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TARASO南壁(たらそなんぺき)の別のルートの挑戦である。
懸垂下降や登り返しの技術的な準備は出来た。あとはやるだけだ!
やろうと思ったら体が熱くなってきた。燃える男…?

薄着であったけれど体温計で計ってみたら37.2度もあった。平熱は36.4度ぐらいなので久々に闘志が燃えている。それか、風邪を引いているのかな?
万一の事故に備えて救急車で運ばれても恥ずかしくないパンツ(下着)を穿いた。
ハーネスにカラビナ、シュリンゲ、ハンマー、ハーケンなどを付けて車に乗り込む。
お祓いの意味で塩と酒も用意した。
お酒はちょいともったいないけれど関谷醸造の「空(くう)」をちょびっとジップロックの袋に入れた。
現場に着いた。
核心部は上の駐車場から林に降りる道だ。
こんな場所でこんな恰好で人に会うとバツが悪い。ましてや近所の人に見られると最悪になる。「とうとう来たか」と言われるのが落ちだ。
それはどうやら免れた。やれやれ。
樹林の中、先日の偵察で付けた白いテープをたよりに新しい下降点まで来た。
海からの風が吹き上がっていた。
丈夫な木にダイニーマのテープスリングを掛け、アンカーとした。それをバックアップとして石切り場時代の鉄のアンカーに同じように8の字でザイルを掛けた。そういう時はインライン8の字がいいのか分からないが、まあどっちでもいいのだろう。
ザイルが岩角で切断してはいけないので着ていた安物のジャンパーを脱ぎ、ザイルに巻いた。
別の木をアンカーとして先日作った10メートルのラダー(縄梯子)を下ろした。
いやはや、ほとんど垂直だ。
今回のアイデアは、ザイルダウンの方法だ。
ザイルを下に投げるのではなく、ザックの中からクモが糸を出すようにした。写真のように足の膝小僧の下に70センチのテープシュリンゲで縛り、そこにカラビナを掛け、ザックから出てくるザイルを掛けた。アイデアとしては膝の部分である。
こうすることで手を使わなくてもザイルを伸ばしていくことが出来る。
これは混雑したゲレンデでザイルダウンしなくてもいいので誰でも使える技だ。肩に巻く方式もあるがそれだと首を吊る可能性もなきにしもあらず。ちなみに、膝のカラビナを使わないとザイルの出しが引っ掛かる感じになる。「膝のカラビナ」のところがポイントである。
懸垂下降のバックアップ用のシャントをザイルにセットし、その上に下降器としてのルベルソ4をセットした。
あっ、と思って思いだした。
そうそう、お神酒と清めの塩を撒くのを忘れた。
上に登りアンカーの周りを塩と酒で清めた。
岩の端からゆっくりと体重をザイルに掛けた。
おやまあ、やっぱり最初からほとんど空中懸垂だ。
ここを私は上手に登り返しができるだろうか?
まあ、ラダーがあるから大丈夫だけれど・・・。
ゆっくりゆっくりと降りる。
海岸から人の声が聞こえる。
誰かが私を見て声を上げたのだろうか?
シャントで途中で止まってみるが、垂直の壁が混在して、こりゃやっぱり登り返しは大変だと思った。岩角によるザイルの切断のリスクもある。
岩の質だが表面がザラザラ風化している。この状態の表面だと快適な岩登りにはならない。ゲレンデとして整備するのは上部は無理かなと思った。別の場所は先日の日記のようにオーバーハングの泥壁だし。
10メートルのラダーの末端の少し下まで懸垂下降で降りて下を見ると壁はほぼ垂直。
これより下に降りても登り返しが大変なだけだと思ったので、きょうはここ迄とすることにした。高度差にしてたったの12メートル強。
懸垂の状態でザイルにぶら下がったまま登り返しの準備をした。
ハッキリいって完全に人工登攀状態だ。
アッセンダーのダックをザイルにセットしてプルージックをバックアップにした。ダックをチェストハーネスにも結び、ダックが上がるとプルージックが押し出される両手離しができる私のシステム。
登り出しは、垂直の岩壁に生えている木に120センチのスリングを回してカラビナを掛け、60センチのスリング2本を連結してアブミを作って登った。完全なるエイドクライミングだ。昔はアーティフィシャルクライミング(人工登攀)とも言った。
ほんの少しだけフリーで岩を登り、そこからラダーを登った。登るといってもアブミの技術がいる感じ。でも、楽に登り返しが出来た。夜なべして縄梯子を作ってよかった。
上にあがり、やれやれ。なんとなく海岸から声が聞こえた気がした。
セットしたザイルなどを外して海を見た。
「ここの整備は無理かな」と感じた。
でも、「下の方の岩の質はいいので、もっと下まで降りて、そこに松の木があるので、その松の木に常設のフィックスロープを付ければいいんじゃないかな?」と思ったりした。ただし、落石の危険性はある。毎回、浮き石を掃除しながら降りてくる必要がある。もっとも軽トラサイズの落石はどうしようもない。
どちらにしても80メートルぐらいある壁だ。
ゲレンデ化するのは色々な意味で難しいかもね。
こんなことをしているよりもやっぱり私のゲレンデの南山でトレーニングを積んだ方がいいかも知れない。
こういう無駄とも思える時間はパラグライダー時代もそうだった。膨大な時間をエリア開拓に使った。そういう人生なのかも私は。
やっぱり、風邪じゃなくて燃える闘志が体温をあげるようだった。生まれて初めてそれを実測した感じ。
はあ(ため息)
ため息は寿命を縮めるのでやめた方がいいとか。
ま、年寄りの冷や水だわな。
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