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その事故の原因に触れるつもりはないのですが、落石について少し考えてみたいと思います。
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落石は、食中毒、雷とともに夏山の危険の最たるものである。実際には、岩がゆるむ春山や、霧などが自然落石を誘発させる秋も落石は多い訳であるが、一般登山者が多い夏山は人為的な落石による事故の危険が高い。
正直なところ、落石事故を予防する考え方は一つだけである。
「落石の発生しそうな場所には行かない」。“君子危うきに近寄らず“ということだけである。コタツの中で寝ている安全理論と同じである訳だが、それ以外に確実に予防する方法はない。鮫よけのような鉄格子の中に入って登山する訳にはいかない。ヘルメットは効果はあるだろうが完璧ではない。
・稜線ルートに比べれば沢筋やガレ場を通るルートは落石が多い。
・上に一般ルートがある下のルートは人為的な落石が多い。
・人が余り入っていないルートは自然落石が多い。
・雨の日や霧の日は自然落石が多い。強風時にも落石は多い。
・雪崩れと同様に、春山では暖かい日は自然落石は多い。
・土日祝日は人為的な落石が多い。
・動物による落石もある。
落石というと、やはり、私は、北穂の滝谷を思い出す。
滝谷を登る場合は、普通は北穂の頂上から取り付きまで下り、そこから岩登りのスタートとなる訳だが、その最下部のあたりが落石の巣になっている。カキーンとかビューンとうなり音を立てて大小の落石が降ってくる。当たってもおかしくないのでビビってしまう。正直なところ、生きるか死ぬかという点においては滝谷は下部が核心部である。今でもそう思う。上部のドームなどは空が抜けているので快適な岩登りが楽しめるが、下部で落石に当たって死んだら悲惨である。
特に夏山の場合、落石の多くの原因は「人為的なもの」である可能性が高い。
春の連休ではあるが、私は大キレットを槍側から北穂に登っている時に他人が発生させた落石で本当にギリギリ死にそうになったこともある。落石を起こした張本人は何も言わなかった。私の仲間が「ラーク!」と大声をあげた瞬的に岩陰に避けたので命拾いをした。その登山者に対しては、すれ違いざま、にらみつけてやったことを覚えている。今なら説教をしていただろう。
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ともあれ、人為的な落石の場合、石を落とした本人は分かっている筈である。
下に登山者やクライマーがいることを知っていて、なおかつ、落石を発生させても何も言わない場合は重大な犯罪行為に匹敵すると私は思う。このようなことでの裁判は知らないが、裁判になってもおかしくないと思う。
自分が落石を発生させたら、間髪を入れず「落石!」と大声で叫ぶ。「らくせき」という発音は、「らくせーきっ!」でもいいし、「らくせきー!」でもいいし、私は「ラーク!」が多い。
大声であることが肝心で、こういう場合の大声は言語には関係なく万国共通の注意喚起となる。
もしもであるが、落石を発生させたことが責任問題になるのを心配して何も言わないとしたら、登山者たる資格はこれっぽっちもない。こんな人間は山には絶対に入ってほしくない。ゴルフでも「ファー」と叫ぶ訳である。もしも大声を出さなければそれこそ重大な責任問題と考えるべきである。(※おそらく、ゴルフの「ファー」は万国共通かも知れない。)
また、どのような落石でも、それを発見したら誰でも大声を上げてほしい。雪崩の場合も同じである。
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落石を発生させやすい場所で落石を発生させない歩き方もある。
山歩きに慣れてくると、浮き石を踏んだりして、足を上げると落石しそうなことが分かることがあると思う。そうした場合は、しゃがみこんで手で石を抑えて落石を発生させないようにして欲しい。また、ザレ場やガレ場のような場所ではいっそのこと後ろ向きでクライムダウンする方が落石の発生を減らせる場合もある。そういう場所では静かに体重を石に掛けてほしい。今流行りのストックでも落石を発生させないように注意して欲しい。
