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何気なく中を見たら、当時のザイルパートナーの「Ｈ」がＯＢ山行というかたちで私たちが初めて屏風岩を登ったときの感想を投稿していたのを発見した。
なんとまあ初々しい！
ヤマレコの記録に移すか思案中であるけれど、当時を懐かしみながら掃除を中断して彼の文章を書き写してみた。
この頃から２，３年が私の岩登りのピークだった。
ちなみに文章中の伏字○○は私の本名。さすがにmurrenとは書けない。
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８月１５日 屏風岩登攀 記：Ｈ
１５日の朝、先に目が覚めたのはおれだった。涸沢のテント場の中でおそらく一番みすぼらしい中の一つにいる○○の二人用のツェルトはなんとか立っていたが、すぐ目の前にツェルトの天井がある。シュラフにはツェルトがくっついていてもう濡れてしまっている。体調は今日屏風岩に行くはずなのだか全く悪く、初日からの登山行動に加えて昨日の滝谷登攀の疲れが出て体中が痛いし頭の中もフラフラする。おれは○○も同じように体調が良くないことを知っていたから「今日屏風岩に行って登れるわけがない」と思っていた。しかし昨日滝谷から涸沢に帰ってくる時におれが〇〇に「あー体中がめちゃくちゃだ。こりゃあした屏風はちょっとムリだなあぁ」なんてことを言ってしまったので、このまま今日もし止めになったらおれの立場がない。それでとにかく〇〇を起こして、「〇〇！！朝だぞ、屏風に行くぞ！！早く起きて用意するぞ！！」と言ってみた。ここでもしも〇〇が「やめよう」なんて事を言えばたぶん止めになっていたと思うが、彼も自分の口から「やめよう」なんてことは言わない。それでなかなかシュラフから出ずに「ううーん」などと言って「今日行けば死にに行くようなもんだ。登れるわけがない。」という態度をする。しかし、「やめよう」を二人とも口に出したくなかった。それでおれがしつこく「いくぞ！！いくぞ！！」なんて言ってたら、「行くかぁ」と言って起き上がってきた。
とにかく食いきれないほどの食料を少しだけ食って、急いで支度して「取り付きまでいちおう行ってみるか」ってことで涸沢を出た。４時３０分出発。
夏道を下って本谷に出たところにある水場まで二人ともほとんど口をきかない。〇〇はどうか知らないが、おれは不安だった。まず屏風岩という名前がこわかったし、体調が二人とも悪いことも大きな原因だった。とにかく腹いっぱい食うほどの食欲はとてもなかった。
取り付きに着いたら先行パーティの順番待ちだったが、ここまで来て戻る気など全くなかった。しかしそうかといって「ようし登るぞ！」なんて気にもなっていない。ただおれたちの順番がきたときに「あーあ、とうとうおれたちの登る番か」そんな気持ちでＴ４尾根に〇〇がトップで取り付く。
�控蕕離侫蝓璽�ライミングの核心部は最初の２ピッチほどだが全くいやなところだ。
Ｔ４のテラスに着くとおれはもうウキウキしてきた。なんとなく登れるにちがいないという自信が出てきたのだ。雲稜ルートのつもりだったが蒼稜ルートへ取り付いた。まるで垂壁のその上にボルト間がすごく遠いがグリップフィフィの威力を発揮して快適に垂壁の散歩を楽しむ。もう不安なんか全くなく力まで湧いてくる。
３ピッチで扇岩のテラスに着く。〇〇もウキウキしている。顔を見あわせただけでなんとなく笑えてきた。きっと二人とも「おれたちゃいま夢にまで見たビョーブイワに登っているんだ」という気持ちがあるからだろう。人の打ってくれたボルトを頼りに一番楽なルートを登っていることは分かっているのだが嬉しくてしょうがない。
