これは意識しなくても自然とそうなっているので大丈夫ですが、岩登りのように意識的に踵を下げる必要はありません。逆に踵を下げるとアイゼンの爪が氷から外れる危険性もあります。
岩登りの場合は、踵が上がっているとアキレス腱が痙攣して「ミシンを踏む」ことになりますのでフリクションを安定させるためにも踵を下げること必要ですが、氷の場合はアイゼンの前爪に立っているので必然的に踵が少し上がっている状態でもミシンを踏むことはありません。(※ミシンを踏む:昔の足踏みミシンというものは足を前後に動かして動力源にしていました。若い人は知らないかも知れませんね。)
どちらにしても、氷の場合は一旦蹴り込んだらアイゼンを絶対にグラグラさせてはダメです。
4.スタンスはほんの少し気持ち開く
これも意識しなくても大丈夫ですが、あまり広いと重心移動の場合にぐらつきます。また、両足を閉じるようにあまり狭いと、蹴り込んでいる「氷」がゴソッと一緒に落ちてしまう懸念もあります。氷の質の状態をよく見てスタンスやホールドを決める必要があります。また、氷に垂直になるようにして足が逆ハの字やハの字にならないようにします。
5.ホールドは高め
これも意識せずに大丈夫です。必然的に高めにアックスなりバイルなりアイスハンマーを振っているかと思います。
岩登りのホールドは基本は目線です。最近のようなフリークライミングでの腕力登攀は腕力を多用しているようですが、どんな登りでも「脚で登ることが基本」です。人間は猿ではありません。両手でぶら下がることは1分も出来なくても脚で立つのは20時間でも大丈夫です。それが脚で登る原理です。それを忘れてしまうと本番で腕力が無くなり泣きを見ることになります。
しかしながら、アイスクライミングでダブルアックスで登る場合はホールドは高めです。これは先ほど書いたように体重を一時的にホールドに預けて両足のスタンスを楽に上げるために必要だし、低い位置に打ち込むには単純に難しいことになります。(だから、ダブルアックスのクライムダウンは難しい訳です。)
6.日本刀の”いあい”の心で打ち込む
私も日本刀の”いあい”はやったことはありませんのであくまでイメージです。
「心が曲がっていると素直に氷に刺さらずに苦労します。」
まぁ、これは冗談ですが、アックスなりバイルのヘッドの重さを利用して振ります。
ゴルフでも手打ちだとぶれます。同じようにアックスを手打ちだと氷に上手に打ち込むことは出来ません。初心者は手がぶれてしまうので氷に跳ね返えさせられてしまう訳です。
“いあいの心”でヘッドの重さを利用して振って「バシッ!」と一発で決めるようにしてください。
どちらにしても、ごまかしはダメです。トップロープで登っていても腕がパンパンになってもゴマカシのクセがつくと命取りになります。
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以上のことを既に体験されている人は分かっているとは思いますが、あらためてイメージで確認してみてください。
氷の楽しさは、夏では登れないような場所でも登れることもありますが、何と言っても氷を登っている「ビジュアルなカッコよさ」じゃないでしょうか?
カッコよく登るには基本は大切です。以上のことを忘れたら、次のことだけでも覚えておいてください。それは「両手に一時的に体重をかけ、足・足→手・手で登り、両手両足を同じ高さに揃える」ということです。これがダブルアックスで氷瀑を登るコツです。
それと、トップロープで「登る」ことだけを練習している人が殆どかと思いますが、ダブルアックスでのクライムダウン(下降)の練習もしてください。これがどれほど難しいかやってみる必要がありますし、そういう状況も本番では想定されるので必要な練習です。
はじめまして
tanosikuと申します。
この日記にぜんぜん関係ないのですが、名前が気になったのでおじゃましました。
私は2010年夏に、ルツェルンコンサートに行きたかったのでスイスをまわりました。
そのとき、インターラーケンに泊まりユングフラウ鉄道でアイガーに上ってきました。
その帰り、シルトホルンへ行きましたが、途中で通った村がミューレンでしたが、名前はここからとったのでしょうか。
ミューレンからみた山頂に雲がすこしかかったユングフラウが思い出されました。
また行きたくなりました。
どうも取り止めもないコメントで申し訳ありません。
おじゃましました。
お恥ずかしい話、murrenさんがこんなレベルの高いかただとは知りませんでした。
murrenさんって、相当レベルの高い山をやられていた(やられている?)んですね。。。
私なんか足元にも及ばない世界です。
そんな方に私のしょうもないレコや日記に暖かいメッセージをいただき、ホント恐縮です
私は結構無謀な山行をしてヒンシュクを買っているようで、最近もそれで嫌な思いをしたのですが、murrenさんのような方に暖かいメッセージをいただけて本当にありがたいと思っています。
murrenさんの日記を読ませていただき、勉強させていただきます
tanosikuさん、はじめましてこんにちは。
そうです。そのミューレンです。
U字谷に落ちるラウターブルンネンの上の村ですね。
私は今年の1月に山レコに登録して、しばらくはyahohoというHNでしたが、途中でミューレンに変更しました。でも、スイスのミューレンに触れていただいた人はtanosikuさんが二人目です。ありがとうございます。
とても素晴らしい所ですよね。私もまた行きたくなりました
Daveさん、おはようございます。
あれ?中国山脈から一時帰国されたんですね?
いえいえ、私なんぞはいいかげんな男です。確かに登山の色々をやったと思いますが凄いなんてことは全然ないです。ただ、やってきたことに自信だけはあります。
それよりも、言いだしっぺの責任感で迅速に権現に登ってしまうDaveさんの行動力は見上げたものだと思います。それに、しょうもないなんて全然違いますよ。面白くてその裏の誠実さを私は読ませてもらっています。
南北アメリカ山脈大縦走は成功させて無事帰国してくださいね
murrenさん、こんばんは。
さすがに、山の事は何でも良くご存知ですね!!
アイスキャンディーを体験した時にインストラクターの方も
「クライムダウンは案外、難しい」とおっしゃっていました。
>ryuu88さん、おはようございます。
下降は岩でも難しいですよね。でも、私たちは下降の練習をよくしましたよ。こういう練習は地味なので普通の人はあんまりやらないですが、テスト岩のような所でボルタリングでも下降を意識して練習するといいと思いますね。
レクチャーというより習うより慣れろですね。そういう中でポイントを聞いて体得すれば一生ものの技術になります。慣れるという意味では、私も近所のお寺の石垣を使ってアイゼンワークを練習していました。最近の技術は岩とのミックスでの岩場でもダブルアックスなので、こういうローカルな場所でもダブルアックスの練習はいいかも知れません。
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