もしも、目の前を落石が飛んで来たら、これは目で見て避けるしかない。頭部には絶対に当たらないようにするしかないだろう。そうやって落石を避けたことは私は何度もあるが強運か弱運かで運命は分かれるかも知れない。パーティを組んで何人かで登っているときは、やはり危険個所では常に誰かが見ているような配慮は必要だと思う。単独者なら落石の危険がある場所では特に素早く通り過ぎることが肝心だと思う。
マッターホルンの北壁を登ったことのある女性から話を聞いたことがあるが、昔の話、北壁には山羊が住んでいて山羊が石を落とすそうである。非常にフラストレーションがたまり危険に満ちていたと聞いたけれど、動物なら仕方ない。日本でも猿やカモシカなどが落石の原因となる場合もあるそうである。
動物なら仕方ないけれど、人間なら、何はともあれ、自分が落石をしたら、間髪をいれずに「落石!」と大声で叫んでほしい。
落石をしない歩き方のお願いと共に、私からの切なるお願いです。
近畿の山で落石にあたりそうになったことがあります。
上部が登山道で沢を登っていたときでした。
5m手前に30cmほどの石を筆頭に10個ほどゴツンという感じで堕ちてきました。
少し足が早ければ・・と想うとぞっとしました。当初登山道を疑いましたが、わたしの場合は自然落石のようでした。
沢のゴロ石を見ながら進んでいるときに上を見る余裕はなかったしまさかそこで落石に会うとも予想しませんでした。
三年前の夏でした。
こういう事故って防げるのでしょうか・・
人為的な落石はたしかに叫ぶことで回避可能なのかもしれませんね。
でわでわ
こんにちは。いつも貴重なご意見を拝見いたしております。
以前、(3月頃?)埼玉県の両神山の山頂で中型の犬を放している方がいました。
僕達は山頂でも嫌な気分だったのですが、下山はじめて間もなく登ってこられる10名位の団体に道を譲るため斜面に身体を除けていました(皆さん60代くらいの男女)。
ピーク手前の急面で道を譲るのも苦労するくらいの道幅です。その登山道の10mくらい上の斜面を先程の犬が走りまわっていたのです。
案の定、犬が落石を発生。急斜面を人の顔の半分くらいはあると思われる石が団体をめがけてゴロゴロ転がっています。
もちろんすかさず「ラーク!」を連呼。最後尾の女性の1mくらい後ろを転がっていきました。
団体さんは全く落石に気付いておらず、ラーク!の声でキョロキョロするばかり…当たっていたらかなり大事かと思われました。
僕はゴルフは下手ではない方なのですが、他人の打ったボールが脇腹を直撃した事があります。
打った本人とそのパーティーはファーの声はありませんでした。
ゴルフは下手な人ほど打った球を曲げ、危険であり、そういう人ほどファーの声をあげません。
言わば危険極まりない下手クソなのですが、murrenさんの言われる、落石をしない歩き方のできない山屋さんと似ているのかな、と思いました。
自分は山は素人の域なので、キチンと落石をしない歩き方を心がけようとmurrenさんの日記を読んで思いました。
今日もためになる座学、ありがとうございました。
でわでわ
uedayasujiさん、こんばんは。
>こういう事故って防げるのでしょうか・・
防ぐことは難しいと思いますね。ただ、落石の可能性が高い場所は上を時々見ながら歩くようには私はしています。小さな沢やガレをトラバースするときもそうです。
実際に落石が当たった仲間がいると帰り道では「運命論」みたいな話が出ることがありました。いわゆる強運の星に生まれたかどうかという運命論です。落石ばかりは登山は危険をともなうスポーツという言い方になってしまいますね。
人為的な落石が多い場所や自然落石が多い場所も情報としては記録されていることは多いので、そういう有名な場所はルートとして避けるとか要注意ということでしょうね。
pantetsuさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
きっとpantetsuさんはゴルフがお上手なんでしょうね。
私が登山を始めた若い頃の指導書には、「落石が発生しやすいガレ場では、猫のように歩け」と書かれていました。研究熱心だった私は近所の猫を観察しましたが正直なところよく分かりませんでした。確かに犬は落石をしやすいですが猫は抜き足差し足が上手かもしれません。