扇岩のテラスから〇〇がトップを行く。ここから雲稜ルートに入ったのだがボルトがひどいところだと５０センチぐらいの間隔でとにかく連打してある。もう笑うしかない。体力はもう限界くらいに近いはずだが全くおもしろい。もう振り返るたびに常念がグングン浮かび上がって横尾山荘なんか小指のつめより小さくなっている。
アブミをかけかえても終わらないのだが垂直にぶら下がっているという感じがたまらない。思わずおれは岩にＫＩＳＳしてやったのだがとにかくものすごい高度感だ。今おちたら横尾の岩小舎までおちそうな気がする。それで落石がまたすごい。目の前をゲンコツほどの石がシュウッというなんかガス漏れみたいなかなり大きな音を立てて空気を切ったかと思うと、どこにも当たらないで足下の空間にすいこまれていって消えて行ってしまう。いつかの夜に夢で見たような事が起こるときは自分の気持ちが最高の時だ。それで、おれは８ミリカメラを出して赤いザイルがオーバーハングに消えている所を狙った。立ったまま不安定な場所で〇〇を確保しながら８ミリを構えるとすぐ山岳写真家にでもなったような気になってくるから都合がよい。ハングから〇〇のヘルメットが見えてくると、「〇〇〜（名前）」と大声で呼んでみる。レイバンをかけた顔が笑って「オーイ」とまた意味のないことを言うのだが楽しくてしょうがない。
初めてのビッグクライムを終わって夜８時すぎに涸沢に着いたとき「屏風岩登攀」をよろこびあうのを忘れるほど疲れ切っていた。
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文中のＴ４尾根は�控蕕任呂覆��元蕕世隼廚Α�
その後も２度ほど屏風を登ったけれど、この最初が確かに一番楽しかった。
約３６年前、２１歳になった夏の日の記憶だ。
上の１枚目の写真は、Ｈが撮った８ミリフィルムをＨが写真に引き伸ばして私にプレゼントしてくれたもの。当時の写真はこれ１枚だけだ。レイバンをかけた私ということでＨの文章と一致している。
２枚目の写真の「日本の岩場」の本は、当時私が利用していたルート集。
これも掃除をしていたら出てきた。懐かしくて中を見ていたら当時の自分に戻っていた。
３枚目は、コングのレスティング・フィフィ。年がいもなく人工登攀を再開しようか思案中であるけれど、とりあえずハーネスのカラビナに付けてみた。たぶんこれがコングの設計通りのセッティングだと思う。
来年は、超久しぶりにビョーブに登ってみようかしらん。。。
来年のことを言うと鬼がわらう
けど。。。
ｍｕｒｒｅｎさん、初めまして。
「日本の岩場」ルート集、私も昔使っていましたが、リタイアに伴う身辺整理をしたときに多くの山岳書籍、使わなくなった古い山道具とともにあっさりと捨ててしまいました（もう、出番はあり得ないと思い・・・）。
今思うと、昔の山道具も懐かしいものが多かったので、なんとあっさりと切り捨てたものかと、少し後悔・・・
錆びの浮いた重い鉄ビナ、たちまち爪が摩耗するサレワの12本爪プレスアイゼン、木靴みたいにカチコチになったローバチベッタなどなど。
懐かしい記事を見て、ついコメントしてしまいました。
今は、中級低山の散歩と、たまに背伸びしてアルプス縦走。
歳相応に山を楽しんでいます。
mas811061さん初めましてこんばんは。
コメントありがとうございます。
そうですね、捨てるときは思い切りが必要ですが捨ててしまうとスッキリします。しかしながら後で捨ててしまったことを後悔してしまいます。私の山道具などがそうでした。とくに屏風で使ったサレワのグリップフィフィは残念でした。もう売っていないようです。私の靴とは違いますがローバのチベッタなどは私の友人の多くが履いていました。
mas811061さんは激しく岩や氷などを登られたと思います。まだまだ私は未熟ですので教えていただくこともあると思います。是非また昔の技術など教えてください。
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