犬を山に連れて行くのは否定はしませんが、落石を発生させて事故が起こるような場所では飼い主の責任問題以前に、そういうルートを考えてもらいたいですね。
今回で私が一番言いたいのは、落石の掛け声です。
自分が落としたという責任をしっかりと大声で表現してもらいたいと思う訳です。そういう意識があれば、落石をしないような歩き方が自然とできるようになってくると思う訳です。それだけの意識があれば既に初心者の粋を出たとも言えると思う訳です。
今回のお話もまたまたとても大切なお話です。
私が今の師匠について山に入るようになって一番最初に教えていただいたのが、落石を起こさない歩き方を身につける事。
一緒に山を歩くとき、ガレ場に差し掛かると必ず「絶対に落石を起こすな。」と、しつこい位言われ続けました。
今までに二度ほど他の人の落石に巻き込まれたことがあります。
一度目は奥穂〜西穂の縦走中。
前を歩いていた単独男性が踏み跡がしっかりあった誤ったルートを行ってしまいました。すぐ後ろを歩いていた私もその後をついて行ってしまい、その男性が手をかけた大きな岩が突然崩れてしまいました。
私の肩の横すれすれを頭大ほどの大きな岩が落ちていきました。
岐阜県側は切れたった崖でしたので、ほんの10cmほどずれていたらそのまま奈落の底でした。本当にぞっとしたものです。
男性はそのまま登って行きましたが、私たちは岩をトラバースして正規のルートに戻り無事に山行を終えることができました。
また、もうひとつは北鎌を歩いた時。
上を歩いていたガイドパーティーから落石を受けました。その時は私は落石に気付かずに前を歩いていた師匠がわずかな落石の物音に気付き、すぐに「頭を山側につけろ!」と私に叫びました。すぐに頭を山側にピタリとつけたものの、足はそのままの場所に残っていました。
その足の上にその落石が直撃しました。こぶし大ほどの石でしたが、上のルートからかなり離れていたので頑丈な登山靴を履いていたにもかかわらず、真っ青なアザになってしまいました。その時よけていなければ頭に直撃していたことでしょう。ヘルメットをかぶっていましたが、きっとヘルメットも壊れてしまったと思います。
師匠は上のパーティーに向かって思い切り怒鳴りつけました。
まだまだそういった物音に気付かない私は未熟です。
そんな経験から改めて自分自身がいかに落石を起こさないような歩き方を身につけなくちゃと思いました。
もちろん、誤って落としてしまうこともあるかもしれません。その時は絶対にラーク!ってすぐに叫べるように普段から頭に入れて歩きたいと思います。
murrenさん、こんばんは。
S氏には、以前に私の所属する山の会の学術集会で「セブンサミット」の特別報告をして頂いたのに、誠に残念でなりません。
謹んで哀悼の意を表します。
>特に夏山の場合、落石の多くの原因は「人為的なもの」である可能性が高い
そうです、殆どではないでしょうか?要因のひとつに慣れない登山者が遅れまいと、必死に後を付いていく場合や、疲労の蓄積で脚が思う様に運べない等々ありますね。浮石には特に気を付けて下さい。
murrenさんの、言う様に「叫ぶ」事が最も重要では。
murrenさん、こんばんはー^^
いつも 【座学】講座には "納得"することが多いです。
※というか、知らない事が多いです
これからも、宜しく お願いします
mitukiさん、こんばんは。
少々長くなりますが辛抱して読んでくださいネ
mitukiさんのような女性には失礼かも知れませんが、小さな物音に気付くのは狩猟時代から女性より男性の方が優れているとされています。「話を聞かない男、地図が読めない女」にそのあたりのことが書かれていますが私もなるほどと思っています。ただ、訓練で変わるだろうし、連れて行ってもらう気持ちから自分が連れていく気持ちに変わると周りの状況は全く違って感じられるとは思います。
落石が発生して、その対応は、瞬間的な動作で運命を分けると思います。山側に身を寄せることもセオリーですが瞬間的に頭を避ける場合は落石を正視する必要があります。ところが、雪崩のような場合は正視することなく一目散に逃げることも必要です。どちらかいうと人間は正視すると止まってしまいます。このあたりは運もありますが機敏な反射神経と判断力は山慣れで養うしかないと思います。がんばってください。
落石は雪渓を音も無く滑ってくる場合もあります。多くの人が落石の通り道の雪渓上を歩いている時、それを疑う必要もあります。必要以上に疑って山肌に近い場所を歩くと、ベルクシュルントに落ちてしまい、10年間雪渓の下から出てこないこともあり得ます。山には危険が満ちていますね。
クライマーなら落石をした場合は声を上げることは慣れていますのでmitukiさんレベルなら問題ないと思いますが、そういう落石現場に遭遇しておかしな人がいたら適切に注意をしてもらうようにお願いします。
キレットを含め北鎌尾根や奥穂西穂間のような難ルートでは、上部や下部のパーティーのレベルも頭に入れておく必要がありますね。岩登りの本番でも同じです。私は春だけで夏の北鎌は挑戦したことはありませんが、それにしてもmitukiさんのご師匠さんは難ルートの経験を上手にさせる計画性は本当にご立派と思います。
あと、なんか思ったのですが、忘れてしまいました
そうだ、私たちは落石の発声訓練もしたことがありますよ。一般の人がそこまでする必要があるかは別として、初心者のうちは適切で大きな声(わかりやすい声)が出にくいので、そういう訓練に似たことは普通の登山者でも必要かもと思ったりしています。
cprrescueさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
そうなんですか、お気持ちを察します。
そういえば、大昔ですが、槍の穂先でも大規模な落石事故がありましたね。富士山もですね。それが自然落石だったのか人為的なものが引き金だったのかは記憶が飛んでいますが、夏山の場合は人為的な落石が多いのは確かですね。
落石の危険は不可抗力に近い場合もありますので、こういうところに書くには声を上げてもらうというお願いが一番いいと思ったので書いてみました。これからも色々と教えてくださるようにお願いいたします。
hayakazeさん、こんばんは。
hayakazeさんはいつも私の日記を読んでいただいて嬉しいです。ヤバいような内容のもの(腐った肉とか)もありますが、根は真面目なつもりでやっていますので、ある程度は信じてみてください
ただ、これはナイショですが、私の作文練習のつもりでもありますので私が一番気にしているのは実は分かりやすい文章という意識です。分かりにくかったら質問していただければ幸いです。誤字脱字はご容赦願います。
murrenさん、はじめまして
子供の1m前に石を落として無視決め込まれたので、駆け上がって怒鳴りつけたことがあります。ガレ場でストック使ってましたね
そうはいっても最近は子供の方が石落とさずに歩いている気が
ところで、雪山で下方に雪ダンゴを落としてしまったときにはどのように声かければ良いのでしょうか?
1955さん、はじめまして。
落石でなくても、階段の擬木でも氷柱のような氷の塊でも何でも「ラーク」でいいです。私が書いているように「注意喚起」が重要なので、「危なーい!」という言葉でも何でもいいです。
雪団子がどの程度のものか判然としませんが、あまりにも軽微なもので何ら問題のない場合はふざけているのか分かりません。そのあたりは感覚で分かるかと思います。そういう感覚すら分からないというのなら、1955さんのことじゃなくて一般論ですが、他の危険に対する感覚も鈍いことになるので要注意ですね。まあ、センスを磨くのも登山技術の向上ということになるかと思います。
はじめまして
我々も、「ラーク」「ラ・クー」と大声を出すことにしています。
なぜ自分に、このような癖がついているのか?は思い出せません・・・
(読んだこと・見たことがありません。教えられた記憶もありません・・・)
fuararunpuさん、はじめまして。
教えられたことでもないのに発声できるというのは不思議ですね。本能ですか?まさかですね
話は違いますが、日本人が海外で溺れて、「たすけてぇー」と大声だ叫んだら、「Help me〜」と聞こえたそうです。
それはどうでもいいのですが、注意喚起が目的ですので大きい声を出すのがポイントですね。
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